猫の高血圧とは?引き起こしやすい原因・予防法なども解説

猫 高血圧

猫が高血圧の場合、体の組織に障害を与える可能性が高いと聞いたことはありませんか。高血圧の状態が続くと内臓組織に大きな影響を与えるため、注意が必要です。

猫の高血圧はほぼ無症状で状態が続くため、気付いたときには重症化しているケースもあります。そのため、未然に高血圧を防ぐ対策が効果的です。

本記事では、猫の高血圧で引き起こしやすい原因や予防法を解説します。

飼っている猫の高血圧が心配な方や、猫の高血圧によって引き起こされる疾患を詳しく知りたい方は参考にしてください。

猫が高血圧を引き起こす原因・症状

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猫の高血圧症とはどのような状態ですか?
猫の高血圧症とは、全身の血圧が上昇した状態が継続し、さまざまな病気を引き起こす病気です。
初回血圧測定の収縮期血圧が160mmHg以上179mmHg以下の場合、高血圧の疑いがあり、4〜8週間後に再度血圧を測定します。
その後、複数回血圧測定しても、収縮期血圧が160mmHg以上の状態が継続される場合は高血圧症と診断されます。
高血圧症が続くと臓器の損傷を与える標的機能障害を引き起こし、腎疾患や眼病変などを発症する可能性が高いです。
ほかにも、血液を送るために強い力が必要なため、心臓に負担がかかります。心不全や心音異常などの心疾患を引き起こすリスクがあるでしょう。
収縮期血圧が180mmHg以上であれば重度の高血圧とされ、標的機能障害のリスクが高い状態といえます。そのため、1〜2週間後に再測定し測定誤差などではないと判断できたら、すぐに血圧を下げる治療が必要です。
猫が高血圧を引き起こす原因は何ですか?
猫が高血圧を引き起こす原因としては、環境ストレス要因・状況ストレス要因による状況高血圧やほかの疾患の発症や血圧上昇を招くほかの疾患の発症・投薬による二次性高血圧が考えられます。
状況高血圧であれば不慣れな環境下での血圧測定が考えられるため、普段過ごしているところでリラックスして測定すると正常な血圧がわかります。
二次性高血圧の場合、症状に対する治療的介入により初期段階では血圧上昇がみられるものの、効果的に血圧の上昇が抑えられます。
なお、原因不明の特発性高血圧は全体の2割程みられるため、血圧だけでなくほかの検査も実施したうえで総合的に判断されるでしょう。
高血圧の主な症状を教えてください。
猫の高血圧による主な症状としては、目の充血・元気消失・性格や行動の変化・平衡障害などが挙げられます。
高血圧の状態が続くと組織障害があらわれ、ほかの疾患が発症した際に症状として表面化するのがほとんどです。
眼病変は高血圧下では高い確率で発症し、目の網膜が剥離しやすいため、目の充血がみられます。
高血圧症脳症を発症すると頭蓋内疾患があらわれ、脳卒中関連虚血に起因する性格や行動の変化・平衡障害などの症状がみられます。
このように高血圧そのものの症状よりも高血圧の状態によって発症した疾患の症状があらわれて、初めて高血圧を疑うでしょう。
ただし、これらの症状はほかの疾病でもよくみられる症状のため、注意が必要です。
ほかの疾患が原因で高血圧が起こる可能性はありますか?
高血圧そのものからほかの疾患を発症するだけでなく、ほかの疾患の発症が原因で高血圧が起こる可能性もあります。具体的な疾患では、慢性腎臓病や甲状腺機能亢進などが挙げられます。
慢性腎臓病は腎臓が何らかのダメージを受け十分機能できない状態が続くと、尿濃縮機能が低下し、さまざまな臨床症状があらわれる病気です。
脱水などの症状もあらわれ、十分な水分が体内で保たれなくなると血圧が上昇し、高血圧が起こります。
甲状腺機能亢進症は甲状腺の機能性腺腫またはガンによって、サイロキシンが過剰に分泌される病気です。
甲状腺ホルモンの影響により副腎髄質からカテコールアミンの感受性が上がるため、血圧が上昇します。
どちらの疾患も高齢の猫がかかりやすいため、9歳以上の猫には定期的に血圧測定を行うと早期発見につながる可能性があります。

