大切な家族の一員であるペットの健康のことを、日頃から考えている飼い主さんは少なくありません。
ペットが病気になったり怪我をしたりした場合は、動物病院へ連れて行くこともあるでしょう。
動物病院では病気や怪我の治療のほかにも、ペットのための健康診断を実施していますが、受診は必要なのでしょうか。
日頃から病気の兆候のない元気なペットを健康診断に連れて行く必要はあるのか、疑問に思っている飼い主さんも少なくないでしょう。
本記事では、動物病院で行われているペットの健康診断は必要なのか、検査項目や費用の情報なども踏まえて解説しています。
大切なペットの健康を守り、長生きしてもらいたいと考えている飼い主さんはぜひ参考にしていただけますと幸いです。
動物病院でペットの健康診断は必要?
動物病院で行われているペットの健康診断は、健康を保つために必要です。
健康診断の必要性について以下のようなことが挙げられます。
- 意思疎通のできないペットの異常を発見できる
- 早期の治療や予防ができる
- 健康状態の情報を蓄積できる
- 日常的なケアのアドバイスが受けられる
体調が悪くなったことを言葉にできないペットの、小さな変化にも気づいてあげるための手段として、健康診断は大切です。健康診断を受けることで、病気の早期発見・早期治療ができます。
ペットの健康維持を支える手段としても、健康診断は欠かせません。健康診断で得られた状態はデータとして蓄積されます。
万が一、ペットの体調が悪くなったときに、何が原因かを特定する手がかりになる情報があると飼い主さんも獣医師も対処できやすくなります。
また、定期的に動物病院で獣医師とコミュニケーションをとる機会ができ、日常的なケアを相談しやすくなるでしょう。
動物は人間のように会話できないため不調を訴えることができず、体調が悪いことを隠してしまうこともあります。そのため、日頃から健康状態を確認しておくことが大切です。
大切な家族の一員であるペットの健康を維持することは、飼い主としての大切な役割のひとつです。
健康維持はペットの幸せにもつながるため、健康診断を活用しましょう。
動物病院で行うペットの健康診断の検診項目
動物病院で行うペットの健康診断には、大まかに以下の検査項目があります。
- 視診・聴診・触診
- 尿・糞便検査
- 血液検査
- ウイルス検査
- 心電図検査
- 腹部超音波検査
視診や聴診で身体の外側から健康状態を確認し、そのほかの検査で身体の中の状態を確認して総合的にペットの健康状態を調べます。
動物病院によって健康診断の内容には違いがあるため、すべての検査が行われるわけではありません。
受診する動物病院で行われる検査がどのような内容かを確認して、納得したうえで受診するようにしましょう。
視診・聴診・触診
まず、飼い主さんから日頃の食事の内容や運動の習慣・排泄物の状態・日常生活の様子について問診を行います。
問診の情報を踏まえてペットの状況を把握してから、獣医師が診察していきます。
視診は目や耳、皮膚の状態を確認し、聴診は心臓の音に雑音がないかや呼吸音に違和感がないかを確認する診察です。
触診では直接ペットの体を触り、骨の異常の有無や内蔵の動きと状態を確認します。また、触れるところにできもの(腫瘤など)がないかどうかの確認も行います。
尿・糞便検査
尿・糞便検査は、ペットの尿と糞便の状態を分析して消化器や排泄器の健康状態を調べる検査です。
尿検査では、膀胱や尿管などの泌尿器系の臓器・腎臓・肝臓などに異常がないかを調べます。犬や猫に多い膀胱炎や腎臓病の診断に必要な検査です。
糞便検査では、糞便の状態を顕微鏡で確認したり寄生虫や病原体が含まれていないか検査して調べます。
尿や糞便の状態を調べることで内臓の異常や病気の重症度を推定できるため、健康診断でも大切な検査のひとつです。
尿と糞便の分析を行い、体の中の臓器の異常や病気への感染の可能性を探っていきます。
血液検査
血液検査では体全体の状態を調べるための血球検査と、器官や臓器の状態を調べるための生化学検査を行います。
血球検査は血球の大きさや数を調べる検査です。例えば、赤血球の数が多い場合には下痢や嘔吐、頻尿による脱水症状が起きていると考えられます。逆に少ない場合は、貧血が疑われます。
貧血はないか、骨髄の造血能力に異常はないかなど、身体の中の異常を調べるために欠かせない検査です。
