猫のリンパ腫とは?病型やステージ分類など徹底解説!

猫 リンパ腫

猫のリンパ腫にはさまざまな原因が存在します。また、さまざまな病型やステージが存在するため、注意が必要となります。本記事では、猫のリンパ腫について以下の点を中心にご紹介します。

  • 猫のリンパ腫の原因とは
  • 猫のリンパ腫の病型やステージとは
  • 猫のリンパ腫の治療とは

猫のリンパ腫について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

猫のリンパ腫とは

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猫のリンパ腫は、リンパ系細胞が異常増殖する腫瘍性疾患で、猫の腫瘍の中でも特に発生頻度が高い傾向にあります。
研究によると、若年猫(5歳未満)での発生が多く、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫ではリンパ腫の発症リスクが高まります。

猫のリンパ腫の原因

猫のリンパ腫の原因として、遺伝的な要素、環境的な影響、および特定のウイルスの感染が考えられています。

  • 遺伝的要因:特定の遺伝子の変異や異常が、細胞の制御機構に影響を及ぼし、異常な細胞増殖を引き起こし、リンパ腫のような悪性腫瘍が発生する可能性があります。
  • 環境的な影響:化学物質への曝露や、特定の生活環境におけるストレスなどです。
  • 特定のウイルス感染:猫白血病ウイルス(FeLV)などの特定のウイルスへの感染も原因となります。FeLVはリンパ腫を含む多くの健康問題を引き起こすとされており、感染した猫はリンパ腫を発症するリスクが高まります。
    猫白血病ウイルスは、主に血液や唾液を介してほかの猫に感染し、幼い猫での悪性リンパ腫の発症に関わることが多い傾向にあります。

これらの要因がどのように組み合わさってリンパ腫を引き起こすかは、まだ解明されていません。

猫のリンパ腫の病型ごとの症状

猫 結膜炎

猫のリンパ腫にはさまざまな病型が存在します。下記に病型ごとの症状をご紹介します。

消化管型

消化管型リンパ腫は、猫のリンパ腫の中でも特に胃腸などの消化管に腫瘍が発生するタイプとなります。
消化管型リンパ腫は、腫瘍細胞が消化管に広がることで、さまざまな症状を引き起こします。
主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 嘔吐:消化管型リンパ腫の猫は、しばしば嘔吐を伴います
  • 下痢:腫瘍が腸に影響を与えることで、下痢を引き起こすことがあります。下痢は、ときには黒い色を呈することもあります
  • 食欲不振と体重減少:消化管型リンパ腫の猫は、食欲が低下し、それに伴い体重が減少することがあります
  • 腹部の膨満感や痛み:腫瘍が腹部に広がると、膨満感や痛みを感じることがあります

縦隔型

縦隔型リンパ腫は、胸部の縦隔にあるリンパ節や胸腺が腫瘍細胞に侵されるタイプのリンパ腫です。
縦隔型リンパ腫は、特に猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫で発生することが多いとされています。
主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 呼吸困難:縦隔にあるリンパ節の腫れが気管や肺に圧迫を与えることで、呼吸困難を引き起こすことがあります
  • 食べ物が飲み込みづらい:縦隔の腫瘍が食道に圧迫を与えることで、食べ物の摂取が困難になることがあります
  • 体重減少:食欲不振や摂取困難により、体重減少が見られることがあります

多中心型

多中心型リンパ腫は、猫のリンパ節や肝臓、脾臓、骨髄などに腫瘍細胞が存在するタイプのリンパ腫です。
このタイプでは、体表のリンパ節が腫れることでリンパ腫に気付くことがあります。
以下、鼻腔内、皮膚などの症状についてご紹介します。

鼻腔内

鼻腔内のリンパ腫における主な症状には、以下のようなものがあります。

  • 鼻からの音:呼吸時に鼻から音がすることがあります。これは、リンパ腫によって鼻腔が塞がれることで起こります
  • 鼻汁や鼻出血:鼻腔内のリンパ腫が進行すると、鼻汁や鼻出血が見られることがあります

皮膚

皮膚における主な症状には、以下のようなものがあります。

  • 強い痒み:皮膚に発生したリンパ腫は、強い痒みを引き起こすことがあります
  • 脱毛:リンパ腫の影響で、脱毛することがあります
  • 皮膚の硬化:皮膚の一部が硬くなることがあります
  • 潰瘍や丘疹:皮膚に潰瘍や丘疹が形成されることがあります

その他

多中心型リンパ腫は、猫のリンパ腫の中でも珍しいタイプで、1~4歳頃の若い猫に見られる傾向にあります。
多中心型リンパ腫では、末梢のリンパ節が腫れることが主な症状となります。

  • 中枢神経系に影響を及ぼす場合:下半身麻痺などの脳に関連した中枢神経系症状を示すことがあります
  • 腎臓に影響を及ぼす場合:沈うつ、体重減少、多飲多尿などの症状を示すことがあります

