猫が石や砂を食べるのはなぜ?原因や危険性、応急処置を解説します

猫が石や砂を食べるのはなぜ?原因や危険性、応急処置を解説します

猫は人に生活の癒しや喜びを与えてくれます。

猫を飼っている方を対象に行われた研究結果によれば猫との交流が人のストレスを軽減させる可能性があるそうです。

さらに猫との交流は人のポジティブな気分を増加してくれるという結果が出ています。

今やペットは家族の一員といっても過言ではありません。大切な猫が石や砂などを食べているのをみて不安に思われたことはないでしょうか?

今回の記事では猫が石や砂を食べてしまう原因と危険性を解説します。食べると危険な物質と応急処置もご紹介します。

ふだんと違う様子やしぐさが見られた場合は誤飲や病気のサインかもしれません。気になった場合は早めに獣医師に相談するようにしましょう。

猫が石や砂を誤って食べるのはなぜ?

ヨーロピアンショートヘア

猫が石や砂を食べてしまう原因は健康に問題があることやストレスの影響が考えられます。また、栄養の偏りが原因の空腹感から石や砂を食べてしまう場合もあります。いずれにしても猫の異変を感じたらできるだけ早く獣医師を受診しましょう。

猫が石や砂を食べる原因

気持ちよさそうに眠る猫

猫が石や砂を食べる原因にはさまざまな理由があります。原因と対策を知って猫がいつも健康で快適に暮らせるように注意が必要です。

これから原因について5つのポイントに絞って詳しく解説します。気になることがあれば獣医師に相談しましょう。

肝臓の疾患

肝臓の疾患がある場合に石や砂を食べてしまうことがあるようです。肝臓疾患には肝臓病や肝リピドーシスなどがあり、肝臓病は高齢猫に多くみられます。

肥満の猫は肝臓病発症の可能性が高くなります。

猫の肝臓病は効果的なコントロールによって進行の抑制が可能です。適切な栄養補給と継続した通院が肝疾患のコントロールには大切です。

後述しますが人間用の解熱鎮痛剤に含まれるアセトアミノフェンは猫の肝臓に損傷を与えることがあります。猫が誤って飲み込まないように気をつけましょう。

食欲不振や体重減少、黄疸がみられたり喉が渇いていたりなどの症状のほかに嘔吐や下痢などの徴候が表れたら獣医師の診察を受けましょう。

寄生虫

寄生虫の発生も猫が石や砂を食べてしまう原因の一つと考えられています。

犬猫回虫症の臨床所見には異食症があります。犬や猫の問題行動について行ったアンケートによれば、問題行動のうち異食は猫で19.5%にのぼりました。誤って食べるものには石や土、草や衣類のほかに金属片やペットシーツなどがあります。

寄生虫に感染する猫の割合は、室外で飼われている猫より室内飼いの猫のほうが高いという調査結果があります。

室内飼いの猫で避けるのが難しい寄生虫は条虫と回虫です。条虫は猫が感染したノミを毛づくろいしているときに体内に取り込んでしまうことで感染します。

家族や来客の衣服に付いていたノミが室内に持ち込まれることでも感染します。回虫の感染も条虫同様の原因です。

子猫の場合は母猫の母乳を介して感染することもあります。幼猫を受け入れた方はすでに感染している可能性もあるそうです。

治療は、簡単で効果的な寄生虫の駆除薬があるため獣医師に処方してもらいましょう。3ヶ月に1回の定期的な駆虫によって再感染の予防ができます。

ストレス

バッグに入って遊ぶ子猫

猫は人間と同じようにストレスを感じる生き物です。

ストレスも猫が石や砂を食べてしまう原因になっているようです。猫にとって何がストレスになるのかを知ることで猫にとって快適な住環境を作ってあげることができます。

ストレスを避けた生活による病気の予防が大切です。猫がストレスを感じる要因には次のようなものがあります。

  • 引っ越しによる環境の変化
  • 部屋の模様替え
  • 見知らぬ人の同居
  • 多頭飼育をしている
  • 新しい家具や家電の導入
  • 工事の音
  • 寒冷な環境

上記は一例に過ぎませんが、いずれにしても猫のストレスに影響があると考えられるものは避けるように心がけるとよいかもしれません。

猫がストレスを感じていることがわかるストレスサインの具体例は次のとおりです。

  • 耳を顔の横や後ろに向ける、後ろに倒す
  • しっぽを左右に振ることがよくある
  • 見知らぬ人の同居
  • 多頭飼育をしている
  • 背中の毛が逆だったり尻尾が膨らんだりする
  • ビクビクしながら歩いたり頭や身体を低くしたりして身構えるようにする
  • よくニャーニャー鳴く
  • 食事を摂らなくなったり水を飲まなくなったりする

