猫風邪の症状・原因・治療法|動物病院を受診すべきタイミングや予防方法とは

猫風邪の症状・原因・治療法|動物病院を受診すべきタイミングや予防方法とは

風邪とは、鼻や喉などの上気道がウイルスに感染して起きる炎症を総称したもので、正式な病名ではありません。猫の風邪も同様で、一般的に、ヘルペスウイルス(猫ウイルス性鼻気管炎)、猫カリシウイルス、猫クラミジア、マイコプラズマなどを総称しているものです。飼っている猫が風邪をひいたようで動物病院を受診すべきか悩んでいる方や、猫風邪の予防方法を知りたい方に向けて、猫風邪についてわかりやすくまとめました。ぜひご一読ください。 

猫風邪の主な症状

猫風邪の主な症状

飼っている猫の様子が普段と違っていれば飼い主さんとしては心配するのが当然ではないでしょうか。体調不良にはさまざまな症状があります。まずは特に心配する必要がない症状なのか、風邪が疑われる症状なのか、あるいは別の病気を疑った方がよいのか、を知る目安として参考になりますよう、猫風邪の主な症状をまとめています。

くしゃみ・鼻水・発熱

猫は鼻呼吸をして呼吸器を寒さやウイルスから守っていると言われています。そのため、生理現象としてくしゃみをすることもありますが、くしゃみが連続している、何日も止まらない、鼻水が膿のようになって黄色や白色になっている、鼻水に鼻血が混ざっているなどの症状は病気によるものと疑った方がよいでしょう。猫の平熱は人間よりも高めで、個体差はありますが38度前後と言われています。個体差があるので一概に何度以上で発熱しているとは言いづらいですが、40度以上の熱は発熱している状態で間違いないでしょう。猫が発熱していると耳や肉球が熱くなるため、普段から触れておくのが望ましいです。猫の額は毛で覆われているため、発熱の有無を判断するのは難しいので、注意してください。

より正確に何度あるかを測定するには、猫のお尻から測ることになります。使用する体温計は人間用でも問題ありませんが、ペット用であれば先がやわらかくなっており肛門を傷つける危険性が低くなります。とはいえ急に暴れるなどの不安もあるため、普段より熱いと感じたら獣医師へ受診してもよいでしょう。

口内炎や目やに

口内炎の症状が特徴的な猫風邪は猫カリシウイルスで、ひどくなると潰瘍ができた痛みで食事を拒むことがあります。食欲低下がさらに風邪症状を悪化させるため、早めの対処が必要です。口内炎のサインとしては、口臭が普段よりもきつくなっている、あるいはよだれの量が増えているなどが挙げられます。

黄色や緑色、場合によっては乾燥して黒色になった目やには、ウイルス感染や細菌感染が原因であり、猫風邪、なかでも猫クラミジアの場合はひどい目やにがみられることが少なくないです。目やにを放置していると目が開きづらくなり、角膜炎などの病気に進行してしまう場合もあるため、注意が必要です。一方、白色(ミルク色)や茶色、赤茶色の目やには生理現象から来るもので、心配する必要性は低いです。

食欲不振など元気がなくなる

気分にムラがある猫は多く、個体差や季節差もあるため、どのくらい食べないと食欲不振という決まりはありません。動物病院を受診しても食欲不振の原因をすべて追及することは時間や労力があまりにもかかるため、とても難しいものです。しかし、成猫であっても1日、よりエネルギー消費が激しく、まだ身体に脂肪も少なくエネルギーの備蓄があまりできない子猫であれば12時間もまったく食事をしないというように、絶食時間が長くなった場合は注意が必要です。やはり飼い主さんが普段から体重や食事量を管理しておくことで、少しの変化にも気がつくことができるでしょう。一方であまり神経質にならないように注意は必要です。

 猫が風邪をひく主な原因

猫が風邪をひく主な原因

猫が風邪をひいたときの症状をみてきました。ひいてしまったものは仕方がないので早く治してあげたいと思いながらも、今後のためにもひいた原因が気になるのは飼い主さんとしては当然の気持ちです。すべてをつきとめることは難しいですが、以下に主な原因を示しますので、参考にしてください。なお、猫が風邪をひいたときの症状が人間と似ているため、猫から人間へ、反対に人間から猫へ、と風邪がうつるのではないかと心配する人がいるかもしれません。基本的には猫と人間が感染する病原体(ウイルスや細菌)は異なるため、病原体の突然変異などを除けば、その可能性はきわめて低いといえます。