生化学検査では試薬を使い、血液中のホルモンや酵素の量を測定します。これにより、肝臓・腎臓の働きを調べることが可能です。検査項目は臓器ごとに異なるため、複数の要素をもとに判断されます。
ウイルス検査
ペットの健康診断で行うウイルス検査では、犬のフィラリア抗原検査や猫の猫エイズウイルス感染症検査、猫白血病感染症検査があります。
フィラリア抗原検査では、蚊を媒介して体内に侵入する寄生虫に感染していないかを調べます。犬はお散歩で外出する機会が多いため、定期的(一般的には1年で最初のフィラリア予防薬を飲む前の5月頃)に受けておいてほしい検査です。
猫のウイルス検査では、猫の病気のなかでも発症数が多く高い確率で死に至る猫エイズと猫白血病に感染していないかを調べます。
外飼いの猫にはさまざまな感染症の可能性があるため、検査で確認しておくことが大切です。
心電図検査
心電図検査では、心臓が正常に動いているか心筋に異常はないか調べます。
ペットの手足に電極を装着して心臓に伝わる電気の状態を検査して、ほかの所見と合わせて総合的に心臓の状態を診断します。
特に、チワワやキャバリアなど心臓病になりやすい犬種もあるため、高齢の小型犬は心電図検査を受けておくと早期に異常に気付きやすいでしょう。
腹部超音波検査
腹部超音波検査では、専用の機器を使用してペットの体の内部に異変がないか調べます。
腹腔内にある胃や腸などの消化器系の臓器の動きや形を確認したり、結石や腫瘍がないかを確認したりします。
また、心臓の動きをエコーで調べたり肺に水が溜まっていないか確認したりすることも可能です。
腹部と胸部の超音波検査は心疾患・肺疾患・消化器疾患・生殖器疾患・泌尿器疾患など臓器の異常を調べられるペットに負担の少ない検査方法です。
ペットの健康診断を受けるメリットとデメリット
ペットの健康診断はメリットが多いですが、デメリットもあります。
ペットは自分の体調や気分の悪さを飼い主さんに伝えることができません。また、飼い主さんに体調が悪いことを隠すこともあります。
普段と変わらない状態に見えていても、実は病気が進行しているという事態も考えられます。
目に見えて体調が悪そうになって初めて病院へ行っても手遅れになっていることもあるでしょう。そのため、あらかじめ予防医療として健康診断を定期的に受けることが大切です。
ここでは健康診断を受けるメリットとデメリットを解説します。
健康診断を受けるメリット
ペットの健康診断を受けるメリットは以下のとおりです。
- 病気の予防を目指せる
- 病気を早期発見して治療できる
- 老化に対応したケアができる
- ペットのストレスを取り除ける
健康診断は病気の予防のために受診することが目的です。初期の段階で病気を見つけることができ、早めに対策を取ることができます。
また、健康診断で元気なときの体調を記録しておくことで、体調の変化にいち早く気付き病気の早期発見と早期治療に結びつきます。
年齢が上がるとともに病気の可能性も増えるため、定期的に健康診断を受け、老化による体調不良や生活上のケアにもすぐ対応できるようにしましょう。
動物病院で健康診断を受けることは、ペットも飼い主さんも不安なく過ごせる日常を守ってくれることにもなります。
健康診断を受けるデメリット
ペットの健康診断を受けるデメリットは以下のとおりです。
- 費用の負担がある
- 検査の際にペットにストレスがかかる
健康診断のたびに費用がかかるため、金銭的負担が増えることは否めません。
しかし、病気が進行し高額な医療費を払うことを考えると、健康診断の費用は決して高い物ではないでしょう。
しかし、健康診断がペットのストレスになってしまうことには注意が必要です。
検査を受ける動物病院を決めて、いつもの獣医師に対応してもらうなど、受診のときのストレスを減らせるように飼い主さんが配慮して、ストレス対策しておくといいでしょう。
動物病院の健康診断の費用について
動物病院で行う健康診断の費用は、ペットの種類や年齢によって種類分けされていることが多いです。
犬の健康診断では大型犬と中型犬と小型犬でそれぞれ分けられることがあります。
また、年齢の若いペット向けとシニア向けで検査内容が違っている場合もあり、調べる検査項目の違いから費用の違いにも幅があります。
猫の健康診断は、犬の健康診断に比べて少し費用が安くなる傾向にあるようです。
動物病院によってさまざまな種類やコースが用意されていて検査項目や費用に違いがあるため、受診する前に情報を調べて比較検討してみるとよいでしょう。
ペット保険は使える?
