犬が結膜炎になる原因と症状|治療法や予防法についても解説

犬が結膜炎になる原因と症状|治療法や予防法についても解説

結膜炎になると目に症状が現れるため、飼い主さんが気付きやすい疾患です。ある調査によると、結膜炎は犬がかかる眼科疾患のなかで多いという結果が出ています。特に、シー・ズーやパグ、キャバリアなどの短頭種は注意が必要です。

結膜炎は、目の充血・涙や目やにの増加などが特徴的な症状です。重症化すると失明する恐れがあり、一度失明すると視覚を取り戻すことは難しいとされています。

本記事では、犬の結膜炎について解説します。原因や症状だけでなく、治療法や予防法も触れるため、愛犬に結膜炎の症状が見られた場合に動物病院受診の目安となるでしょう。

大切な愛犬の健康を守る飼い主さんの参考になれば、幸いです。

犬の結膜炎の原因

考えごとをする若い女性

結膜炎は犬にとって辛い症状だけでなく、放置すると失明する恐れがあります。そのため、結膜炎を疑う症状に気付いたら早めに動物病院に相談することが重要です。

その主な原因は、以下のとおりです。

  • ウイルスや細菌による感染
  • アレルギー反応
  • 外傷や異物の混入
  • まぶたの病気
  • 眼の病気

これから一つずつ解説します。

ウイルスや細菌による感染

ウイルスや細菌などが目の粘膜に感染して結膜炎が起こることがあります。体調不良で免疫力が落ちている場合は注意しましょう。

また、東洋眼虫という目に寄生する寄生虫も原因となることがあります。東洋眼虫は、体長10〜15mmで白い色の寄生虫です。寄生虫の場合は除去すれば症状が落ち着くことが多いとされています。

アレルギー反応

結膜炎の原因の一つとして、アレルギー反応が考えられます。犬がアレルギー反応を起こす原因は、主に花粉・コナヒョウダニ・カビ・煙・ハウスダストなどです。

例えば、定期的に掃除をしていない環境で過ごしたり、煙草の煙の側にいたりすることが結膜に刺激を与える可能性があります。結膜炎はアトピー性皮膚炎を併発することもあります。

外傷や異物の混入

楽しいお散歩

ゴミ・塵・毛・シャンプーなどの異物混入や逆さまつ毛が角膜や結膜を刺激し、傷つける可能性があります。特に、短頭種は目の周りの毛が混入することがあるため、注意が必要です。

また、ほかの犬との接触による外傷も原因の一つとして考えられます。ほかの犬と喧嘩にならないように注意しましょう。

まぶたの病気

まぶたの病気や被毛・まつげの生え方に異常がある場合も結膜炎の原因となりえます。まぶたの病気に眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)や眼瞼外反症があります。

眼瞼内反症は、犬のまぶたが内側にめくれることによって、角膜・結膜などの眼球の表面や裏側を刺激する病気です。眼瞼外反症は、まぶたが外側にめくれて結膜が露出することでドライアイを引き起こす病気です。

いずれも痛み・かゆみ・不快感などの症状があります。眼瞼内反症の原因は、遺伝的要因・外傷・炎症などとされています。眼瞼内反症を発症しやすい犬種は以下のとおりです。

  • トイプードル
  • シー・ズー
  • パグ
  • ペキニーズ

突出した眼球や狭い鼻腔構造をもつ短頭種は、まつ毛が眼球に接触しやすいため、日頃のケアに注意が必要です。

眼の病気

もともとかかっている眼の病気の影響で結膜炎になる可能性があります。眼の病気とは、角膜炎・乾性角結膜炎(ドライアイ)などです。

ドライアイは、眼の表面を覆う涙の膜の減少により起こり、短頭種で目が大きい犬はドライアイになりやすいとされています。自己免疫異常が原因でドライアイになることもあります。

ドライアイは放置すると角膜潰瘍につながるため、早期治療が必要です。眼の病気以外でも、副鼻腔炎や体内の免疫バランスの崩れ、遺伝的な要因が結膜炎に関係する場合もあります。

犬の結膜炎の症状

犬(動物・ペット)の診療をする女性の獣医

まぶたの内側と眼球の外側を覆う白い膜(結膜)が炎症を起こす症状を結膜炎といいます。目をよくこする・目の充血やまぶたの腫れ・涙や目やにが増えるなど、少しでも当てはまる場合は、動物病院を受診し早期治療が重要です。

結膜炎は、犬にとって単に不快感を覚える症状というわけではありません。長期間続く不快感や痛みがストレスとなり、食欲不振や活動量の減少など、健康状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

