動物病院で血液型は調べられる?犬や猫の血液型と検査費用を解説

動物病院で血液型は調べられる?犬や猫の血液型と検査費用を解説

犬や猫にも人間と同じように血液型があることをご存じでしょうか。普段の生活ではあまり気にすることはないかもしれませんが、輸血や手術など、いざというときには命を守るために欠かせない大切な情報になります。特に猫は血液型の不一致で深刻なリスクを伴うことがあり、事前の検査が重要です。本記事では、犬や猫の血液型の基礎知識から、検査が必要となる場面、費用や流れについてわかりやすく解説していきます。

犬や猫の血液型の基本情報

犬や猫の血液型の基本情報

まずは、犬や猫にはどのような血液型があるのかを見ていきましょう。

犬や猫にも血液型は存在しますか?
犬や猫にも人間と同様に血液型が存在します。犬にはDEA(Dog Erythrocyte Antigen)と呼ばれる血液型があり、特にDEA1.1型、1.2型、3型、4型などが代表的です。一方、猫の血液型はA型、B型、AB型の3種類に分類され、日本ではA型の比率が圧倒的に高いとされています。
人間のABO式との違いを教えてください
人間の血液型はA・B・O・ABの4種類に分類されるABO式が知られていますが、犬や猫では別の分類法が使われています。犬はDEA(犬赤血球抗原)という方式で、13種類以上の型があり、DEA1.1の型が特に輸血の適合性に大きく関わります。猫はAB式に分類され、人と似ているようで実際にはA型・B型・AB型の3種類しかありません。
犬や猫の血液型を知っておくメリットはありますか?
犬や猫の血液型をあらかじめ知っておくことは、緊急時の命を守る備えとしてとても重要です。大きなメリットは、輸血が必要な際に適合する血液を迅速に選定し、安全性の高い処置につなげられる点にあります。特に猫は、初回の輸血でも血液型の不一致によって命に関わる拒絶反応を起こすリスクがあるため、事前の検査が不可欠です。また、ペットが供血動物としてほかの動物の命を救う支えになる可能性もあります。さらに、繁殖時の新生児溶血のリスク回避や、健康管理の判断材料としても血液型の把握は極めて有意義といえるでしょう。

動物病院で血液型検査が必要になるケース

動物病院で血液型検査が必要になるケース

血液型検査は輸血時だけでなく、手術前や繁殖時、多頭飼育などさまざまな場面で役立ちます。

どのような状況で血液型検査が必要になりますか?
血液型検査が必要となるのは、輸血が必要とされるような場面です。事故や病気による大量出血、重度の貧血、外科手術後の回復などでは、適合する血液型を迅速に選定し、安全性の高い処置を進めることが命を守るうえで不可欠です。また、繁殖を予定している場合には新生児溶血のリスクを避ける目的でも血液型の把握が有効です。多頭飼育の家庭では供血の可能性もあり、日頃からの準備として検査を受けておくことが望ましいでしょう。
輸血時に血液型が合わないと生じるリスクを教えてください
輸血時に血液型が適合していないと、受血動物の体内で免疫反応が起き、溶血性副反応や急性アレルギー反応など、命に関わる深刻な症状を引き起こすことがあります。特に猫は、初回の輸血であっても血液型の不一致により激しい拒絶反応を起こすリスクがあり、事前の確認が不可欠です。犬は初回では重篤な反応が起きにくいとされますが、2回目以降は抗体の影響で反応する可能性があるため、血液型検査に加えクロスマッチ検査(血液の適合性を調べる検査)が重要です。血液型を把握し、不安のない輸血につなげることが命を守る第一歩です。
避妊や去勢手術の前にも血液型検査をした方がよいですか?
一般的に、避妊や去勢手術は健康な動物を対象に行われるため、血液型検査は必須とされていません。ただし、麻酔や手術中に予期せぬ出血が発生する可能性があるため、あらかじめ血液型を把握しておくことには十分な意義があります。特に高齢や持病のある動物、出血しやすい体質が疑われる場合には、輸血の必要性を想定して検査を受けておくと不安がないでしょう。また、将来的に繁殖を計画している場合には、親の血液型の適合性が子の健康に影響する可能性もあるため、早めの確認が推奨されます。万が一に備える有効な手段といえるでしょう。

動物病院で行う血液型検査の流れと費用

血液型検査は、動物の命を守るうえで重要な手続きです。ここでは、検査の流れや費用の目安について解説します。

血液型検査にかかる時間と当日の流れを教えてください
血液型検査の所要時間は15〜20分程度です。当日はまず動物の健康状態を確認し、問題がなければ採血を行います。採取した血液は試薬と反応させて院内で判定するか、外部の検査機関に送られます。院内で判定可能な場合は当日中に結果が出ることもありますが、外注する場合は2〜5日程かかるのが一般的です。検査後には結果の説明を受け、必要に応じて診療計画に組み込まれます。基本的に絶食などの特別な準備は必要ありませんが、病院によって異なることもあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
検査結果はどのくらいでわかりますか?
血液型検査の結果がわかるまでの所要時間は、検査の方法や動物病院の設備体制により大きく異なります。院内に検査キットがある場合は、採血から15〜20分程で結果が得られることもありますが、外部の検査機関に検体を送付する場合は、2〜5日程度かかるのが一般的です。さらに、動物の健康状態や診察の目的に応じてほかの血液検査が同時に行われるケースもあり、その分だけ結果が出るまでの時間が延びることがあります。迅速な対応が求められる場面では、即日判定可能な病院を選ぶことで、診療のスムーズな進行につながります。
犬や猫の血液型検査の費用相場を教えてください
犬や猫の血液型検査にかかる費用は、検査方法や設備の有無、検査を受ける施設によって異なります。一般的な相場は5,000〜7,000円程度で、院内で検査キットを使用する場合は安価な可能性が高いです。一方、外部の検査機関に検体を送る場合や、ほかの血液検査と同時に行う場合は、費用が高くなる傾向があります。また、再診料や初診料、診察料が別途かかる場合もあり、合計で1万円以上になるケースも見られます。あらかじめ費用の内訳を病院に確認しておくと納得感を持って検査を受けられます。命に関わる検査としては、費用の負担が軽いといえるでしょう。
健康診断で血液型を調べることはできますか?
一般的に、通常の健康診断には血液型検査は含まれていない可能性が高いです。健康診断は主に、内臓の状態や血液の成分バランス、感染症の有無などを確認することが目的であり、血液型は診療上の緊急性が低いため、省略されるのが一般的です。ただし、希望すれば血液型検査を追加することは可能で、診察時に同時に採血を行えば手間も少なく済みます。検査費用は別途かかりますが、将来的な輸血の必要性や、万が一の事故や病気への備えとしても有効です。健康診断の機会を活用して確認しておくのは大変有意義な選択といえるでしょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

犬や猫にも血液型があり、輸血時の安全確保や繁殖、新生児の健康維持、さらには供血など、さまざまな局面で重要な役割を果たします。特に猫は血液型の不一致によって重篤なリスクが生じやすいため、事前の確認が欠かせません。血液型は普段意識することが少ない情報ですが、いざというときの備えとして早めに検査を受けておくことが命を守る手段になります。健康診断の機会を活用し、正しい知識と準備を持つことが飼い主さんの責任といえるでしょう。

【参考文献】