猫が中毒を起こす危険な観葉植物の種類とは?食べた場合の症状・対処法も解説

猫 中毒 植物

「猫を飼っているが観葉植物も楽しみたい」、「自宅に観葉植物を置いて飼い猫を楽しませたい」と考える飼い主も少なくないでしょう。

しかし猫と植物を共存させる際は、そのリスクについても正しく理解しておく必要があります。

猫が毒性の強い植物を口にすると、嘔吐・痙攣・呼吸困難などの中毒症状を引き起こし死に至るケースもあるためです。

悲しい事故を防ぐために猫の中毒症状を引き起こす植物・中毒症状の対処法・安全性の高い植物などを知っておきましょう。

猫が中毒を起こす危険な観葉植物の主な種類

カーネーションと黒猫

猫が中毒を起こす植物には以下のように身近な観賞用植物が数多く含まれます。

  • アジサイ
  • クリスマスローズ
  • カーネーション
  • シクラメン
  • パンジーなど

クリスマスローズなど重篤な中毒症状を引き起こし、死亡するリスクがある植物もあります。

鉢植えで育てている植物はもちろん、切花・花粉・花を挿している水を口にしても中毒症状を起こすケースもあることも知っておきましょう。

上記以外にも猫に危険な中毒症状を引き起こす植物は多くあります。猫と観葉植物について正しい知識を得て、猫を中毒のリスクから守りましょう。

ユリ科

ユリ

華やかなラッパ状の花を咲かせるユリ科は観賞用植物として知られていますが、猫にとっては非常に危険な植物です。

  • ユリ
  • チューリップ
  • ヒヤシンス
  • スズランなど

ユリ科の植物には猫にとって有毒な強心配糖体・コンバラリン・コンバラトキシンが含まれています。

花弁・花粉・葉・茎などすべてに非常に強い毒性があり、ユリ科の植物を摂食すると猫の腎臓に急性かつ重篤な障害が現れ3〜5日で死亡するといいます。

飾っていた花瓶の水にも非常に強い毒性があり危険です。

また猫に与えてはならない食品であるネギ・ノビルもユリ科に含まれます。

ネギ・ノビルなどにはアリルプロピールジサルファイドが含まれ、赤血球を破壊するため大変危険です。

サトイモ科

ポトス

サトイモ科はハート型の大きな葉とボタニカルな雰囲気が特徴の観葉植物です。

しかし茎・葉にシュウ酸カルシウムの結晶を含むため、猫が噛んでしまうと口内に強烈な痛みを伴ってよだれ・嘔吐・気道閉塞・痙攣などの症状を引き起こします。

  • ポトス
  • モンステラ
  • スパティフィラムなど

丈夫で屋内でも育てやすいサトイモ科ですが、猫の生活スペースで育てるのは避けましょう。

ナス科

プチトマト

家庭菜園で定番の品種が多いナス科も猫には危険な植物です。葉・茎に含まれるソラニンアルカロイドが有毒成分となります。

  • ナス
  • トマト
  • ホオズキ
  • チョウセンアサガオなど

トマトは赤く熟したものであれば食べても問題ありませんが、実の青い部分は中毒症状を引き起こします。

嘔吐・ふらつき・発熱などの症状が出てしまうため、飼い主は十分に気をつけてあげましょう。

そもそも猫は元来肉食動物であり、野菜を摂食しなくても健康を維持できる体の仕組みが備わっています。

トマトに豊富に含まれるビタミンCに関しても、猫は肝臓で合成することが可能です。

ツツジ科

ツツジ

鉢植え・庭植えで日本で古来から栽培され親しまれているツツジですが、ドウダンツツジなどインテリアグリーンに適した品種も含まれます。

  • セイヨウツツジ
  • シャクナゲ
  • アザレア
  • アセビなど

葉・根皮・蜜に含まれるグラヤノトキシンが有毒成分となります。摂食すると嘔吐・下痢・運動失調・痙攣などの症状が現れます。

猫が危険な植物を食べた場合の中毒症状

昼寝する猫

猫の中毒で発症する中毒症状は摂食した植物によってさまざまです。以下では特に気をつけたい症状を解説します。

消化器症状

スイセン・オシロイバナなど、消化器症状は多くの植物によって引き起こされる中毒症状です。具体的には以下のような症状が現れます。

  • 嘔吐
  • 下痢
  • 胃腸炎
  • 腹痛
  • よだれ

嘔吐・下痢がある場合は、吐瀉物・糞を写真で記録したり、実物を動物病院に持って行ったりするとその内容物を確認・検査できるため診断に役立ちます。

呼吸困難

中毒症状で喉の奥が激しく腫れると喉がつまった状態になり、以下のような症状が現れます。

