猫の急性腎不全の症状は?原因・予防法・治療を解説

猫 急性腎不全

猫の腎不全には急性・慢性があり、今回解説するのは急性の方です。病状が急速に進むため、一刻も早く獣医師にかかる必要があります。

手遅れとならないようにするためには、猫の急性腎不全の症状・原因・なりやすい個体・予防法などを、あらかじめ知っておくことが必要になります。

愛猫が急性腎不全に罹患した場合でも早急に対応できるようにするため、疾患について多方面から解説しましょう。

猫の急性腎不全の症状

エリザベスカラーをつけた猫

猫の急性腎不全とはどのような病気ですか?
猫の急性腎不全(AKI)は、何らかの原因によって腎機能が急速に低下する疾患です。腎臓は体内の老廃物を排出するだけでなく、血液を一定の状態に保つために不要な物質を体外に出す機能があります。
水を大量に飲むとトイレが近くなることを思い出してもらえれば、わかりやすいのではないでしょうか。過剰に摂取した水分を排出することで、血液を一定の状態に保っているのです。
猫も、この機能は変わりません。急激に腎機能が悪化することで老廃物が溜まりすぎたり、血液の状態が一定に保てなくなってしまったりするのです。このため、猫の体調が急激に悪化し、最悪の場合は命に関わりかねません
猫の急性腎不全の症状について教えてください。
猫の急性腎不全の主な症状として、以下のようなものが挙げられます。
  • 急速に元気がなくなる
  • 食欲低下
  • 嘔吐
  • 荒い呼吸
  • 意識の低下
  • 尿量の減少もしくは無尿

このなかで注意しなければならないのは、尿量の減少や無尿です。ほかの症状は別の疾患と共通している部分があるものの、尿量については腎不全特有のものだからです。
また、食欲低下と尿量減少は、早い時期に出る傾向があります。意識の低下などの症状がみられた場合には、ある程度病状が進行している可能性があります。

猫の急性腎不全と慢性腎不全の違いについて教えてください。
まず、猫の急性腎不全・慢性腎不全(CKD)の違いとして挙げられるのは進行スピードです。急性腎不全は進行が急速で、数日間で極端に腎機能が低下します。これに対して慢性腎不全は病状の進行が緩慢で、年単位で症状が悪化していくものです。
尿量にも違いがあります。急性腎不全は急速に尿量が低下し、最悪の場合は尿が出なくなります。これに対して慢性腎不全は体内の老廃物を排出するため、逆に尿量が増えていくでしょう。
食欲についても急性腎不全が減退するのに対し、慢性腎不全は水を多く飲むようになります。尿量が増え、体内から水が多く排出されるのを補うためです。
そして、完全に治癒するかどうかも相違点です。急性腎不全は適切な治療を行えば、腎機能を回復させられます。これに対して慢性腎不全は、疾患によって失われた腎機能が回復することはありません。

猫の急性腎不全の原因・予防法

ミルクを飲む子猫

猫の急性腎不全の原因を教えてください。
猫の急性腎不全の原因は、大きく次の3つに分類されます。
  • 腎前性
  • 腎性
  • 腎後性

腎前性の急性腎不全は、腎臓に行く血液が極端に減少することによって起こります。大量出血で体内の血液が減ったようなケースだと、腎臓に向かう血液の量も減少するでしょう。これによって老廃物などの排出が十分に行われなくなり、腎不全の症状を呈するようになります。
心臓病による心機能の低下・脱水による体液の減少も腎前性の急性腎不全の原因です。腎性の急性腎不全は、腎臓そのものの疾患による機能低下が原因です。細菌感染による炎症・自己免疫性疾患・腫瘍などが腎機能低下の原因として挙げられるでしょう。
腎後性の急性腎不全は、下部尿路の障害によって引き起こされます。尿管結石や尿路結石によって排尿が困難となったケースが、これにあたります。腎臓で尿が作られても排出に障害があると、老廃物などが十分に体外へ排出されません。これによって体内の状態が不安定となり、腎不全の症状を呈するのです。
腎後性の急性腎不全の場合は結石によって尿路が傷つけられるため、血尿が症状として認められるケースもあります。

