動物病院の歯科|診療内容や受診の目安、検査方法を解説!

動物の健康を守るためには、定期的な健康診断や予防方法の実施など早期の対応が欠かせません。そのなかでも見落とされやすいのは歯の健康です。

犬や猫をはじめとするペットにも歯科に関する問題はあります。歯科に関する問題を引き起こしてしまうと、全身の健康にまで悪影響を及ぼす可能性が高いため、歯のケアや治療を通じてペットの口腔内の健康と生活の質を保つことが大切です。

本記事では、動物病院の歯科における診療内容・受診の目安・実施される検査方法について詳しく解説します。

ペットの歯科に関する問題について知識を深めて適切なケアを行うことで、長期的なペットの健康をサポートする助力になれば幸いです。

動物病院の歯科とは?

ポメラニアン【生後約6か月・サル期】

動物病院の歯科は、歯・歯茎・口腔内の疾患に関する予防・診断・治療を行う、ペットの口腔内の健康を維持するための診療分野です。動物にみられる口腔内の疾患をいくつか挙げると、以下のとおりです。

  • 歯石や歯垢の蓄積
  • 歯周病
  • 歯の損傷
  • 口内炎
  • 歯肉腫
  • 嚢胞(のうほう)
  • 悪性腫瘍(扁平上皮癌・メラノーマなど)

このような口腔内の疾患は、自然に生息している動物よりも、ペットとして飼育されている動物の方が発生リスクが高いことが判明しています。その原因として考えられているのは、遺伝的要因・年齢・食生活による化学物質の影響です。

そのため、ペットとして飼育されている動物は、定期的に歯科検診を受けることが推奨されています。特に犬や猫を対象としていますが、その他のペットにも対応可能な動物病院の歯科もありますので、事前に調べることが大切です。

このように、ペットにも歯の疾患や問題が人間と同じように発生することがあります。ペットは言葉でコミュニケーションを取ることが難しいため、歯の疾患や問題の発生を発見するのが遅れたり、放置されやすかったりするため注意が必要です。

歯科治療は部分的なものから広範囲にわたる診療まで、ペットの歯科に関する問題の進行具合によって異なります。歯の疾患や問題が進行すると痛みを引き起こすだけでなく、全身の健康にまで悪影響を及ぼすため、動物病院の歯科健診を定期的に受診することが大切です。

歯科疾患や問題は人間と同じくさまざまな原因によって引き起こされるため、病気を予防する対策と早期治療が求められています。ペットの状態を観察する習慣を取り入れて、異常を感じた場合は速やかに動物病院を受診するよう心がけましょう。

動物病院の歯科の診療内容

獣医と犬40

動物病院の歯科では、さまざまな口腔内の問題に対応しています。具体的な診療内容は以下のとおりです。

  • 歯石取りなどの口腔ケア
  • 歯周病治療
  • 歯の欠けや折れなどの外傷への治療
  • 不正咬合の治療
  • 口腔内腫瘍の治療
  • 口内炎の治療

上記、6つの項目をそれぞれ詳しく解説します。

歯石取りなどの口腔ケア

歯石は、歯垢が硬化して歯に付着したもので、ペットにとっては一般的な口腔内の問題です。歯石が溜まると、歯周病や歯の喪失を引き起こすことがあります。

定期的に歯石を取り除くことは、ペットの口腔内の健康を守るために重要です。しかし、動物病院での歯石取りは通常、全身麻酔下で行われます。

麻酔をかけることで、ペットの不安や痛みを感じることなく歯のクリーニングを行うことができます。歯石を取り除いた後は、歯の表面を滑らかにして、再度歯石が付きにくいよう歯のクリーニングが行われることが一般的です。

歯のクリーニングには歯垢除去や歯周病予防も含まれるため、定期的に歯石取りを受けることが推奨されています。

しかし、歯石取りには全身麻酔を使用するためデメリットもあります。麻酔によって起こる、合併症・回復に時間がかかる・一時的な不調・アレルギー反応といった副作用です。

特に小型・高齢・健康問題のあるペットは、副作用や合併症のリスクが高まる傾向にあるため、事前の血液検査や心電図などを用いた健康チェックは欠かせません。

健康のチェックだけでなく、費用と時間を要する治療になります。入念に獣医師と治療のスケジュールや健康状態について相談することに留意しましょう。

副作用があることも踏まえて、歯石取りを行うことが大切です。

歯周病治療

獣医さんと飼い主

歯周病は、歯茎や歯を支える骨を含む歯周組織に炎症が起こる疾患です。歯周病が進行すると、歯茎の腫れ・出血・口臭・歯が抜け落ちることがあります。

歯周病は人間と同じようにペットにもよくみられる病気です。特に歯石が蓄積することで発症しやすくなります。

歯周病治療では、歯石の除去と歯茎の健康回復を目指してレーザー治療が行われます。より精密な治療を行えるようにマイクロスリープを使用し、ペットのストレスを減らせるとして注目されている治療方法です。歯周病が重度になる前に治療を行うことが重要です。

