猫も人間と同様に咳をすることがありますが、その咳は必ずしもゲホゲホとわかりやすいものではないため気付きにくい場合があります。猫が咳きこむ原因は軽い風邪から深刻な疾患まで多岐にわたります。猫が咳をしているのを見かけたら、原因を特定し適切な対処をすることが重要です。
本記事では、猫が咳き込む主な原因、動物病院での治療法、そして家庭でできる対処法や予防法について紹介します。愛猫の健康を守るための知識を深め、適切な対応を取るための参考にしてください。
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猫が咳き込む原因
- 猫が咳き込む原因にはどのようなものがありますか?
- 猫が咳き込む原因は、呼吸器への刺激によるものです。身体を守ろうとする防御反応であり、腹筋や横隔膜が動き異物を外に出そうとします。刺激には、異物による機械的刺激、化学物質の吸引による化学的刺激、呼吸器の炎症による炎症的刺激、温度刺激があります。
また、急いで食事を摂る際や水を飲むときに咳が出ることもあります。ただし、猫は人間に比べて気道の刺激に対する反応が鈍い傾向がありますし、このような刺激による咳は一時的で何日も続くことは稀です。猫の咳が長引く場合は、猫喘息(ぜんそく)や猫風邪(上部気道感染症)、肺炎や肺水腫、腫瘍などの病気が考えられます。これらの病気については適切な治療が必要で、早期に原因を特定して対処することが重要ですので、動物病院を受診しましょう。
- 猫喘息の症状について教えてください。
- 猫喘息はアレルギー性の呼吸器疾患で、花粉やハウスダスト、芳香剤、タバコの煙、化学物質が原因で起こります。気管支が収縮し、発作のように咳が続くことが特徴です。猫喘息を疑う症状として、咳やゼーゼーという苦しそうな喘鳴(ぜいめい)が続く、呼吸が速い(毎分40回以上)、開口して呼吸する、肩や腹部の動きが大きくなる、などがあり、悪化すると呼吸困難に陥り命に関わることもあります。猫が特定の環境で咳をする場合は、原因となる環境や物質から遠ざけることが大切です。また、猫喘息は年齢に関わらず発症することがあり、一度発症すると完治が難しいため、原因物質を特定し接触を避けることが重要です。
- 猫風邪の症状について教えてください。
- 猫風邪は、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスといったウイルスや細菌に感染することで起こる病気で、風邪のような症状が現れます。咳、くしゃみ、鼻水、目ヤニ、食欲不振、口内炎、舌炎などが特徴的な症状で、特に免疫力や体力が低い子猫や高齢猫は重症化するリスクがあるため注意が必要です。また、元気な成猫でも抵抗力が弱まっているところに別のウイルスや細菌が感染する二次感染の恐れがあります。肺炎などの合併症を引き起こすこともあるので、早めに動物病院を受診しましょう。
また、猫風邪は、感染猫の咳やくしゃみ、鼻水によって飛沫(ひまつ)感染したり、グルーミングやじゃれ合いによって接触感染したりします。猫風邪の感染力はとても高く、特に多頭飼いの場合は注意が必要です。猫風邪のウイルスは感染から回復しても潜伏し、免疫力が弱った際に再発することがあるため、予防するようにしましょう。
- 猫の肺水腫の症状について教えてください。
- 肺水腫は、毛細血管から漏れ出した血液の液体成分が肺にたまる病気です。猫の肺水腫には、呼吸が浅く苦しそう、舌や唇が青紫色に変色する(チアノーゼ)、横になることができず座ったまま動かない、血が混ざった液体を吐くといった症状があります。
肺水腫は急速な悪化が起こりやすく、命に関わる危険性が高い病気です。特に、チアノーゼが見られた場合、体内の酸素不足が原因で意識を失うこともあります。早期の治療が求められるので、猫の異変に気付いた際には速やかに動物病院を受診しましょう。
猫が咳き込む病気の治療
- どのような症状の場合に動物病院を受診すればよいでしょうか?
