猫はがんになりやすい?猫のがんの種類や予防方法も合わせて解説!

猫 がん

猫の寿命が延びると同時に、猫ががんに罹患するケースも増えています。
本記事では猫のがんについて以下の点を中心にご紹介します。

  • 猫のがんにはどんな種類があるのか
  • 猫のがんにはどんな治療法があるのか
  • 猫のがんは予防できるのか

猫のがんについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです
ぜひ最後までお読みください。

猫のがんについて

まずは、猫のがんについての基礎知識を解説していきます。

そもそも猫のがんとは?

がんは、悪性の腫瘍として知られており、猫も人間と同じようにがんにかかることがあります。猫の平均寿命が伸びるにつれて、がんの発生率も高まっています。特に高齢の猫では、がんが死因のトップになったともいわれており、多くの猫ががんで亡くなっています。

がんとは、体を構成する細胞の中で、異常な遺伝子を持つ細胞が制御を失い、無秩序に増殖する病態を指します。通常、体の免疫システムはこれらの異常細胞を排除しますが、時には免疫システムがこれらを見逃し、がん細胞が腫瘍を形成し、がんとして成長することがあります。

猫ががんになる原因とは?

猫におけるがんの発生原因は多岐にわたりますが、主な要因は以下の通りです。

  • 加齢: 猫も人間と同様に、年齢が上がるにつれてがんになるリスクが高まります。これは、細胞の新陳代謝や免疫システムの効率が低下するためです。
  • ストレス: ストレスは猫の免疫力を低下させ、がん細胞の増殖を抑制する能力を弱めることがあります。
  • 遺伝的要素: 一部のがんは遺伝的な傾向を持っており、特定の猫種に多く見られることがあります。
  • ウイルス感染: 猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスなどの感染は、がんの発生に直接的な影響を与えることが知られています。
  • 化学物質への曝露: 農薬やタバコの煙など、猫が化学物質に曝露されることもがんのリスクを高めます。
  • 慢性炎症: 長期にわたる炎症は細胞にダメージを与え、がん化を促進する可能性があります。
  • ホルモン: 特定のホルモンは乳腺腫瘍や前立腺がんなど、ホルモン依存性のがんの発生に関与しています。
  • 肥満: 過剰な体重は、がんを含む多くの健康問題のリスクを増加させます。

これらの要因は、猫のがん発生の可能性を高めるとともに、猫の全体的な健康状態にも影響を及ぼします。

猫のがんの兆候

猫のがんは、様々な形で現れることがあり、その兆候は多岐にわたります。以下は、猫ががんを発症している可能性があるときに見られる症状です。

  • 体重の減少: 食欲に変化がないにもかかわらず体重が減少する場合があります。
  • 食欲不振: がんを含む様々な健康問題の兆候となり得ます。
  • 食事の様子の変化: 食べ方が乱れ、片側の口だけで食べるようになったりすると、口内の問題が考えられます。
  • 活動性の低下: 以前に比べて活動的でなくなったり、隠れるようになると、不調のサインかもしれません。
  • 皮膚の変化: しこりやできものが見つかる場合、がんの可能性があります。
  • 消化器系の問題: 嘔吐や下痢が続く場合、がん症状の場合があります。
  • 呼吸の変化: 呼吸が苦しくなったり、速くなる場合、がんが肺に影響を及ぼしている可能性があります。

猫に多いがんの種類

猫のがんにもさまざまな種類があります。以下、主ながんの種類について解説していきます。

リンパ腫

リンパ腫は猫におけるがんの中で、多くの割合を占めるがんです。リンパ腫は、猫の免疫システムに関連する細胞から発生し、適切な治療が行われない場合、他の臓器への転移を引き起こす可能性があります。その発生は猫の体の様々な部位に及びます。リンパ腫は、以下のように分類されることがあります。

  • 胃腸管リンパ腫: 頻繁に見られるリンパ腫のタイプで、消化器系に影響を及ぼします。
  • 縦隔型リンパ腫: 猫白血病ウイルスに感染している猫では、このタイプのリンパ腫が特に一般的です。
  • 多中心型リンパ腫: このタイプは猫の体にある複数のリンパ節に影響を及ぼすことがあります。

扁平上皮癌

扁平上皮癌は、特に中高齢の猫や白毛の猫に多く見られます。扁平上皮癌は、猫の皮膚や口内など、扁平上皮細胞が存在するあらゆる部位に発生する可能性があります。特に、口内に発生した場合は、その侵襲性が高く、骨にまで達することがあり、痛みを伴います。また、日光にさらされやすい部位、例えば耳の先や鼻、瞼などにも発生しやすいとされています。

