猫の呼吸が普段と違う、口を開けてハッハッと息をしているといった様子を見つけたときは、緊急性の高い状態かもしれません。猫の呼吸困難は短時間で悪化することもあるため、見た目の元気さだけで判断しないことが大切です。
この記事では、呼吸異常を見分けるポイントや考えられる原因、受診の目安、動物病院へ向かうまでの対応について解説します。
猫の呼吸が苦しそうなときの症状と考えられる原因

猫の呼吸異常に気づくには、呼吸数だけでなく姿勢や呼吸の仕方も確認する必要があります。ここでは、観察したいポイントと考えられる病気について解説します。
- 猫の呼吸が苦しそうかどうかは何をみて判断すればよいですか?
- 猫が安静にしているにもかかわらず口を開けて呼吸している場合は、呼吸困難を示している可能性があります。胸やおなかを大きく動かす、頭や首を前方へ伸ばす、横になれず伏せた姿勢や座った姿勢を続けるといった変化にも注意が必要です。
呼吸が速い、浅い、ゼーゼー、ヒューヒューなどの音がする、咳が出るといった症状も判断材料になります。さらに、舌や口の粘膜が青紫色になるチアノーゼがみられる場合は、血液中の酸素が不足している可能性があり緊急性の高い状態です。
猫は呼吸が苦しいとき、触られたり抱き上げられたりすることでさらに状態が悪化することもあります。苦しそうな呼吸がみられたら、必要以上に刺激せず動物病院へ連絡しましょう。
- 猫の呼吸が速い場合は注意が必要ですか?
- 安静時や睡眠時にも呼吸が速い状態が続く場合は注意が必要です。一般的に、落ち着いて休んでいる猫の呼吸数は1分間に15〜30回程度とされ、40回を超える状態が繰り返し確認される場合には異常の可能性があります。
呼吸数は、胸やおなかが上がって下がる動きを1回として数えます。30秒間数えて2倍する方法や、1分間そのまま数える方法がわかりやすいでしょう。猫が喉を鳴らしていると数えにくいため、眠っているときなどに測定するのがおすすめです。
ただし、運動直後や強い緊張、暑さなどでも一時的に呼吸数は増えます。安静にしても速い状態が続く、呼吸に力が入っている、口呼吸などほかの異常を伴う場合には、早めに受診してください。
- 呼吸が苦しそうなときに疑われる病気を教えてください
- 猫の呼吸困難を引き起こす病気は多岐にわたります。例えば、胸腔内に液体がたまる胸水や肺に液体がたまる肺水腫が代表的で、猫は心筋症などの心疾患に伴って、胸水や肺水腫が生じることがあります。
そのほか、猫喘息、肺炎などの呼吸器疾患、胸腔内の腫瘍、気胸、横隔膜ヘルニア、重度の貧血なども原因として挙げられます。鼻や喉など上部気道の閉塞、外傷、中毒、全身性の病気によって呼吸が乱れるケースもあるでしょう。
見た目だけでは原因を特定できず、原因によって必要な治療は異なるため、獣医師による評価が必要です。
- 熱中症やストレスによって呼吸が乱れることはありますか?
- 暑さや強い緊張、興奮によって一時的に呼吸が速くなることはあります。車内や高温の室内では体温が上昇し、パンティングのような呼吸がみられる場合もあるでしょう。
ただし、猫の口呼吸を「暑かったから」「緊張したから」と決めつけるのは危険です。心臓病や呼吸器疾患などが隠れている場合、強い興奮や緊張をきっかけとして呼吸困難が目立つこともあります。
涼しく静かな環境へ移しても呼吸が落ち着かない、胸やおなかを大きく動かして苦しそうに呼吸する努力性呼吸が続いている、口呼吸を続ける、ぐったりしているといった場合は、速やかに動物病院へ相談してください。
猫の呼吸が苦しそうなときの受診の目安

