猫が耳を痒がる原因は?考えられる病気、受診の目安、応急処置方法などを解説

猫が耳を痒がる原因は?考えられる病気、受診の目安、応急処置方法などを解説

愛猫が頻繁に耳を掻く、頭を振る、耳を床にすりすりするなどの仕草をしている場合、耳に痒みを感じている可能性があります。耳の異常は、細菌感染や皮膚疾患、アレルギーなどさまざまな病気の疑いがあり、放置すると重症化する恐れがあるので危険です。ここでは、猫が耳を痒がる原因や考えられる病気、動物病院を受診する目安、応急処置や治療法についてQ&A形式で解説します。

猫が耳を痒がる原因

猫が耳を痒がる原因
猫が耳を痒がるのですが、どのような原因が考えられますか?
猫が耳を痒がる仕草を見せている場合は、外耳炎が疑われます。ただ、一口に外耳炎といってもその原因は、細菌、真菌、寄生虫、アレルギー反応、異物混入、腫瘍、ポリープなど多岐に渡ります。多くみられるのは、細菌や真菌の感染による外耳炎で、湿度の高い夏に増加する傾向にあります。また、子猫の場合はダニ(耳ヒゼンダニ)の寄生、高齢猫の場合は腫瘍やポリープによる外耳炎リスクが高いです。根本原因によって治療法が異なるので、まずは動物病院で診察を受けることが重要です。
アレルギーが原因の可能性はありますか?
あります。猫が耳を痒がる原因がアレルギーの場合、食物アレルギー、環境アレルゲン(花粉、ハウスダストなど)が主な要因です。アレルギー反応がでると耳介から鼓膜の外側までの領域を指す外耳の皮膚に炎症反応がでます。その結果、慢性的な痒みを和らげるために掻きむしり、傷やかさぶた、脱毛にもつながります。アレルギーを放置すると、二次感染(細菌、真菌など)につながるリスクが高く、完治するのに時間がかかる原因になるので危険です。痒がる素振りや皮膚の炎症がみられたら、早急に動物病院を受診しましょう。
耳垢が出ている場合は痒がりますか?
耳垢の過剰分泌は耳トラブルのサインなので、痒がることがあります。耳垢が真っ黒に汚れている、頭を振ったときに黒い耳垢がでてくる、耳掃除をしても黒い耳垢が出続ける場合は耳ダニが疑われるので要注意です。健康な猫でも耳垢が出ることはありますが、ごく少量にとどまります。耳ダニは強い痒みを伴うのが特徴的であり、慢性的な痒みに耐えかねて強く掻きむしることで患部を悪化させる恐れがあるので放置せずに早期治療を施しましょう。

猫が耳を痒がる際に考えられる病気

猫が耳を痒がるとき、どのような病気が考えられますか?
猫が耳を痒がるときに考えられる病気として、耳ヒゼンダニ症、細菌性・マラセチア性外耳炎、アレルギー性皮膚炎、耳道内腫瘍、耳道内異物などが挙げられます。耳ヒゼンダニは、猫の外耳炎において多い原因であり、多頭飼い、子猫、外に出る猫は寄生させるリスクが高いので要注意です。高齢の猫が片耳だけを痒がる素振りをみせている場合は耳道内腫瘍や脳の病気などの可能性があるので耳鏡検査やCT検査で腫瘍の有無を確認する場合もあります。
耳から悪臭がするのは細菌感染によるものですか?
猫の耳から悪臭がする場合は、細菌性・マラセチア性外耳炎が疑われます。健康な猫の耳には細菌やマラセチアなど常在菌が存在しています。ただし、猫の免疫力が低下したり皮膚の状態が悪くなったりすると細菌感染を引き起こして耳の炎症につながります。悪臭の原因が耳垢で痒みを伴う症状をみせている場合は、細菌感染の症状と同じですので早期検査や早期治療が必要です。耳の外傷や全身の病気が原因になっている可能性があるので根本原因を特定して治療をしなければなりません。アメリカンカールのように耳の形が独特な猫ほど細菌感染のリスクが高いので要注意です。
耳の痒みを放置するとどうなるか教えてください
耳の痒みを放置すると、耳血腫や中耳炎など重症化につながる恐れがあります。耳血腫は、血液のような体液が耳の皮下に溜まる状態です。耳を痒がる猫が強く引っ掻いたときに軟骨を傷つけると発症します。治療が遅れると変形することも珍しくありません。中耳炎は稀ですが、外耳炎が進行すると鼓膜に穴が空いて中耳まで炎症が広がり発病することがあります。痒みに加えて首のねじれやぐるぐると徘徊するなど平衡感覚に支障をきたすのが特徴的です。
耳を触ろうとすると嫌がる場合は、病気が隠れていますか?
普段は触られることを嫌がらないにも関わらず、突然耳を触られることに対して拒絶反応を示すようになったら、痛みや違和感など耳トラブルを抱えている疑いがあります。アレルギーや感染症などで皮膚に炎症が起きている程度であれば早期治療で回復が見込めますが、違和感を放置すると外耳炎や中耳炎、耳血腫などの病気を発病するリスクにつながるので要注意です。飼い主さんが判断するのはむずかしいので、早めにかかりつけの獣医師に診てもらい必要な検査と治療を受けましょう。

