猫を飼っていると唐突にえずいてびっくりさせられることがあるでしょう。
猫は嘔吐しやすい性質を持つ動物ですが、あまりに頻繁にえずいている場合は病気が隠れていると疑われます。
猫がえずく際はどのような病気の可能性があるのでしょうか。またどの程度えずくと動物病院に連れて行くべきなのでしょうか。
えずきの原因・家庭でできる対処法と一緒にわかりやすく解説します。猫の健康を守るために、身近な症状であるえずきへの理解を深めましょう。
猫がえずくのは病気のサイン?
猫がえずく、つまり吐きそうな動作をするが吐かない症状は嘔吐の症状に含まれます。猫は身体構造・性質上嘔吐しやすい動物ですが、不自然に頻発する・長期間続く嘔吐症状には病気が隠れているケースもあるため注意が必要です。
嘔吐がサインになる病気の種類には、以下のようなものが挙げられます。
- 胃・腸の病気
- 全身の病気
- 神経の病気
- 精神的な病気
えずいているのみで実際には吐いていなくても、頻度が多く元気がない様子であれば動物病院の受診を検討しましょう。猫が嘔吐する原因は多岐に渡るため、獣医師は飼い主への問診をはじめ以下のような検査を組み合わせて原因を特定します。
- レントゲン検査
- 造影検査
- 内視鏡検査
- 超音波検査
- 血液検査
- 尿検査
- 糞便検査
- 血液化学検査
- ウイルス検査など
検査の種類の多さからも嘔吐の原因を突き止めることの難しさが伝わるでしょう。大切な家族の一員を嘔吐の苦しさから解放するためにも、異常を感じたら早めに信頼できる動物病院に相談しましょう。
猫がえずく主な原因
猫がえずくとき、脳の延髄にある嘔吐中枢が刺激されてると予想されます。嘔吐中枢を刺激する原因には病気を含めさまざまなものがあります。
以下で挙げているのは猫がえずく主な原因です。
- 毛玉を吐き出そうとしている
- ストレスを感じている
- 早食い・食べ過ぎている
- 食物アレルギー・中毒を起こしている
- 誤食・誤飲をしている
飼い主が猫がえずく主な原因を知っておくことで、原因の思い当たらない不自然なえずき・病気が隠れているえずきに気が付くことができます。適切な健康管理のために、知識を持って猫の様子を観察するとよいでしょう。
毛玉を吐き出そうとしている
猫は1日に何度も体をなめて毛づくろいし、体を清潔に保つ習性があります。猫は毛づくろいで抜けた毛を飲み込みますが、抜け毛は食べ物ではない異物にあたるため毛玉として吐き出されます。
毛玉の排出に伴う嘔吐は猫にとっては正常な動作です。飼い主は猫が毛玉を吐き出しやすいよう食事内容などで手助けしましょう。
しかし飲み込む抜け毛の量が多くなり過ぎると腸内で毛玉が集まり大きくなってしまい、腸をふさぐ腸閉塞になるリスクが高まります。品種に合った適度なブラッシングで飲み込む抜け毛の量を抑える必要があります。
ストレスを感じている
レントゲン検査・内視鏡検査など一般的な検査では異常が認められなかった・ほかの原因が考えられない場合は、精神的なストレスが原因で嘔吐を起こしていると診断されます。ストレスの原因には以下のようなものが想定されます。
- 住環境が変化した
- 同居する人・ペットが増えた
- 子育てしている
- 病気を患っているなど
縄張りが変化したり脅かされたりしている場合、猫は特に大きなストレスを感じやすいため注意して見てあげましょう。ただし嘔吐の原因がストレスにあるケースはごくまれです。
早食い・食べ過ぎている
猫は早食い・食べ過ぎなどが原因で偶発的に食べたものを嘔吐・吐出してしまうことがあります。吐出とは食道に入った食べ物が自然と排出される動作で、腹部の筋肉が激しく収縮して胃の内容物が吐き出される嘔吐とは明確に区罰されます。
吐出は身体的負担が少なく、猫も吐出しても元気な様子であることが多いでしょう。食べ方が原因で偶発的に嘔吐・吐出が引き起こされているぶんには心配ありませんが、長く症状が続くようであれば口・食道・胃の入り口にかけての異常が疑われます。
食事が満足に取れなくなるため、嘔吐・吐出が続く場合は獣医師に相談しましょう。
食物アレルギー・中毒を起こしている
猫が嘔吐する場合は食物アレルギー・中毒も疑いましょう。猫の食事性アレルギーは発症率は低いですが、猫用魚缶詰によるものが多いといいます。
食物アレルギー・中毒を起こしているときには、原因となる食べ物を摂取して短時間で耳・額・眼周辺・頚部を中心に以下のような症状が見られます。
- 痒み
- 紅斑
- 脱毛
- 粟粒性皮膚炎
- 表皮剥離
- 好酸球性斑など
猫の食品アレルギーでは以上のような皮膚炎と並んで、消化器官に嘔吐・下痢といった症状が表れる場合もあります。猫を危険から守って飼育するために猫が中毒を起こす食品も知っておきましょう。
以下で猫が嘔吐の中毒症状を引き起こす食品を列挙します。
