ペットホテルは、飼い主さんが出張や旅行などで家を開ける際に、大切なペットを預けられる場所です。
安心してペットを預けられる場所ですが、いくつかのリスクもあります。その一つが感染症のリスクです。
複数のペットが集まるため、1頭でも感染症にかかっていると、ほかのペットに感染症がうつってしまう可能性がありトラブルになりかねません。
感染症によるトラブルを防ぐためには、事前の感染症対策、または感染症にかかっていないかのチェックが必要です。
今回はペットがかかりやすい感染症に関する情報のほか、ペットを預ける際に注意したい点や対策方法、ペットホテルを選ぶ際のポイントについてご紹介します。
ペットの感染症について知識を深めることで、気持ちよくペットホテルを利用するための助力になれば幸いです。
ペットホテルでは感染症に注意が必要
ペットの感染症は、ペットのくしゃみなどでウイルスが飛散することで感染が広がる飛沫感染や、糞尿から感染するものなど種類がさまざまです。
ペットホテルではさまざまな種類のペットたちが同じ室内で1日を過ごします。1頭が感染症にかかっているとほかのペットにうつってしまう可能性も否定できません。
ペット1頭ずつ性格や育ってきた環境が異なるため、それぞれがなるべく落ち着いて生活できるように、ペットホテルでは寝床や食事スペースとして1頭ごとにケージが設けられています。
しかし、狭いケージのなかで1日を過ごすのはペットにとって相当なストレスがかかるため、食事や睡眠時間以外はペットたちが自由に過ごせるフリースペースを設けている施設もあります。
自由に動けるスペースでは当然ほかのペットと触れ合うこともあるでしょう。
この環境が決して悪いわけではありません。ですが、ペットホテルに預ける際は感染症に感染するリスクがあるということを頭に入れておくと、今後利用する際の感染症対策に役立つでしょう。
ペットホテルでかかる可能性がある感染症の種類
ペットホテルでかかる可能性のある感染症の種類は以下のとおりです。
- ノミ・ダニを介して感染する病気
- ワクチンで予防できる病気全般
ペットがかかる可能性のある感染症として、発熱や消化器症状をともなう重症熱性血小板減少症候群や、発熱や身体の痛みが発現するバベシアなど、ノミやダニが原因の感染症があります。
ペットたちが使用する毛布やカーペットなどにノミやダニが付着していると、ほかのペットたちにも広がってしまうリスクがあるので注意してください。予防対策としてはノミやダニのいない環境づくりが大切になるので、施設内の清掃が行き届いた清潔感のあるペットホテルを選ぶようにしましょう。
またワクチンで予防できる感染症としては、犬の場合は狂犬病・犬パルボウイルス・犬伝染性咽頭気管炎、猫の場合は猫伝染性鼻気管炎・猫汎白血球減少症などが挙げられます。
感染症の種類やペットの大きさによって有効免疫期間は異なりますので、継続して効果を得るためにも、ワクチン接種を受けるタイミングはしっかりと確認しておきましょう。
感染症をうつしたりうつされたりしないためにも、定期的なワクチン接種が有効です。
ペットホテルで感染症にかかった際の対処方法
帰宅後にペットの異変に気が付いた場合は、ただちにかかりつけの動物病院へ受診しましょう。
その際はペットの保険証・健康診断書(直近のもの)・ワクチン証明書などのほか、あればペットホテルでの過ごし方がわかる記録を持参できるとよいです。
ペットホテルでの記録とは日記のようなもので、食事の時間や散歩・入眠の時間などが記載されており、どのような過ごし方をしていたかが明確になることで感染経路がみえやすくなります。
発症までの期間は感染症の種類によって異なりますが、まずはペットホテルから帰宅後の少なくとも1週間は、ペットにいつもと変わった様子がないかこまめに健康状態を確認してあげましょう。
感染症をうつさないための対策
ペットが感染症にかかってしまっては、ペットもかわいそうですし飼い主さんも苦しい思いをするでしょう。また、なかには人間に感染してしまう感染症もあるため、注意が必要です。
ペットホテルで感染症が蔓延してしまわないように、飼い主さんは日頃からペットの感染症対策を徹底しておきましょう。
ワクチン接種を済ませる
下記のような感染症はワクチン接種で予防できます。
犬の場合
- 狂犬病
- ウイルス性鼻気管炎
- 伝染性肝炎
- パルボウイルス感染症
猫の場合
- 猫伝染性鼻気管炎
- 猫汎白血球減少症
- 猫カリシウイルス感染症
- 猫白血病感染症
- クラミジア感染症
ワクチン接種は感染症予防対策として有効にはたらきます。
