猫のネフローゼ症候群とは?原因・症状・予防法や治療法まで解説!

猫のネフローゼ症候群とは?原因・症状・予防法や治療法まで解説!

「猫のネフローゼ症候群とは?」「猫が抱えるネフローゼ症候群の原因や治療法が知りたい」猫を飼っている方のなかには、このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では猫が抱えるネフローゼ症候群について以下の点を中心にご紹介します。

  • ネフローゼ症候群の特徴
  • ネフローゼ症候群にかかりやすい猫の特徴
  • ネフローゼ症候群の診断方法や治療法

猫が抱えるネフローゼ症候群について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

猫のネフローゼ症候群とは

猫のネフローゼ症候群とは?原因・症状・予防法や治療法まで解説!

まずはじめに、猫が抱えるネフローゼ症候群をわかりやすく解説します。

ネフローゼ症候群とは、猫の腎臓に関する病気の1つで、腎臓の糸球体が傷つくことで正常な働きができなくなり、血液中のタンパク質が尿に漏れ出てしまう腎臓疾患群の総称です。猫の腎臓には、ネフロンという機能があり、そのなかに糸球体と呼ばれる血管の塊があります。糸球体は、血液中の老廃物や塩分をろ過し、尿として身体の外に排出する機能を果たしています。

しかし、ネフローゼ症候群を発症すると、この糸球体が正常に働かなくなってしまい、本来血液中にとどまるべき重要なタンパク質が尿中に漏れ出してしまうのです。体内でタンパク質のバランスが乱れてしまうと、体内の水分調整にも影響を及ぼし、むくみなどの症状として現れます。

ネフローゼ症候群の仕組みや具体的な症状については、後程あらためてご紹介します。

猫のネフローゼ症候群の特徴

猫のネフローゼ症候群とは?原因・症状・予防法や治療法まで解説!

本項目では、猫のネフローゼ症候群の特徴を以下の4つに分けてご紹介します。

1,猫のネフローゼ症候群の仕組み
2,猫のネフローゼ症候群の原因
3,ネフローゼ症候群にかかった猫の症状
4,ネフローゼ症候群にかかりやすい猫の特徴

猫のネフローゼ症候群の仕組み

前述したように、猫のネフローゼ症候群は、腎臓機能が正常に働かなくなることで発症します。

腎臓は、心臓から送られてきた血液をろ過して老廃物を取り除き、体内の水分やミネラル、タンパク質のバランスを調整する重要な役割を果たしています。そんな体に必要な栄養素を適切にコントロールする機能の中心となるのが、腎臓内部にある無数の糸球体です。

糸球体とは、微細な毛細血管の集合体で、毛糸の球のように丸まってできているのでこのように呼ばれています。腎臓内部の糸球体は、心臓から送られてきた血液をろ過したうえで、必要な栄養素は血液と一緒に体に戻し、不要なものは尿として排出するための分岐点のような位置付けとなっています。

しかし、ネフローゼ症候群を発症してしまうと、糸球体が正常に働かなくなり、体に必要なタンパク質まで尿として排出してしまうようになります。

その結果、本来必要であるはずの大量のタンパク質が尿中に漏出し、血液中のタンパク質濃度が著しく低下します。

猫のネフローゼ症候群の原因

ご説明したとおり、猫のネフローゼ症候群は腎臓内部の糸球体の異常によって起こります。では、糸球体の異常はどのようにして引き起こされるのでしょうか。

糸球体の異常は、主に糸球体腎炎や腎アミロイドーシスが原因で引き起こされます。糸球体腎炎とは、糸球体が炎症を起こし、腎臓の機能が低下する病気です。通常、猫の体の免疫システムは、病原体から身を守る役割を果たしますが、糸球体腎炎では、この防御機構が糸球体自体を攻撃してしまいます。

具体的には、細菌やウイルスなどの感染、ほかの炎症性疾患により生じた抗原と、それに対応する抗体が結合し、この免疫複合体が糸球体に沈着します。これが引き金となって炎症反応が起こり、糸球体の構造や機能に障害をもたらすのです。

猫の場合、炎症の原因となる細菌やウイルスにはいくつかの種類がありますが、猫白血病ウイルス感染症や猫伝染性腹膜炎、猫免疫不全ウイルス感染症などが挙げられます。一方腎アミロイドーシスとは、アミロイドと呼ばれるたんぱく質の一種が腎臓に沈着し、糸球体が正常に働くことができなくなってしまいます。

