言葉を話せない猫の体調や病気はなかなか分かりにくく、時にその行動などで心配になる飼い主さんも多いのではないでしょうか。猫の腎臓病は猫の病気の中でも発生頻度の高い病気として知られています。
猫の腎臓病の症状・なりやすさ・検査法・治療法などについて、できる限りの予防・早期発見法について解説します。病状やその予防法などを知っておくことで、早期に異変に気づけるようになるでしょう。
大切な猫の健康を守り長く一緒に生活できるよう、猫によく起こる腎臓病について学んでみましょう。
猫の腎臓の病気の症状やなりやすさ
- 猫が腎臓の病気になる原因について教えてください。
- 猫が腎臓の病気になる原因はさまざまですが、多くみられる原因は以下の6つです。
- 細菌や猫特有の腹膜炎を引き起こすウイルスによるもの
- 怪我
- 薬による影響
- 心臓の障害による腎臓への血流の低下
- 免疫疾患
- 尿路結石
猫の腎臓病は、高齢である10歳以上の猫の約30~40%に多くみられます。猫の体の中での腎臓の働きは、以下のものになります。
- 血圧の調整
- 血液から尿を作成して老廃物を体外に放出
- 血液中のナトリウムとカリウムのミネラルバランスを調節
- 血液を作るホルモンを作成
これらの腎臓の働きが十分でなくなりその状態が続くと慢性腎臓病と呼び、10歳以上の老齢期の猫に慢性腎臓病は最も発症しやすい病気の一つで、死亡原因の1つです。
初期の症状にはおしっこに関連した、水を多く飲む・おしっこの量が多いまたは少ないなどの症状が現れますが、進行するとご飯を食べない・体重が減った・嘔吐などの症状も現れます。腎臓は血液中の老廃物を濾過して水分を再利用させる・濾過した老廃物を尿として体外に排出する役割があります。
猫は元々水分を再利用できるように体が造られていて、水分をあまり摂取しません。腎臓の病を理由に猫が食欲不振になる頃には、腎臓病はかなり進行している可能性が高いため注意深い観察が必要となります。
- どのような症状が出るのですか?
- 猫の腎臓病の主な症状は水を多く飲む・尿量増加・体重減少などさまざまですが、腎臓病の進行度により症状が異なります。ごく初期のステージ1では症状は全くなく、ステージ2では全く症状がないもしくは水分摂取増加と尿量の増加がみられることもあるでしょう。
ステージ3では食欲不振・嘔吐・脱水などの症状が現れますが、生命を維持していくのに必要な腎臓の機能は保たれるため手遅れではありません。しかしステージ4にまで進行すると生命の維持が困難な状態に陥ります。
できるだけ軽度の症状での発見が好ましいため、注意深く猫の水分摂取量と尿量を観察しておくと良いでしょう。
- 慢性腎臓病・腎不全とはどのような状態ですか?
- 腎不全は腎臓に何らかの障害があるために腎臓の機能が十分に働いていない状態で、慢性腎臓病とは長期にわたって腎不全が継続するとこのように診断されます。
ヒトに置き換えると慢性腎不全の診断を受け腎臓の機能が極端に低下すると、生命維持のために人工透析や腎臓移植を行うことが必要になります。
- 猫は腎臓の病気になりやすいのですか?
- 猫の腎臓病は、非常に一般的で5歳以上の猫の死因の上位といわれているほどです。猫が高齢になるとよく起こる病気の一つで、一旦腎臓の機能が悪くなると徐々に進行して、回復が難しい病気です。
実は人間などほかの哺乳類には腎臓がウイルスや細菌による炎症・もしくは尿路結石になった際に腎臓の回復を助ける血液中のタンパク質が存在しています。しかしこのようなタンパク質は猫の血液中には存在せず、腎臓の機能にダメージをきたしやすいため猫は腎臓病になりやすいといわれています。
猫の腎臓の病気の検査や治療法
- 動物病院を受診するタイミングを教えてください。
- 猫の腎臓病は長い期間を経て徐々に悪くなっていくことがほとんどです。また高齢になると多くの猫が腎臓に何らかの問題を持っていることが多く、食欲不振や体重の減少など目に見える症状が現れる頃には腎臓の障害が進行しているのが特徴です。
若齢の猫の場合は1年に1度の定期健診でも良いのですが、7~10歳以上の高齢の猫の場合には半年に一度の定期健診や尿検査を受けるようにしましょう。早期発見に努めることで、猫の食事を見直したり腎臓病の悪化を遅らせることも可能です。
動物病院での受診は症状が現れてからではなく、定期的に受診すると良いでしょう。
- 猫の腎臓病の検査ではどのようなことを行いますか?