歯周病が重症化すると、抜歯が必要になることもあります。歯を保存できるよう、早期発見・早期治療に努めましょう。

歯の欠けや折れなどの外傷への治療

ペットの歯が欠けたり折れたりする原因はいくつかあります。遊びの際に衝突するような事故によるものや噛み合わせの問題によるものなどです。

歯の損傷は痛みを伴い、感染症のリスクが高まります。歯が折れた場合は、セラミック・抜髄根管充填・コンポジットレジンを用いて、折れた部分を修復する治療が行われます。

この治療方法は、治療後が自然で美しく仕上がることが特徴です。使用されている素材は耐久性が高く、長期的な使用にも向いています。

深刻な損傷がみられる場合には、抜歯となることもあるため、注意が必要です。外傷への治療後は、感染予防のために抗生物質が処方されることもあります。

不正咬合の治療

人を見つめているミニチュアダックスフンド

不正咬合は、歯の配置や噛み合わせが不適切な状態を指します。この問題は、遺伝や発達の過程で起こることがあります。

不正咬合を引き起こすと、食べ物をうまく噛めないだけでなく、歯の摩擦や歯周病を引き起こす原因にもなるため注意が必要です。

治療方法としては、歯を削ったり歯列矯正治療を行ったりします。歯列矯正治療では、適切な噛み合わせになるように、歯を整える手術が行われることがあります。

ご飯をうまく食べられていないペットは不正咬合の可能性があると留意しましょう。

口腔内腫瘍の治療

まず口腔内腫瘍とは、口の中に発生する腫瘍のことを指し、悪性と良性のものが存在します。

良性腫瘍には、歯肉腫・嚢胞(のうほう)があります。扁平上皮がん・肉腫・メラノーマは悪性腫瘍です。悪性腫瘍の場合は、転移しやすく全身の健康に大きな影響を与える可能性があります。

そのため、早急に診療と治療が必要となる病気です。口腔内腫瘍は、口臭・出血・食欲不振などの症状がみられます。

口腔内腫瘍が疑われる場合には腫瘍の細胞を小さく切り取って検査する生検、または腫瘍や異常な組織から細胞を採取して顕微鏡で観察する細胞診が行われ、良性か悪性かを検査します。悪性であった場合には、腫瘍の範囲や深さ、周囲への組織への影響や転移がないか画像検査(レントゲン・CT・MRIなど)によって検査する流れが一般的です。

口腔内腫瘍の治療方法には、外科治療・放射線治療・化学療法の3つがあります。良性腫瘍の場合には外科治療として、腫瘍の摘出手術が行われます。

手術中は血圧・心拍数・体温などをモニターしながら、動物の状態を確認して進行することが一般的です。
口腔内腫瘍は、早期発見・早期治療が生存率を大きく左右するため、定期的な検診が大切です。

口内炎の治療

犬用指歯ブラシで歯磨き

ペットも人間と同じように口内炎が発生します。口内炎は、歯茎やお口のなかの粘膜に炎症が起こる病気です。

痛み・口臭・食欲不振などの症状が現れる傾向にあります。原因は多岐にわたりますが、ウイルス感染・細菌感染・アレルギー反応などが考えられます。

治療方法は、炎症を抑える薬物療法が適用されることが一般的です。口内炎が発生している場所によっては、口腔内のクリーニングや歯周病治療が行われることもあります。

口内炎治療は痛みを軽減して、ペットが正常に食事できるようにすることが目的です。近年では、動物病院の歯科治療は進化していて、さまざまな新しい技術が導入されています。