アミロイドーシスは、腎臓以外にも悪い影響を及ぼすことがありますが、腎臓のなかでは糸球体はアミロイドが沈着しやすい部分です。腎臓の糸球体に付着したアミロイドーシスは、放置しておくと慢性腎不全につながってしまう恐れもあります。

ネフローゼ症候群にかかった猫の症状

ネフローゼ症候群にかかった猫の症状についてご紹介します。

前述したように、ネフローゼ症候群にかかった猫は、本来腎臓内で濾過されないタンパク質がネフローゼ症候群により濾過されてしまい、そのまま尿として排出してしまいます。それにより血液中のタンパク質濃度が著しく低下すると、体内の水分バランスが崩れ、むくみや腹水といった症状が現れます。

同時に、タンパク質の喪失を補おうとして肝臓でのタンパク質生成が亢進し、それに伴って血中コレステロール値も上昇してしまいます。

また、それ以外にも、以下のような症状が現れます。

  • 蛋白尿
  • 食欲不振
  • 元気がなくなる/ぐったりしている
  • 低アルブミン血症(血液中に含まれるアルブミンというタンパク質の一種の濃度が低下する病気)
  • 腹水

ネフローゼ症候群を発症した猫の症状を確認するだけで、飼い主がネフローゼ症候群と判断することは難しく、上記のような症状が確認できた場合には、すぐに医師に相談することが重要です。

ネフローゼ症候群にかかりやすい猫の特徴

猫のネフローゼ症候群は、感染症によって引き起こされることがある一方で、遺伝的要素によって発症する場合もあります。

以下の種類の猫は、​​遺伝子変異や遺伝的特徴によってネフローゼ症候群にかかりやすいとされています。

  • シャム
  • オリエンタル
  • ロシアンブルー
  • バーミーズ
  • メインクーン
  • アビシニアン

これらの猫をペットとして飼っている飼い主様は、たとえネフローゼ症候群による具体的な症状が見られない場合でも、定期的に検査や健康診断などを受けておくと安心です。

ネフローゼ症候群にかかりやすい猫の種類

猫のネフローゼ症候群とは?原因・症状・予防法や治療法まで解説!

本項目では、猫のネフローゼ症候群を予防する方法や治療法を以下の3つのテーマに分けてご紹介します。

1,猫のネフローゼ症候群の予防方法
2,猫のネフローゼ症候群の診断方法
3,猫のネフローゼ症候群の対処法

猫のネフローゼ症候群の予防・診断・対処法

まずはじめに、猫のネフローゼ症候群の予防方法をご紹介します。結論から述べると、猫のネフローゼ症候群を未然に防ぐ予防方法はないのが現状です。

とはいえ、猫白血病ウイルス感染症や猫伝染性腹膜炎をはじめとする感染症が間接的にネフローゼ症候群を引き起こすこともわかっているため、室内環境や猫が過ごす環境の衛生管理をしっかりと行うことが結果としてネフローゼ症候群の予防につながるともいえます。

また、これらの感染症を発症した場合は、飼い主の判断で放置するのではなく、医師に相談して可能な限り早い段階で対処することも重要です。

猫の普段の生活における違和感を早い段階で改善するよう試みること、たとえ異常を感じなくても、普段から定期的に血液検査や尿検査などの診断を行っておくことが、長期的に見てネフローゼ症候群の予防策となるでしょう。

猫のネフローゼ症候群の予防方法

次に、猫のネフローゼ症候群の診断方法についてご紹介します。猫のネフローゼ症候群が疑われるような症状が確認された場合は、まず尿検査による診断が行われます。

前述したように、ネフローゼ症候群にかかってしまった猫は、腎臓内で体内に必要な栄養素と不要な尿を適切に分けることができなくなるため、たんぱく質が多く含まれた尿が排出されます。そのため、検査によって蛋白尿と診断された場合は、ネフローゼ症候群を発症している可能性が高いと判断されます。