動物病院を受診する目安

猫がよく耳を痒がる場合、病院に連れて行くべきですか?
猫がよく耳を痒がる場合、感染症やアレルギーなどが原因で外耳炎になっている可能性があるので、早めに動物病院を受診するべきです。猫が耳を痒がるとき、手や足で耳を引っ掻く、壁や床に擦り付ける、頭を繰り返し振る、顔を傾ける、耳を触ると怒るなどの仕草をすることがあります。外耳炎を放置すると重症化する恐れがあるので、猫が耳を痒がる仕草の特徴を把握しておき、違和感を感じたら早めにかかりつけ医に相談しましょう。
耳が少し赤いだけで、特に痒がる仕草がない場合は様子見でいいですか?
猫の耳が少し赤いだけで耳を痒がる仕草をまったくみせないのであれば、経過観察で様子をみても問題ありません。猫は、犬と比べて動物病院に対してストレスを感じやすい傾向にあります。無闇に動物病院に連れていくとストレスから免疫力の低下を引き起こす恐れがあるので逆効果です。耳を痒がる仕草はさまざまあるので、耳の赤みが引くまではそのほかの変化がみられないかどうか細かくチェックしましょう。
多頭飼いしている場合、ほかの猫も受診させるべきか教えてください
耳ダニは猫同士の接触でも感染するリスクが高いので、目立った症状がでていなくても検査を受けることを推奨します。耳ダニの検査方法は、綿棒で耳垢を採取してミミヒゼンダニの成虫や虫卵の有無を顕微鏡で検出します。愛猫の身体に過度な負担がかかる検査ではないので、早期発見や感染拡大を防止するためにも検査を受けたほうが賢明です。なお、非ノミ非食物アレルギー性皮膚炎のように感染しないタイプの耳トラブルもあるので、検査の必要性についてはかかりつけ医に相談してみてください。

耳の痒みの応急処置や治療法

耳の痒みの応急処置や治療法
猫が耳を痒がったときにできる応急処置方法を教えてください
猫が耳を痒がったときはできる限り早く動物病院を受診してください。飼い主さんが自己判断で耳掃除をしたり、人間の薬を塗布したりする処置は症状を悪化させる恐れがあるので厳禁です。耳の痒みが発生している原因によって治療方法は異なります。まずは動物病院で適切な検査を受けてから投薬や耳洗浄など適切な処置を施すことで痒みを和らげ、原因の解決につながります。
耳の痒みは投薬で治りますか?
耳の痒みに対する治療として、猫の状態や耳垢の質や量にあわせた抗生剤、抗真菌薬、炎症止めの効果のある点耳薬や内服薬の投薬方法があります。耳の痒みが発生している原因に応じて使用する薬剤の種類は異なるので、まずは検査を受けてから治療方針を決めなければなりません。過去に耳の痒みで動物病院を受診したことがあっても、前回とは異なる原因で耳の痒みが発生している可能性があるため、過去に使用した点耳薬や内服薬は勝手に与えないようにしてください。
自宅でできる耳の痒み予防策があれば教えてください
猫の耳の痒みを予防するためにできるホームケアとして、猫の生活環境を清潔に保つことが何より大切です。また、飼い主さんが愛猫の耳掃除をする際には、耳の奥まで綿棒などを突っ込むことはせず、表面を濡らしたコットンで表面を軽く拭き取る程度に済ませてください。間違った耳かきをすると耳道内や皮膚が傷ついて炎症を引き起こす恐れがあるからです。耳トラブルが慢性化している場合は、痒みや炎症が出る前に動物病院を受診して耳洗浄をしてもらっても良いでしょう。

編集部まとめ

猫が耳を痒がる仕草には、外耳炎などの耳の病気が隠れている可能性があります。痒がる仕草のほかにも黒い耳垢、悪臭、皮膚の炎症などの症状がみられた場合は、早急に動物病院を受診することで悪化を防げます。耳トラブルの初期症状を放置すると、痒みが慢性化したり中耳炎などの重症化につながったりするので危険です。普段からよく観察して、耳に違和感を抱いたら早期治療を最優先にして愛猫の快適な暮らしを守ってあげましょう。

参考文献