ウイルス感染

まず外に出る機会がある猫は、ウイルス感染したほかの猫との接触で移ることがあります。人間と同じですが、ほかの猫がくしゃみをしたときに空気感染することが考えられます。また家のなかで飼っている猫であっても、飼い主さんが外でほかの猫に触れ、手や服に付着したウイルスを持ち帰ってしまい、自分の飼っている猫に移してしまうことも考えられます。風邪予防の観点でみれば、室内飼育を徹底した方が効果的ですし、交通事故や迷子などのリスクもほぼなくなるため、平均寿命も高いとのデータがあります。

ストレスや環境の変化による影響

猫がストレスを感じたときのサインとしては、過剰な毛づくろいや、食欲の低下、普段よりも隠れる時間が長くなるなどが挙げられます。人間にとっては小さな環境の変化であっても猫にはストレスとなる場合もあるでしょう。例えば、旅行や出張による生活リズムの変化のように、飼い主さんからみれば仕方のないことでもあくまで人間の都合ですし、飼い主さんにとっても大きな環境の変化となる引っ越しなどであれば、猫が戸惑って体調不良に陥ることは十分にありえることです。

免疫力の低下と体調不良

免疫力とはウイルスや細菌などの異物が身体に侵入することを防ぐ仕組みであり、自然治癒力や抵抗力と近い意味を持っています。つまり、免疫力が低下した状態で風邪をひくと重症化や長期化のリスクが高まります。

免疫力が低下する原因はさまざまです。猫エイズとも呼ばれる猫免疫不全ウイルス感染症と呼ばれる病気もありますが、加齢やストレスといった人間と共通する部分もあります。さらに、猫の免疫細胞の多くが腸内に集中していることから、腸内環境の乱れも免疫力低下につながります。これらのことから、適切な食事やストレスのない環境を整えることで猫の免疫力を維持し、体調を崩さないような対策をしやすいと考えられます。

 猫が風邪をひいてしまった場合の対処方法

猫が風邪をひいてしまった場合の対処方法

ここまで風邪をひいてしまったときにみられる症状や風邪をひく原因をみてきました。それでは、実際に風邪だと診断を受けた場合、あるいは風邪を疑う状態ですが、動物病院が休診ですぐに診察を受けられない場合にはどのように対処すればよいのでしょうか。

体を温かく保ち、快適な環境を整える

猫は寒さに強い動物とはいえません。特に生まれたばかりの子猫や年をとった老猫、持病を持った猫は寒さに弱いですし、種類によっても寒さへの耐性は異なります。毛の長い種類は寒さに強いとも限らないため、注意が必要です。また温度だけでなく湿度にも気をつけましょう。湿度が高い環境ではウイルスの活動が弱まるため、特に乾燥しがちな冬場は湿度を管理しましょう。

水分補給と消化のよい食事を与える

先に挙げたように猫は環境の変化に影響を受けやすく、特に心理的な食欲低下はよく見られます。工夫をすることで食欲低下がみられるときでも食事をしてくれることもあります。

①ドライフードをお湯でふやかす:においが強くなるため、ごはんの味に飽きている猫や鼻がつまっている猫にも効果的です。

②ドライフードにペースト状のおやつをかける:手間はかかりませんが、うえのおやつだけを食べないように混ぜる必要はあります。

③腸内環境を整える材料が入った食事を選ぶ:オリゴ糖、乳酸菌、酵素、ビール酵母、ビフィズス菌などは人間と同じく猫にも有効な成分といえます。

今の家猫の先祖であるリビアヤマネコは砂漠などの乾燥地帯に住んでいたため、今の猫も身体の構造が似ていることから、あまり水を飲まなくても大丈夫と言われます。しかし風邪をひいているときは普段よりも水分補給が重要です。といってもその必要量は風邪をひいていない普段の水分摂取量が猫によっても異なるので、普段から食事と同じように1日どのくらいの水を飲んでいるのか把握してあげるのが望ましいです。体重あたりの水分摂取量の目安は示されていますが、食事に含まれる分もあるので、一概にはいえません。特にドライフードを主食にしている場合は注意してください。また大事に思うあまりミネラルウォーターを使うと尿結石の原因となることがあるので与えないようにしましょう。

動物病院を受診すべきタイミング

これまで猫風邪でみられる症状を確認してきましたが、自然治癒に任せるべきか、動物病院を受診すべきか、はどのように判断すればよいでしょうか。何日も続いて症状が改善しない場合は受診を検討するという点は人間も同じですが、猫特有の症状もあります。

