猫のピルビン酸キナーゼ欠損症とは?予防法も併せて解説

猫のピルビン酸キナーゼ欠損症とは?予防法も併せて解説

愛猫の健康を願う飼い主さんにとって、病気は大きな心配事の一つです。そのなかでも、遺伝性の血液疾患であるピルビン酸キナーゼ欠損症は、猫種によってはかかりやすい病気といわれています。

本記事では猫のピルビン酸キナーゼ欠損症について以下の点を中心にご紹介します。

  • 猫のピルビン酸キナーゼ欠損症とは
  • 猫のピルビン酸キナーゼ欠損症の好発種
  • 猫のピルビン酸キナーゼ欠損症の症状と治療法

猫のピルビン酸キナーゼ欠損症について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

猫のピルビン酸キナーゼ欠損症とは

猫のピルビン酸キナーゼ欠損症とはどのような病気ですか?
猫のピルビン酸キナーゼ欠損症は、赤血球の寿命を短くする遺伝性疾患です。赤血球は体内で酸素を全身に運ぶ役割を担いますが、その働きを維持するために必要なエネルギー(ATP)を生成するピルビン酸キナーゼという酵素が不足することで発症します。

この酵素が欠乏すると赤血球は正常な形態を保てなくなり、壊れやすくなります。その結果、慢性的な貧血を引き起こし、猫の健康を損ないます。この疾患は常染色体潜性遺伝で受け継がれ、なかでも若い猫に見られることが多いようです。
猫のピルビン酸キナーゼ欠損症の原因について教えてください
猫のピルビン酸キナーゼ欠損症は、常染色体潜性遺伝によって発症するとされています。この疾患はピルビン酸キナーゼという酵素が不足することが原因で、赤血球のなかでATPの生成が不十分になり、結果として赤血球が壊れやすくなります。

この遺伝子異常は両親がともに変異遺伝子を保有している場合に、子猫が発症する可能性が高まります。キャリアである猫自身は症状を示さないため、遺伝子検査を行わないと保有の有無を確認することは困難です。

赤血球の破壊が進むと骨髄での生成が追いつかなくなり、慢性的な貧血を引き起こします。遺伝性の病気であるため、繁殖計画を立てる際には親猫の遺伝子検査を行うことで、発症のリスクを回避することが重要です。
猫のピルビン酸キナーゼ欠損症が発症しやすい品種はいますか?
猫のピルビン酸キナーゼ欠損症は特定の品種で発症が多く見られる遺伝性疾患です。なかでも好発するのは、アビシニアン、ソマリ、シンガプーラなどの純血種といわれています。

ほかにも、ベンガルやエジプシャンマウ、ラ・パーマ、メインクーンやノルウェージャンフォレストキャット、また、サイベリアン、サバンナなどの品種でも発症するとされています。

以上のような猫種は、遺伝的にピルビン酸キナーゼ酵素の欠乏を引き起こす遺伝子変異を持つ可能性が高いとされています。ただし、この疾患は純血種に限らず、雑種猫でも発症する場合があります。

猫のピルビン酸キナーゼ欠損症の症状とは

猫のピルビン酸キナーゼ欠損症の症状を教えてください
猫のピルビン酸キナーゼ欠損症の主な症状として、以下のようなものが挙げられます。

・元気がない、すぐに疲れる
・食欲が低下し、体重が減少する
・口や舌の粘膜が白っぽくなる(貧血の兆候)
・毛艶が悪くなる
・白眼や皮膚が黄色くなる黄疸が見られる
・呼吸や脈拍が速くなる
・赤茶色の尿(ヘモグロビン尿)が出ることがある

以上のような症状の出現には個体差があり、軽症の場合は赤血球の産生が活発になり、症状が目立ちにくいこともあります。

一方で、重度の場合や症状が進行した場合には、貧血に伴う全身症状が顕著になり、生活の質が低下につながります。慢性的に貧血が続く傾向があるため、早期発見と適切なケアが重要です。
猫のピルビン酸キナーゼ欠損症の検査方法を教えてください
猫のピルビン酸キナーゼ欠損症を診断するには、いくつかの検査を組み合わせて行います。主な検査方法は以下のとおりです。

