動物病院でのがん治療|治療法や飼い主が腫瘍にいち早く気付くためのポイントを解説

動物病院でのがん治療|治療法や飼い主が腫瘍にいち早く気付くためのポイントを解説

大切な家族の一員であるペットががんと診断された場合、飼い主として大きな不安を抱えることでしょう。

現代の動物医療は進歩しており、適切な治療と早期発見によって、ペットが元気に暮らし続けられる可能性を高めることができます。

この記事では、動物病院で行われるがん治療や診断方法を詳しく解説し、飼い主ががんにいち早く気付くためのポイントについてもご紹介します。

大切なペットの健康を守るために、ぜひお役に立てれば幸いです。

動物病院で行う主ながん治療法

抱かれている猫のアップ

ペットががんと診断された際、飼い主がまず知りたいのはどのような治療法があるのかという点ではないでしょうか。

ここでは、動物病院で行われる主な治療法について、それぞれの特徴や目的をわかりやすく解説します。

外科手術

外科手術は、がん治療において腫瘍を直接取り除く根本的な治療法です。

腫瘍が身体の特定の部位にとどまっている場合、その周囲を含めて切除することで再発リスクを抑えることが可能です。

ただし、腫瘍の性質や位置によっては広範囲に切除しなければならないこともあり、見た目に影響が出る場合もあります。

また、すべての腫瘍が完全に取り除けるわけではありません。例えば、腫瘍が重要な臓器や神経に近接している場合、完全に切除することが難しいケースもあります。

外科手術は完治を目指す治療法ですが、腫瘍の種類や広がりによっては、さらに効果を高めるために手術前後に化学療法や放射線療法と組み合わせる場合もあります。

手術は身体への負担を伴いますが、適切な鎮痛管理が行われるため、ペットの痛みを抑えつつ治療を進めることが可能です。

放射線療法

獣医に処置してもらうウサギ1

放射線療法は、がん細胞を破壊し、腫瘍を縮小させるために放射線を利用する治療法です。

この方法は手術が困難な頭部や首、脳などの腫瘍に適用されることが多く、外科手術で完全に取り除けなかったがん細胞の消失を目的として行われる場合があります。

治療は複数回に分けて放射線を照射する形で行われます。一度の治療で完了することは少なく、通常は複数回の通院が必要です。

放射線療法は切開を伴わないため、生体を傷つけるリスクが少なく、特定の部位のがん治療において効果的です。

ただし、放射線の影響で皮膚や組織に副作用が現れる場合があります。この副作用は治療後に一定期間が経過してから発生することが多く、長期的な影響も考慮しなければなりません。