- 猫の腎臓の機能が3分の1以下で尿検査に、4分の1以下で血液検査に異常が現れるといわれています。そのため、猫の尿検査は腎臓の機能を見るために非常に重要な検査です。
尿検査では尿の比重、つまり猫のおしっこが濃いか薄いかを見る検査を行い、腎臓がきちんと機能しているかを判定します。腎臓の機能が悪くなった猫の場合、おしっこが薄くなってしまうため検査で確認します。
他にも尿路感染や結石がないかも同時に確認するため尿検査も受けるようにしましょう。血液検査では、血液中にあるナトリウムやカリウムなどのミネラルバランス・腎臓の機能・脱水状態に陥っていないかを検査します。
また通常であれば老廃物として体外に排出されるクレアチニンや尿素窒素(BUN)が排出されず血液中に蓄積されるため、血液中のこれらの値が高くないかどうかを確認できます。
- 治療方法を教えてください。
- 残念ながらダメージを受けて低下した腎臓の機能は元に戻すことはできません。そのため残された腎臓の機能をできるだけ温存する食事療法やサプリメント、腎臓への負担をできるだけ軽減するための水分補給を目的とした点滴などが行われることもあります。
腎臓が原因による高血圧の場合は、血圧を下げるための降圧剤が投与されます。また腎臓の炎症が疑われる場合には抗生物質投与する薬物治療が選択されるでしょう。
腎臓病の早期から幹細胞移植などの再生医療を試みる場合もあります。
猫の腎臓の病気の予防や早期発見
- 猫の腎臓の病気を予防するために大切なことを教えてください。
- 猫も人間と同じく長寿になってきており、15歳を超えている猫も少なくありません。腎臓病は人間と同様に食生活や水分摂取量、感染症などにより悪化したりするため、食事管理と水分管理が重要です。
猫は高齢になると腎臓疾患にかかる確率が増えるため、7~10歳を目安に半年に一度獣医さんの検診を受けて、尿・血液検査などにより腎臓疾患の有無を確認するのも良い方法です。
- 早期発見のポイントを教えてください。
- 早期発見のポイントは水分摂取量の観察をしっかり行うことです。
猫は腎臓病になると水分を多く飲むため、1日に1kgあたり50ml以上の水分を飲んでいる場合には腎臓病の疑いがあります。日頃から猫の体重・毛の艶・食欲など様子をきちんと観察するようにしましょう。
- 猫の食生活で注意するべきことはありますか?
- 腎臓はエネルギー産生や消化の過程で出た血液中の老廃物を濾過して、体外に排出する重要な臓器です。そのため日常的に摂取する食べ物が重要で、タンパク質やナトリウム、リンなどの摂取量が多くなりすぎないようにバランスの取れた食事を摂取することが大切です。
もし猫が慢性の腎臓病と診断された場合には、タンパク質・ナトリウム・リンなどを制限した腎臓病食を与えることがあります。
編集部まとめ
本記事では腎臓病の予防や早期発見にはどのようなことに気をつけたら良いのかについて解説してきました。
猫の腎臓病の予防や早期発見は、猫の健康や長寿に大きく関わるものです。最近では猫も人間と同様に高齢化しており、15歳を超えてもなお生きる猫も多くいます。
10歳以上の高齢の猫の約30~40%は腎臓病にかかっているといわれており、ある程度歳を重ねた猫の死因の第一位になっています。
腎臓の機能は血液中の老廃物を濾過・排出することが主な機能ですが、腎臓による体の症状はある程度進行しないと目に見えて現れないため早期発見がかなり困難といえるでしょう。
そのため水分摂取量や尿量などの日常の些細な猫の様子をしっかりと観察することが大変重要になります。
また猫が高齢になった時には、半年に一度獣医の診察や尿もしくは血液検査を行うことで目には見えない腎臓の状態を確認できます。
腎臓は一旦悪くなり、機能しなくなると元には戻らない特性があるため、定期健診による腎臓の機能チェックも良い方法の一つといえるでしょう。
腎臓は体内に摂取した食べ物の老廃物の処理機関の一つです。食事内容も腎臓病の進行予防には重要なので、タンパク質・ナトリウム・リンなどの成分が過多にならないように注意しましょう。
参考文献