近年のペットブームに伴い、以前にくらべて猫の飼育が可能なマンションが増えています。
しかし、高層マンションのベランダから誤って猫が転落してしまい、骨折してしまう事故が増えているのも事実です。
もちろん猫の骨折の原因は転落だけではありません。では、ほかにどのような要因があるのでしょうか?
大切な愛猫が骨折の被害に遭わないように予防対策も含めて、原因・症状・治療法を解説します。
もしかしたら骨折したかもしれないと不安に思われたときにも、ぜひ参考にしてください。
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猫の骨折の症状
- 猫の骨折について教えてください。
- 猫の骨折は、高所からの落下や外出時の外傷・交通事故などの、さまざまなシーンで起こります。
骨折の箇所として多くみられるのは、骨盤・大腿骨(太ももの骨)・脛腓骨(膝から下の骨)・橈尺骨(前腕の骨)・頭蓋骨・下顎骨などです。
猫は大変俊敏な生き物であるため、骨折した場合には、初期治療の段階で患部をしっかり固定する必要があります。再骨折や治療後の機能障害を防ぐために、初期治療は大変重要です。
- 猫の骨折の症状はありますか?
- 猫が骨折した場合、骨折部位に強い痛みや炎症が生じるため、以下のような症状が現れることがあります。
- 骨折した足(腕)を、まったく動かさずに引きずっている
- 骨折部位に触られるのを嫌がる
- 異常な鳴き声を出している
- 骨折部位の周りに腫れや炎症がみられる
- 骨折部位を舐めている
- 骨が露出している
- ぐったりしている
これらの症状がみられた場合、ただちに動物病院へ行って骨折していないかどうか、獣医師に診てもらいましょう。
- 猫が骨折する原因を教えてください。
- 猫の骨折は、以下のような要因で発症します。
- 外傷性骨折:交通事故・高所からの落下・ほかの猫との喧嘩・室内の事故
- 病的骨折:腫瘍や骨髄炎・骨粗しょう症などの骨の疾患がある場合、骨折しやすくなることがあります
- 疲労骨折:高齢期の猫は動きが少なくなり、同じ姿勢を保つために骨に負担がかかって骨折する場合があります
ビルやマンションのベランダから落下して骨折してしまうケースもありますが、特に5〜7階からの転落が猫にダメージを与えるといわれています。
理由として考えられるのは、5〜7階からの落下加速が大きいことです。さらに回転姿勢も関連し、受け身の体勢が取れないためではないかといわれています。また、室内での骨折事故も少なくありません。
例えば、階段の3段目やソファー・バスタブの縁などの低い位置から落下して前肢を骨折するケースもあります。また、手や足をドアに挟む事故もあります。特に、子猫や筋力が低下している高齢猫の飼い主さんは、家の中でも猫の動きに注意する必要があるでしょう。
猫の骨折の治療法・予防法
- 猫の骨折の治療法はどんなものがあるでしょうか?
- 猫に骨折の疑いがあったとき、最初に行うのは身体検査とレントゲン検査による骨折の確認です。そして骨折が判明した場合、どこの部分がどのように折れているかを細かく把握します。
さらに猫の年齢・性格・全身状態などを検討したうえで、状況に応じた治療が施されます。主な外科治療は以下のような方法です。- プレート法:四肢の骨折では一般的な治療法です。骨に直接金属プレートを当て、スクリュー(ネジ)で骨とプレートを固定する方法です。
- 創外固定法:皮膚の外側から固定具を設置する方法です。整形外科用のピンを使って、皮膚の外から骨を固定します。骨折部位にはあまり触れずに固定を行うため、回復力を助ける治療が可能です。
- ピンを使用した固定:整形外科用の細いピンを骨の中に入れて固定する方法です。プレート法や創外固定法と併用する場合もあります。
外科治療のほかには以下のような方法もあります。
- ギプス固定:手術を行わずに皮膚の外側からギプスを取りつけて、骨折部分を固定する方法です。骨折まではいかない不全骨折(ヒビが入っている状態)など、限られた骨折に適合します。外科治療後に固定を強化するためにも使用される方法です。
- 再生医療:骨がくっつくのを早めるために手術の一部として用いられる場合があります。
以上のような治療を行ったうえで、痛みを軽減させるための鎮痛剤が処方されます。
飼い主さんは猫の様子を観察しながら経過を獣医師に報告する必要があるため、完治するまでは定期的に動物病院で受診しましょう。
- 猫の骨折の予防法を教えてください。
- 猫の骨折を予防するためには、生活環境を見直して安全を確保することが大切です。
猫は体がやわらかく、運動神経が良く怪我しにくいように見られますが、高い場所にも自由に登り、わずかな隙間から外に出てしまったりするため、犬以上に事故予防には注意を払う必要があるでしょう。
2階以上の建物に住んでいる場合は落下防止のため、ベランダの柵にネットを張るなどして隙間を作らないようにしましょう。また、滑りやすいフローリングで骨折してしまう場合もあるため、床を滑りにくくする工夫が必要です。
猫を外に出さないで飼うことは、事故の予防策になりますが、性熟期を迎えると猫は外に出たがります。事故や骨折を予防するためには、若いうちに避妊去勢手術を行うことも対策のひとつかもしれません。
愛猫を骨折から守るために室内飼育を選択しても、外に出たがり窓の外をじっと眺めることもあるでしょう。そのようなときは、ストレスを発散させたい可能性があります。動くおもちゃを使うなどして、室内でもできる運動をさせてあげましょう。
- 骨折が考えられるときにできる応急処置はありますか?