- 玉ネギ・ネギ
- スモモ
- アボカド
- ブドウ・レーズン
- トマト
- アスパラガス
- チョコレート
- イカ・エビ・タコなど
またユリ・アサガオ・スイレンなどの観賞用植物も嘔吐を引き起こします。猫は毛玉を吐くために植物を食べるため、猫の居住スペースに置く植物には注意しましょう。
病気を患っている
嘔吐に隠れている病気は実にさまざまです。以下でその一部を紹介します。
- 咽頭・喉頭の炎症
- 胃腸炎
- 寄生虫
- 薬物・食事・異物
- ネコ白血病ウイルス
- ネコ免疫不全ウイルス
- ネコ伝染性腹膜炎ウイルス
- 糖尿病
- 肝臓病
- 腹膜炎など
口の中・胃腸・胃腸以外のお腹の臓器・全身疾患・代謝・神経系など体のさまざま部位に関連して、嘔吐が引き起こされていることがわかるでしょう。
猫はよく吐く動物だから大丈夫と安易に放置しては、危険な病気の兆候を見落とします。猫の様子を日頃からよく観察して、異変を感じたら早めに動物病院で相談しましょう。
猫がえずくときにできる対処法
飼い主ができるえずき対策にはどのようなものがあるでしょうか。えずきの程度によって以下の方法を提案します。
- 猫草を与える
- 胃のケアを目的とした食事管理を行う
- 動物病院を受診する
初めて猫を飼育する際は、えずきの頻度・様子などからの自己判断は難しいでしょう。心配であれば早めに動物病院に連れていくことをおすすめします。
猫草を与える
猫が毛玉を吐出すために頻繁にえずいているならば、繊維質の多い食事を与えることでえずきの頻度を減らすことができます。猫草を食べることも毛玉を吐出す手助けになるでしょう。
猫草とは猫が食べられる草の総称であり、ペットショップなどで適切なものを購入できます。ただし猫はあくまで完全肉食動物であるため、猫草が体に合わずお腹を壊すケースもあります。
猫の様子・排泄物をよく観察しながら、猫が適量の猫草を摂取できるようサポートしましょう。
胃のケアを目的とした食事管理を行う
猫が胃腸などの消化器官の炎症によってえずいていると予想されるならば、胃腸に優しい食物繊維が豊富に含まれた食事を与えましょう。
以下ではペットフードに使われる主な食物繊維源を紹介します。
- とうもろこし
- 小麦粉
- 脱脂大豆
- ビートパルプ
- セルロースパウダー
- 米ぬか
- おから
- 大麦・オーツ麦など
セルロースパウダーは毛玉の吐き戻しを抑える、米ぬか・おからはビタミン・ミネラルが豊富に含まれるなどそれぞれ特徴があります。猫の健康状態・嗜好に合わせて選択しましょう。
動物病院を受診する
猫がえずいており、特に以下のような様子が見られるならば早急に動物病院に連れて行きましょう。
- 誤飲・中毒の可能性がある
- 元気がない
- 食欲がない
- 1日に何回もえずく
- 1日1回でも数日以上続く
ひとつでも該当するならば早めに獣医師に相談しましょう。受診するときは猫の日頃の様子がよくわかっている飼い主が連れて行き、問診に丁寧に答えましょう。
猫がえずく場合に獣医師に相談すべき目安となる症状は?
猫は嘔吐しやすい動物であり、えずいている様子が見られたからといってすぐに受診が必要になることはありません。1日数回えずいていても元気な様子であれば、1〜2日間程度は自宅で様子をみて問題ありません。
以下で紹介するポイントに気をつけながら注意深く観察しましょう。
何度もえずいている
胃の内容物を吐き出していなくても、何度もえずいている場合は動物病院に受診が必要か相談してみましょう。動物病院に知らせるべきポイントは以下のとおりです。
- 食欲はあるか
- 元気な様子か
- えずく前によだれが出ているか
- えずくときにお腹が収縮するか
- 食事に伴ってえずくか
- いつからえずくようになったか
- 下痢・腹痛の症状はあるか
- 水をがぶ飲みしているか
- ストレス・恐怖を感じていないか
- 誤食・誤飲が疑われないか
猫の嘔吐を治療するためには、まず根本的な原因を突き止める必要があります。診断は精密検査によって確定しますが、飼い主による日頃の観察は診断の大きなヒントになります。
猫の負担・時間・コスト削減のためにも、猫の様子を丁寧に獣医師に共有しましょう。
ぐったりして元気がない
猫がぐったりして元気がない、つまり全身症状が出ているならば早めに動物病院の受診が必要です。また何も食べていないのに吐き気がある・糞臭がする場合は症状が進行しているため、より早急な受診が必要です。
猫がえずくのを避けるためにできる対策
病気を疑う程ではなくても、猫がえずいている様子を見て心配になる飼い主も少なくないでしょう。猫の吐き気を抑えるために家庭でできるケアにはどのようなものがあるのでしょうか。
猫がえずきにくくなるためのポイントは以下のとおりです。
- 毛玉ケア
