犬を飼育するうえで注意したいのがダニの寄生です。ダニが寄生すると駆除しなければかゆみや湿疹などの症状を引き起こすため、犬が引っ掻いたり、噛んだりして二次感染の恐れがあります。
ダニが寄生してしまった場合、どのような治療を行えばよいのでしょうか。また、ダニの寄生から愛犬を守るためにはどのような予防策があるのでしょうか。
本記事では、犬にダニが寄生した場合の症状から治療方法や予防法も解説します。
愛犬にダニが寄生してしまいどのように治療すればよいのか悩んでいる方や、犬にダニが寄生しないための予防法を詳しく知りたい方は参考にしてください。
かゆみは犬にとって非常なストレスになります。できるだけ早くかゆみをとってあげましょう。
犬に寄生するダニの種類
犬に寄生するダニの種類は、ヒゼンダニ・ニキビダニ・ツメダニ・マダニの4種類です。
ダニが寄生する経路は、ほかの感染している犬からの寄生や草むら・部屋などの生活環境からの寄生などさまざまです。
寄生しているだけでかゆみや湿疹などをもたらすものから、マダニのような吸血されることで貧血を引き起こすものまで、ダニの種類によって現れる症状には特徴があります。
ダニ自体は小さく、動き回るので発見するまでに時間を要するため、犬がかゆがっていたりフケ・湿疹などがみられたりしたらダニの寄生を疑いましょう。
ヒゼンダニが寄生した場合
皮膚のなかにヒゼンダニが寄生する病気を疥癬(かいせん)といい、人やほかの動物にも感染する恐れのある病気です。
感染犬と接触があると、動物間では感染しやすい特徴があります。ヒゼンダニが寄生した場合はどのような症状が現れ、どのような治療が行われるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
症状
ヒゼンダニが寄生した場合は非常に強いかゆみが症状として現れます。
そのため、犬は痒がり自分で引っ掻いたり噛んだりするので、傷ついたところから二次感染を起こすことがあります。
はじめは肘や足など限られた部分になりますが、次第に範囲を広げていきます。メスのヒゼンダニは皮膚にトンネルを掘り、産卵するため、皮膚内でさらに増殖していきます。そのため非常に強いかゆみが出ます。
疥癬に感染した犬から人への感染もまれにみられますが、ヒゼンダニは人間の皮膚ではトンネルを掘って繁殖ができません。
よって、疥癬に感染している犬の治療が進むと人も疥癬によるかゆみ症状が落ち着きます。
治療方法
ヒゼンダニが寄生した場合は駆虫するため、殺ダニ効果のあるセラメクチン・イベルメクチン・ドラメクチンなどを投与します。これらの薬を使う場合は、フィラリアの検査をしてから使用します。
治療を行う際にはセラメクチンから先に投与し、ヒゼンダニの駆虫効果を確認します。セラメクチンはヒゼンダニの駆虫効果が高く、一度投与した30日後の陰転率はほぼ100%です。
そのため、駆虫効果だけでなく、予防効果も高いのが特徴です。セラメクチンで治療効果があまりみられない場合はイベルメクチン・ドラメクチンを投与します。イベルメクチンは、コリー系の犬種には副作用が出やすいので、使用は控えます。
これらの駆虫効果のある薬は投与する量を守って適切に服用すると効果が発揮されるため、、投与する量には注意が必要です。
ニキビダニが寄生した場合
ニキビダニは犬の皮膚に常に寄生しているダニで、皮膚の奥にある毛穴に棲みつくようにして寄生しています。
普段は寄生していても特段問題ありませんが、ストレスやウイルス性感染症の発症などで免疫が低下すると発症します。
では、ニキビダニが寄生するとどのような症状があり、寄生した際にはどのように治療するのか詳しくみていきましょう。
症状
ニキビダニが寄生するとよくみられる症状として、脱毛が挙げられます。ニキビダニには局所型と全身型があります。
局所型の場合、発症してすぐの頃は皮膚炎があり、限られた場所のみかゆみのない脱毛が発生します。そして、次第に範囲を広げていきます。
全身型の場合は発症した頃は局所型と同じような症状がみられますが、急激に湿疹が現れ、早く拡大していきます。
全身の皮膚の細菌感染を引き起こすため、重症化すると命に関わる危険性もあるでしょう。
ニキビダニは子犬の時に授乳時に母犬から感染し、その後、生涯同じ子犬の体内に寄生します。そのため、通常であればほかの犬の感染はありません。