動物は、自分で症状を訴えることができません。症状が出ているときにはすでに悪化しているという可能性もあるため、注意が必要です。

目をよくこする

目をこするしぐさを見せたら注意が必要です。自分で目を引っかいてしまうことで、眼球を傷つけたりばい菌が侵入したりする恐れがあります。その影響で、目やにや結膜の炎症が見られるケースがあります。

前足で眼をこすったり床や壁に眼を擦り付けたりする行動の後、目が開けにくそうな様子が見られたら動物病院を受診しましょう。

目の充血やまぶたの腫れ

いぬ

白目の充血や白目がたるんでいるように見えるくらいのまぶたの腫れなどの症状が出現したら、結膜炎の症状かもしれません。重度の結膜炎の場合、裏返したまぶたまで腫れていることがあります。

腫れによって眼が開きにくくなり、いつもよりも眼が細く見えるのが特徴の一つです。正常な状態では、眼は透明で血管はほとんど目立ちません。

白目に少しでも充血が見られた時点で動物病院に相談すると、早期発見・早期治療が可能になります。

また、眼の表面の乾燥の影響で明るさや光の反射を失うと、濃い黄色や灰色の分泌物が見られます。悪化すると、角膜の損傷や失明の恐れがあるため注意が必要です。

涙や目やにが増える

結膜炎にかかると、涙や目やにが増えます。眼の周りに少量の目やにが付く程度なら様子を見ましょう。透明・薄い白っぽい目やになら生理的な範囲とされています。

しかし、目やにの量が増える・膿のように黄色や緑色の目やにが出る・不快な臭いがする・ネバネバするなど、いつもと目やにの状態が異なる場合は注意が必要です。

目の周りの毛が濡れたり固まったりしているかもしれません。ウイルスや細菌が眼に入った影響で、それを排除しようとする免疫反応の可能性があります。

犬の結膜炎の診断方法

獣医さんと飼い主

結膜炎はさまざまな原因により引き起こされる眼の病気です。診察時の犬の状態を診察するだけでなく、普段の様子や症状などの情報も獣医師の診断には必要です。

結膜炎の原因や程度を把握するために、フルオレセイン検査・スリットランプ検査・シルマーティア検査・眼圧検査・細菌やアレルギー検査が必要になることもあります。

獣医師は、検査結果をもとに結膜炎の治療方針を決めます。症状の程度によっては定期的に検査を行い、治療の効果や回復状況を確認することも必要です。

視診

結膜炎の診断には視診が必要です。獣医師は、犬の様子・体温・息づかい・心拍数などから全身状態を確認します。

そのうえで、目の充血・腫れ・涙や目やになどの分泌物の量や質を確認します。視診のチェックポイントは以下のとおりです。

  • 目やにが透明〜白色か黄色から緑色か
  • 涙の量が少ないか多いか
  • まぶたが腫れていないか
  • 結膜の色は赤く充血していないか
  • 目を前足でこすったり床にお顔をこすりつけたりしていないか
  • 角膜が濁っていないか

目やにや涙などの分泌物の臭いも診断に必要な情報です。

フルオレセイン検査

角膜の状態を確認するために、フルオレセイン検査を行います。目の表面に染色液を垂らして、角膜に傷や潰瘍がないかを調べることが可能です。

使用するフルオレセイン染色液は、角膜上皮の欠損や上皮の細胞同士の接着が弱いところに浸透する特徴を持ち、青いライトを当てると染まった部分が黄色く光ります。

傷ついた角膜を調べるだけでなく、涙を染めることによって涙の通り道(鼻涙管)や涙の層が正常かを確認することも可能です。

スリットランプ検査

ペットに関わる仕事をする男女

スリットランプ(細隙灯)検査は、目に光を当てて検査を行います。広い光を使うと前眼部(眼瞼・瞬膜・結膜・角膜・強膜・虹彩)、細いスリット光を使うと中間透光体(角膜・前眼房・水晶体・硝子体)の検査が可能です。

ブルーフィルターを使用するとフルオレセイン染色の発色を行えるため、角膜潰瘍の評価にも使用されます。角膜潰瘍の傷の深さ、ぶどう膜炎に見られる炎症徴候、水晶体の異常など、目の構造的な異常や炎症の確認ができる検査です。

シルマーティア検査

シルマーティア検査(シルマー涙液試験)では、目の表面にある涙の量を測定します。目の表面は、涙の膜によって乾燥や細菌などの刺激から保護されています。

そのため、涙の量を測定することで、ドライアイや涙腺機能の異常を調べることが可能です。試験紙を目の下瞼の内側に軽く挟み、犬が目を閉じた状態で一定時間待ち、試験紙が涙で濡れた長さを測定します。