ほかにも猫のストレスがうかがえる仕草や症状があります。日頃からよく観察して普段と異なる様子があれば獣医師に相談するように心がけましょう。

栄養の偏り

食卓を除く猫

猫は栄養が偏っていて栄養不足の状態に陥ると空腹を感じます

空腹感が石や砂などを食べてしまう原因です。では栄養の偏りはどうして起こるのでしょうか。

猫は肉食動物に分類されます。必要な栄養素は肉から得られるタンパク質や脂肪、ビタミンやミネラルです。

これらをバランスよく含む総合栄養食を利用している飼い主は80%にも及ぶとの調査もあります。しかし、市販のキャットフードは栄養が豊富に含まれている反面、栄養素を過剰に含むこともあるため注意が必要です。

猫の年齢や品種によって必要になる栄養素が異なるため、猫のライフステージに合わせた餌を与えることが大切です。

飢餓

猫が石や砂を食べてしまう原因の5つ目は飢餓です。

そもそも食欲不振で餌を十分に食べられていないために飢餓状態になっていると考えられます。

猫は異常に食欲が高まる病気もありますが、ほとんどの病気で食欲不振が起こります。

猫が食欲不振になってしまった場合は、家庭で病気以外の原因を探ることが大切です。猫は同じ食べ物に飽きてしまうと食べない性質があります。餌の種類を新しいものに変えると食べ始めるかもしれません。

前の食事量が多過ぎてお腹が空いていない可能性もありますので、餌の量が一定になっているか確認してみるのも有効かもしれません。

これらの方法でも食欲不振が解消されない場合は病気の可能性を考えてみます。同時にほかの症状を伴うかも様子をみる必要があります。

熱や下痢、嘔吐などがないか注意を払いましょう。

ここでは5つの原因を紹介しましたが、このほかにも痴呆症による、誤飲も挙げられます。猫も痴呆症になるため、痴呆症の症状が出ていないかも確認することをおすすめします。

猫が石や砂を食べる危険性

動物病院で猫を診察する獣医師(嫌がる)

猫が石や猫砂などの砂を食べてしまったらどのようなことに気をつけなくてはならないのでしょうか。物質によっては中毒症状を示したり消化器官の炎症を起こしたり、命に関わる腸閉塞を起こしたりする恐れがあります。

一つひとつ詳しく解説します。

中毒症状

近年主に使われている猫砂原料のベントナイトは尿を吸って固める働きがあります。

固まった部分だけ取り除けばよいので処理がしやすく現在では猫砂全体の70%がベントナイトです。

ベントナイトで気をつけることは粉塵です。猫砂を処理するときには粉塵が出ないように気をつけるか粉塵の出にくいタイプのものを使用するようにします。粉塵を吸ってしまって起こる中毒症状には低カリウム血症や呼吸器症状やアレルギー症状があります。

猫砂はもし数粒程度食べてしまっても消化吸収されずに排出されるため健康への影響は少ないようです。ただし固まるタイプの猫砂は誤食すると胃にどんどん溜まってしまいとても危険です。

子猫のうちや石や砂をよく食べるタイプの猫の場合は固まるタイプの猫砂は避けた方がよいでしょう。

消化器官の炎症

猫はさまざまな理由で吐くことがあります。

誤って石や砂のほか何らかの異物を食べてしまったときに吐くこともあります。吐く頻度が多くなると胃液の逆流が頻繁となり胃の出口から近い臓器である膵臓や胆管にも炎症を広げてしまう可能性があり危険です。

吐く以外にも症状がある場合は獣医師に相談するようにしましょう。

相談するときには次のような情報をまとめておくとよいかもしれません。

  • 吐く頻度やタイミング
  • 何を吐いたか
  • 吐く以外の異変
  • ストレスの原因となりうる環境の変化があったかどうか
  • 中毒を起こすようなものを食べた可能性があるかどうか

猫に少しでも普段と違う様子がみられたらいつどのようなときに何をどのくらい吐いたかを細かく記録しておくと獣医師の診察を受けるうえで役立ちます。

腸閉塞

子猫や遊ぶのが好きな猫は猫砂を食べてしまうことがあります。

猫砂にはさまざまな種類のものが発売されていますが、種類によっては危険なものもあるため注意しなければなりません。

誤って異物を食べてしまうと腸が詰まって腸の中身が通らなくなり、腸閉塞を起こして命に関わる危険な状態になります。

腸閉塞になると頻回の嘔吐や腹痛のほか、食欲不振や下痢または便秘の症状がみられる場合があります。

猫が石や砂を食べた場合の応急処置

動物病院で猫の顔を診察する獣医師

猫がもしも石や砂を食べているとわかったらどのような処置をすればよいのでしょうか。

よく表れる症状に嘔吐があります。嘔吐の原因が異物の誤食かどうかの診断は大切です。そのためできるだけ早く獣医師による診察を受けることが重要です。

もしも食べてしまった異物が残っている場合はそれも持っていくとよいでしょう。

動物病院ではX線の検査や超音波の検査などを行います。大切な猫を危険から守るためにも日頃からどのように予防すればよいか知っておく必要があります。

猫の異食を予防するには

猫じゃらしでペットの猫と遊ぶ飼い主の夫婦

猫の異食を治したくても、どうしたらいいかわからないという経験がある方は少なくないのではないでしょうか。 猫にとって安全性の高い環境づくりのために、猫が口にすると危険なものは遠ざけるようにしましょう。 猫砂は、猫が口にしにくいタイプのものや、口に入れても体内で膨張しないタイプのものを選択するようにします。猫の嫌がるスプレーをかけるという方法も一案です。 猫のストレスを解消してあげることも予防につながります。 これらの項目についてより詳しく解説しますので参考になりましたら幸いです。