治療方法
ニキビダニの治療方法には、イベルメクチンの経口投与が一般的です。毎日必要量を守った駆除薬の投与によって駆虫効果があります。
治療中はイベルメクチンの経口投与を毎日行うと3ヵ月程で駆虫が可能です。ただし、駆虫後はイベルメクチンの投与を終了すると再発する可能性があります。
その場合は、再度イベルメクチンによる追加治療を行うと駆虫が可能ですが、治療期間が延長するでしょう。
また、摂取量を誤ると中毒症状を引き起こすため、必要摂取量を守った駆除薬の投与が重要です。
ほかにもドラメクチン・アミトラズ・ミルベマイシンなどから、治療効果がみられるものを選択して選びます。
ツメダニが寄生した場合
ツメダニが寄生した場合は卵から幼虫・成虫まで生涯宿主の体で過ごします。ツメダニの特徴としてほかのダニにはない爪を持ち合わせています。
成虫になると、犬の体の上を徘徊している様子が肉眼で確認できる(動くフケと呼ばれる)ため、ツメダニに寄生していることがすぐにわかります。
愛犬にツメダニが寄生しているのが判明した場合、今後どのような症状が現れるのでしょうか。治療方法も併せて詳しくみていきましょう。
症状
ツメダニが寄生すると肩・背中・腰・頭・耳の付け根など特に背部に大量のフケが生じ、かゆみ・湿疹・脱毛などを伴います。加えて、皮膚の赤みがみられるケースもあります。
成犬の場合は、症状が現れなかったり、軽度で治ったりする場合が多いですが、免疫力が低い子犬や高齢の犬では、症状が重くなる傾向があるでしょう。
ツメダニに感染している犬との接触や草むら・ほこりの多い場所などの環境から感染するケースがよくみられます。
散歩中に草むらへ入り込んだり、他の犬と戯れたりしているうちにツメダニが寄生する可能性があります。
治療方法
ツメダニが寄生した場合の治療方法は、寄生虫駆除効果のある薬用シャンプーによる洗浄や駆虫効果のある殺ダニ剤の投与によってツメダニの駆除が重要です。
ツメダニの卵には殺ダニ剤は効果がないため、複数回の投与が必要になります。
また、ツメダニは犬の体から離れてもしばらくは生存可能のため、再感染を防ぐために部屋を清潔に保つのも大切です。多頭飼育をしている場合はすべての犬の駆虫が必要になります。
生活環境を整え、衛生的に保つことで、ツメダニの寄生からの予防にもつながるため、日頃から掃除を心がけましょう。
マダニが寄生した場合
マダニが寄生した場合は宿主となる犬の血液を数日間にわたって吸血し続けます。また、病原体を持っているマダニを介して感染症に感染する危険性があります。
マダニは吸血し終わるまで自然に離れることはなく、無理に取ろうとすると、マダニの顎が残ってしまいます。
また、マダニを潰してしまうとマダニの体内にある細菌やウイルスが飛散して感染するリスクが高くなるため、危険です。
では、マダニが寄生した場合の症状と治療方法を詳しくみていきましょう。
症状
マダニが寄生した場合は長時間にわたり吸血が行われるため、子犬や小さな犬種であれば貧血を引き起こす可能性があります。
マダニに吸血されたところは痒くなったり、湿疹が現れたりします。
また、マダニの唾液がアレルゲンとなり、犬の体内に細菌やウイルスが侵入しアレルギーを引き起こすケースもみられます。
マダニが寄生しやすいのは、耳・目周辺・鼻周り・胸部・内股・肛門周りなどです。
散歩などでマダニが生息する草むらや茂みに入った場合は、こまめにブラッシングをしたり、マダニがついていないかチェックをしましょう。
マダニがもたらす病気
マダニを媒介として発症する感染症として、重症熱性血小板減少症候群が挙げられます。
重症熱性血小板減少症候群は致死率25%の非常に危険な感染症です。
発熱・倦怠感・嘔吐・食欲低下などが現れ、血小板や白血球が減少します。
ほかにも日本紅斑熱やダニ媒介性脳炎など数多くの感染症を引き起こす可能性があり、
バベシア症・ライム病など、ほかの犬や人にも影響を及ぼす感染症に感染する可能性があります。
このようにマダニがもたらす病気は多岐にわたり、ほかの犬だけでなく、人にも感染する可能性が高いため十分注意が必要です。
治療方法
マダニが寄生しているのを発見した場合は、無理に取り除こうとせず、動物病院で適切な処置を受ける必要があります。
