犬の歯の健康は食べる力や全身の調子に直結し、放置すれば歯周病などの口腔トラブルが進みます。多くの犬で予防が鍵となるため、飼い主さんの毎日のケアと動物病院での処置を両輪にする発想が大切です。歯垢は数時間で形成され始め、3~5日で歯石化すると言われます。本記事は、デンタルケアの必要性、起こりやすい病気、病院で受けられるケア、自宅での始め方と頻度、用品選びまでをQ&Aでやさしく解説します。
犬のデンタルケアの必要性

口腔の健康は全身に直結します。歯垢の蓄積と歯周病の流れを押さえ、毎日予防の要点を確認していきましょう。
- 犬にデンタルケアが必要な理由を教えてください
- 犬の口腔は全身の健康に直結します。歯周病が進むと口内細菌が血流に乗り、心臓や腎臓の病気のリスクが高まります。歯垢は約24時間で形成され、放置すると3〜5日で歯石化しやすく、痛みや口臭、食べにくさ、遊びを嫌がる行動にもつながります。だからこそ、自宅の歯磨きと動物病院での専門的ケアを
- 犬種や年齢によってデンタルケアの重要性は変わりますか?
- 年齢と犬種で差があります。歯周病の罹患は3歳以降で増え、加齢とともに上昇します。また小型種は歯肉炎が重篤化しやすく、日々の予防がより重要です。3歳以上では歯垢や歯石の付着も高頻度で見られるとの報告があり、早期からの習慣化が将来の差になります。したがって子犬期から始めるのが理想で、成犬・高齢犬からでも慣らすことができます。
- デンタルケアを始めるのに適した時期はありますか?
- 適している時期は子犬期です。乳歯が生え始める生後3週齢頃から口に触れる練習を始め、歯が生え揃う時期には軽い歯磨きを導入すると習慣になりやすいです。とはいえ成犬・高齢犬からでも遅くありません。ゆっくり段階的に慣らせば受け入れられます。決まった時間に短期間で切り上げることや、合図とご褒美で楽しい体験にすることが大事で、痛がる様子があれば病院で口内チェックをしてもらいます。無理は禁物ですから焦らず進めましょう。
デンタルケアを怠ると発症しやすい病気
歯垢が炎症を招き病気へ進む流れを押さえ、代表的疾患と合併症、受診の目安までここではご紹介します。
- デンタルケアをしないとどのような病気になりますか?
- 歯垢が固まって歯石になると、歯肉炎から歯周病へ進み、口臭や出血、痛みが強まり、やがて歯が動いて抜け落ちることがあります。進行例では顎の骨折が起こる場合があります。さらに口内の細菌が血流に乗り、心臓や腎臓の障害を引き起こす危険が高まります。歯垢は約24時間で形成され、3〜5日で歯石化しやすいことも要注意です。毎日のケアで進行を抑えられます。放置せず早めにご相談ください。
- 歯周病が進行するとどのような全身疾患のリスクがありますか?
- 歯周病が進むと、口内細菌が血流に乗って全身に広がり、心臓病や腎臓病の発症リスクが上がります。重症例では細菌が血管内で増え、心内膜炎や糸球体腎炎、敗血症に至る危険が知られています。日々の歯磨きと早期治療でリスクを下げられます。栄養摂取の低下や体重減少、持病の悪化を招くことがあるため、口臭・出血・食べにくさが続くときは受診を検討してください。早めに相談することで愛犬の健康を支えることができます。
- 口腔トラブルのサインや初期症状を教えてください
- 口臭が続く、歯茎の赤みや出血、硬いフードやおもちゃを嫌がる、片側だけで噛む、よだれが増える、食べこぼしが増える、顔周りを触られるのを嫌がる、といった変化が初期のサインです。歯磨き中の出血が増える、痛がる、口内の腫れが目立つ、口を前脚でこする、硬い物を落とす、口臭が急に強まる、体重が減る、食べるのに時間がかかる、片方の頬が腫れる、元気がない、発熱時は受診を検討します。
動物病院で受けられるデンタルケア

動物病院で受けられる主な歯科処置と受診時の流れを整理し、自宅ケアとの役割分担をここで確認します。
- 動物病院ではどのようなデンタルケアが受けられますか?
