エプリスとは、犬の歯肉部に発生する腫瘤の一種(歯肉腫)です。エプリスに限らず、犬の口腔内腫瘍は初期症状に乏しいことが多く、気付きづらいことが多く、しこりが大きくなるほど治療が困難になりやすいため、早期発見が重要です。日頃から歯のケアを習慣づけておく、口周りを触ることに慣れさせておくことが、異常の早期発見につながるでしょう。
本記事では犬のエプリス(歯肉腫)について以下の点を中心にご紹介します。
- 犬のエプリス(歯肉腫)とは
- 犬のエプリス(歯肉腫)の診断と治療法
- エプリス(歯肉腫)の予防と犬の口腔内腫瘍
犬のエプリスについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
犬のエプリス(歯肉腫)とは
- エプリスとはどのような病気ですか?
- エプリス、またの名を歯肉腫とも呼ばれるこの疾患は、犬の歯肉部に発生する腫瘤の一種です。犬の口腔内腫瘍の約3割を占めるとされ、歯肉が炎症を受け続けることによって発生します。
エプリスには、非腫瘍性の炎症から生じる炎症性エプリスと、良性腫瘍からなる腫瘍性エプリスがあります。歴史的には、線維性、骨性、棘細胞性エプリスと分類されていましたが、棘細胞性エプリスはその浸潤性のため、現在では別の腫瘍として扱われています。これらの腫瘍は見た目には歯肉と同色で、歯肉を内側から押し上げるように成長する特徴があります。
- エプリスにはどのような症状がありますか?
- エプリスは犬の歯肉に発生する腫瘍で、初期段階では目立った症状を示さないことが多いようです。主な症状としては、歯肉部に腫れやしこりが形成されることですが、これが小さいうちはほとんど自覚症状がありません。腫瘤が大きく成長するにつれて、涎の増加、口臭の悪化、時には出血を伴うこともあります。
また、食事の際に食べ物を咀嚼することが困難になることもあります。特に棘細胞腫性エナメル上皮腫(棘細胞性エプリス)は成長が早く、手術で切除しても再発しやすく、進行すると周囲の組織や骨にまで影響を及ぼすことがあります。そのため、早期発見と適切な治療が重要となります。
- エプリスの原因を教えてください。
- エプリス、または歯肉腫は犬の歯肉部に発生する腫瘤で、その発生原因は解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。特に高齢犬に多く見られ、長期間のホルモンの変動、歯垢の蓄積、歯石、また歯肉炎や歯周病などの歯周病状が刺激となり発症することが示唆されています。これらの因子は歯肉の炎症を促し、異常な細胞の成長を引き起こす可能性があります。
また、棘細胞性エプリスには遺伝的要因も関与しており、特定の犬種で遺伝的な傾向が見られることがあります。これらの腫瘍の種類によって成長の速度が異なり、一部のタイプは進行が早いため、早期発見が重要です。
犬のエプリス(歯肉腫)の診断と治療法
- 犬のエプリスはどのように診断されますか?
- 犬のエプリスの診断は、その外観だけでは判定が難しいため、病理検査が必須となります。エプリスと見られる腫瘤が発見された場合、最初に行われるのは通常、X線検査やCT検査です。これにより腫瘤の位置、大きさ、および周囲の組織への影響を評価します。
その後、より正確な診断をえるために、患部から細胞や組織のサンプルを採取する生検が行われます。このサンプルは病理学的に分析され、エプリスかそれとは異なるほかの疾患かを明らかにします。例えば、非腫瘍性の良性病変や棘細胞腫性エナメル上皮腫のような悪性腫瘍など、見た目だけでは区別がつかない場合が多いため、病理診断が重要です。
- 犬のエプリスの治療方法を教えてください
- 犬のエプリス(歯肉腫)の治療方法は、主に外科的切除によるものです。この手術では、腫瘤を可能な限り広範囲に摘出することが求められます。特に線維性や骨性エプリスのような良性の腫瘤でも、歯槽骨に深く根付いている場合が多く、摘出が難しいことがあります。これが再発のリスクを高める原因となります。
また、棘細胞腫性エナメル上皮腫(棘細胞性エプリス)のように浸潤性が高い場合には、治療がさらに複雑になり、下顎骨や上顎骨を含む広範囲の切除が必要になることもあります。
外科的手法としては、電気メスやレーザーが使用されることもありますが、症例によっては化学療法や放射線治療が補助的に用いられる場合もあります。どの治療法も、エプリスの種類、大きさ、位置、および腫瘍の悪性度によって異なるため、定期的なフォローアップが重要です。
- 犬のエプリスは再発しやすいですか?
