猿をペットとして迎えたいと考えているものの、病気や怪我をしたときに適切な医療を受けられるのか不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
実際に、猿を診療できる動物病院は全国的に少なく、緊急時の対応が難しいこともあります。
本記事では猿を診療している動物病院について以下の点を中心にご紹介します。
- 日本でペットとして飼える猿について
- 猿を飼うときに知っておくべき注意点について
- 猿の飼い方について
猿の飼育について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
日本でペットとして飼える猿とは

- 猿の飼育に関する日本の規制について教えてください
- 日本では、2005年7月1日以降、どの種類の猿であってもペット目的の輸入が禁止されています。これは、海外由来の病気が猿を介して日本に持ち込まれるリスクを防ぐためです。そのため、日本で飼育できるのは、2005年以前から飼われていた猿か、国内で繁殖した猿に限られます。
さらに、多くの猿は”特定動物”に指定されており、環境省の許可なしに飼育することはできません。特定動物を飼育する場合は、適切な施設の構造や点検、施設外での飼養禁止などの厳しい基準を満たす必要があります。動物園では、これらの許可を取得したうえで飼育が行われています。
また、日本から猿を国外へ持ち出す際には輸出検疫の義務はありませんが、入国先の国の規制に従う必要があります。一方で、ペット目的の猿の輸入が禁止されているため、国外へ連れ出した猿の再入国は認められていません。
- 日本で飼育できるスローロリスについて教えてください
- スローロリスは、霊長目ロリス科に属する夜行性の猿で、日本でも飼育が可能ですが、厳しい条件が課されています。飼育には環境省から登録票を発行してもらう必要があります。
スローロリスは、熱帯雨林に生息し、ゆっくりとした動きが特徴です。普段は木の上で生活し、ガム(樹液)を主食とするガムイーターとしても知られています。また、かつては単独行動をする動物と考えられていましたが、近年では家族単位で生活することも確認されています。
飼育には、夜行性の習性を考慮し、日中は静かに眠れる環境を整えることが重要です。さらに、握力が強いため、しっかりとしたケージが必要です。スローロリスに対してアレルギー反応を起こす人もいるため、事前に確認することが望ましいでしょう。
- 日本で飼育できるリスザルについて教えてください
- リスザルは、霊長目オマキザル科に分類される小型のサルで、日本でも飼育が可能です。
体長は約30cm、尾は40cm程で、手足がオレンジ色をしているのが特徴です。穏やかで好奇心旺盛な性格を持つことが多い傾向にあり、人にも馴れやすいとされています。
リスザルはアマゾン川流域を中心に生息しており、高温多湿の環境を好みます。運動量が多く、2m以上ジャンプすることもできるため、飼育には広いスペースが必要です。退屈すると強いストレスを感じるため、遊び道具を豊富に用意し、環境を工夫することが重要です。
また、リスザルはペットのなかでは長寿で、自然界では10〜15年、飼育環境下では20年近く生きることもあります。迎える際には終生飼育できるかを慎重に考えることが求められます。
飼育する際は、その生態や性格を理解し、適切な環境を整えることが大切です。
- 日本で飼育できるコモンマーモセットについて教えてください
- コモンマーモセットは、霊長目マーモセット科に属する小型のサルで、日本でも飼育が可能です。体長は16〜21cm、尾は24〜31cm程で、耳の周りの白いふさふさした毛が特徴です。昼行性で、木の樹脂や果実、昆虫などを食べ、独特な鳴き声でコミュニケーションを取ります。
このサルは家族の絆が強く、親だけでなく兄や姉も子育てに関与します。そのため、単独飼育ではストレスを感じやすく、自傷行為をすることもあるため注意が必要です。
理想的には、多頭飼育を行うことで精神的な安定を図ることができます。
また、コモンマーモセットは繁殖力が高く、年間4〜6匹を出産し、一生のうちに40〜80匹の子を産むこともあります。寿命は野生では10〜15年ですが、飼育下では適切な環境を整えれば16年生きた例もあります。
迎える際には、事前に専門の動物病院を確認し、十分な準備を整えることが大切です。
猿を飼うときに知っておくべき注意点