ドライアイや免疫異常などの病気では、涙の量が減少します。

眼圧検査

目の内部の圧力(眼圧)の状態によって病気を診断します。眼球が眼圧を保つ役割の房水という液体を測定する検査です。

例えば、眼圧の重度の上昇がある場合は緑内障を疑います。眼圧計は痛みを伴う可能性があるため、点眼麻酔を使用する必要がある検査です。

細菌やアレルギー検査

細菌を特定するために目やにを綿棒で拭い、薬剤感受性試験(培養検査)を行います。細菌によって効果のある抗生剤が異なるため、治療方法の選択に影響を与える検査です。

また、塵やゴミなど、アレルゲンを特定するためにアレルギー検査や血液検査が行われる場合があります。

犬の結膜炎の治療法

涙やけ

結膜炎は原因によって適切な治療を行うことが重要です。原因別の主な治療法は以下のとおりです。

  • ウイルス・細菌感染:抗菌薬・点眼薬の使用
  • 寄生虫感染:寄生虫除去・駆虫剤の使用
  • アレルギー反応:点眼薬の使用
  • 異物の混入・外傷:洗浄後異物除去・消炎剤や抗菌剤の点眼薬・眼軟膏の使用
  • 眼瞼内反症:点眼薬の使用・手術
  • 目の病気:点眼薬の使用

症状や原因に合った点眼薬を使用して治療します。治療に使う主な点眼薬は、以下のとおりです。

  • 抗菌作用を持つ抗生剤の入ったもの
  • 炎症をしずめる薬でステロイド系・非ステロイド系
  • アレルギー症状を抑える抗ヒスタミン作用のあるもの

結膜炎は、不快感や痛みから犬が目をこすることで角膜が傷つき、慢性化する可能性があります。そのため、早期の適切な対処が重要です。

眼瞼内反症が原因で重度の場合は、下まぶたの一部を切除して内反したまぶたを正常位置に戻すHots-Celsus変法という外科手術が必要になることがあります。

対応できる動物病院は限られているため、注意が必要です。自宅では、目元周りを清潔に保つケアを心がけましょう。獣医師から正しい清掃法の指導を受け、日常的にケアを行うことが重要です。

犬の結膜炎の治療期間

病院予約

治療期間は、犬の健康状態や結膜炎の原因によって異なります。症状が軽い場合は、目を清潔にすれば1週間程度で自然に治癒するケースがあります。

しかし、素人判断は危険です。原因を適切に治療しないと治らない場合も多いです。症状が軽く見えても悪化する恐れがあるため、動物病院で獣医師の診察を受けましょう。

症状によっては、定期的な通院が必要になることがあります。重症化・長期化させないためには、早期治療が重要です。また、治療完了後も、再発防止と健康維持のために定期的な検診を心がけましょう。

犬の結膜炎の予防法

犬のケアをする女性

基本的な予防法として、定期的に動物病院で目の検査を受けることが挙げられます。自宅では、愛犬の目元を清潔に保つよう心がけましょう。

デリケートな皮膚を傷つけないよう、優しくケアすることがポイントです。水で湿らせたコットンやガーゼを使って、目頭から目尻に向かって丁寧に拭きましょう。

定期的にトリミングを利用することも効果的です。特にトイプードル・シーズーなど長い毛が特徴の犬種の場合は、目の周りの毛を短くカットし、毛が目にかからないようにすることが大切です。

シャンプー時にも、泡が目に入らないように注意しましょう。また、愛犬の目に埃や花粉などが侵入しないように、自宅ではこまめに掃除をして環境を整えましょう。

栄養バランスの取れた食事で免疫力を高め健康な身体をサポートすることも、飼い主さんが愛犬にできる大切な役割です。

まとめ

お座りするトイプードル

結膜炎の症状は、わかりやすい場合が多いです。しかし、結膜炎の症状が悪化するのが早く、不快感や痛みなどのストレスから愛犬の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

放置すると失明につながります。結膜炎の症状に気付くには、日々スキンシップを行いながら、普段の愛犬の様子や行動に注意することが重要です。

また、感染症が原因の結膜炎の場合は、ほかのペットや人間へ感染するリスクがあるため注意しましょう。

定期的に愛犬の健康診断を受けて目のチェックを受けることはもちろん、愛犬の目にいつもと異なる目やにや充血・目をこすりつける行動がある場合は、できる限り早めに動物病院を受診しましょう。

結膜炎予防には、愛犬が過ごす環境を清潔にし、ストレスがかからない快適な生活環境を提供することも重要です。

参考文献