放射線療法が可能な施設は限られており、専門的な医療機関での診察が必要となる場合もありますが、緩和的治療や痛みを軽減するのに利用することも可能です。

化学療法

化学療法は、抗がん剤を使用してがん細胞の増殖を抑える治療法です。

腫瘍が全身に転移している場合や、手術で取りきれない場合に特に有効です。また、白血病などの血液がんに対しては、第一の選択肢となる場合があります。

抗がん剤はがん細胞だけでなく、一部の正常細胞にも影響を及ぼすため、治療中は白血球の減少や消化器への症状などの副作用が現れることがあります。

ただし、個体差が大きいため、副作用の軽減に向けて薬の種類や投与量を調整しながら進めることが一般的です。

さらに、近年では分子標的薬と呼ばれる新しいタイプの治療薬も使用されています。

この薬はがん細胞特有の分子を狙い撃ちにするため、正常な細胞への影響が少なく、副作用の負担が軽減されることがあります。

化学療法は単独で用いられることもあれば、手術や放射線療法と組み合わせて行われることも多いです。がんの種類や進行度によって治療計画が立てられます。

腫瘍の診断方法

獣医さん

ペットの腫瘍が疑われると、多くの飼い主は大きな不安を抱えることでしょう。

しかし、適切な診断を行うことで治療方針が明確になり、前向きな一歩を踏み出すことができます。

ここでは、腫瘍の診断に必要な方法について解説します。

問診

問診では、獣医師が飼い主からペットの状態や生活習慣、症状の経過について詳しく聞き取ります。

例えば、しこりがいつから気になり始めたのか、その大きさが変化しているか、痛みやほかの症状があるかなどを確認します。

これにより、腫瘍の種類や進行状況についての初期情報を得ることができるのです。

ほかにも、ペットの既往歴や普段の食事や運動量、薬の服用歴なども尋ねられることがあります。

これらの情報は、腫瘍が良性か悪性かを判断する手がかりとなり、次の検査ステップを決定する助けとなります。

飼い主ができるだけ正確な情報を提供することで診断の精度が高まるため、ペットの健康状態や生活習慣は日頃から気にかけておくといいでしょう。

腫瘍の大きさを確認する

腫瘍の大きさを把握するために、まずは獣医師が視診や触診を行い腫瘍の位置や形状、硬さを確認します。その後より詳しい情報を得るために、画像診断を活用します。

例えば、レントゲン検査では骨や臓器内の腫瘍を確認することができ、超音波検査では体内の軟部組織の腫瘍の形状や内部構造の把握が可能です。

また、CTやMRIといった高度な検査機器を用いることで、腫瘍の発生場所の特定や隣接組織との関係性を詳細に解析することが可能です。

これらの検査で得られる情報は、今後の治療計画を立てるうえで欠かせません。

転移の有無

転移とはがんがほかの臓器や組織に広がった状態を指し、その有無により治療方針が大きく変わります。

転移を調べるためにはいくつかの検査が必要です。例えば、胸部レントゲン検査は肺への転移を確認するのに役立ち、超音波検査は腹腔内臓器の転移を調べるために用いられます。

また、CTやMRIを用いることで、より詳細な画像情報を得ることが可能です。加えて、リンパ節の腫大を確認するための触診や、細胞診検査を行う場合もあります。

転移が確認された場合、その部位や範囲を考慮しながら治療方針が立てられます。この検査結果が治療の成功率や予後の見通しに大きく影響を与えるため、正確な診断が求められるのです。

がん完治のためには早期発見が必要

獣医に処置してもらう犬14

がん治療ですべての悪性腫瘍が改善するわけではありませんが、早期に発見できれば外科手術やほかの治療法で腫瘍を取り除くことが可能な場合が多く、予後に大きく影響します。

例えば、犬や猫で多く見られる骨肉腫は、肺やほかの臓器へ転移しやすい特徴があります。しかし、転移が起こる前に腫瘍を発見し、適切な治療を行えば延命や生活の質の向上が期待できるでしょう。

同様に、乳腺腫瘍も発生率が高い疾患ですが、早期段階で手術を行うことで多くの場合に完治が可能です。特に、避妊手術をしていない雌犬は発症リスクが高いため、早めの検診が重要です。