- 早食い・食べ過ぎの防止
- ストレス解消
- 誤食・誤飲の予防
以下では猫の生活習慣を整えて、えずきを抑える方法を解説します。
定期的にブラッシングする
毛玉を吐出すためにえずいている猫には、ブラッシングで飲み込む抜け毛の量を減らす対策が有効です。特に屋内飼いの猫は1年中毛が生え換わる傾向にあるため、こまめなブラッシングが必要です。
定期的なブラッシングには以下のようなメリットがあります。
- ノミ・マダニの早期発見
- ノミ・マダニが繁殖しにくい
- 皮膚病の早期発見
- アレルギー・アトピーの早期発見
ブラッシングは病気の予防・早期発見にも役立ちます。健康管理の一環として習慣化しておきましょう。
食事の与え方を工夫する
そもそも多くのペットフードは保管・管理のしやすさが優先され、吸水しづらい性質を持っているために消化が難しいことが指摘されています。そのため猫が過剰に早食いした際・食べ過た際に消化不良を起こしやすいとされます。
猫の早食い・食べ過ぎによる吐き戻しを抑えるためには以下の方法が有効です。
- 食器の位置を高くする
- 食事の量を減らし回数を増やす
- ゆっくり食べるよう給餌方法を工夫する
市販の早食い防止皿など、飼っている猫にあった方法を模索してください。
ストレス解消をさせる
以下のようなサインが見られるならば、猫は生活にストレスを感じている可能性があります。
- 嘔吐する
- 怯えて隠れている
- 耳がいつも後ろを向いている
- 不適当な排泄行為をする
- 脱毛している
- リンパ球・好酸球が減っているなど
猫のストレス解消には以下の方法が有効です。
- 飼い主とコミュニケーションを取る
- 飼い主が遊び相手になる
- 隠れ場所が十分に用意する
- 屋外を眺められる場所を作る
- 上下運動ができる環境を作る
- 不妊・去勢手術をするなど
猫との遊びには狩猟本能をくすぐるような変則的な動きのあるおもちゃを用いた遊びが好ましいとされます。目新しさを意識しながら、夕食前・就寝前など時間を決めて遊びの時間を習慣化するとよいでしょう。
猫の病気には猫伝染性腹膜炎(FIP)・ヘルペスウイルスによる鼻気管炎の再発など、ストレスが発病に関わる病気があります。飼い主が快適な環境を整え、猫が自由で快適に過ごせるようにしましょう。
猫が嘔吐したときにはどうすればいい?
猫が嘔吐したときには、まずはよく観察します。観察するべきポイントを以下にまとめました。
- タイミング
- 前後の様子
- 回数・期間
- 吐瀉物の内容・色
- その他の症状
吐瀉物があるときは、写真で記録したり実物を病院に持っていったりすると診察の参考になります。特に吐瀉物が赤い・緑がかっている・虫が混じっている・異物が混ざっているなど、目視で異常が認められた際は担当する獣医師によく伝えましょう。
まとめ
猫は体の構造・毛玉を吐く性質から、日常的に嘔吐します。少しえずいているようでもすぐに元気に過ごしているようであれば、家庭で数日間様子を見ていて問題ありません。
しかし1日に何度もえずき元気がない・食欲がない場合は、なるべく急いで動物病院に連れて行きましょう。
猫がえずくときに疑われる病気は、胃や腸の病気・全身の病気・神経の病気・精神的な病気など実にさまざまです。
動物病院ではレントゲン検査・内視鏡検査などで精密検査を行い、根本的な原因を突き止めます。
しかし診断の大きなヒントになるのは飼い主による日頃の様子の観察です。猫のえずきがいつからどのようなタイミングで見られるのか観察し、担当獣医師に丁寧に伝えましょう。
猫がえずいていても、元気な様子であれば家庭でのケアを行いましょう。ブラッシングの頻度・餌の与え方・ストレス解消法の見直しが有効です。
猫の健康管理は飼い主の大きな責任のひとつです。よく目をかけて猫が快適に過ごせるよう気を配りましょう。
参考文献
- 家庭の獣医学|No.14 下痢と嘔吐(1)|福岡県獣医師会
- ペットのしつけ|公益社団法人 千葉県獣医師会
- 犬猫の食物アレルギー
- 猫における食物アレルギー性皮膚炎:48症例における後向き研究(1988-2003)
- 犬や猫が食べてはいけないもの |公益社団法人 栃木県獣医師会
- (14)イヌ・ネコのライフステージと栄養(その2)
- 講習会における質問に対する回答(4)
- ペットフードで使用される主な食物繊維・オリゴ糖源原料
- ペットの病気と予防|熊本市獣医師会
- 家庭の獣医学|No.12 体を痒がる(2)|福岡県獣医師会
- 家庭の獣医学|No.13 体を痒がる(3)|福岡県獣医師会
- The techniques to reliene foods vomiting of domestic cats
- 宣誓!無責任飼い主宣言!!
- 家庭の獣医学|No.16 下痢と嘔吐(3)|福岡県獣医師会