- 痛がっていても傷がないときには、患部を冷たいタオルなどで冷やします。骨が折れた直後は痛みが強いため、猫もパニック状態になっていることが多いでしょう。
咬まれてしまう危険もあるため、人間のように包帯で添え木を巻き付けることも困難です。骨折が疑われるときには患部に触ることは避け、なるべく骨折部を動かさないようにして、すぐに動物病院を受診しましょう。
猫の骨折での注意点は?
- 猫の骨折での注意点はありますか?
- 猫が骨折した場合、ギプスの装着や手術などの専門的な治療が必要になります。したがって自然治癒に任せるのは禁物です。
骨折が疑われる場合は、すぐに獣医師に診てもらいましょう。
- 骨折後の治療期間について教えてください。
- 術後も骨折部の骨癒合(骨が元通りにくっつくこと)を確認するまでは安静が必須です。
骨癒合にかかる期間は骨折の状態や治療法などによって変わりますが、通常は術後から症状は改善に向かい、約1~3ヵ月で完治するといわれています。
- 専門的な外来であれば何科を受診するとよいでしょうか?
- 骨折の場合、部位や状況に応じてプレートや創外固定によって適切な治療をする必要があります。したがって、検査や治療に適した医療機器が完備されている整形外科を受診するのがよいでしょう。
- 専門的な外来であれば何科を受診するとよいでしょうか?
- 骨折の場合、部位や状況に応じてプレートや創外固定によって適切な治療をする必要があります。したがって、検査や治療に適した医療機器が完備されている整形外科を受診するのがよいでしょう。
- 診療費はどのくらいかかるでしょうか?
- 治療法は骨折した部位や状況を考慮しながら、手術をするかギプスの装着をするかを選択します。したがって、治療の方法によって診療費は変わりますが、約10万~30万円(税込)と考えてよいでしょう。
しかし猫には人間のような健康保険制度がないため、動物病院で受診した際には、治療費を全額自己負担する必要があります。
いつ降りかかるかわからない病気やケガに備えて、ペット保険に入っておくのもよいかもしれません。
編集部まとめ
家族同然の愛猫がケガをしないように、飼い主さんは日頃から居住環境を整えてあげていることでしょう。
しかし身体がやわらかく動きも俊敏な猫は、簡単に高い所に登れてしまいます。加えて好奇心旺盛なため、隙間を見つけて外に出て行ってしまうこともあるでしょう。
家の外には、交通事故やケガなど骨折の危険性が多く潜んでいます。完全な室内飼育でないかぎり、愛猫を骨折のリスクから守ってあげるのは簡単なことではありません。
もし骨折してしまっても、猫は痛みを言葉で伝えることができません。したがって本記事でお伝えしたような骨折が疑われる様子が少しでもみられたときは、すぐに動物病院へ連れていき、獣医師に診てもらってください。
骨折したまま放置すると、骨がずれたまま付着する癒合不全が生じてしまいます。そのため後遺症が残ったり、治療が難しくなる場合もあるので、できるだけ早い段階で治療を始めることが大切です。
参考文献