感染が確認されたペットの汚物に触れさせないことも予防策として大前提にありますが、くしゃみや咳などの飛沫による感染も考えられるため、ワクチン接種が大切です。
ワクチンは抗体が消失してしまわないよう、継続的に接種を受けることで免疫を維持する効果が期待されています。接種時期はペットの健康状態や大きさによっても変わりますので、かかりつけの獣医師に相談するとよいでしょう。
ワクチン接種を行ったことが証明できる注射済票は、ペットホテルを利用する際にも提示を求められるケースがほとんどなので、忘れずに持参しましょう。
ノミ・ダニがいないかチェックする
ペットにノミやダニが寄生すると、アレルギーによる皮膚炎を発症する可能性があります。また、ノミやダニが媒介する感染症にかかるリスクもあるでしょう。
特に、ダニの媒介による感染症は人間にうつることもあります。重症熱性血小板減少症など命を落とす可能性のある重篤な感染症を発症するケースもあるため注意が必要です。
ペットにノミやダニが寄生しないようにするためには、生活環境を整えてあげることや日々の毛のお手入れ・適度なシャンプーが欠かせません。
キャンプなどアウトドアレジャーをされるご家庭では、ペット用の駆除剤もありますので活用してみてはいかがでしょうか。
また、万が一ペットの身体にノミやダニを見つけた際は、アルコールを湿らせた布で優しく包むように取り除いてあげましょう。
ピンセットでも取り除けますが、ペットの身体に付着したままノミやダニが潰れてしまうことで皮膚トラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。
ペット自身で除去することは難しいため、飼い主のこまめなチェックがより効果が期待できる予防策になります。
動物病院で健康診断をしておく
動物病院の健康診断でペットの健康状態を知っておくことも感染症対策のひとつとなります。
動物病院の健康診断では主に以下の検査が行われます。
- 身体検査
- 尿・糞便検査
- 血液検査
- レントゲン検査
- 心電図・超音波検査
定期健診になると上記より項目が少なく費用も安く収まります。すべての病気が必ず見つかるというわけではありませんが、健康診断を行うことで病気や感染症の早期発見につながるのは事実です。
感染症以外のトラブル
ペットホテルにペットを預ける際は、感染症以外にも以下のようなトラブルが起こる可能性があります。
- 吠える・噛みつくなどの問題行動
- 体重が落ちる
- 怪我
- 脱走
トラブルの原因になりえることなど詳しくお伝えしていきます。
吠える・噛みつくなどの問題行動
ペットが吠えたり噛みついたりするのはしつけが影響している場合もありますが、慣れない環境で過ごすストレスから、普段穏やかな性格のペットでもこういった行動をしてしまうケースは少なくありません。
また、散歩時間が極端に短い・小さいケージに長時間閉じ込められるといった、ペットホテルの環境の悪さが影響している可能性もあります。
そのため、ペットホテルを選ぶ際は料金も気になるところですが、ペットに対してどのような対応をしてくれるのかなどサービスの内容も重視しましょう。
体重が落ちる
ペットホテルから帰宅後に体重が落ちる場合は、ストレスも考えられますが、ほかにもペットホテルでの食事が合わなかった・足りなかった可能性もあります。
預けている間の食事についても、ペットが食べられそうか嫌いなものはないか、飼い主の方で事前に確認しておきましょう。
ペットホテルのなかには食事の持ち込みが許可されているところもあるので、普段から好んで食べているものがあれば持参するのもおすすめです。
怪我
ペットホテル滞在中の怪我も実は少なくないトラブルのひとつです。ペットが滞在中に怪我をするのは、スタッフの目が行き届いていないという管理上での問題も考えられます。
スタッフの人数に対して預けられるペットの数が多ければ多いほど、ペット1頭ごとへの目も届きにくく、知らぬ間に怪我をしていたといったトラブルが起こりやすいです。
怪我のようなトラブルはケージのなかにいるときよりも、ペットが自由に動けるスペースで起こることがほとんどです。
預けている間のペットの見守りの体制については、事前にスタッフへ確認しておきましょう。
また、預ける前に見学を受け付けてくれるペットホテルもあるので、どのような対策が取られているのか自分の目で確かめておくのもおすすめです。
脱走
脱走は重大な事故になりえるため起きてはならないことです。鍵の閉め忘れやペットが簡単に飛び越えられてしまうような高さのケージなど、ペットホテルの管理の甘さが原因となります。