呼吸困難では短時間で状態が変化する可能性があります。ここでは、特に緊急性が高い症状や、受診を判断するポイントを解説します。
- どのような呼吸をしていたら動物病院を受診すべきですか?
- 安静時に口を開けて呼吸している、胸やおなかを大きく使って息をしている、首を伸ばして呼吸している、舌や口の粘膜が青紫色になっている場合は、緊急性の高い状態です。
横になれず座ったまま呼吸している、呼吸音が明らかに大きい、ぐったりする、倒れるといった症状も見逃せません。こうした呼吸困難が疑われる場合は、夜間や休日であっても救急対応が可能な動物病院へ連絡する必要があります。
呼吸数だけで緊急度が決まるわけではありませんが、安静時の呼吸数が普段より明らかに増え、30〜40回以上の状態が繰り返し確認される場合にも相談するとよいでしょう。
- 呼吸が速くても元気や食欲があれば様子を見てもよいですか?
- 心臓病などでは、安静時呼吸数の増加が心不全の早い段階でみられることがあるので、元気や食欲があるだけで問題ないと判断することはできません。普段より明らかに速い状態が繰り返される場合は、元気そうに見えても動物病院へ相談したほうがよいでしょう。
一方、遊んだ直後や強く緊張したときなどに一時的に速くなり、安静にすると普段の呼吸数へ戻る場合もあります。まず静かに休ませて再度測定し、異常が続くかを確認してください。
口呼吸や努力性呼吸、ぐったりするなどの症状を伴う場合は速やかな受診が必要です。
- 一度落ち着いたように見えても受診したほうがよいですか?
- 呼吸器疾患や心疾患では、症状が一時的に軽くなったように見えるケースもあるため、強い呼吸困難や口呼吸が一度でもみられた場合は、その後落ち着いて見えても動物病院へ相談することをおすすめします。
また、猫喘息では症状が発作的に現れることがあり、発作のない時間帯には普通に見えることがあるので、どのような状況で呼吸が苦しそうになって何分程度続いたかを記録し、判断に迷った場合は動物病院に相談するとよいでしょう。
猫の呼吸が苦しそうなときの対処法と動物病院で行うこと

呼吸困難が疑われる場合、できるだけ興奮させずに動物病院へ連れて行くことが重要です。家庭での対応と、受診後に行われる検査や治療について知っておきましょう。
- 動物病院を受診するまでに飼い主にできることはありますか?
- まず、猫を静かで過ごしやすい環境で、できるだけ刺激を減らすようにしてください。何度も抱き上げる、無理に姿勢を変える、口を開けて中を見る、水や食べ物を無理に与えるといった行為は控えましょう。
受診前に動物病院へ連絡し、口呼吸の有無、呼吸数、呼吸の仕方、いつから症状が出ているかなどを伝えてください。可能であれば、猫を刺激しない範囲で呼吸の様子を動画に撮っておくと診察時の参考になるでしょう。
- 呼吸が苦しそうな猫を動物病院へ連れて行く際の注意点を教えてください
- 呼吸困難が疑われる猫は、できるだけ興奮させずに移動させることが重要です。無理に抱きかかえてキャリーへ押し込むと呼吸状態が悪化する可能性があるため、可能であれば上部を取り外せるキャリーなどを利用すると負担を減らしやすくなります。
キャリーを布で部分的に覆うと周囲からの刺激を減らせる場合がありますが、通気を妨げたり熱がこもったりしないよう注意が必要です。車内も暑くならないよう調整し、安全性に配慮しながらできるだけ揺れの少ない運転を心がけます。
猫の呼吸状態が悪い場合は無理に移動を始める前に受診先へ電話し、運び方について指示を受けるとよいでしょう。
- 動物病院ではどのような検査を行いますか?
- 呼吸困難がある場合、処置や検査そのものが負担になるほど状態が不安定なケースでは、検査より先に酸素投与などによる安定化が優先されるケースがあります。
猫はストレスによって状態が急激に悪化することがあるため、無理な保定や検査を避けることが重要です。
状態が安定したら、聴診や血液検査、胸部X線検査、超音波検査などを組み合わせて原因を調べます。胸水が疑われる場合には、超音波などで確認しながら胸腔穿刺(きょうくうせんし)を行って液体を抜き、採取した胸水を調べることで原因の診断につなげることもあるでしょう。
心疾患が疑われる場合には心臓超音波検査などが検討され、病状によってはCTなどの画像検査が必要になることもあります。
- 呼吸困難がみられる場合の治療方法を教えてください
- 呼吸困難が強い場合には、まず酸素投与などによって身体への負担を減らし、そのうえで原因に応じた治療を行うのが一般的な流れです。
同じ呼吸困難でも治療方法は原因によって大きく異なります。胸水によって肺が圧迫されている場合には胸腔穿刺が検討され、心不全による肺水腫では、酸素投与に加えて利尿薬などが使用されることがあるでしょう。
猫喘息では、気道を広げる薬や炎症を抑える治療、肺炎の場合は細菌性やウイルス性、誤嚥性など原因に合わせた治療が選択されます。
編集部まとめ

猫の口呼吸や胸、おなかを大きく使う呼吸、首を伸ばした姿勢、舌や口の粘膜が青紫色になる変化は、緊急性の高い呼吸困難のサインです。原因には胸水や肺水腫、心疾患、猫喘息、肺炎、気胸などさまざまな病気が考えられ、心臓や呼吸器に異常がないか確認する必要があります。
苦しそうなときは無理に抱いたり食事を与えたりせず、できるだけ刺激を減らして動物病院へ連絡しましょう。
【参考文献】