扁平上皮癌は、他の臓器への転移は比較的少ないとされていますが、リンパ節や肺への転移が報告されたケースもあります。特に白毛の猫や屋外で活動する猫は紫外線の影響を受けやすく、注意が必要です。

悪性黒色腫(メラノーマ)

悪性黒色腫は、猫においてまれながんの一種ですが、発見された場合は重大な影響を及ぼす可能性があります。悪性黒色腫は、メラニンを生成する細胞から発生し、猫のくちびる、口内、目の周囲、爪床などに腫瘤を形成することが知られています。腫瘤は、しこりのような外観を持ち、時には表面が壊れて出血することもあります。

悪性黒色腫は、その色が必ずしも黒ではないため、診断が難しい場合があります。特に高齢の猫において発生することが多く、進行が速いため、早期発見と治療が非常に重要です。再発や他の臓器への転移が起こりやすいとされており、特に肺への転移は猫の予後に大きく影響します。

肥満細胞腫

肥満細胞腫は、マスト細胞と呼ばれる免疫系の細胞に発生する悪性腫瘍です。猫の体重増加とは無関係に発生します。肥満細胞腫には二つの主要な形態があります。

  • 皮膚型肥満細胞腫: 猫の皮膚、特に頭部や首周りに形成されることが多く、腫瘤に刺激を与えると周囲の皮膚が赤くなることが特徴です。手術による除去が一般的な治療法で、多くの場合、治療後の予後は良好です。
  • 内臓型肥満細胞腫: 脾臓、肝臓、消化管などの内臓に発生することがあります。

乳腺腫瘍

乳腺腫瘍は猫におけるがんの一種で、特に未避妊の猫に多く見られる病態です。これらの腫瘍は、猫の乳腺組織に発生し、多くが悪性であるため、早期の発見と治療が重要です。進行すると肺やリンパ節への転移が見られることもあります。

避妊手術は、乳腺腫瘍の発生を減少させる予防策とされており、特に初回発情前に手術を行うことで、そのリスクは大幅に下がるとされています。

猫のがんの治療方法について

猫のがん治療は、がんの種類や進行度、猫の全体的な健康状態に応じて検討されます。以下、治療方法について解説していきます。

手術

手術は猫のがん治療において重要な選択肢の一つであり、がん細胞を物理的に除去することを目的としています。以下は、手術に関する主要なポイントです。

  • 根治手術: がんが局所に限定されている場合、手術によってがん細胞を完全に取り除き、がんの完全な治癒を目指します。
  • 姑息手術: がんが広範囲に転移している場合や、完全な切除が困難な場合には、症状の緩和や生活の質の向上を目的とした手術が行われることがあります。
  • 手術のリスク: 手術には全身麻酔が必要であり、身体への負担が大きいこと、また手術後に機能障害や外見の変化が生じる可能性があることが挙げられます。

獣医師は、手術の利点とリスクを慎重に評価し、飼い主と相談の上で治療計画を立てます。

抗がん剤治療

抗がん剤治療は、猫のがん細胞を攻撃し、その成長を抑制または排除するために用いられる治療法です。抗がん剤治療のメリットは、転移性がんや血液がんなど、手術では対処が困難ながんに効果が期待される点や、全身麻酔が不要で、体への物理的な負担が少ない点です。デメリットは、抗がん剤は正常な細胞にも影響を与えるため、食欲不振や嘔吐などの副作用が生じることがあります。また、長期間の使用により、がん細胞が抗がん剤に耐性を持つことがあり、治療効果が低下する可能性があります。

放射線治療

放射線治療は、がん細胞を破壊するために放射線を使用する治療法です。放射線治療は特に、外科手術が適していない脳や心臓の近くの腫瘍に対して有効とされています。放射線治療のメリットとしては、身体への負担が少なく、痛みが伴わないこと、手術が困難な部位にもアクセスできるという点が挙げられます。デメリットは、広範囲に転移したがんには適用が難しい場合があり、治療中は猫が動かないように全身麻酔が必要です。また、放射線は正常細胞にも影響を与えるため、炎症などの副作用が生じることがあります。さらに、特殊な設備が必要であり、大学病院など限られた施設でしか治療を受けられないこと、費用が高額であることが挙げられます。

免疫療法

免疫療法は、猫のがん治療において新たに注目されているアプローチで、猫自身の免疫システムを活用してがん細胞を攻撃します。リンパ球などの免疫細胞を利用してがん細胞を標的とし、副作用が少ないことが特徴です。他の治療法と組み合わせて使用されることが多く、猫の体への負担を軽減しながらがんと闘う手助けをします。

