日本では、猫をペットとして飼育している人は非常に多く、犬と並んで人気です。多くの人が触れ合ったことがあるのではないでしょうか。
ペットショップでも、必ずというほど店頭に並んでいますが、その愛らしさから年々飼う人が増えています。
また、犬のように散歩が必要ないため、忙しい人などにも好まれやすく1人暮らしの人などに多く飼われているのです。
すでに家族同然のような存在にしている人も多いと思いますが、大事な猫が病気になれば心配になります。
猫の呼吸が速くなった場合やいつもと違う猫の様子に気づいたらどのように対処すれば良いでしょうか。
この記事では、猫の呼吸が速い原因や異常呼吸などの考えられる病気について解説します。
猫の呼吸が速い原因とは?
普段とは違い猫の呼吸が速く、苦しそうにしていたら心配になります。何が原因でそのような症状が起きているのでしょうか。
運動時の息切れは、猫にも起こりますが階段を上り下りした後やキャットウォークで遊んだときなどは息切れをします。
このような場合は、体温を下げるために必要な行為なので心配する必要はありません。
呼吸の異常として注意することは、通常より速い呼吸・異常な音のする呼吸・過度のいびきなどがあります。
何らかの体の異常から呼吸が困難になってしまうため、全身に酸素を供給できない状態になると最悪の場合は死んでしまうこともあるのです。
猫に呼吸が困難な様子が見られたら、直ぐに動物病院へ受診するようにしましょう。
猫の正常な呼吸
通常くつろいでいる場合は、猫の呼吸はゆっくりしています。また、猫は鼻を使って呼吸するので、鼻の穴が開閉して空気を吸っています。
ただし、突然音が聞こえてビックリした時や何か雰囲気を感じてビクッとすると浅くて速い呼吸になるのです。
遊んでいるときや活発な活動をしているときには、呼吸が速くなりますが、休息状態に戻れば正常に戻ります。
正常な呼吸数
猫の正常な呼吸回数は、1分間で20〜40回程度といわれ、就寝中は15〜25回と少なくなります。ストレスを感じている場合は、呼吸数も上昇します。
猫の呼吸回数を観察するのは非常に重要で、特に就寝中の回数が速い時などは、何らかの病気が隠れている場合があるのです。
呼吸数の測り方
猫の呼吸回数の測り方としては、猫の胸の上限運動の回数を1分間測定します。
胸が上下して1回とカウントをして、10秒間想定してから6倍にすると1分間の呼吸の数を導き出せます。
飼い猫の呼吸数を確認しておくと、異常にも早く気づけますので知っておくようにしましょう。
異常呼吸の種類
猫は、通常鼻呼吸をしますので口を開けて呼吸することはありません。ただし、何らかの原因で体に異変があると以下のような異常呼吸になる場合があります。
- 多呼吸
- 肩呼吸
- 鼻翼呼吸
- 開口呼吸
上記の内容について、ここでは詳しく解説します。
多呼吸
猫の呼吸回数が多いことを多呼吸といいます。このような呼吸の症状は異常呼吸とされ開口呼吸の一歩手前の段階といえます。
猫はもともと鼻呼吸なので、口呼吸になるのは、何らかの体に異変が起きているからです。
呼吸が速くなる原因として、鼻詰まりなどによって肺の中でガス交換ができなくなり肺水腫などを発症する恐れがあります。
呼吸器の異常によって呼吸速迫が起こり、さまざまな病気を発症するといわれていますので、多呼吸の症状が表れたら注意が必要です。
肩呼吸
猫の肩呼吸がみられる場合は、猫カゼ・肺炎・喘息などの可能性があります。猫は、鼻呼吸なので呼吸回数だけだと気づきにくい場合があるので注意が必要です。
病気の場合などは、呼吸が速くなりますが肩呼吸だと回数に変動がない場合があるので、見逃してしまう場合があります。
いずれも呼吸器系に異常がある場合ですが、猫が肩で呼吸をしていたら、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。
鼻翼呼吸
鼻翼呼吸とは、小鼻が膨らんで呼吸している状態をいいますが人間でも同じように呼吸する場合があります。
小鼻が動くのでわかりやすいと思いますが、この症状が出たら注意して観察しましょう。
ただし、運動をした後や興奮した後などは、鼻翼呼吸をするときがありますが、このような場合は特に問題はありません。
