2023年の全国犬猫飼育実態調査では、猫の飼育頭数は約9,069千頭と犬の飼育頭数を約2,000頭上回っています。
飼育している猫は、純血種が約2割、その他の雑種の猫が約8割という調査結果でした。
猫も人間や犬と同じように病気になる可能性があります。
猫を飼育している家庭や、これから猫を迎え入れようと検討されている方に向けて、猫の種類によってかかりやすい病気など知っておいてほしい病気のことを解説します。
病気になりやすい猫の種類
- 病気になりやすい猫の種類を教えてください
- この猫の種類だから特に病気になりやすいということはありませんが、猫の種類によって発症しやすい病気があります。病気の種類は、遺伝性疾患から猫全体によくみられる腎臓病や泌尿器疾患などさまざまです。
雑種などの混血種よりも、スコティッシュフォールドやペルシャなど血統のある純血種の方が、品種特有の病気を発症する確率は高いでしょう。生まれつき症状がある場合や、成長に伴って進行する場合もあります。
ただし、雑種などの混血種が病気になりにくいというわけではなく、生活環境や体の特徴によって病気になるリスクは変わってきます。
- 病気にかかりやすい理由を教えてください。
- 純血種では品種による好発性疾患があります。その理由として、血統を持つ純血種は血統を安定させるための繁殖過程により血が濃くなるため、遺伝性疾患を持って生まれる可能性があると考えられています。
どちらかの親に遺伝子の異常があると、子どもに遺伝して発症する確率は50%です。近年では、交配前に親同士の遺伝子検査をすることで、遺伝性疾患を持つ子どもを産ませないようにコントロールできるようになっています。
また、肥満気味の猫は病気のリスクが高まります。肥満により引き起こされる可能性のある病気は、糖尿病・関節炎・皮膚病・心臓病などです。
- 猫の遺伝性疾患とはなんですか?
- 猫の代表的な遺伝性疾患は以下5個程あります。
- 多発性嚢胞腎症
- 肥大型心筋症
- 骨軟骨異形成症
- ピルビン酸キナーゼ欠損症
- 進行性網膜萎縮症
多発性嚢胞腎症は、腎臓に多数の嚢胞が形成され、腎臓の機能低下を引き起こします。4歳以上で発症することが多いといわれています。
肥大型心筋症は、左心室の肥大によってうっ血性心不全を引き起こし、肺水腫や血栓症などを発症するリスクもある病気です。骨軟骨異形成症は、主に四肢の関節に骨組織の増殖が起こる病気で、手首や踵などに瘤が形成されます。
瘤の形成により、足を引きずるような歩き方をしたり、俊敏に走らなくなったりするようになります。ピルビン酸キナーゼ欠損症は、ピルビン酸キナーゼという酵素の不足によって、赤血球が破壊されて貧血が起こる病気です。生後2〜3ヵ月齢で貧血を発症することが多いといわれています。
進行性網膜萎縮症は、目の網膜が変性・委縮することで視力低下や失明の恐れがある病気です。猫では稀な病気とされています。猫の種類によって、どの遺伝性疾患を発症しやすいかは異なります。
遺伝子疾患は、あらかじめ病気がわかっている場合には繁殖させないといったブリーダーの判断やモラルが何より重要ですが、品種によってかかりやすい病気の傾向があるのは事実です。猫を迎える前に、品種特有の病気の傾向について知っておくことで、もし発症してしまった場合に早期発見につながり、冷静に対処することができるでしょう。
【品種別】猫がなりやすい病気
- スコティッシュフォールドがなりやすい病気はなんですか?
- 折れ耳が特徴的なスコティッシュフォールドで発症しやすい遺伝性疾患は、骨軟骨異形成症・多発性嚢胞腎症・肥大型心筋症などがあります。
特に注意したい遺伝性疾患は、骨軟骨異形成症です。スコティッシュフォールドの特徴でもある折れ耳は、骨軟骨異形成症の軟骨異常によって起こり垂れ下がった形になっています。一方で耳が立っているスコティッシュフォールドもいます。
その他の病気は、外耳炎・尿石症・関節炎などです。外耳炎は折れ耳のスコティッシュフォールドによくみられます。耳を痒がるようなら動物病院で耳の処置をしてもらいましょう。
- マンチカンがなりやすい病気を教えてください
- 短い足が特徴的なマンチカンで発症しやすい遺伝性疾患は、骨軟骨異形成症・多発性嚢胞腎症・肥大型心筋症などがあります。
その他の病気は、椎間板ヘルニア・毛球症・外耳炎・尿石症などです。マンチカンには短足タイプと長足タイプ、中長足タイプがいます。
短足タイプは椎間板ヘルニアに注意が必要です。犬ほど発症する確率は高くないですが、足腰や関節に負担がかかりやすいため、椎間板ヘルニアになる可能性があります。また、足腰や関節への負担を考え、肥満にならないように十分な運動や食事管理をすることも大切です。
- ペルシャがかかりやすい病気はなんですか?