猫の高血圧の予防法

獣医師と猫

猫の高血圧の予防法はありますか?
猫の高血圧を予防するためには、慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症などの疾患を早期発見・治療するのが効果的です。
高血圧自体は無症状で血圧測定を行われなければ発見できません。そのため、ほかの疾患の発見が遅れると高血圧状態が長期間にわたり続き、さらに内臓機能に障害をおこしてしまう可能性があります。
また、高齢の猫は高血圧になりやすいため、定期的に血圧測定を行うと血圧の変化に気付きやすいでしょう。
いずれの予防法も飼い主が猫の高血圧について血圧管理を行う姿勢が重要です。
猫の高血圧での検査方法を教えてください。
猫が高血圧かどうかを診断し治療するためには、血圧測定を複数回実施して収縮気血圧をもとに行われます。
標的臓器障害がある場合は血圧測定を1回実施したのち、血圧数値を確認しすぐに治療が行われますが、通常は測定誤差や状況高血圧の可能性を排除するため、複数回測定します。
また、血圧測定の際に正確な血圧を測定するためには猫や血圧測定機器の取り扱いに慣れている者が実施し、測定する猫に合った適正サイズのカフを選ぶとよいでしょう。
定期検診で高血圧を未然に防ぐことはできますか?
高血圧が起因してほかの疾患を発症する場合は、定期的な血圧管理を行うと高血圧を未然に防げます。
猫の収縮期血圧が140mmHg未満であれば正常血圧であり、標的臓器障害リスクが極めて低いとされています。
140mmHg以上の場合は標的臓器障害リスクが上昇しているため、経過観察を行い、再度血圧測定して高血圧である場合は早期に治療しましょう。
このように血圧測定から収縮期血圧を定期的に測定し、状態を常に把握すると高血圧の予防につながります。

猫の高血圧を治療する際に気を付けたいこと

動物病院で診察を受ける

猫の高血圧を治療する際に注意することはありますか?
猫の高血圧を治療する際の注意点としては、標的臓器障害や高血圧の原因となる薬剤の特定を検査などで行い、適切な治療を行うとともに高血圧の治療も同時に実施することです。
標的臓器障害や高血圧の原因となる薬剤を特定し、治療することである程度は高血圧の解消がみられますが、ほとんどの場合正常血圧まで戻りません。
そのため、上記の治療とともに必要に応じて降圧剤を服用し、緩やかに血圧を正常血圧まで下げていくと猫の体への負担を軽減できます。
急激に血圧を下げようとすると低血圧を発症する恐れもあるため、血圧管理には注意が必要です。
治療の期間はどのくらいかかりますか?
降圧剤の使用による高血圧の治療が行われる場合、降圧剤の効果の検証を行い、その後緩やかに正常血圧まで下げていくため、早くても4〜6ヵ月程度の治療期間です。
降圧剤による治療の場合、第一選択療法を7〜10日間実施します。すでに標的臓器障害が発症している場合は1〜3日間実施し、再度血圧測定をして降圧効果を検証します。
高血圧を患っているそれぞれの猫に合った降圧剤がみつかったら、服用を継続し、血圧の数値によっては薬の量を調整して正常血圧を目指していく流れです。
猫に合う降圧剤がすぐにみつかり、順調に血圧が下がるとスムーズに治療が進むでしょう。
しかし、猫に合う降圧剤がみつかるまで時間がかかったり、服用しても血圧が思うように下がらなかったりすると治療期間は長期化する可能性があります。
治療費の相場について教えてください。
猫の高血圧を治療するための治療費の相場としては、治療方針によって異なります。まずは高血圧を診断するために行われる検査料・初診料などは下記の内訳になります。

  • 初診料 3,000円(税込)
  • 血圧検査 3,000円(税込)
  • 採血料 500円(税込)
  • 全球計算 1,000円(税込)
  • 検体採取料 1,500〜2,000円(税込)

その後、高血圧の原因となっている疾患の治療や降圧剤の治療を行う場合、入院・手術の有無や服用する薬の種類などによって大きく異なります。
獣医師へみてもらい治療方法について相談していくなかで、どのくらいの費用になるのかを確認しましょう。

編集部まとめ

日向ぼっこする猫

本記事では、猫の高血圧で引き起こしやすい原因や予防法なども解説しました。

猫の高血圧は加齢などによって発生するケースやほかの疾患に罹患したために高血圧になるケースがあります。

高血圧の状態が長期間続くと標的臓器障害のリスクが高まり、腎疾患や眼病変などを引き起こす可能性が高いです。

そのため、定期的に血圧測定を行い血圧管理をするといった、予防法を取り入れると未然に高血圧を防げるでしょう。

また、ほかの疾患により高血圧になるケースでは疾患の治療が進むにつれ、高血圧が解消する場合もあります。

高血圧の治療としては降圧剤を服用しますが、それぞれの猫に合った降圧剤がみつかるまで時間がかかる可能性があり、治療期間は長期化することもあります。

飼い主は普段から猫の血圧管理に関心をもって予防策を取り入れて、高血圧から猫を守りましょう。

参考文献