猫のリンパ腫のステージ分類

猫のリンパ腫にはステージがあります。以下、ステージ分類についてご紹介します。

ステージ1

ステージ1の猫のリンパ腫は、一つのリンパ節や骨髄を除いて、特定の一つの臓器に限定されている状態を指します。
この段階では、リンパ腫は初期の状態で、まだ全身に広がっていません。
治療としては、後述する化学療法が中心となりますが、猫は犬より化学療法によく耐えるとされています。

ステージ2

猫のリンパ腫ステージ2は、一つの部位にあるいくつかのリンパ節に、異常が見られる状態を指します。
この段階では、リンパ腫はまだ全身に広がっていないものの、単一のリンパ節を超えて複数のリンパ節に影響を及ぼしています。
治療には、ステージ1と同様に主に化学療法が用いられます。
治療計画はリンパ腫のステージ、猫の全体的な健康状態、年齢、飼い主が通院できる回数や費用などにより変わります。

ステージ3

ステージ3の猫のリンパ腫は、全身のリンパ節に病変が存在する状態を指します。
この段階では、リンパ腫が体の広範囲に影響を及ぼしています。
具体的な症状は、リンパ腫のタイプや発生部位によって異なりますが、食欲の低下、嘔吐、下痢などが見られることが多くなります。また、リンパ節の腫れも特徴的な症状といえます。

ステージ4

ステージ4の猫のリンパ腫は、肝臓や脾臓に病変が存在する状態になります。
この段階では、リンパ腫がこれらの重要な臓器にまで広がっており、病気の進行がかなり進んでいることを示しています。
症状としては、食欲不振、体重減少、嘔吐、下痢などです。
また、肝臓や脾臓の機能障害による症状も見られることがあります。

ステージ5

ステージ5のリンパ腫は、猫の末梢血液や骨髄に腫瘍細胞が存在する状態となります。
この段階では、リンパ腫が血液や骨髄にまで広がり、全身性の病状となっています。
症状は、食欲不振、体重減少、嘔吐、下痢などです。
また、骨髄の浸潤により、貧血や出血傾向などの症状が見られることもあります。

サブステージ

猫のリンパ腫のサブステージは、病気の全身への影響の度合いに基づいて分類されます。
サブステージは以下の二つに分けられます。

  • サブステージa: 臨床症状がない状態。この段階では、猫はリンパ腫による明らかな全身症状を示していません
  • サブステージb: 臨床症状がある状態。この段階では、猫はリンパ腫による全身症状、例えば食欲不振、体重減少などを示しています

猫のリンパ腫の検査・診断

こちらでは猫のリンパ腫の検査と診断についてご紹介します。

触診

触診は、獣医師が猫の体を直接手で触れて検査する方法となります。
触診により、リンパ節の腫れや腫瘤(しこり)の存在、その他の異常を感知することが期待できます。

リンパ腫は、リンパ節やほかの臓器に影響を及ぼす可能性があるため、触診は特に重要といえます。例えば、多中心型リンパ腫の場合、体表リンパ節が腫れることが多く、触診によってこれを確認することが期待できます。
また、消化管型リンパ腫では、腹部の触診により腫瘤の存在を感知することが期待できます。

触診の際、猫の体のさまざまな部位を慎重に触れて検査します。部位としては、リンパ節の位置、腹部、胸部などです。
触診は非侵襲的で、猫にとってストレスが少ない方法といえます。
異常が感じられた場合、さらなる検査をする場合があります。

血液検査

血液検査では、血液中の異常なリンパ球の出現や全身状態の把握を目的として行われます。血液検査により、リンパ腫の存在やその他の健康状態に関する重要な情報を得られます。
血液検査には、血液学的検査(CBC)や生化学検査が含まれます。
これらの検査により、赤血球、白血球、血小板の数値や、肝機能、腎機能などの指標を評価します。

ウイルス検査

ウイルス検査は、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)の感染を確認するために行われます。これらのウイルスは、猫のリンパ腫の発症に関与しているとされています。

FeLVやFIVに感染している猫は、リンパ腫を発症するリスクが非感染猫より高くなります。特にFeLVは、リンパ腫の発症リスクを大幅に高めるといわれています。そのため、リンパ腫の疑いがある場合、これらのウイルス感染の有無を確認することが重要といえます。

ウイルス検査は、血液サンプルを用いて行われます。獣医師は、猫から採血し、特定のウイルスに対する抗体や抗原の有無を検査します。
この検査により、猫がFeLVやFIVに罹患しているか否かを検証することが可能とされます。

レントゲン検査・超音波検査

レントゲン検査では、胸部や腹部のレントゲンを通して、リンパ腫の広がりやほかの病気の有無を調べます。
胸部レントゲンは、縦隔の腫瘤や胸水、リンパ腫の肺浸潤の有無を確認するのに役立ちます。

腹部レントゲンでは、腹腔内臓器の大きさや位置、リンパ節の大きさを評価します。これにより、リンパ腫の存在とその範囲を把握することが可能といわれています。

一方、超音波検査は、リンパ節の状態やレントゲンでは見えにくい各臓器の内部構造や血管構造を詳細に調べるために使用されます。
特に、腹部の超音波検査は、リンパ腫が肝臓や脾臓、腸などの腹部臓器に影響を及ぼしているかどうかを判断するのに有効とされています。これにより、リンパ腫の正確な診断と適切な治療計画の策定が可能とされます。

