猫が歯ぎしりをする理由は?放置のリスクやと受診のタイミングも解説

猫が歯ぎしりをする理由は?放置のリスクやと受診のタイミングも解説

猫がギリギリと歯ぎしりをする音に気付いたことはありませんか?この行動は、単なる癖ではなく、実は身体の不調やストレスを知らせる重要なサインであることがあります。歯や歯茎のトラブルだけでなく、胃腸の不快感や腎臓疾患、さらには神経系の異常など、思わぬ病気が隠れている場合もあります。この記事では、猫の歯ぎしりの原因や見分け方、放置した場合のリスク、治療や予防の方法までをわかりやすく解説します。

猫が歯ぎしりをする主な原因

猫が歯ぎしりをする主な原因


猫が歯ぎしりをする背景には、お口のなかの異常だけでなく、身体の内外にさまざまな原因が潜んでいます。ここではその代表的な原因を順に解説します。

猫が歯ぎしりをするのはなぜですか?
猫が歯ぎしりをする理由には、主に口腔内の異常や体調不良、ストレスなどが関係しています。もっとも多いのは、歯や歯肉に痛みがある場合や、噛み合わせのズレによる違和感、食べ物のカスや異物が歯に挟まっているケースです。また、胃腸の不調や胃酸の逆流といった内臓の異常が、歯ぎしりという形で現れることもあります。加えて、引っ越しや生活環境の変化などによる精神的ストレスがきっかけになることもあります。歯ぎしりは単なる癖ではなく、身体が不調を訴えるサインの一つととらえ、見逃さないことが大切です。
原因が口腔内にある場合、どのような病気が考えられますか?
猫の歯ぎしりが口腔内に原因する場合、もっとも代表的なのが歯肉炎や歯周病です。これらの疾患では歯や歯肉に慢性的な炎症が起こり、痛みや違和感から歯ぎしりを引き起こすことがあります。特に若年性歯周炎は、生後数ヶ月の猫にも発症することがあり、急速に進行するため注意が必要です。また、歯の破折や口腔内腫瘍、咬耗(こうもう:歯のすり減り)なども痛みの原因となります。異物が歯に挟まっている場合や、乳歯遺残による不正咬合も歯ぎしりの引き金になります。これらの疾患は進行性であることが多く、放置すれば全身の健康にも悪影響を及ぼすため、症状が軽いうちに早期発見と治療を行うことが大切です。
原因が口腔外の場合に考えられる病気を教えてください
猫の歯ぎしりには、口腔内以外の原因が関与していることもあります。例えば、胃炎や胃酸の逆流といった消化器疾患では、口の中に酸味や違和感を感じ、それを解消しようとする無意識の反応として歯ぎしりが起こることがあります。慢性腎臓病では、尿毒症により老廃物が体内に蓄積し、口腔内に炎症や不快感をもたらすことがあります。また、てんかん発作の前兆や神経系の異常、さらには顎関節の構造的な異常が関連している場合もあります。これらの疾患は一見、口とは無関係に思えるかもしれませんが、全身の不調が歯ぎしりとして表面化するケースもあるため、見逃さずに観察することが大切です。