例えば、レーザー治療や超音波スケーリングなどです。従来の手法に比べて痛みを軽減して、治療後の回復が早いメリットがあります。

レーザー治療は歯周病治療や口内炎の治療に使用され、炎症を抑えたり細菌の除去を効果的に行えたりすることが特徴です。

動物病院の歯科を受診する目安

動物病院に連れてこられた仔犬

動物病院の歯科を受診するべきタイミングは、いくつかあります。以下のような症状がみられた場合には、早急に動物病院に相談しましょう。

  • 口臭がひどい
  • 歯茎が赤く腫れている
  • 口から出血している
  • 食事を避けるもしくは食べるスピードが遅い
  • 歯が欠けているもしくは折れている
  • よだれが異常に出ている
  • 体重が減少している

上記はさまざまな病気の症状としてみられるものです。そのなかでも歯周病は、上記の症状がほとんど該当します。

ペットの様子に異変を感じたら、速やかに動物病院を受診しましょう。

動物病院での歯科で行う検査方法

犬に聴診器を当てる獣医さん

動物病院での歯科診療では、口腔内の健康状態を詳しく調べるためにいくつかの検査が行われます。動物病院での歯科で行う検査方法は以下のとおりです。

  • 口腔内の視診
  • 歯石や歯垢のチェック・歯周ポケットの測定
  • レントゲン検査

これらの検査方法により、ペットの口腔内の疾患を正確に診断して、適切な治療が可能です。

口腔内の視診

口腔内の視診は、問診と同時に行われることが一般的です。視診により、歯石や歯周病の兆候がないかチェックします。

ほかにも、歯の状態・歯茎の状態をみていきます。視診は麻酔がなくとも実施できる検査方法ですが、詳細な検査を行う場合には麻酔が必要となることに留意しましょう。

歯石や歯垢のチェック・歯周ポケットの測定

遠くを見ている柴犬

歯石や歯垢が蓄積している場合には、歯周ポケットの深さを測定することが重要です。歯周ポケットは、歯と歯茎の間にできる隙間を指しています。

この隙間が深くなるほど、歯周病が進行していると判断できます。口腔内の健康状態を知るうえでも、歯石や歯垢のチェックと歯周ポケットの深さを測定することは重要な検査方法です。

レントゲン検査

歯や歯茎の内部の状態を確認するために、レントゲン検査が行われることがあります。レントゲンでは、歯の根元や骨の状態を詳細に確認できます。

歯周病が進行している場合や、歯の根元に異常がある場合には早期発見に役立つ大切な検査方法です。

動物病院での歯科の予防とケア

ミニチュアダックスフンドを抱っこする女性2

ペットの歯科ケアは、健康状態を保つために欠かせません。歯石や歯垢が溜まりやすく、歯周病になりやすいことに対して、治療はリスクが伴うものもあります。

家庭での歯磨き・食事管理だけでなく、定期的に動物病院で口腔内のチェックを行うことが基本的な予防とケアの方法です。

清潔で健康な口腔内を普段の生活から保つには、歯磨きが効果的になります。ペット専用の歯ブラシと歯磨き粉を使用して、定期的に歯を磨く習慣を取り入れましょう。

また、乾燥したフードは歯垢が付きにくく、歯の健康維持に役立ちます。一方、やわらかいフードやおやつは歯垢が付着しやすいため注意が必要です。

歯の健康を保つペット専用のフード・デンタルガム・おやつも販売されているため、歯科ケアに特化したアイテムを活用することも有効な予防方法です。

デンタルガムやデンタルおやつは歯垢を除去する作用があり、食べるだけで歯の健康を守るサポートをしてくれます。

まとめ

ペットの犬

今回は、動物病院の歯科に関する診療内容・受診の目安・検査方法を解説しました。ペットの健康を守るためには、動物病院での歯科治療を受けることは欠かせません。

人間と同じように口腔内の環境を放置してしまえば、ペットも歯周病をはじめとした全身の健康にまで悪影響を及ぼす病気の発症につながります。むしろ、ペットの歯科治療は人間よりも大変で、危険性があることは否定できません。

また、自然に生息している動物よりも、ペットとして飼われている動物の方が歯科に関する問題を発症するリスクが高いことも判明しています。その理由として考えられているのはやわらかいフードやおやつ、化学物質を含んだ食材によるものです。

歯科ケアに特化したフード・デンタルガム・おやつ、歯みがきを習慣にしてペットの健康を保つよう心がけましょう。

定期的に動物病院の歯科を受診して、口腔内のチェックを受診することが大切です。ペットの歯科に関する問題に悩んでいる方の参考になれば幸いです。

参考文献