- 動物病院では、麻酔下での歯石除去(スケーリング)と研磨(ポリッシング)、歯科レントゲン、歯周ポケットの洗浄やキュレッタージ、必要に応じ抜歯、術後ケア指導を受けられます。歯石は自宅の歯磨きでは除去できず、獣医師の専門処置が必要です。処置後は再付着を抑えるために日々の歯磨きを続け、通院の管理を整えます。麻酔管理により犬の静止を保ち、誤嚥を防いで、画像検査や抜歯を不安なく行えます。
- 歯石除去の処置内容と費用の目安を教えてください
- 歯石除去は全身麻酔下で行い、術前検査、スケーリング、研磨、必要に応じてX線検査や抜歯、縫合などを組み合わせて実施します。
麻酔管理や術後ケアも含めた総費用の目安は2〜10万円で、処置の範囲により大きく変わります。
軽度ならスケーリングと研磨のみで2〜3万円、中等度では検査・麻酔管理含めて4〜6万円、重度になると抜歯や縫合、長時間処置により7〜10万円以上となる場合もあります。
犬種や体格、症状の進行度によって異なるため、あらかじめ見積もりを依頼するといいでしょう。定期的な検診で早めの対処を心がけましょう。
- 全身麻酔を伴う歯科処置が必要になるのはどのようなケースですか?
- 全身麻酔が必要になるのは、歯石が厚く歯周ポケットまで固着している、動くと器具で口腔を傷つける恐れがある、抜歯やレントゲン評価が必要、洗浄液の誤嚥を避けたい場合です。麻酔下なら体動を抑え気管チューブで呼吸を確保し、歯石除去や抜歯、歯肉縁下の清掃と研磨を精確に行えます。家庭の歯磨きでは除去できない歯石は病院で対応します。痛みが強い症例や口を開け続けられない犬も対象となります。
- 定期的な歯科検診の頻度を教えてください
- 基本は年1回の歯科検診を目安に受け、歯石や歯肉炎の有無を確認します。シニア期や歯周病の既往がある子は年2回以上に増やし、処置歴がある場合は主治医の指示に沿って調整します。大型犬は加齢の進みが早いため、5歳頃から間隔を短くします。家庭ケアでは毎日歯磨きを継続し、検診では磨き残しや歯周ポケットを評価します。口臭や出血が続くときは時期を待たず受診します。
自宅でできるデンタルケアの方法
毎日の歯磨きと補助策の進め方を押さえ、自宅ケアと病院ケアの役割を今ここで整理します。
- 自宅でできる犬のデンタルケアにはどのような方法がありますか?
- 自宅では毎日の歯磨きを基本に、口周りに触れる練習→ガーゼや歯磨きシート→指ブラシ→歯ブラシの順で慣らします。毎日が難しい日は週2〜3回を目安に続けます。デンタルジェルや噛むおもちゃ・ガムは補助として活用します。出血が続く、痛がる場合は受診を検討します。寝る前に同じ場所で行い、毎回1~2分で切り上げご褒美で終えると習慣付けしやすいです。
- 歯磨きを嫌がる犬にはどのように対応すればよいか教えてください
- 嫌がる場合は段階を細かくし、口周りに触れる練習→ガーゼやシート→指ブラシ→歯ブラシの順で短時間から始めます。静かな場所で姿勢を安定させ、ご褒美と合図で前向きにします。時間帯を固定し、1〜2分で切り上げ、できたら褒めます。出血や痛みが続くときは病院に相談します。歯面は外側から始め、特に上顎の第四前臼歯は歯石がつきやすいので念入りに行いましょう。慣れてきたら歯の裏側を磨くことに挑戦しましょう。無理を感じたら焦って進めずに中断して翌日にやり直します。
- デンタルケア用品の選び方を教えてください
- 歯ブラシはヘッドが小さめでやわらかい毛を選び、口内に入れやすい角度や柄の形を確認します。口が小さい個体には小型ヘッドを合わせ、導入期はガーゼや指ブラシも役立ちます。ペーストやジェルは犬用を選び、人用歯磨き粉は使わないようにします。噛むおもちゃやデンタルガムなども補助として選び、飲み込みにくい大きさを選定し、好みの味を考慮します。歯列に届く長さで奥歯まで当てられる形を基準にします。
- デンタルケアの頻度はどのくらいが適切ですか?
- 基本は毎日が目標です。就寝前など決まった時間に1〜2分磨き、特に歯石の付きやすい上顎の大きい歯(第四前臼歯)は丁寧に磨きましょう。時間が取れない日は間隔を空けすぎないよう、週2〜3回の頻度を目安にしましょう。歯垢は24時間で形成され、3〜5日で歯石化するため、補助としてガムやジェルを活用するのも継続に役立ちます。高齢犬や歯周病歴がある子は、毎日短時間でも口に触れる習慣を保つようにしましょう。
編集部まとめ
犬の歯の健康は、日々の小さな積み重ねで守れます。必要性やリスク、病院での処置、自宅ケアの方法や頻度の目安を、Q&A形式で確認しました。今日から就寝前に短時間でも磨き、様子を記録し、定期検診で整えていきましょう。人用歯磨き粉は使わず、ご褒美を活かし、嫌がる日は無理せず翌日に。小型犬や既往がある子は検診間隔を短くし、気になる症状が続くときは、迷わず動物病院に相談してください。
