猫が頻繁にお尻を舐めたり、床にお尻をこすりつけるような動作をしている場合、肛門のトラブルを抱えている可能性があります。なかでも肛門腺破裂と呼ばれる状態は、放置された肛門嚢炎が悪化し、皮膚が破れて膿が出る深刻な症状です。悪化すると痛みや感染症を伴い、猫にとって大きなストレスとなります。この記事では、猫の肛門腺破裂の原因や症状、診断と治療方法、予防策までをわかりやすく解説し、早期発見と早期対応の大切さをお伝えします。
猫の肛門腺破裂の原因と症状
猫の肛門腺破裂は、肛門嚢に炎症が起こり、膿がたまることで組織が破れる状態です。ここでは原因や見られる症状の特徴について解説します。

- 猫の肛門腺破裂はなぜ起きるのですか?
- 猫の肛門腺破裂は、主に肛門嚢炎が悪化することで発生します。肛門嚢は、肛門の左右にある小さな袋状の器官で、分泌物を蓄えています。通常は排便時に自然に排出されますが、何らかの理由で分泌物が排出されずにたまると、細菌が繁殖し炎症を起こします。これが肛門嚢炎です。炎症が進行すると膿がたまり、内圧が高まり皮膚が破れてしまうことがあります。また、便秘や下痢、肥満、運動不足、繊維不足の食事なども肛門嚢の排出不全を招き、発症の一因となります。初期段階での対処が遅れると、破裂という重篤な状態に至ることがあるため、早期発見が重要です。
- 肛門腺破裂が起きた場合、猫の行動に変化が現れますか?
- はい、猫の肛門が破裂した場合には、明らかに普段と異なる行動が見られることがあります。例えば、急に触られるのを嫌がる、怒りっぽくなる、落ち着かずうろうろする、トイレをためらうなど、痛みや不快感からくる反応が多く見られます。また、お尻を気にして床にすりつけたり、後ろ足で執拗に掻こうとする仕草もよく見られます。なかには、食欲が急に落ちる、隅でじっと動かなくなるなど、全体的な元気の低下として現れるケースもあります。こうした行動の変化は早期発見の手がかりになるため、日頃から猫の様子を観察し、小さな異変に気付くことが大切です。
- 猫の肛門腺破裂が起きるとどのような症状が出るのか教えてください
- 猫の肛門腺破裂が起きた場合、まず肛門の左右またはどちらか一方に腫れや赤み、熱感が現れます。炎症が進むと患部の皮膚が裂け、膿や血がにじみ出るようになります。これには強い悪臭を伴うことが多く、見た目にもはっきりと異常がわかります。また、排便時に激しい痛みを伴うため、排泄の姿勢をとりづらくなったり、便秘がちになることもあります。破裂した部分がただれて広がると、皮膚炎を併発する恐れもあります。これらの症状は進行性で、放置することで状態が悪化しやすいため、異変に気付いた段階で速やかに動物病院を受診することが求められます。
これらの症状に早く気付き、速やかに動物病院で診察を受けることが、悪化防止につながります。
猫の肛門腺破裂の診断と治療方法
猫の肛門腺破裂は、視診や触診などによって診断されます。ここでは、動物病院で行われる診断方法や、実際に行われる治療について詳しく解説します。
- 猫の肛門腺破裂はどのように診断するのですか?
- 猫の肛門腺破裂は、主に視診と触診によって診断されます。患部を観察することで、腫れや赤み、膿の排出、皮膚の裂け目などの異常が確認されます。また、触診によって肛門嚢の腫れ具合や圧痛の有無を調べ、炎症の程度を把握します。膿が出ている場合は、その分泌物を採取して細菌検査を行い、感染の有無や菌の種類を特定することもあります。さらに、深部までの炎症や膿の広がりを評価するために、超音波検査やX線検査が行われる場合もあります。これらの情報を総合的に判断し、重症度に応じた治療方針が立てられます。早期の受診が悪化防止につながります。
- 猫の肛門腺破裂の治療方法を教えてください
- 猫の肛門腺破裂の治療は、炎症と感染を抑えることを目的に段階的に行われます。まずは破裂部分の膿や分泌物をしっかり排出し、患部を洗浄・消毒します。次に、抗生物質を内服または注射で投与し、感染を制御します。患部が大きく開いている場合や治りにくい場合は、縫合処置や皮膚の再建手術を行うこともあります。また、猫が患部を舐めないようにエリザベスカラーの装着が推奨されることもあります。症状が軽いうちに治療を開始することで、回復も早くなります。
さらに再発防止のためには、肛門嚢の定期的なケアや生活習慣の見直しも欠かせません。
- 手術後の回復期間はどのくらいですか?