  • 呼吸数の増加
  • 吸気性努力呼吸
  • 肋骨の異常移動など

吸気性努力呼吸とは普段の呼吸では使わない呼吸筋も使って、呼吸しようと努力する様子を指します。

人工呼吸・心臓マッサージで応急処置を行い、早急に動物病院に連れて行きましょう。

中毒症状による呼吸困難はナス科のなかでも特にタバコの葉・アスパラガス類の摂食で引き起こされます。猫の生活スペースには近づけないのが懸命です。

麻痺・痙攣

ヒガンバナ・ザクロなどの植物は心臓・神経に影響する危険な中毒症状を引き起こします。

  • 心不全
  • 心臓麻痺
  • 徐脈
  • 中枢神経の抑制
  • 不整脈
  • 血圧低下

上記のようなショック状態のサインには以下のようなものが挙げられます。

  • ぐったりして意識がない
  • 高熱が出る
  • 体・手足が冷たい
  • 脈が弱く早い
  • 呼吸が荒い
  • 口のなかが白くて乾燥している
  • 歯茎を指で押すと白くなり指を離しても2秒以内に赤みが戻らない

猫がショックを起こしている場合、まずは暴れないよう静かに毛布で包みます。

呼吸が止まっていれば人工呼吸・心臓が止まっていれば心臓マッサージを施し、急いで動物病院に連れて行きましょう。

猫が危険な植物を食べてしまう原因

ベランダにいる猫

元来肉食である猫は、なぜ植物を口にするのでしょうか。想定される以下の原因について解説します。

  • 毛玉を吐き出すため
  • 好奇心
  • ストレス

猫の気持ちを理解して、猫を危険な植物から守るためのヒントにしましょう。

毛玉を吐き出すため

猫は体を舐めて毛づくろいし、常に清潔に保つことを好む動物です。

毛づくろいの際に飲み込んで体内に溜まった毛はやがて毛玉として吐き出されますが、猫は毛玉を吐きたいときに植物の葉を摂食する習慣があります。

これは野良猫にも見られる自然な習慣です。

好奇心

猫は好奇心の強い動物であり、飼育環境に植物があれば調べたり遊んだりするうちにかじって摂食する場合があります。

猫にとっての観葉植物は、単なるインテリアというよりも環境エンリッチメントとして作用します。

環境エンリッチメントとは動物福祉の視点から飼育環境が豊かになるよう施す工夫のことです。

動物園などでも元来の生息環境をもとに飼育舎に植物を植えるなど、飼育される動物の生活を豊かにするための工夫をこらしています。

環境エンリッチメントの考え方では飼育動物が以下のポイントを満たす環境作りを目指します。

  • 生活スタイルが尊重されている
  • 自分自身の居場所を定められる
  • 能力を存分に発揮できる

これらの飼育環境を整えることで飼育動物の幸せな暮らしを実現できるのだといいます。

環境エンリッチメントの考え方はもともと動物園の飼育動物のために生まれましたが、動物とのふれあい施設・ペットの販売施設や繁殖施設・動物サーカスなどの興業施設にも広がりを見せています。

ストレス

猫は安全上の理由などから完全室内飼いが推奨されていますが、そのような退屈で刺激の少ない環境に猫がストレスを感じ以下のような行動をするケースがあります。

  • 植物の摂食
  • 食糞
  • 異嗜(いし)
  • 拾い食い
  • 誤食
  • 対象が不適切な捕食行動
  • 常同行動
  • 破壊行動

猫は元来長い時間をかけて餌を獲得する生活を送っているため、人間の飼育下で狩りの衝動・欲求が満たされないと問題行動が増えるのだといいます。

猫のストレス発散には以下の方法が有効です。

  • 給餌を工夫する
  • おもちゃを用意する
  • 飼い主が遊び相手になる
  • 上下運動できる場所を作る
  • 外を眺められる場所を作る

完全室内飼いの猫は危険が少ない環境が確保される代わりに、コミュニケーション相手が飼い主に限定されます。飼い主がストレス解消の手段を複数準備してあげるとよいでしょう。

猫が中毒を起こす植物を食べたときの対処法

猫を診察する獣医師

猫が植物による中毒症状を起こしていると気がついたならば、薬剤で吐き出すなどの処置を受けるため急いで動物病院に連れて行く必要があります。

動物病院では以下のような検査・処置が行われます。

  • 身体検査・血液検査をする
  • 止血剤(トラネキサム酸)・鎮静剤(メデトミジン)を用いて吐かせる
  • 中毒物質が明確に判明した場合は拮抗薬・解毒薬を使用する