歯ぎしりのサインや放置するリスク


猫の歯ぎしりは、音や仕草から早期に気付くことができますが、見逃すとリスクが高まる場合もあります。ここでは見分け方と放置による影響を解説します。

猫の歯ぎしりにはどのような音や仕草で気付けますか?
猫の歯ぎしりは、ギリギリ、カチカチといった小さな音として聞こえることが多く、特に静かな環境でその音に気付きやすくなります。食後やリラックス中に、上下の歯をすり合わせるような動作や、口元をもぐもぐと動かす仕草が見られたら、注意が必要です。また、あくびをした直後や眠りにつく前に、無意識のうちに歯を鳴らすような行動が観察される場合もあります。さらに、口を気にして前足でこすったり、突然口を開け閉めしたりするような反応も、違和感や痛みのサインです。顔をしかめるような表情や、食事中に口を左右にずらして咀嚼する仕草も、見逃さず観察しましょう。
猫の歯ぎしりはどのようなときに起こりやすいですか?
猫の歯ぎしりは、特定の状況やタイミングで起こりやすい傾向があります。例えば、食後に歯や歯茎に違和感を覚えたときや、食べかすや異物が歯に挟まって気になるときに、歯をこすり合わせるような行動が見られることがあります。また、うたた寝や深い睡眠中など、無意識の状態で歯ぎしりをすることもあります。さらに、引っ越しや来客、大きな音やにおいの変化など、環境が変化した際のストレスによっても発生することがあります。発情期や新しい同居動物との関係性が影響することもあるため、精神面の影響も無視できません。原因が複合している場合もあるため、歯ぎしりの頻度や状況を丁寧に観察することが大切です。
猫の歯ぎしりを放置するリスクを教えてください
猫の歯ぎしりを放置すると、背後にある病気や異常が進行し、深刻な健康トラブルに発展するおそれがあります。例えば、歯肉炎や歯周病が原因であれば、炎症が歯根や顎の骨にまで広がり、歯の喪失や骨吸収といった不可逆的な変化を招くこともあります。また、歯の破折を放置した場合には、細菌感染が進行して膿瘍や口内炎を起こすだけでなく、顎の骨髄炎に至るケースもあります。消化器や腎臓などの内臓疾患が原因の場合、治療が遅れることで全身の状態が悪化し、命に関わる可能性も否定できません。歯ぎしりは身体からの警告サインとして受け取り、軽視せずに早めの対応を心がけましょう。

猫の歯ぎしりで動物病院を受診する目安


歯ぎしりをする猫すべてがすぐに受診が必要とは限りませんが、見極めを誤ると病気の進行を許すことになります。ここでは受診の目安を整理します。

猫の歯ぎしりに気付いたとき、確認すべきポイントを教えてください
猫の歯ぎしりに気付いたときは、まず歯ぎしりの頻度や起こるタイミングをよく観察することが大切です。食後に限って起こるのか、就寝前か、あるいは日常的に繰り返されているのかを記録しておくことで、診察時に獣医師が原因を特定しやすくなります。また、口臭の強さや食欲の変化、飲水量、よだれの増減、口を気にする仕草、歯茎の色の変化、出血の有無、顔の腫れなども細かく確認しましょう。さらに、発熱や元気のなさ、体重減少といった全身症状が見られるかどうかも重要な判断材料です。こうした情報をしっかり把握しておくことで、病院での診断や治療がより的確に行えます。
早めに受診が必要な症状やサインはありますか?
猫の歯ぎしりに加えて以下のような症状が見られる場合は、できるだけ早く動物病院を受診することが望まれます。例えば、口もとに触れると嫌がる、食事中に途中でやめてしまう、片側だけで咀嚼する、よだれの量が明らかに増える、口臭が強くなるといった変化は、口腔内に痛みや異常があるサインです。また、歯茎の赤みや腫れ、出血、歯のぐらつき、顔や顎の腫れ、目の下のふくらみなどが見られる場合は、すでに感染が進行している可能性があります。さらに、発熱、食欲不振、元気消失、急激な体重減少といった全身的な異変があれば、歯ぎしりの背景に重篤な疾患が隠れているおそれもあります。いずれも放置せず、すぐに診察を受けましょう。
動物病院の受診前に自宅でできるセルフケアはありますか?
受診までの間に飼い主ができるセルフケアとしては、まず猫の口元を清潔に保つことが基本です。やわらかいガーゼやコットンをぬるま湯で湿らせ、軽く口の周囲を拭いてあげるだけでも、不快感の軽減につながることがあります。また、フードをドライからウェットに変える、ぬるめのお湯でふやかしてやわらかくするなど、口に負担の少ない形状に調整するのも有効です。好きなおやつを細かくして混ぜると、食欲を刺激できることもあります。ただし、無理に口を開けさせたり中を覗こうとすると、かえって症状を悪化させたり猫に強いストレスを与える可能性があるため注意が必要です。セルフケアはあくまで一時的な対応であり、症状が改善しない場合は早めの受診を心がけましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

猫の歯ぎしりは、口腔内のトラブルだけでなく、内臓疾患やストレスなど多岐にわたる要因が関係しています。軽視して放置してしまうと、症状が進行して深刻な疾患につながることもあります。普段から猫の仕草や口元の状態に気を配り、小さな変化を察知できるようにしておくことが大切です。異常を感じたら早めに動物病院を受診し、必要に応じて検査や治療を受けましょう。早期発見と日常の予防ケアが、猫の健康寿命を支える鍵となります。

参考文献