マダニを無理に取ろうとすると、マダニの体の一部が残ってしまい、化膿したりほかの病気に感染したりするため危険です。
動物病院では専用のピンセットを使用して潰さないように犬の皮膚から取り除き、駆除薬を投薬します。
マダニが寄生してから長時間経過してしまうと、マダニが持っている病気に感染してしまう確率が高くなります。
そのため、マダニを発見した場合はすぐに動物病院で処置してもらいましょう。
愛犬をダニから守るための予防法
犬がダニに感染するとさまざまな症状が現れるだけでなく、ほかの病気に感染したり、長期間の治療を余儀なくされたりします。
愛犬をダニから守るための予防法として、下記の4つが挙げられます。
- 定期的な投薬
- シャンプー・ブラッシング
- 散歩コースの見直し
- 部屋のこまめな掃除
これらの予防法はどれも日常生活で取り入れやすい方法であり、飼い主が積極的に取り組むことでダニの寄生を防げます。それでは、それぞれの予防方法を詳しくみていきましょう。
定期的な投薬
犬をダニに感染させないためには、定期的な投薬が効果的です。動物病院では、マダニ予防のための駆除薬を処方してもらえます。
マダニ駆除薬には薬を犬の首もとに滴下するスポットタイプとおやつのように食べさせるチュアブルタイプの2種類があります。
スポットタイプは、首もとに薬剤を滴下するだけなので簡単に投与できるのがメリットです。
ただし、薬剤が乾くまでスキンシップやシャンプーはできないほか、皮膚の疾患がある場合は使用できません。
チュアブルタイプはおやつ感覚で与えることができ、足元から頭まで全身に均等な効果が期待できるメリットがあります。
しかし、アレルギー体質の場合は素材によって摂取ができない薬剤もあります。愛犬の特性や嗜好にあわせて服用しやすいタイプを選択しましょう。
シャンプー・ブラッシング
犬が散歩などで草むらや茂みに入ると、ダニや汚れが体全体につきやすくなります。散歩後は全身を満遍なくブラッシングし、ダニがついていないか確認しましょう。
また、ブラッシングだけではダニや汚れが取り除ききれていない可能性があるため、少なくとも月1回はシャンプーをし、汚れを取り除きましょう。
ダニ予防効果のあるシャンプーも近年は出てきているので、ダニの寄生を心配している方におすすめです。
シャンプーをすると、犬の地肌に直に触れることができるので怪我や病気の早期発見にもつながります。
普段からブラッシングやシャンプーをして、愛犬が気持ちよく過ごせるようにしてあげましょう。
散歩コースの見直し
犬が普段歩いている散歩コースを見直すこともダニから守るための予防方法の1つです。ダニが多く生息しているのは草むらや茂みなどです。
普段からそのようなところへ犬が入っていく習慣がある場合は、散歩コースを変更するなどし、できるだけ入っていかないようにしましょう。
もし愛犬が自由に走り回るのが好きな場合はドッグランを利用したり、草むらに入る恐れがある場合は服を着せてできるだけ露出を防いだりするのがおすすめです。
部屋のこまめな掃除
愛犬が普段過ごす部屋はこまめに掃除するとダニの寄生を防げるでしょう。ダニは外から知らないうちに屋内に入り込んでいる可能性があります。
こまめに掃除すると外から入り込んだダニも取り除けます。また、愛犬がよく使用するベッドやタオルなどダニがつきそうなものはこまめに洗濯するとよいでしょう。
生活環境を衛生的に整えるとダニの寄生の心配がないほか、愛犬と快適に過ごせるのもこまめに掃除する利点になります。
まとめ
本記事では、犬にダニが寄生した場合の症状から、治療方法や予防法を解説しました。
犬にダニが寄生した場合はかゆがったり、フケや湿疹などが出たりするなどの症状が現れます。
ダニ自体は小さく、発見するのが難しいため、これらの症状がみられたら動物病院で診てもらいましょう。
犬に寄生するダニは4種類で特にマダニは吸血するため、貧血やほかの病気の発症を引き起こすため注意が必要です。
ダニから愛犬を守るためには定期的に駆除薬を服用し、こまめにブラッシングやシャンプーをしましょう。
散歩コースの見直しや部屋の掃除も予防策として効果的です。これらの予防策を駆使してダニの寄生から愛犬を守りましょう。
参考文献