しかし症状によっては病院に行く前に早急な応急処置が必要です。以下では応急処置方法を紹介します。

  • 催吐
  • 人工呼吸
  • 心臓マッサージ

基本的に家庭で催吐によって異物を吐かせようとすることは得策ではありません。

しかし有毒植物を飲み込んで30〜60分以内・意識がはっきりしている際は、催吐を試みます。

吐根シロップ小さじ1杯、あるいはオキシドール(3%過酸化水素水)を体重10kgあたり大さじ1杯飲ませます。

食塩を使う方法もありますが、食塩中毒のリスクがあるため推奨されません。

また呼吸が止まってしまった・脈がない・意識がない場合は3〜4分以内に蘇生しなければ脳に障害が残ります。

すぐに人工呼吸・心臓マッサージを開始しましょう。始めに喉の奥を観察し異物があれば排除します。

猫を横向きに寝かせ首を真っ直ぐ伸ばして舌を口の外にひっぱり、人間の口を猫の鼻につけ空気を吹き込みます。同時に1番お腹側の肋骨中央あたりに心臓マッサージも行いましょう。

ペースは心臓マッサージが1分間に60回、人工呼吸が心臓4回につき1回程度です。

猫が観葉植物で遊ぶ場合の対策

手作りの木酢液

猫の飼育環境を豊かにする目的で、猫が食べてしまっても害のない植物を飼育スペースに置くことは好ましいといいます。

しかし人間が鑑賞する目的も果たしたいならば、猫が遊んでしまってすぐに観葉植物がボロボロにされる状況は考えものです。

猫が植物にいたずらしないようにできる工夫はあるのでしょうか?

以下で猫への影響に留意した、猫と観葉植物が共生するための具体的な方法を提案します。

観葉植物にカバーをかける

植木鉢に蓋をして土を食べられないようにしたり、植物全体にカバーをかけたりして、猫が物理的に植物・土を食べられなくする方法があります。

蓋・カバーの手作りも可能ですが、市販の観葉植物カバーもあるため家庭にあったものを検討してください。

それでも猫が植物・土を食べることに固執するようであれば、異嗜(いし)の傾向があると疑われます。

異嗜とは猫が消化できない・栄養のないものを食べる問題行動で、ストレス・栄養素の不足などが原因とされています。

植物・土への固執が続くようであれば獣医師に相談しましょう。

置く場所を変える

観葉植物を庭・玄関先など猫の生活スペース外に移動させるのも、猫と観葉植物の共存に有効です。

しかしその場合も生活スペースから思いがけず脱走するリスクがあるため、有毒植物の栽培は難しいでしょう。

また猫は自分の縄張りの変化にストレスを感じやすい動物です。猫が植物を気に入っていれば、住環境から取り除かれたことがストレスとなる可能性にも留意しましょう。

ほかのおもちゃを用意する・飼い主が遊び相手になるといったフォローが必要です。

木酢液を吹きかける

猫が植物に近寄らなくなる効果を期待して、観葉植物に木酢液(もくさくえき)を吹きかけるのもひとつの手です。

木酢液とは木炭を作るときに出る水蒸気を冷やして液体にしたもので、主に農業において殺菌効果を利用した土壌改善に使われています。

酢酸が豊富に含まれ独特の匂いがするため猫が嫌がります。植物にかけても土壌改良・虫除け効果など有用な効果があるため、植物に負担をかけたくない人におすすめです。

同じように猫の嫌がる匂いを発し、猫に害がないものには以下のようなものが挙げられます。

  • 竹酢液
  • 食用酢
  • 柑橘類の皮

ただし猫がどの程度反応するかは個体差があります。組み合わせる・交互に違うものを試すなどの工夫が必要です。

猫にとって安全性の高い観葉植物

ミント

猫が口にしても中毒症状を起こさない観葉植物を紹介します。

以下はASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)が紹介するToxic and Non-Toxic Plant List-Cats(猫にとって中毒性のない植物リスト)から抜粋しています。

  • ミント
  • カンノンチク
  • ガジュマル
  • サンスベリア
  • シャコバサボテン
  • エバーフレッシュなど

ただし栽培の時に使われることがある農薬・殺虫剤には出血・嘔吐・下痢・痙攣などを引き起こす強い毒性があります。

猫草として販売されているえん麦・エノコログサなどを選択した方がより安全性が高まります。

まとめ

家で猫を飼うカップル

猫が口にすると中毒症状を引き起こす身近な観葉植物は複数あります。

  • ユリ科
  • サトイモ科
  • ナス科
  • ツツジ科など

中毒症状には個体差がありますが、嘔吐・呼吸困難・中枢神経障害などを引き起こし死に至るケースもあります。

猫は元来完全な肉食動物ですが、毛玉を吐く・好奇心を満たすといった目的で植物を食べる習慣があります。飼い主は完全室内飼いで猫が危険な植物を口にしないよう管理しましょう。

万が一猫が有毒な植物を口にしてしまったら、早急に獣医師に相談して動物病院に連れて行きましょう。心肺停止している緊急時には、人工呼吸・心臓マッサージが必要です。

猫が植物に触れること自体は環境エンリッチメントの観点から間違った取り組みではありません。

猫に害のない品種を選び、栽培時に危険な殺虫剤が使われていないことを確認したうえで猫と一緒に観葉植物を楽しむとよいでしょう。

参考文献