猫の膵炎はどのような病気?原因や症状、治療法について解説!

猫 膵炎

猫の膵炎は、膵臓が自分自身を消化してしまう危険な病気です。猫の膵炎は、急性と慢性に分けられ、症状や原因、治療法が異なります。
本記事では、猫の膵炎について以下の点を中心にご紹介します。

  • 猫の膵炎について
  • 猫が膵炎になる原因
  • 猫が膵炎になったときの治療法

さらに猫の膵炎の予防法についても解説します。猫の膵炎について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

猫の膵炎とは

膵臓は、消化酵素を生成し、これらを十二指腸に送り出す重要な役割を果たしています。
消化酵素は通常、膵臓内では不活性な状態で存在し、腸内に分泌された後に活性化します。
しかし、何らかの原因によって膵臓内で酵素が早期に活性化されると、膵臓自体が消化され、膵炎という病状が引き起こされます。

膵炎は、嘔吐、腹痛、下痢などの症状を引き起こすことがあります。
急性膵炎は激痛を伴うことがありますが、一方で慢性膵炎は明確な症状を示さないこともあります。特に、高齢の猫は慢性膵炎を発症しやすいとされています。
慢性膵炎は病状が改善したり悪化したりすることがありますが、無症状のケースも存在します。

膵炎の種類

治療中 子猫

猫の膵炎には「急性」と「慢性」の2種類があります。以下で解説します。

急性膵炎

猫における急性膵炎は、何らかの原因で膵臓が自己消化と炎症を急速に引き起こします。強い炎症が膵臓から周囲の消化管へと広がり、腹膜炎や消化管の炎症をもたらす可能性があります。早期に適切な治療が行われれば、膵臓の構造や機能は回復する可能性があります。
しかし、治療が遅れると、全身の炎症が引き起こされ、最終的には多臓器不全を引き起こし、猫の生命を脅かす可能性があります。

慢性膵炎

猫の慢性膵炎は、長期間にわたり膵臓が炎症を起こし、その機能が徐々に衰えていく状態を指します。この病状は、自覚症状が少ないため、初期段階での発見が難しいという特徴があります。
また、病状が進行すると、膵臓の組織が破壊され、その機能が元に戻らない不可逆的な状態になる可能性があります。
したがって、早期発見と進行の抑制が重要となります。

猫が膵炎になる原因

猫 中毒

猫の膵炎は、複数の原因により引き起こされます。
急性膵炎は、腹部への強打や膵臓の酵素の漏れにより、膵臓や周囲の臓器が自己消化されて発生します。

また、猫伝染性腹膜炎(FIP)、猫ウイルス性鼻気管炎などのウイルス感染症、トキソプラズマ症などの感染症、胆管肝炎、慢性的な胃腸炎なども膵炎の原因となる可能性があります。

一方、慢性膵炎は、急性膵炎が完全に治癒せずに再発することで発生することがあります。

これらの病状は、膵臓の機能を徐々に破壊し、最終的には膵臓の機能不全を引き起こす可能性があります。

なお、膵炎になる原因のひとつに、外科手術が含まれることもあります。
腹部の手術を受けた猫は、膵臓にダメージを受けたり、膵液の流れが妨げられたりすると、膵炎を発症するリスクが高まります。手術後の猫の様子には注意してあげましょう。

猫が膵炎になったときの症状

猫 肥大型心筋症

猫が膵炎になった場合どのような症状が出るのでしょうか?
症状を把握しておくことは早期発見に役立ちますので、ぜひ参考にしてください。

急性膵炎

猫の急性膵炎は、食欲の突然の低下、嘔吐、下痢、震えなどの症状があり、膵臓が自己消化と炎症を引き起こして発生します。特に、腹部が何らかの形で圧迫されると、猫は激しい痛みを感じ、腹部を保護するための体勢をとることがあります。
さらに、急性膵炎が進行すると、膵臓周囲の組織がダメージを受け、多臓器不全やショック状態を引き起こす可能性があります。

慢性膵炎

猫の慢性膵炎は、初期段階では特定の症状が少なく、他の消化器系の症状と区別がつかないことがあります。そのため、病状の進行を確認するのは困難で、食欲減退や体重減少などの症状が見られるようになると、病状が進行している可能性が高いです。
さらに、膵臓のインスリン分泌部分に障害が生じると、糖尿病などの合併症を引き起こし、病状が重症化することもあります。
また、慢性膵炎でも急性膵炎と同様の症状が見られることがあります。

猫が膵炎になったときの治療

猫が膵炎になった場合どのような治療を行うのでしょうか?以下に詳細を解説します。

治療法

猫の膵炎の治療は、病状の進行度や症状により異なります。
急性膵炎の場合、早期治療が重要で、入院と輸液療法(水分や電解質の補給)が必要となることがあります。
また、急性膵炎だけでなく慢性膵炎でも、痛みを和らげる薬や吐き気を抑える薬が使用されることがあります。

通常、膵臓を休ませるために絶食絶水が必要となりますが、猫の場合、早期に栄養補給を行わないと肝リピドーシスという肝臓の病気を引き起こす可能性があります。そのため、食欲不振でも栄養剤の経口投与が行われることがありますが、食べてくれない場合は、鼻から細いカテーテルを通して食道まで栄養剤を補給することもあります。
また、膵外分泌不全を起こしている場合は、消化酵素を補うための内服薬が処方されます。

治療にかかる費用

猫の膵炎の治療費は、病状や必要な治療により異なります。猫の膵炎の年間平均通院回数は3回で、1回あたりの平均費用は約7,560円とされています。
初診時には、膵臓の酵素値や炎症の数値を調べる血液検査や、膵臓や周囲の臓器の状態を把握する超音波検査などが行われ、これらの検査費用は1〜2万円程度かかる可能性があります。
さらに、病状が重い場合には入院が必要となり、その際の入院費用も1〜2万円程度かかることを考慮に入れる必要があります。

猫が膵炎にならないための予防

猫の膵炎の予防は、室内飼いの徹底による交通事故や感染症のリスクの軽減、マンションなどでの飼育環境の整備による転落の危険の防止、感染症予防のためのワクチン接種や適切な飼育・管理、体重管理などの日々の健康管理の徹底が重要です。特に、肥満のシニア猫は慢性膵炎を発症しやすいため、さまざまな合併症に注意が必要です。
年に1〜2回の健康診断を受けることで早期発見と適切な治療を目指し、猫の健康と生命を守りましょう。

まとめ

ここまで猫の膵炎についてお伝えしてきました。
猫の膵炎の要点をまとめると以下の通りです。

  • 猫の膵炎には「急性膵炎」と「慢性膵炎」の2つがあり急性膵炎が進行して慢性膵炎になる場合がある
  • 猫の膵炎は、腹部への強打、膵臓の酵素の漏れ、ウイルス感染症(FIP、猫ウイルス性鼻気管炎)、トキソプラズマ症、胆管肝炎、慢性的な胃腸炎、外科手術などが原因とされている
  • 猫の膵炎の予防は、室内飼いの徹底、飼育環境の整備、適切な飼育・管理、体重管理が重要で、特に肥満のシニア猫は慢性膵炎を発症しやすいため注意が必要

これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

【参考文献】