その後、他に想定される病気や感染症との識別が行われ、必要に応じて血液検査やレントゲン検査、超音波を使用した検査などが行われます。

猫のネフローゼ症候群の診断方法

猫のネフローゼ症候群の対処法として重要なのは、医師と密なコミュニケーションを取っておくことです。なにしろ、腎臓の糸球体が関わるネフローゼ症候群などの病気は、素人の判断で治療したりしてしまうと、二次的な症状につながる危険性があります。

定期的な健康診断などを通じてかかりつけの獣医がいる場合は安心ですが、そのような病院がない場合でも、すぐに近くの動物病院にコンタクトを取ることが重要です。

また、獣医の診断や指示を参考にしたうえで、適切な食事管理を行うことや薬を用いることも、ネフローゼ症候群を抱える猫にとって欠かせない対処法といえます。

加えて、直接的なアプローチ以外にも、猫がストレスを抱えないような環境づくりや健康を維持するための運動習慣などを促すことも大切です。

猫のネフローゼ症候群の対処法

猫のネフローゼ症候群とは?原因・症状・予防法や治療法まで解説!

ネフローゼ症候群の治療法

最後に、猫のネフローゼ症候群の治療法を以下の4つの項目に分けてご紹介します。

1,腎臓のケアのための療法食
2,基礎疾患の治療
3,薬物治療
4,対症療法

猫のネフローゼ症候群は、いくつかの要因や現象が重なり合っていることが多く、複数の視点からのアプローチが必要となります。

腎臓のケアのための療法食

ネフローゼ症候群の治療法の1つ目は、腎臓のケアのための療法食です。腎臓の機能低下によって引き起こされるネフローゼ症候群では、本来必要なたんぱく質などの栄養素が体外に排出されてしまうという問題があります。

そのような事態を解消するためには、腎臓および糸球体への負担を軽減させながら、栄養を補給できるようなアプローチが必要となります。特にたんぱく質が多く含まれた食事は腎臓や糸球体への負担となるため、栄養バランスが考慮された低たんぱく食などが用いられます。

基礎疾患の治療

2つ目は、基礎疾患の治療です。ネフローゼ症候群は、基礎疾患による二次的な結果として発症する可能性があります。したがって、根本的な原因となっている基礎疾患を特定し、適切に治療する場合も重要となります。

例えば、感染症が原因である場合は、適切な抗生物質やインターフェロン療法などが行われます。腫瘍性疾患が基礎にある場合は、外科的切除や化学療法などの腫瘍に対する直接的な治療が必要となることもあります。

基礎疾患などに用いられる薬物療法については、次でご紹介します。

薬物治療

3つ目は、薬物治療です。

薬物治療では、まず免疫抑制剤が用いられます。免疫抑制剤とは、体の免疫システムの活動を抑制/調整する薬剤です。猫のネフローゼ症候群は、免疫複合体が腎臓の糸球体に沈着することで炎症が起こり、結果として腎機能が低下しているケースがあるため、まずは免疫抑制剤が使用されます。

対症療法

4つ目は、対症療法です。

対症療法とは、病気の直接的な原因を解消するのではなく、表面化している症状を一時的に緩和させるためのアプローチです。ネフローゼ症候群による二次症状を抑えるという意味では、薬物療法や食事療法も対症療法といえます。

しかし、対処法の項目でもご紹介したように、ストレスを抱えていたり、元気をなくしてしまっている猫に対しては、安心できる環境づくりや、飼い主がいつも以上に寄り添って面倒をみるなど、猫の心理面にアプローチするような療法も重要です。

まとめ

猫のネフローゼ症候群とは?原因・症状・予防法や治療法まで解説!

ここまで猫のネフローゼ症候群についてお伝えしてきました。記事の要点をまとめると以下のとおりです。

  • ネフローゼ症候群は、猫の腎臓の内部にある糸球体と呼ばれる部分が正常に働かなくなることで発症する病気で、本来体に必要な栄養分が尿として排出されてしまう
  • ネフローゼ症候群にかかりやすい猫の特徴は、猫白血病ウイルス感染症や猫伝染性腹膜炎、猫免疫不全ウイルス感染症などの感染症にかかったことがある猫
  • ネフローゼ症候群の診断方法では、まずはじめに尿検査が行われ、治療には免疫抑制剤などの薬物や抗生物質が用いられる

この記事を読んで、猫のネフローゼ症候群について参考にしていただけると幸いです。

【参考文献】