- 猿を診療している動物病院はどのくらいありますか?
- 猿を診察できる動物病院は全国的に少なく、犬や猫のようにどこでも受診できるわけではありません。猿は人獣共通感染症のリスクがあるため、診療には特別な知識と設備が求められます。そのため、診察可能な獣医師の数は限られており、緊急時の受け入れ先を探すのが難しい状況です。
また、猿はストレスに弱い動物で、環境の変化による体調不良を起こしやすい一面もあります。そのため、飼育を検討する際には、事前に猿を診療できる動物病院を調べておくことが重要です。近くに適した病院がない場合は、通院可能な範囲に移住するなどの対応も考慮しなければなりません。
猿を健康に飼育するためには、定期的な健康診断や病気の予防も必要です。猿を迎える際は、医療体制や飼育環境を十分に整え、長期的な視点で責任を持って飼うことが求められます。
- 猿の飼育は難しいですか?
- 猿の飼育はとても難しく、ペットとして推奨される動物ではありません。
猿は犬や猫と異なり、しつけが困難で、トイレの習慣を身につけることも難しいとされています。また、食事や健康管理、心理的ケアに精通しなければならず、個人での飼育には深い知識が求められます。
さらに、猿は人獣共通感染症のリスクを持ち、公衆衛生の観点からも注意が必要です。猿に関する獣医療の情報は限られており、診察可能な動物病院の数も少ないため、病気の際に適切な医療を受けることが難しいケースもあります。そのため、飼育を検討する際には、事前に受診可能な病院を調べることが不可欠です。
猿は賢い動物ですが、ストレスを感じやすく、適切な環境を整えないと攻撃的になることもあります。こうした特性を理解し、責任を持って終生飼育できるか慎重に考えることが求められます。
猿の飼い方について

- 猿の食事管理について教えてください
- 猿の食事管理はとても重要であり、種類ごとの食性を理解する必要があります。猿は主に雑食性ですが、新世界ザルは昆虫などの動物性タンパク質を多く摂取し、旧世界ザルは果物や野菜を多く食べます。
飼育環境では専用のモンキーフードやビスケットを基本とし、栄養バランスを保つことが求められます。
フルーツは好物ですが、過剰に与えると糖尿病やむし歯のリスクが高まるため注意が必要です。特にバナナは糖分が多いため、適量に抑えることが推奨されます。
また、ツツジなどの有毒植物は消化器疾患を引き起こす可能性があるため、与えないようにしましょう。
猿は1日に体重の3〜5%程の餌を消費しますが、こぼすことが多いため、多めに用意する必要があります。食事は1日2〜3回に分け、無駄を減らしつつ栄養を安定的に摂取させることが大切です。適切な食事管理を行い、健康を維持しましょう。
- 猿はどのような環境で飼育した方がよいですか?
- 猿の飼育環境は、その種類に適した設備を整えることが重要です。基本的に広いスペースが必要で、少なくとも1m以上のケージを用意し、猿が自由に動き回れるようにする必要があります。
特にリスザルなどの樹上性の猿は、登り木や止まり木を設置し、上下運動ができる環境を整えましょう。
また、猿用のケージは強度や衛生管理の面で適したものを選び、塗料が剥がれにくい加工が施されたものが理想的です。夜行性の種類には、暗くなる寝場所を用意し、中型の猿にはハンモックを取り付けるのも適しています。
温度と湿度の管理も欠かせません。理想的な環境温度は18〜27度、湿度は55〜70%が適していますが、新世界ザルの育仔期には湿度を70〜80%に維持する必要があります。
適切な環境を整えることで、猿がストレスなく健康に過ごせるようになります。
- 猿のケアについて教えてください
- 猿のケアには、衛生管理や健康維持のための適切な対応が必要です。猿は本来きれい好きで、自分で毛づくろいを行いますが、飼育下ではシャンプーやブラッシングを取り入れることも大切です。水を嫌がらなければ入浴させることでリラックス効果が得られますが、ストレスにならないよう慎重に行う必要があります。
また、猿にとってグルーミングは社会的な意味を持ち、信頼関係を築く重要な行為です。
ブラッシングを習慣づけることで、皮膚を清潔に保ち、健康維持にもつながります。さらに、退屈を防ぐために、安全性の高い玩具を用意し、定期的に交換することが望ましいです。
健康管理の面では、予防接種を適切に受けさせることが重要です。
猿は人獣共通感染症のリスクがあるため、飼育者自身も感染予防に努める必要があります。適切なケアを行い、猿が快適に過ごせる環境を整えましょう。
編集部まとめ

ここまで猿を診療している動物病院についてお伝えしてきました。要点をまとめると以下のとおりです。
- 日本で飼育できる猿は国内繁殖個体に限られ、特定動物には許可が必要であり、スローロリスやリスザル、コモンマーモセットは適切な環境と長期的な責任が求められる
- 猿の飼育は極めて困難であり、しつけや健康管理が難しいうえ、診療可能な動物病院が少なく、人獣共通感染症のリスクもあるため、慎重に検討し長期的な責任を持つ必要がある
- 猿の飼育には適切な食事管理、広いスペースと温湿度の維持、定期的なケアが不可欠であり、人獣共通感染症の予防も含め長期的な責任を持つ必要がある
猿の飼育は決して簡単ではなく、適切な医療を受けられる環境を整えることも重要です。診療できる動物病院が限られているため、事前の確認や準備を怠ると、万が一のときに対応できなくなる可能性もあります。
本記事が、猿の飼育を検討している方の参考になれば幸いです。
大切な命を守るために、慎重に準備を進めていきましょう。