免疫療法のメリットは、副作用が少なく、全身麻酔を必要としない点です。しかし、比較的新しい治療法であるため、まだ十分な治療データが蓄積されていないというデメリットもあります。そのため、治療の効果については個々の猫によって異なる可能性があり、完全な治癒を保証するものではありません。治療を受ける前には獣医師と十分に相談しましょう。

緩和ケア

猫のがん治療における緩和ケアの主な目的は、痛みや不快な症状を管理し、猫が可能な限り快適に過ごせるようにすることです。これには、鎮痛薬や麻薬の投与、栄養補助食品の提供、マッサージやレーザー治療などの補助療法が含まれます。また、食欲不振や脱水症状の予防のために、在宅での皮下点滴が行われることもあります。

緩和ケアは、がんだけでなく、慢性腎臓病、関節炎、糖尿病、うっ血性心疾患など、様々な病気が対象となります。猫が末期症状になり、治療を望まない決断をする場合、または病気が進行して日常生活に支障をきたす場合に、緩和ケアが実施されます。

緩和ケアは、猫のがん治療において、痛みや苦痛を和らげ、猫が尊厳を持って生涯を全うできるよう支援するための重要な選択肢です。猫と飼い主にとって、がんとの闘いの中で、より良い生活の質を追求するための一助となるでしょう。

猫ががんにならないために

最後に、猫のがん予防について解説します。

猫白血病ウイルス感染の予防

猫のがん予防において、猫白血病ウイルス(FeLV)の感染を防ぐことは極めて重要です。FeLVはリンパ系のがんや白血病など、さまざまな健康問題の原因となるウイルスであり、感染を避けることでこれらのリスクを減少させます。

猫白血病ウイルスの感染を防ぐための主な方法は、猫を完全室内飼育することです。これにより、感染した他の猫との直接的な接触を避けられます。また、ワクチン接種も有効とされています。ワクチンは感染を完全に防ぐものではありませんが、感染しても症状を軽減する助けとなることが期待されます。ただし、ワクチン接種はすべての猫に適しているわけではなく、すでにウイルスに感染している猫には効果がありません。また、副作用のリスクもゼロではないため、ワクチン接種を検討する際には、獣医師と十分に相談することが重要です。

免疫を整える

猫のがん予防においては、免疫システムを整えることが非常に重要です。猫の体内では、日々がん細胞が発生していますが、健康な免疫システムがこれらの細胞を排除し、がんの形成を防ぐ役割を果たしています。免疫システムが適切に機能している場合、ホルモンや自律神経のバランスが保たれ、がん細胞の成長が抑制されます。

猫ががんを発症してしまった場合でも、がんの進行を遅らせたり、転移を防いだりするために、免疫力を高めることが大切です。そのためには、適切な栄養、運動、ストレスの管理が重要です。

避妊手術

メス猫において、乳腺腫瘍のリスクを減らすためには、発情期が始まる前に避妊手術を施すことが推奨されます。特に、生後6ヶ月以内に手術を行うことで、乳腺腫瘍の発生確率を大幅に下げることが可能です。以前は1歳になるまで待つことが一般的でしたが、最近の研究により、発情期を経験した後の避妊手術では、乳腺腫瘍のリスクが増加することが示されているため、早期の手術が望ましいとされています。避妊手術は、メス猫の健康を守るだけでなく、不要な繁殖を防ぐことにも繋がります。

猫がいる部屋でタバコを吸わない

猫の健康を守るためには、彼らの周りでの喫煙を控えることが重要です。海外で行われた研究によると、猫がタバコの煙に晒されることで、がんを発症するリスクが顕著に増加することが明らかになっています。猫が副流煙を吸引すること、または煙に曝された自身の毛を舐める行為は、がんの発生に繋がる可能性があります。そのため、猫のいる環境では、換気扇の下であっても、喫煙を避けるべきです。煙は空気中に拡散しやすく、換気設備があっても猫にとって受動喫煙のリスクがないとは言えません。愛猫の長期的な健康を考えるならば、猫がいる空間での喫煙は控え、清潔で新鮮な空気を提供しましょう。

まとめ

猫 痙攣

ここまで猫のがんについてお伝えしてきました。
猫のがんの要点をまとめると以下の通りです。

  • 猫のがんには、リンパ腫、扁平上皮癌、悪性黒色腫(メラノーマ)、肥満細胞腫、乳腺腫瘍などの種類がある
  • 猫のがんの治療には、手術や抗がん剤治療、放射線治療、免疫療法、緩和ケアなどがあり、がんの種類や進行度、猫の全体的な健康状態に応じて検討される
  • 猫のがん予防には、猫白血病ウイルス感染の予防、免疫を整えること、メス猫の避妊手術、猫がいる部屋でタバコを吸わないことが大切

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献