・血液検査
赤血球の数や形状、ヘモグロビン濃度、網状赤血球の増加などを調べます。また、貧血の程度や溶血の兆候を確認します。

・遺伝子検査
ピルビン酸キナーゼ遺伝子の変異を特定することで、確定診断へとつなげます。なかでも好発品種や症状がある場合、繁殖計画がある場合には有用とされています。

・画像診断(X線検査・超音波検査)
肝腫や脾腫(ひしゅ)などの臓器の異常を確認するために行われます。溶血性貧血に伴う臓器の肥大や機能障害を評価します。

・免疫介在性溶血性貧血や感染症との鑑別
免疫介在性溶血性貧血やヘモプラズマ感染症など、類似の症状を示す疾患と区別するため、必要に応じて追加検査が行われます。

ピルビン酸キナーゼ欠損症の診断には、遺伝子検査が有効とされています。症状がある場合は早めに検査を受け、適切な治療と管理を行うことが推奨されます。

猫のピルビン酸キナーゼ欠損症の治療について

猫のピルビン酸キナーゼ欠損症の治療法を教えてください
猫のピルビン酸キナーゼ欠損症には、根本的な治療法がないため、主に対症療法が行われます。症状が軽度の場合、激しい運動を避け安静にすることで生活の質(QOL)を保てる可能性があるとされています。

一方、重度の貧血が見られる場合には輸血が必要になります。ただし、猫の輸血ではドナー猫が必要であり、血液型適合検査や採血などの準備が不可欠です。

場合によっては、赤血球を処理する役割を持つ脾臓の摘出手術が行われることがあります。この手術により貧血の改善や進行の抑制が期待されますが、効果は一時的であり、長期的な管理が求められます。

また、ストレスが症状を悪化させる可能性があるため、環境の安定化やストレス軽減が重要です。病気の進行具合や猫の体調に応じて治療方針を決定するため、獣医師との密な連携が大切です。
猫のピルビン酸キナーゼ欠損症の予防法を教えてください
猫のピルビン酸キナーゼ欠損症は遺伝性の疾患であり、発症を予防する方法はないとされています。しかし、この病気の蔓延を防ぐために重要なのは、発症猫やキャリア猫を繁殖に使用しないことです。

潜性遺伝であるため、発症していないキャリア猫も多く存在するとされています。繁殖計画を立てる際には、親猫の遺伝子検査を実施し、ピルビン酸キナーゼ欠損症の遺伝子異常がないことを確認することが推奨されます。

なかでも純血種での発症リスクが高い傾向があるため、繁殖を行う際には慎重な計画が求められます。遺伝子検査と情報の共有を行うことで、疾患の発生率を抑える可能性が高まります。

このような取り組みによって、将来の猫たちへの遺伝性疾患の影響を抑えていきましょう。

編集部まとめ

ここまで猫のピルビン酸キナーゼ欠損症についてお伝えしてきました。猫のピルビン酸キナーゼ欠損症の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 猫のピルビン酸キナーゼ欠損症とは赤血球の寿命を短くする遺伝性疾患で、赤血球の働きを維持するために必要なエネルギー(ATP)を生成するピルビン酸キナーゼという酵素が不足することで発症し、なかでも若い猫に見られがちな疾患である
  • 猫のピルビン酸キナーゼ欠損症の好発種はアビシニアン、ソマリ、シンガプーラなどの純血種だが、その他ベンガル、エジプシャンマウ、ラ・パーマやメインクーン、ノルウェージャンフォレストキャットやサイベリアン、サバンナなどの品種でも発症する
  • 猫のピルビン酸キナーゼ欠損症の症状はすぐに疲れる、食欲が低下し、口や舌の粘膜が白っぽくなる(貧血の兆候)、白眼や皮膚が黄色くなる黄疸が見られる、呼吸や脈拍が速くなる、赤茶色の尿(ヘモグロビン尿)が出ることなどで、根本的な治療法がないため主に対症療法が行われるが、重度の貧血の際は輸血、場合によっては赤血球を処理する役割を持つ脾臓の摘出手術が行われるケースもある

猫のピルビン酸キナーゼ欠損症は、常染色体劣潜性遺伝によって発症するとされています。遺伝子異常は両親がともに変異遺伝子を保有している場合に、子猫が発症する可能性が高まります。

繁殖計画を立てる際には、親猫の遺伝子検査を実施し、ピルビン酸キナーゼ欠損症の遺伝子異常がないことを確認することがおすすめです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。