気をつける必要があるのは、安静にしていて落ち着いているときに鼻翼呼吸をしている場合は、呼吸が苦しい可能性が高くなります。
呼吸器に異常が発生したときに鼻翼呼吸が起きることもあります。呼吸器の病気は緊急性が高いので、気づいたら動物病院へ受診して下さい。
開口呼吸
猫は、通常は鼻で呼吸をしますので、口呼吸をするのは異常な状態になります。原因として多いのが心臓の病気または、呼吸状態が悪いことがほとんどです。
気管支炎や肺炎などの呼吸器系の疾患や肥大型心筋症などの病気になると口呼吸になる場合が多くみられます。
肥大型心筋症は、心臓の壁が厚くなりすぎてしまうことで、心臓の機能が低下しその影響で呼吸機能に影響が生じて口呼吸になるのです。
この病気は、遺伝性が高い病気で、ペルシャやメインクーンなどの猫種に多い病気です。
また大型猫種で多い病気でもあるので、ラグドールやノルウェージャンフォレストキャットなどの猫種に起こることもあります。
猫の呼吸が速い場合に考えられる病気
猫の呼吸が速い場合に考えられる病気は、複数あります。特に気管支炎や心臓病に多いといわれています。
通常は、鼻呼吸の猫が肩で呼吸をしていたり、口で息をしていたりした場合は、何らかの病気を発症していることがほとんどです。
人間のように声を出すことはできないため、飼い主が変化を察知しないと手遅れになるケースもありますので注意が必要です。
以下に、猫の呼吸が速い場合に考えられる病気を記載します。
- 猫ウイルス性鼻気管炎
- 猫喘息
- 猫の慢性気管支炎
- 猫の心筋症
- 猫の血栓塞栓症
- 外傷
- 熱中症
上記の内容について、ここでは詳しく解説します。
猫ウイルス性鼻気管炎
猫ウイルス性鼻気管炎は、猫のヘルペスウイルスが原因とされ、感染した猫のくしゃみなどから感染します。
ヘルペスウイルスに感染すると、3〜4日で食欲がなくなって発熱し、鼻水・くしゃみ・結膜炎などの症状がひどくなります。
子猫の場合は体も小さいため、食欲不振や脱水症状から衰弱してしまい、生命にも危険を及ぼすのです。
回復してもヘルペスウイルスは、神経細胞の中に隠れてしまうため、時間が経ち猫の免疫が下がるとウイルスを外に出してしまいほかの猫に移す場合があります。
回復した猫には免疫があるが、ほかの猫に感染をさせてしまう可能性があるという厄介なウイルスなのです。
猫喘息
猫喘息とは、前触れもなく呼吸困難に陥る慢性気管支疾患です。気管支に炎症が起きることで、酸素の通り道が狭くなってしまいます。
呼吸困難の反復性発作を起こしてしまい、発作しているときの喘鳴性呼吸が特徴的です。猫喘息は若い猫の2〜3歳で発症すると重症化しやすいため注意が必要です。
4〜8歳ぐらいの猫が発症した場合は、軽度から中等程度といわれています。発作的に呼吸困難や咳が起きるため、症状が出たら動物病院を受診して下さい。
猫の慢性気管支炎
猫の気管支炎とは、どのような症状かというと、空気の通り道である気管に炎症が起きてしまう状態のことをいいます。
喉と肺を結ぶ管のような気管は、外側を軟骨が囲んでいる状態で、首の動きに連動して変形します。気管から枝分かれした部分が気管支です。
空気の通り道が炎症などで狭くなると、酸素と二酸化炭素の交換が正常に行われず、息苦しい状態が続いていまいます。
このような症状が2ヶ月以上続いてしまうと慢性気管支炎と呼ばれるのです。
猫の心筋症
心筋症とは、心臓の疾患の1つで心機能障害を伴う心筋疾患で心室が広がりにくくなり、拡張障害を起こします。
多くは、肥大型心筋症や拘束型心筋症です。ただし、拡張型心筋症や不整脈による障害などの心筋症もみられる場合があります。
代表的な心筋症の症状を以下に記載します。
- 肥大型心筋症:原因不明の心室が厚く肥大してしまう心筋症、心室壁が伸びにくくなり、拡張障害を発症
- 拘束型心筋症:心筋に線維化の症状が表れ、心室壁が固くなり拡張障害を発症
- 拡張型心筋症:心室の収縮力の弱化によって心室の内腔が広がってしまう症状
猫の血栓塞栓症
猫の動脈血栓塞栓症とは、人間の疾患と同じで心臓の左心房で生成された血栓が血流に乗ることで移動し、動脈が塞栓した状態です。
腹大動脈の分岐部分でふさがってしまう場合が多く、後肢不全麻痺を発症します。かかりやすい猫種は、純血種ではメインクーンやラグドールで多い傾向にあります。