- 猫が咳をする場合、その症状や期間によって動物病院への受診を検討する必要があります。咳がすぐに治まるようであれば様子を見ても大丈夫ですが、軽い咳でも長引く場合は注意が必要です。特に、呼吸困難、食欲不振、咳に血が混じる、ぐったりしている、うつ伏せになって開口呼吸をする、チアノーゼを起こしているなどの症状が見られる場合は早急に動物病院を受診しましょう。
また、子猫や高齢猫、基礎疾患のある猫は、軽度の症状でも早めに動物病院を受診することをおすすめします。日頃から猫の様子をよく観察し、少しでも気になることがあれば獣医師に相談しましょう。
- 猫が咳き込む病気の動物病院での治療法について教えてください。
- 治療法は、原因となる病気によって異なります。検査をし、咳の原因が特定されればそれぞれの病気に応じた治療が行われます。
猫風邪の場合、はっきりと効く治療はあまりなく、対症療法を行います。例えば、原因となるウイルスに対する抗ウイルス薬の投与や、細菌の二次感染の疑いや予防には抗生剤を使用します。また、鼻水やくしゃみの症状がある場合には点鼻薬やネブライザーによる治療が行われます。しかし、基本的には自力治癒となるため、しっかり水分補給や栄養補給をして治癒するのを待ちます。
猫喘息の場合、気管支の炎症を抑えるステロイド薬や気管支拡張剤の投与が行われます。また、内科治療だけでなく、アレルギーの原因となるホコリやハウスダストなどを減らすことも大切です。こまめに部屋を掃除するなど生活環境の改善に取り組みましょう。
肺水腫の場合、状態にもよりますが、余分な水分を身体から排出するため利尿剤を利用し、場合によっては酸素吸入を行うこともあります。また、肥大型心筋症では、心不全の進行を遅らせるための治療や血栓予防薬を投与することもあります。
猫の咳の対処法と予防
- 家庭でできる猫の咳への対処法を教えてください。
- 空気が乾燥していると猫の気道を刺激し、咳を悪化させる可能性があります。特に冬場は空気が乾燥しやすいため、加湿器を使用するなどして室内の湿度を50~60%に保つよう心がけましょう。濡れたタオルを部屋に干すだけでも効果があります。
咳が出るなどの症状がある場合は、免疫力が低下している可能性が高くなります。ストレスは猫の免疫力を低下させ、咳などの症状を引き起こしたり、症状を悪化させたりする原因となります。静かな場所で休ませたり、ストレスの原因となるものを取り除いたりするなど、できるだけ猫が安心できる環境を提供しましょう。
また、猫喘息の場合は、アレルギーとなる物質を除去することで症状が改善することがあります。掃除やこまめな換気を日頃から心がけ、アレルゲン物質を除去した生活環境を整えることが重要です。
そして、猫が咳をしはじめた日時や体調の変化など、症状を細かく記録しておくと症状の悪化にも気付きやすく、獣医師が正確な診断をしやすくなります。咳かどうかわからない場合は、動画を撮っておくと様子がわかりやすいのでおすすめです。
- 猫の咳を予防する方法はありますか?
- 猫の咳を完全に予防することは難しいのですが、生活環境を整え、猫の健康状態を良好に保つことで、咳のリスクを減らすことができます。定期的に掃除機をかけ、ホコリやダニの発生を抑えましょう。また、タバコの煙や芳香剤、香水などは猫の気道を刺激するため、使用を控えることをおすすめします。
そして、猫風邪の主な原因は、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスへの感染です。これらの感染症を予防するためにワクチン接種を受けましょう。子猫の時期にワクチン接種を行い、その後は定期的に追加接種を受けることが重要です。ワクチンの種類や接種スケジュールについては獣医師に相談するとよいでしょう。
編集部まとめ
今回は、猫の咳の原因や病気、治療法、家庭での対処法や予防法について紹介しました。猫の咳には、猫風邪、猫喘息、肺水腫などさまざまな原因が考えられます。咳が長引く場合や気になる症状がある場合は、症状が悪化する前に動物病院を受診し、適切な治療を受けることが大切です。また、日頃から清潔な環境を保ち、ストレスを軽減することが咳の予防につながります。愛猫の健康を守るためにも、ぜひこの記事を参考に猫の咳に対する正しい知識を身につけましょう。