異食するものを遠ざける

猫が食べると危険なはものはそもそも猫が届かないようにしましょう。

そのためには家の中を猫にとって安全性の高い環境にしなくてはなりません。

猫は扉を器用に足で開けることができる場合があります。猫が食べてしまうと詰まる恐れがあるものに輪ゴムや毛糸、靴の紐などがあります。

これらも猫が食べないように注意しましょう。

猫砂を食べにくいものに交換する

トイレの後に猫が足を舐める場合、猫砂が体内に入り込んでしまうことがあります。

予防としては猫が食べにくい猫砂である尿が固まるタイプの使用が有効です。

鉱物系猫砂のベントナイトはしっかり固まるので食べにくいタイプです。粉塵が心配な場合は、室内の換気をよくしたうえで粉塵が出にくいタイプの製品を使用してみましょう。

猫は母猫の使っていたトイレの形状を好む傾向があるようです。ぜひ猫の好みに合ったものを選ぶようにしましょう。

猫の嫌がるスプレーをかける

猫にはハーブや柑橘類などの嫌いな匂いがあります。また猫を避けるための市販のスプレーもあります。

猫の嫌いな匂いやスプレーを猫が近づいて欲しくないところへ使用すると異食の予防効果が期待できそうです。ただし猫によっては個体差があり効かない場合もあるようです。

ストレスのかからない環境を整える

ボールで遊ぶ子猫

猫はストレスによって石や砂などの異物を食べてしまうことがあります。

なるべく猫にストレスがかからないように快適な環境作りをしてあげることが大切です。

くつろげる場所の設置や多頭飼育の場合は猫の数より一つ多めの数のトイレや食器、水飲み器などを準備しましょう。

猫と積極的に遊ぶことも猫にとって快適な環境になります。

定期的な通院をする

猫は痛みや不調を隠す性質があります。

そのため見た目には変化がなくても定期的な動物病院の受診が大切です。猫は7歳になるとシニア期になるといわれています。

7歳以上の年代は次のように分類されています。

  • 7〜10歳 中年期
  • 11〜14歳 高齢期
  • 15歳以上 老年期

猫は年に1回は獣医師による健康診断を受けるようにしましょう。

11歳以上の高齢期や老年期の猫は年に2回の健康診断がすすめられています。定期的な通院以外でも普段と違う様子がみられた場合はできるだけ早く獣医師に相談するようにしましょう。

健康に見えても病気が進行している可能性も否定できません。早めの受診で症状の軽いうちに治療ができるかもしれません。

危険性の高い異食はどのようなもの?

 猫にブドウを食べさせては危険 ぶどう

猫を飼ううえで特に注意が必要な危険性の高い異物には中毒の恐れがあるものや針などの尖ったもの、細長いひも類やボタン電池などがあります。

特に危険性の高い中毒の恐れがあるものは次のとおりです。

  • ネギ類(玉ねぎやネギ、ニラやニンニク)
  • チョコレート
  • アルコール類
  • エチレングリコール(不凍液やブレーキオイル、インク)
  • ペルメトリンとミルベマイシン(殺虫剤や犬用駆除薬)
  • α-クラロース(殺鼠剤)
  • パラセタモール(人用の解熱鎮痛剤)
  • 非ステロイド性抗炎症薬
  • メタアルデヒド(キャンプ用コンロのパック燃料に含まれる)
  • ユリ属およびワスレグサ属

万が一危険な物質を食べた場合や猫の様子がおかしい場合には異物が排便などで排出されるのを待たずにすぐに動物病院を受診しましょう。

受診前には食事も水も与えないようにします。

まとめ

四つ葉のクローバー

猫が石や砂を食べてしまう原因はさまざまです。

食べると猫が中毒を起こしてしまう危険な物質があります。危険な物質を食べてしまった、あるいは食べてしまった可能性があるときは応急処置を施します。

緊急性が高い場合はすぐに獣医師の診察を受けるようにしましょう。

猫の異食はあらゆる対策を講じることで予防ができます

なるべく猫の住環境を快適でストレスのかからないものに整えるようにしましょう。

猫も人間と同じように定期的な健康診断が必要です。少なくとも年に1回、高齢期以降の猫は年に2回の健康診断を心がけましょう。

猫が健康で長生きできるよう今回の記事が日々のお世話のお役に立てましたら幸いです。

参考文献