年齢的には、中年齢の猫がかかりやすいとされていますが、どの年代の猫が感染しても不思議ではありません。
外傷
猫のケガとして外傷がありますが、特に外に出入りしている猫に多くみられます。主な原因として他の猫との喧嘩によって傷ができ出血する場合があります。
また、高いところからの落下や交通事故などで外傷をおっていても見た目で出血がない時は、見落とされがちです。
目の前の事故であれば気づけますが、知らない間に大けがを負っている場合もあるのです。
外傷はそれほどないが、肺や内臓にダメージを負っているケースもありますので、一定時間が経っても呼吸が荒い場合などは動物病院に受診しましょう。
熱中症
人間と同じように猫も熱中症になることはご存じでしょうか。
そもそも猫は夏など暑くなると快適な場所を自分で見つけて過ごす性質がありますが、暑さに強いわけではないのです。
外だけでなく、家の中でも熱中症を発症する恐れがありますので、注意してあげて下さい。
人間は、全身から汗をかくことで体温を下げますが、猫は肉球と鼻しか汗をかきません。そのため、人間のような体温のコントロールが難しいのです。
30℃以上の気温は熱中症になる確率が高くなりますが、30℃以下でも湿気が多いと熱中症になる場合があります。
気温もそうですが、湿度も非常に重要です。特に日本の夏は気温も高いうえに、湿度も高く猫には過酷な状況です。
5月頃から熱中症にかかってしまう猫もいますので、油断せずに秋口までは水分補給や風通しの良い場所を提供してあげましょう。
猫の呼吸が速い場合の対処法
猫の呼吸が速いと感じたら、まずは早めに動物病院への受診をおすすめします。
呼吸が速い原因は多岐に渡りますが、場合によっては早急な処置が必要になる場合があるからです。
猫は、通常鼻呼吸をする動物なので、口を開けて呼吸をする場合は何らかの異常が体に発生しているからです。
特に、肩で息をしていた場合やハアハアと荒い呼吸をするときなどは、注意して下さい。正常な呼吸が行われていないと舌の色が紫色になることもあります。
酸素を十分に取り込めていないため、チアノーゼの症状が起きてしまうからです。早めに動物病院に受診をして原因を突き止めることが非常に重要です。
不安な場合は早期の病院受診を
猫をペットとして飼っている人にとっては、家族の一員ともいえる存在です。
猫の病気を発見する方法として、呼吸の乱れは非常に重要になるため、日頃から気をつけてあげるようにしましょう。
特に呼吸が速くなる原因はさまざまで、運動・体温調節・心的ストレス・異物の誤飲なども要因の1つです。
そのほかに病気の場合もありますので注意して下さい。
猫カゼ・猫喘息・慢性気管支炎・心臓疾患・貧血・熱中症・外傷など、呼吸が速くなります。重症な場合は、命に関わることもあります。
猫の呼吸が速く判断ができないときなど、様子を見る場合があると思いますが以下のポイントを押さえておきましょう。
- 時間がたてば落ち着いている
- 意識がはっきりして元気
呼吸が整って上記のような症状に戻れば、あまり心配することはありませんが同じようなことが頻発する場合は、動物病院で検査をするようにしましょう。
まとめ
ここまで、猫の呼吸が速い原因や異常呼吸・考えられる病気について解説しました。
猫は、自分で苦しみや痛みなどの感情を伝えることはできません。飼い主が感じ取ってあげることが重要なのです。
医療も進化して、猫や犬などの寿命も長くなっています。
猫の平均寿命も昔に比べて長くなっていますが、室内飼いの場合は16歳前後で外に行く猫は14歳前後といわれています。野良猫の場合は5歳前後というので3倍近く高いのには驚きです。
なぜ、猫の寿命が長くなったのかというと、医療の発達とキャットフードの改良もその1つです。また、ペットへの飼い主の意識の変化も影響しています。
ペットとして飼う猫に対して、家族という認識が浸透したことで、子どもや兄弟のような大事な存在として扱われるようになったことも影響しているのです。
健康に注意したキャットフード、室内飼いで危険から遠ざけているなど、さまざまな要因があります。
大事な存在だからこそ、いつまでも元気で過ごして欲しいと願う飼い主が多いのではないでしょうか。
いつまでも元気で長生きしてもらうためにも病気の兆候を見逃さないようにしましょう。
参考文献