さらに、犬や猫に見られる組織球性肉腫は以前は治療が困難とされていましたが、早期に発見し、抗がん剤治療を行うことで生存期間が延びたケースが報告されています。

これらの例からも、早期発見が治療の成功やペットの寿命に大きな影響を与えることがわかります。

日常的な健康チェックや定期的な検診を行い、小さな異変を見逃さないことが、ペットの健康を守る第一歩です。

早期発見しやすいとされるがんの種類

猫の診察をする女性獣医師

がんのなかには、初期段階で発見しやすいものもあります。ここでは、早期発見がしやすいとされるがんの種類について解説します。

早期発見は治療のカギとなるため、がんの特徴を知り日々の健康チェックに役立てましょう。

皮膚腫瘍

皮膚腫瘍は、動物の皮膚や皮下に現れる悪性の腫瘍です。しこりやイボのような形状で気付くことが多く、触診や視診で確認しやすい特徴があります。

同じ皮膚腫瘍でも大きさや形状、硬さなどが異なり、手術で簡単に完治するものから急激に悪化するものまでさまざまです。

悪性か良性か判断しにくい場合もありますが、早期に動物病院で診てもらうことで正確な診断が可能です。

特にスキンシップの際に触れることができる位置にできやすいため、日常的にペットの身体を撫でたり触ったりする習慣がある飼い主は、異常に気付きやすいでしょう。

早めに対応すれば、予後も良好であることが期待できます。

乳腺腫瘍

ネコ

乳腺腫瘍は乳房の組織の一部が腫瘍化することで、しこりや硬い腫れの症状があらわれます。避妊手術をしていない雌犬や雌猫が発生しやすいのが特徴です。

犬や猫の乳腺腫瘍は良性である場合が多く、早めに切除すれば完治が可能です。ただし、悪性であれば進行が早く命を落とす危険性もあるため、早期発見が重要となります。

この腫瘍は触診で気付くことが多く、日常的に乳房周りをチェックすることで早い段階で発見することができます。

初期の治療次第で良好な結果を得られるかが変わってくるため、避妊手術をしていない場合は、特に日頃から注意深く観察しておくことが大切です。

口腔内腫瘍

動物の口腔内腫瘍では口臭や出血のほか食べ物を口に入れたがらないなどの症状が見られます。

口腔内は目に見える部位であるため、ペットが食事をする際などに異常が見られた場合、確認して早期に発見できる場合があります。

また、定期的な歯のケアや獣医師による検診も、症状を早めに発見する機会を増やすことにつながるでしょう。

ただし、口腔内腫瘍はほかの口腔内疾患と症状が似ているため、明確に腫瘍と判断できなければ診断するのが難しいケースがあります。

信頼できる獣医師のもと、注意深く視診や触診を行ったうえで、正確な診断を受けることが重要です。

リンパ節の腫瘍

リンパ節の腫瘍は、リンパ球と呼ばれる身体の免疫細胞が腫瘍化したものです。

首や脇、足の付け根などのリンパ節が腫れるため、触れると違和感を覚えやすく、早期に発見できる場合があります。

しかし、腫瘍が一箇所のみに発生した場合も、発見された時点ですでにリンパ腫の細胞が全身にまわってしまっていることが少なくありません。

治療ではリンパ腫の細胞をいかにしてゼロにするかがカギとなるため、症状の早期発見が不可欠です。

日常的にペットを撫でる際や、健康診断の際に獣医師が触診することで発見できる場合もあるため、定期的にチェックを行うようにしましょう。

飼い主が腫瘍にいち早く気付くためのポイント

ペットを飼う家族・愛犬家・犬を飼う飼い主

ペットの健康を守るためには、飼い主が日々の様子を注意深く観察し、異変に気付くことが重要です。

ここでは、腫瘍を早期発見するための習慣や注意すべきポイントを具体的に解説します。

日頃のスキンシップを大切にする

日常的にペットとスキンシップを取ることで、身体の異変を早期に発見できる可能性が高まります。

例えば撫でたり抱っこしたりする際に、しこりや腫れ、硬さに気付くことがあります。

首や脇、足の付け根といったリンパ節周りを含め、全身を優しく触ることを習慣づけるとよいでしょう。

また、スキンシップを通じてペットの普段の身体の状態や反応を知っておくことで、小さな異変にも気付きやすくなります。

スキンシップは健康チェックだけでなく、ペットとの信頼関係を深めるためにも役立つため、日々の生活に取り入れていきましょう。

定期的に検診を受ける

獣医と飼い主

動物病院での定期検診によって、飼い主が気付けない初期段階の腫瘍を発見できる可能性が高まります。

健康診断では触診・体重測定・血液検査・レントゲン検査・超音波検査などの手段を用いて、体内に異常がないか詳しく調べます。

特に高齢のペットや腫瘍リスクの高い犬種・猫種では、半年から一年に一度の検診を受けることがおすすめです。

獣医師による定期的なチェックは、腫瘍を含むあらゆる病気の早期発見に役立ち、治療の選択肢を広げることにつながるでしょう。

定期的に病院で診てもらう習慣をつけることが、ペットの命を守る第一歩です。

普段と違う様子が見られたら受診する

ペットに普段と違う様子が見られたら、早めに動物病院を受診することが重要です。

例えば、食欲の低下・元気がない・触られることを嫌がる・よだれや出血が増えるといった変化は、腫瘍の初期症状である可能性があります。

また、体重の減少や皮膚の異常、しこりが見られる場合も注意が必要です。

ペットは自身の不調を言葉で伝えることができません。もし不調を放置した場合、腫瘍の進行が進み治療が手遅れになることも十分ありえます。

飼い主が日々の生活での変化を細かく観察し、小さな兆候でも獣医師に相談することが、腫瘍の早期発見につながります。

動物病院のがん治療費の相場

動物病院で猫の顔を診察する獣医師

動物病院でのがん治療は、治療内容や使用する医療設備により費用が大きく異なります。

手術や放射線治療などの高度な医療は、まとまった費用が必要になることが一般的です。また、治療後の経過観察や検査にも継続的な費用がかかる可能性があります。

治療費の目安として乳腺腫瘍の手術は1回あたり100,000~200,000円(税込)程度、抗がん剤治療は1ヶ月あたり50,000~100,000円(税込)程度、放射線治療は全体で500,000~1,000,000円(税込)程度かかることがあります。

これらは治療の種類や範囲、病院によって異なるため、かかりつけの獣医師に相談することがおすすめです。

まとめ

シェルティ

動物のがん治療は、早期発見と適切な治療法の選択がカギとなります。

日頃のスキンシップや定期検診を通じて異変に気付き、迅速に対応することが、ペットの健康を守るために必要です。

大切な家族であるペットのために、日々のケアと獣医師への相談を怠らないよう心がけましょう。

参考文献