急性腎不全になりやすいのはどのような猫ですか?
腎前性の急性腎不全の場合、心機能の弱い猫は発症リスクが高くなります。腎臓に届く血液が不十分になりやすいためです。腎性のものは炎症などによる腎機能の低下が原因のひとつであるため、感染症リスクの高い個体が急性腎不全になりやすいといえます。
具体的には、完全室内飼いではない猫です。腎後性の急性腎不全は、尿路結石になりやすい猫程、発症リスクが高くなります。猫種でいえばヒマラヤン・アメリカンショートヘア・スコティッシュフォールドは尿路結石になりやすいです。また、去勢後の雄猫は品種に関係なく尿路結石のリスクが高いとされています。
猫の急性腎不全の予防方法について教えてください。
腎前性の急性腎不全は怪我による出血の防止、腎性の場合は炎症の原因となる細菌の感染防止が予防につながります。この2つに共通しているのは外出させないことです。外に出なければ交通事故をはじめとする大怪我のリスクは低下しますし、ほかの動物からの感染も起きません。
一方、腎後性の場合は尿路結石の予防が有効です。結石リスクの高い猫種・去勢後の雄猫は、ウエットフード・結石対策のなされているキャットフードに切り替えることで予防が可能です。水分摂取を意識することも必要となります。

猫の急性腎不全の治療

診察中の猫

猫の急性腎不全ではどのような検査をしますか?
猫が急性腎不全かどうかを判断するために、まず行われるのが血液検査です。腎機能の低下によって電解質の排出が滞り、バランスがおかしくなってしまうためです。また、以下のような腎機能に関する数値が高いかどうかも調べることになります。
  • 尿素窒素
  • クレアチニン
  • SDMA

血液検査で問題が確認されれば、腹部超音波検査・レントゲン検査などを行います。腎前性・腎性・腎後性のいずれであるかを確認するためです。急性腎不全の原因となった疾患によって、治療法が異なることが理由です。

猫の急性腎不全の治療はどのようなものですか?
まず体内の状態を整えるため、点滴治療を行います。内科的治療で改善がみられない場合は、腹膜透析・血液透析を行うこともあります。
もちろん、原因となった疾患への対処は必要です。腎前性なら昇圧剤・輸液・輸血で腎臓に届く血液を増やすようにします。腎性の場合は感染症対策として、抗生物質の投与などが行われます。
腎後性なら、溜まっている尿をいかに出していくかがポイントです。尿道結石ならば、尿道から膀胱までチューブを入れて尿路を確保します。尿管結石の場合は点滴で尿量を増やして石を押し出す治療を行うのですが、外科手術が必要になるケースもあります。
猫の急性腎不全にかかる治療費用はどのくらいでしょうか?
猫の急性腎不全の原因は多種多様で、原因によって治療費は変わるものです。また、動物病院の医療費は独占禁止法によって一定の料金とすることが禁止されています。
このため、一般的には5万円から15万円(税込)が相場だとされていますが、透析・手術が必要なケースだと治療費はさらに高くなる可能性があるでしょう。
猫の腎不全を早期発見するためのポイントを教えてください。
猫の急性腎不全には、尿の減少・無尿というわかりやすい症状があります。もし猫が急に元気を失ってしまった場合、猫トイレを確認してみましょう。
尿を排泄した形跡がないか、極端に少なければ急性腎不全を疑う必要があります。腎後性の場合は、血尿が出ているケースもあります。また食欲の低下・元気がなくなるなどの症状は、急性腎不全でなくても獣医師の治療が必要な可能性が高いです。
愛猫の健康が大切ならば、少しでも「おかしい」と思ったら獣医師に診てもらうくらいでちょうどよいといえます。急性腎不全ならば、早期発見できれば完治が望めるだけになおさらです。

編集部まとめ

獣医師 猫

猫の急性腎不全は、手当てが遅れると命に関わる病気です。一刻も早く猫の異変に気付き、獣医師の診療を受けることが重要になります。

ただし慢性腎不全とは違い、適切かつ早期に処置を行えば完治する疾患です。予防についても、普段から注意していればある程度は可能です。

猫が急速に元気がなくなってしまった場合は、急性腎不全以外の疾患も疑われます。お金はかかりますが、可能な限り早く獣医師に診せてください。

参考文献