例えば、上記で挙げた食欲不振であっても、ほかに気になる症状、呼吸が早い、ふらつきやよだれが出ているなどがあれば長い時間様子をみることなく病院受診をした方がよいでしょう。昨今は夜間や休日でも受診できる動物病院も増えています。まだかかりつけとなる獣医師がいない方は、猫が元気なうちに調べておくとよいでしょう。人間と似たような症状だからといって、猫には有害な成分が含まれている場合もあるので、決して人間用の薬を与えないようにしましょう。

動物病院での猫風邪への治療法

猫風邪に市販薬はありませんが、動物病院にも特効薬はなく、症状に応じた対症療法を行います。ヘルペスウイルスには抗生物質が効かないため、点滴や解熱剤の投与が行われることが多く、カリシウイルスも抗生物質が効かないため、ネブライジング(吸入)や猫インターフェロンの注射が行われます。クラミジアは細菌の一種なので抗生物質が効きます。

ちなみに、耳に塗ると経皮的に吸収できる食欲増進剤もあり、人間と同じように猫が使える薬も日々進歩しています。自宅でも水分補給や栄養のある食事を通じて免疫力を高め、猫自身の治癒力で回復に向かうようにサポートする必要があります。

 猫の風邪を予防するためにできる日常ケア

猫の風邪を予防するためにできる日常ケア

上記で挙げたように猫の風邪には特効薬はありません。そのため、風邪にかかってから対処するよりも予防に力を入れておきたいですね。ここでは、自宅で普段からできる日常ケアをいくつか以下に示しますので、ぜひ参考にしてください。

栄養バランスのよい食事で免疫力を維持する

猫にとって栄養バランスのよい食事を考えるには、まず猫が肉食動物であることを忘れないようにしましょう。野生の肉食動物の多くは、捕まえた獲物の骨や内臓まで食べるため、間接的に植物を摂取しています。猫は長年人間と暮らしていても野生の食性を維持しており、全米飼料検査官協会(AAFCO)でもたんぱく質の必要量は定めていますが、炭水化物については猫にとっては必ずしも必要ではないとされています。

タンパク質や脂肪は筋肉や皮膚の構築、毛並みの維持に必要です。アミノ酸(タウリン)は心臓や目、さらに生殖器の機能に重要な役割を果たします。カルシウムとリンは歯や骨の健康維持に使われますが、バランスよく摂取する必要があります。

本来的に、猫の食事に調味料などの味付けは必要はありません。過度な塩分、糖分、添加物、香辛料などは猫の健康に悪影響を与える場合もあります。市販のキャットフードを使用するにしても、自家製の食事であっても、適切な食事は年齢や体重、活動レベルによっても変わりますので、獣医師に適切なアドバイスを仰ぐことをおすすめします。

また、あたりまえに思えるかもしれませんが、アルコール、カフェイン、キシリトールのように猫にとって毒性のある物質、カカオ類、ネギ類、猫に消化能力が備わっていない乳製品、生の貝類などは決して与えないように注意してください。

ストレスの少ない生活環境を整える

ストレスの少ない生活環境には、規則正しい食事や睡眠が重要です。仕事や旅行などで普段と異なる時間に食事を与える必要があるときは、自動給餌器を活用してもよいでしょう。

また静かな場所を好む猫は少なくないので、特に複数の猫をいっしょに飼っている方は、それぞれの猫が過ごせる自分だけの場所を確保できた方がよいでしょう。そして、飼い主さんとの適度なコミュニケーションも運動不足解消につながります。ボールや猫じゃらしを使ったり、爪とぎをしたりという方法があります。

猫は元々運動能力が高く、高いところに登ったり高いところから飛び降りたりしている姿をみる機会も少なくないと思いますが、室内で飼っていると運動不足になりがちなので、キャットタワーのように運動できる設備を整えてあげたり、お気に入りの場所や食事の場所を高いところにするだけでも、日常生活における運動量を増やすことができます。

適切な予防接種の実施

人間のインフルエンザや新型コロナウイルス感染症と同じく、予防接種は100%感染を防ぐ手段ではありませんが、仮にかかった場合でも重症化しづらくなります。一般的な動物病院で扱われているワクチンは3種混合が猫ヘルペス、猫カリシウイルス、猫パルボウイルス、5種混合は加えて猫白血病ウイルス、猫クラミジアを対象としています。少なからず副反応のリスクもありますし、金額や推奨される接種頻度や接種方法もそれぞれの猫によって異なるため、詳しくはかかりつけ医へ相談するとよいでしょう。

参考文献