一般的に健康診断の費用はペット保険の補償の対象外となっています。
ペット保険の補償対象は怪我や病気の治療にかかる費用や入院手術にかかる費用、治療に必要な検査の費用と決められています。
健康診断は治療に当てはまらないためペット保険の補償対象外です。
動物病院の健康診断の費用目安
動物病院で行う健康診断の大体の相場は、犬の健康診断で5,000円〜30,000円程、猫の健康診断で5,000円〜10,000円程となっています。
健康診断の費用はそれぞれの動物病院ごとに違い、地域によっても変動があります。また、ペットの種類によっても違いがあるため、受診する予定の動物病院に問い合わせて健康診断の費用の内容を確認しておきましょう。
ペットの健康診断の頻度
健康診断の頻度はペットの年齢によって変わり、高齢になるほど頻度を上げておくと安心です。
ペットの年齢が若いうちは病気になる確率は低いですが、高齢になるほど病気になる確率が高くなります。
犬も猫も7歳頃からシニア期に入るといわれているため、健康診断の頻度を上げるタイミングとして目安にしておきましょう。
1年に1回を目安に健康診断を受けるのがおすすめ
健康診断の頻度の目安として、満1歳を迎えた頃から7歳頃までは1年に1回を目安に受診しましょう。
生まれてから1歳になるまでの間には予防接種があり病院へ定期的に通うため、健康診断を受けなくても病院で検査してもらえる機会があります。
1歳を過ぎると予防接種の機会が1年に1回になるため、予防接種のタイミングで1年に1回の健康診断を受けておくことをおすすめします。
高齢ペットや持病があるペットの受診頻度
シニア期に入った8歳以降の健康診断は半年に1回、10歳を越えてからは年4回受診できれば、病気への対応も早くできシニア期を健康に過ごせます。
ペットの体調や年齢にあわせて健康診断の回数を調整し、高齢なペットでも健康を維持して快適に過ごせるように努めましょう。
幸せなシニア期を過ごせるペットが増えるよう、健康診断の必要性について今一度、確認してみてはいかがでしょうか。
まとめ
動物病院で行っている健康診断の必要性について、検査の詳しい内容とメリットやデメリット、費用と併せて詳しく解説しました。
具合が悪いことを自分で伝えられないペットの体調の変化に、いつもそばにいる飼い主さんが気付いてあげられるよう健康診断を受けることは大切です。
ペットの年齢が若い頃から馴染みの動物病院を見つけて獣医師との信頼関係を作ることも、シニア期を迎えたときに役立つ準備となります。
費用面での定期的な負担が多く感じることもありますが、健康を維持しておく予防医学として健康診断を受診しておくと、大きな病気になる確率が低くなります。
健康診断を受けずに病気になり、気がつけば取り返しがつかない状態になってしまうほうが、入院や手術の費用がかかり大変な状態になりかねません。
ペットのために、日頃から定期的な健康診断を受診して元気に暮らせる健康な体を作ってあげましょう。
参考文献