- 犬のエプリス(歯肉腫)は再発しやすい病変の一つです。特に良性である線維性エプリスや骨性エプリスも、局所的に摘出した場合、約10%の確率で再発するとされています。再発の理由としては、これらの腫瘤が歯槽骨に深く付着していること、および手術時に切除が難しいためです。
さらに、棘細胞腫性エナメル上皮腫(棘細胞性エプリス)のように浸潤性が強いタイプは、周囲の組織に広がりやすく、局所摘出では再発が頻繁に発生します。
このため、これらの腫瘍は根治を目指す場合、広範囲の組織を含めた大がかりな手術が必要になることがあります。エプリスの治療後は定期的なフォローアップが必要で、再発の早期発見と対処が鍵となります。
エプリス(歯肉腫)の予防と犬の口腔内腫瘍
- 犬のエプリスは予防できるのでしょうか?
- 犬のエプリスの予防は一定の対策を講じることでリスクを低減させることが可能とされています。エプリスは歯垢の蓄積や歯石、歯肉炎、歯周病など、口腔内の環境悪化が発生原因となることが多いため、定期的な歯の清掃が予防には欠かせません。
具体的には、犬用の歯ブラシと歯磨き粉を使用しての日常的な歯磨きや、獣医師による定期的な口腔検査とプロフェッショナルな歯石除去が推奨されます。これらの対策により、歯肉炎や歯周病の発生を抑え、エプリスのリスクを減らすことが期待できます。また、高齢犬に多いことから、若いうちからの口腔ケアが特に重要です。
- 犬の口腔内腫瘍の種類を教えてください
- 犬の口腔内に発生する腫瘍にはさまざまな種類があります。これらの腫瘍は良性と悪性のものに大別されます。
良性腫瘍
1.歯肉腫(エプリス):歯肉に発生し、転移はせず、通常は外科的切除で治療可能とされています。
2.棘細胞腫性エナメル上皮腫:歯肉に発生し、顎の骨に浸潤することがあり、切除後の再発が多いようです。
悪性腫瘍
1.悪性黒色腫(メラノーマ): 口唇、歯肉、舌、口腔粘膜に発生し、リンパ節や肺への転移が多いようです。
2.扁平上皮癌: 口唇、舌、歯肉、扁桃に発生し、転移や骨への浸潤があり、特に舌や扁桃に発生した場合は悪性度が高いです。
3.線維肉腫:歯肉や口腔粘膜に発生し、骨への浸潤が見られることがあります。
これらの腫瘍は犬の口腔内の第4位の一般的な腫瘍発生部位に位置づけられ、全体の約3%から6%を占めています。特に悪性腫瘍のなかで、悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫は犬の口腔内悪性腫瘍の大部分を占めています。これらの腫瘍の診断と治療には注意深いアプローチが必要であり、定期的な口腔内検査が重要です。
まとめ
ここまで犬のエプリスについてお伝えしてきました。犬のエプリスの要点をまとめると以下のとおりです。
- 犬のエプリス(歯肉腫)とは
- 犬のエプリス(歯肉腫)の診断と治療法
- エプリス(歯肉腫)の予防と犬の口腔内腫瘍
犬のエプリス(歯肉腫)の正しい知識を持つことが大切です。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。