こうした悲しい事故を防ぐためにも、預ける前にペットホテルを見学し自分の目でも安全確認を行うことが重要です。
大事なペットの命を預けるわけですから、きちんと環境が整ったペットホテルを探せるとよいでしょう。
ペットホテルを選ぶときのポイント
ペットホテルを選ぶ際にまず重視してほしいのが、その施設が「第一種動物取扱業(保管)」の免許を取得しているかどうか、についてです。
第一種動物取扱業者は、施設の出入り口など利用者の目につきやすい場所に、免許を取得していることが明確にわかるように提示しています。ほかにも、ペットホテルのホームページに記載している施設もあるでしょう。
ペットを預ける前に事前に確認するようにしましょう。
ほかにも、ペットホテルを選ぶときに参考にしていただきたいポイントについて、以下で詳しく解説します。
衛生管理が行き届いているか
清潔な環境が維持できているペットホテルでは、迅速な汚物の処理はもちろんのこと、時間を決め定期的に清掃・消毒が行われています。
こまめな消毒は害虫の予防にもなるため、感染症の蔓延も防ぐことが可能です。
衛生管理が行き届いていないペットホテルはトラブルが起こりやすい傾向にあるので、料金だけではなく衛生管理体制も確認しましょう。
清潔な環境を整えることはペットホテルの運営管理のなかでも重要視されることなので、どのように衛生管理を行っているか見学の際に直接スタッフに聞いてみるのもよいでしょう。
食事の管理がきちんとされているか
ペットは種類によって大きさがさまざまなので、ペットごとの体重に合わせた適正量の食事を与える必要があります。
これを怠ると急な体重減少や体調不良が起こりやすくなり、最悪の場合病気を発症してしまうケースもあるので注意が必要です。
ただし、慣れない環境で過ごすストレスから滞在中に食事を摂れなくなるペットも少なくありません。このような場合は、普段から食べ慣れているものや好んで食べているものがあるとよいでしょう。
ペットホテルによってはこのような事態を考慮し持ち込みを許可しているところも多くあります。
食事に関して不安なことがある際も、事前にスタッフと話をしておくと対応してもらえるので安心感につながるでしょう。
散歩や遊びの時間が確保されているか
ペットは長時間同じ場所に閉じ込められていると窮屈でストレスを感じやすくなります。そのため、散歩や遊ぶ時間を十分に確保してあげることが大切です。
また、散歩時の排泄がルーティンになっているペットはケージのなかでトイレができないケースもあります。
排泄を我慢させてしまうと病気につながるリスクもあるので、そういった事情も含めて1日のスケジュールを組んでもらえると、飼い主もペットも安心感をもって利用できるでしょう。
ワクチン接種が義務付けられているか
感染症対策として効果が期待できるワクチン接種は、ペットホテルに預ける際の必須事項となっていることがほとんどです。
ワクチン接種済みかつ有効免疫期間内であることが記載されている注射済票が提出義務となっているペットホテルであれば、感染症対策をしっかりしていることがわかり安心感があります。
証明書の準備など手間はかかりますが大切なペットの身を守る手段の一つです。ペットホテルに預ける際に、必要な書類などを確認して預け先を選ぶとよいでしょう。
なお、仔犬の預かりを行っているペットホテルなどの場合、必ずしもワクチン接種証明が必要ではない場合もあります。心配な場合は、預かり体制や衛生管理方法などを確認してから利用するとよいでしょう。
夜間もスタッフが常駐しているか
日中元気に過ごしていても、夜間に突然体調を崩してしまうペットも少なくありません。そのため、夜間でもスタッフが常駐しているペットホテルであれば緊急時の対応も速やかなので安心感があります。
なかには獣医師が常駐しており、緊急時はその場ですぐに診察ができるペットホテルもあるので、ホームページや見学時に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
ペットホテルに預けたことがきっかけで感染症にかかってしまうと、ペットの健康を損ねるリスクがあります。
ペットホテルを利用する際は、しっかりと感染症対策がされているかどうか事前に確認するようにしましょう。
料金が安いからといって、スタッフの人数が少ない・清掃が行き届いていない・必要な提出物が少なく預けやすいといったペットホテルは、どのような管理がされているか見えにくいため注意が必要です。
大切なペットがより安心感をもって過ごせるよう、飼い主さんが責任をもってペットを感染症から守ってあげましょう。
参考文献