- 平たい顔が特徴のペルシャで発症しやすい遺伝性疾患は、骨軟骨異形成症・多発性嚢胞腎症・肥大型心筋症・進行性網膜萎縮症などがあります。
その他には毛球症・流涙症・短頭種気道症候群・角膜炎・尿石症などです。ペルシャはふわふわの長い被毛が特徴的ですが、グルーミングで飲み込んだ毛が胃や腸で球状になり消化管内で閉塞を起こす毛球症になる可能性があります。
また、鼻が短いペルシャは涙を鼻の奥へ流す鼻涙管が狭くなっていたり詰まったりして常に涙が出ている流涙症にもなりやすいです。
- アメリカンショートヘアがかかりやすい病気はなんですか?
- 活発で体が丈夫なイメージのアメリカンショートヘアが発症しやすい遺伝性疾患は、多発性嚢胞腎症・肥大型心筋症などがあります。
その他の病気は、尿石症・皮膚炎・関節炎・糖尿病などです。アメリカンショートヘアは太りやすい体質といわれています。肥満は糖尿病や関節炎などさまざまな疾患のリスクを高めるため、食事管理や十分な運動で太らせないように気を付けましょう。
- ノルウェージャンフォレストキャットがなりやすい病気はありますか?
- 長毛で大きな体が特徴のノルウェージャンフォレストキャットで発症しやすい遺伝性疾患は、肥大型心筋症・ピルビン酸キナーゼ欠損症・進行性網膜萎縮症・グリコーゲン貯蔵病(糖原病)などがあります。
グリコーゲン貯蔵病とは、通常全身で利用される糖分のグリコーゲンがうまく利用されずに体内に異常に溜まり、低血糖や肝臓の腫大などが起こる遺伝性疾患です。
その他の病気は、毛球症・糖尿病・皮膚疾患などです。長毛種であるノルウェージャンフォレストキャットは毛球症に注意する必要があります。日頃からブラッシングをして抜け毛を減らすことで予防しましょう。また、肥満による糖尿病にも注意が必要です。
体重チェックと食事管理で肥満にならないように気を付けましょう。
病気になりやすい猫の対策
- 猫の遺伝性疾患の治療法を教えてください。
- 残念ながら、今の段階では遺伝性疾患に対する有効的な治療法はありません。いずれの疾患も症状に合わせた内科的な対症療法を用いて、症状や進行を遅らせる治療が中心となります。
完治は望めないため、できるだけ<QOL(生活の質)の維持を目的とする治療になってきます。例えば、骨軟骨異形成症で痛みがある場合は、消炎鎮痛剤やサプリメントを使って痛みを緩和させるような治療です。
病気によって治療方法は異なるので、獣医師に確認することをおすすめします。
- 猫の病気を予防する方法はありますか?
- 遺伝性疾患は、残念ながら効果的な予防方法はありません。しかし、事前に遺伝子検査をしておくと遺伝性疾患の発症リスクがわかるため、発症に備えることができます。
また、定期的に動物病院で健診を受けることで、早期発見ができ重症化を防ぐことができるでしょう。遺伝性疾患以外の病気を予防するためには、体重管理や適切な量の食事管理、十分な運動でストレス発散させるなど適切な健康管理を心がけることが病気の予防につながります。
また、異変にすぐに気が付くことができるように、日頃から猫の体や排泄物のチェックをしておくことが大切です。
編集部まとめ
いかがでしたでしょうか。猫にもさまざまな猫の病気があり、猫の種類によってもかかりやすい病気が異なるのがわかったのではないでしょうか。
猫を飼育する際は病気ともお付き合いする覚悟が必要です。しかし病気を恐れていては、せっかくの猫との暮らしが楽しめません。
かかりやすい病気・ケガについて理解し、日頃から猫の体の健康管理を心がけることで病気の予防や早期発見につながります。
少しでもいつもと違う様子が見られたら、動物病院を受診するようにしましょう。
参考文献