- 猫の肛門腺破裂に対して手術を行った場合、回復期間は一般的に10日から2週間程度とされています。ただし、傷の大きさや感染の有無、猫の体力や年齢などによって個体差があります。手術後は患部が治癒するまでの間、猫が傷口を舐めたり引っかいたりしないようにエリザベスカラーの装着が必要になることが多く、ストレスの軽減にも配慮が求められます。また、抗生物質や消炎剤の投与が行われるほか、再発を防ぐために食事内容や排便習慣の見直しも指導されることがあります。術後は動物病院の指示に従い、定期的に経過観察を行うことが大切です。
- 手術をすれば、肛門腺破裂は再発しませんか?
- 手術を受けたからといって、必ずしも肛門腺破裂が完全に再発しないとは限りません。肛門嚢の摘出手術を行った場合、再発リスクは大幅に下がりますが、手術が肛門嚢の洗浄や部分的な処置にとどまった場合、再び炎症が起こる可能性があります。また、再発の背景には、便秘や下痢といった排便トラブル、食事内容、運動不足、ストレスなどの生活習慣が関与することが多くあります。そのため、手術後も肛門周囲の清潔を保ち、定期的な健康チェックを継続することが大切です。再発防止には、獣医師のアドバイスに基づいた日常的なケアが欠かせません。
- 軽度の肛門腺破裂は投薬治療で済みますか?
- はい、肛門腺破裂が軽度の場合には、投薬による治療だけで改善するケースもあります。具体的には、抗生物質や消炎剤を内服または注射で投与し、感染や炎症を抑えることで自然治癒を促します。また、患部の清潔を保つために洗浄や軟膏の塗布が行われることもあります。ただし、症状が進行している場合や膿が溜まっている場合には、排膿処置や外科的介入が必要になることがあります。軽度と判断できるかどうかは専門的な診断が必要なため、自宅で様子を見るのではなく、早めに動物病院での診察を受けることが重要です。早期対応が回復を早め、悪化を防ぐ鍵となります。
猫の肛門腺破裂を防ぐ方法

猫の肛門腺破裂は、日頃のケアや生活習慣の見直しによって予防が可能です。ここでは、飼い主さんができる予防策や自宅でのケア方法について紹介します。
- 猫の肛門腺破裂を予防するために、できることはありますか?
- 猫の肛門腺破裂を予防するためには、まず肛門嚢に分泌物がたまりすぎないように定期的なケアを行うことが大切です。肛門周囲の異常に早く気付けるよう、排便後やグルーミング時に様子を観察する習慣をつけましょう。また、食物繊維を適度に含んだバランスのよい食事は便通を整え、肛門嚢の自然排出を助ける効果があります。さらに、肥満や運動不足は排泄機能の低下を招くため、体重管理と適度な運動も重要です。肛門周囲を頻繁に舐める、床にこすりつけるなどの行動が見られた際には、早めに動物病院で診察を受けることで、深刻な状態を未然に防ぐことができます。
- 自宅で行える肛門腺ケアの方法を教えてください
- 自宅で肛門腺ケアを行うには、猫の肛門の左右にある肛門嚢をやさしく絞る方法があります。ただし、猫は犬と比べて肛門腺トラブルが少なく、無理に行うと痛みやストレスの原因になるため、基本的には異常がある場合のみ実施するのが望ましいです。絞る際はゴム手袋を着用し、猫の肛門を清潔なティッシュやペットシートで覆い、親指と人差し指でそっと圧迫して分泌物を出します。においが強いため換気にも注意が必要です。処置に不安がある場合や、うまくできない場合は無理をせず、動物病院やトリマーに相談しましょう。定期的な健康チェックの一環として位置づけることが大切です。
編集部まとめ
猫の肛門腺破裂は、肛門嚢炎が進行した結果として起こる深刻な状態であり、早期の発見と適切な対処が重要です。排便やグルーミングの様子、肛門周囲の異常を日頃から観察することで、異変にいち早く気付くことができます。予防のためには、定期的な肛門腺ケアや食事と運動の管理が効果的です。少しでも違和感を覚えたら、自己判断せず動物病院での診察を受けることで、猫の健やかな生活を長く守ることにつながります。