骨髄検査

骨髄検査は、リンパ腫が骨髄に及んでいるかどうかを判断し、病気のステージングの評価に役立ちます。

骨髄検査は、通常、麻酔または軽い鎮静下で行われます。獣医師は、骨髄を採取するために、大腿骨や胸骨などの骨から針を挿入します。
採取された骨髄サンプルは、リンパ腫細胞の存在、その種類、および分布を調べるために顕微鏡で詳細に分析されます。

骨髄検査の結果は、リンパ腫のタイプの特定、病気の進行度の評価、および治療計画の策定に不可欠となります。例えば、骨髄にリンパ腫細胞が見つかった場合は、病気がより進行していることを意味し、より積極的な治療が必要になる可能性があります。

また、骨髄検査は、リンパ腫の治療中および治療後の病状のモニタリングにも使用されます。
治療を評価し、必要に応じて治療計画を調整するために、定期的な骨髄検査が行われることがあります。

細胞診検査・病理組織的検査

細胞診検査は、病変部を針で刺し、細胞を吸引して採取する方法となります。この検査では、採取した細胞を顕微鏡で観察し、リンパ腫の細胞が存在するかどうかを確認します。
細胞診検査は簡単に行え、リンパ腫の診断に有用とされますが、細胞の採取量が限られているため、ときには診断が困難な場合もあります。

一方、病理組織学的検査は、手術や生検によって採取した組織の塊を標本にして顕微鏡で観察する方法になります。この検査では、リンパ腫細胞の分布や組織の構造を詳細に調べられます。
病理組織学的検査は、リンパ腫の確定診断には不可欠であり、リンパ腫のタイプや悪性度を判断する上で重要な情報を提供します。

猫のリンパ腫の治療

猫のリンパ腫の治療には、下記のような方法が用いられます。

化学療法

猫のリンパ腫の治療において、化学療法は一般的な治療法の一つになります。
化学療法は、腫瘍細胞の成長を抑制または破壊するために、抗がん剤を使用します。
化学療法は、リンパ腫の種類や進行度、猫の全体的な健康状態に応じて、治療計画が異なります。

治療は通常、獣医師の監督の下で行われ、経口薬または注射で抗がん剤が投与されます。
治療期間は、リンパ腫の種類や反応によって異なりますが、多くの場合、数週間から数ヶ月にわたって行われます。
治療中は、定期的な血液検査や健康チェックが必要で、副作用の管理も重要といえます。

化学療法の副作用には、食欲不振、嘔吐、下痢、脱毛などがありますが、通常、治療の終了後に改善します。

外科手術

外科手術は、特に消化管リンパ腫など、特定のリンパ腫タイプに適用されることがあります。
外科手術の目的は、腫瘍組織を物理的に切除し、病気の進行を抑制または取り除くことです。

外科手術は、リンパ腫が特定の臓器や組織に限定されている場合に特に効果が期待できます。
例えば、消化管リンパ腫の場合、影響を受けた腸の部分を切除することで、症状の改善や病気の進行の遅延を図れます。
しかし、リンパ腫が複数の部位に広がっている場合や、全身性のリンパ腫の場合には、外科手術だけでは十分な治療ができないことがあります。

外科手術は、通常、全身麻酔下で行われ、手術後は猫の回復と健康状態のモニタリングが必要となります。
手術にはリスクが伴うため、獣医師は猫の全体的な健康状態、リンパ腫の種類、進行度を考慮して手術の適用を決定します。

放射線療法

放射線治療は、特定の部位に照射を行い、腫瘍を減少させる目的で使用されます。
放射線療法は、腫瘍の位置や大きさ、種類に応じて選択されることがあります。

放射線療法は、腫瘍細胞を直接破壊することにより、腫瘍の成長を抑制または停止させることを目的としています。
治療は専門の放射線治療施設で行われます。
治療期間や回数は、腫瘍の種類や進行度によって異なりますが、数週間にわたって照射が行われます。

放射線療法は、ほかの治療法と組み合わせて行うこともあります。例えば、化学療法と併用することで、腫瘍の縮小や寛解を目指せます。
また、放射線療法は、外科手術が困難な場合や、腫瘍が特定の部位に限定されている場合にも効果が期待できます。

まとめ

ここまで猫のリンパ腫についてお伝えをしてきました。
猫のリンパ腫についてまとめると、以下のとおりです。

  • 猫のリンパ腫の原因には、遺伝的な要素、環境的な影響、および特定のウイルスの感染などが挙げられる
  • 猫のリンパ腫の病型には、消化管型、縦隔型、多中心型がある。また、ステージは1~5とサブステージがある
  • 猫のリンパ腫の治療には、化学療法、外科手術、放射線治療が挙げられる

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、有り難うございました。

参考文献