日本ではさまざまな動物をペットとして飼育している人は多くいますが、特に多いのは猫と犬です。
近年では1人暮らしでも飼いやすいことから猫を飼う人も多く、犬と猫は日本の2大ペットと呼ばれるようになりました。
核家族社会の日本は、少子高齢化が進み子供のいない家庭もあります。このような社会の中でペットの存在は非常に大きいです。
犬や猫も人間と同じように病気になりますが、この記事では猫の病気に焦点をあてていきます。
猫の病気の中でも命に関わる重篤な疾患といわれるFIP(猫伝染性腹膜炎)は、どのような病気で原因は何なのか?その治療方法など詳しく解説します。
FIP(猫伝染性腹膜炎)とは?
FIPは猫伝染性腹膜炎と呼ばれ、発症すると99%近くの確率で亡くなってしまうといわれています。診断が困難なことでも有名で予防方法も確立されていない疾患です。
ただし、猫コロナウイルスの突然変異が原因ということは、すでに判明しているため猫コロナウイルスへの感染を防ぐことが重要です。
猫の中でも特に子猫と呼ばれる1歳半未満の猫で多く発症します。症状は、発熱・食欲不振・体重の減少・腹水・黄疸などです。
予防方法や治療方法も確立されていないため、診断後1ヶ月もしない内になくなってしまうこともあります。
FIP(猫伝染性腹膜炎)の種類
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、2種類のタイプがあります。
- ウェットタイプ
- ドライタイプ
ここでは、それぞれの症状について詳しく解説します。
ウェットタイプ
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、ウイルスが体内に入ると名前の通り腹膜炎を起こすことが多い病気です。猫の腹に水が溜まり、ぶよぶよとした状態になります。
腹膜に炎症が起き、腹腔内に腹水が溜まる症状で、このような状態をウェットタイプといいます。
また、食欲不振・体重減少・発熱なども併発しますので体力が著しく低下するでしょう。
猫にとってFIP(猫伝染性腹膜炎)は、重篤で治療が難しい病気です。診断や治療は専門の獣医師の指示を受けましょう。
ウエットタイプの症状の特徴を以下に記載します。
- 腹水、胸水の貯留
- 黄疸
- 発熱
- 沈鬱
- 食欲低下
- 貧血
- 嘔吐
- 下痢
早期発見と治療が重要ですが、現在のところ完全に治療可能な方法は確立されていませんので、予防が最も重要な対策です。
ドライタイプ
FIP(猫伝染性腹膜炎)を発症すると発熱や食欲不振などによって体重の減少も起こります。その他にも下痢や肝臓・腎臓が悪くなることもあるでしょう。
腹膜炎の症状は起こらずに、肝臓や腎臓に硬いしこりができてしまい肝機能障害を起こします。このような症状をドライタイプといいます。
さらに同様の症状が脳に起きると、体の麻痺などの神経症状が見られます。ウェットタイプより進行が遅く、症状が進行するのが比較的遅い傾向があります。
ドライタイプの症状を以下に記載します。
- 発熱
- 沈鬱
- 貧血
- 内臓の肉芽腫性炎症による症状
上記に加えて、運動失調・腎障害・肝障害・消化器症状・ブドウ膜炎などもあります。
FIP(猫伝染性腹膜炎)の症状
FIPの症状とは、どのようなものがあるのでしょうか。
FIPは、治療方法が確立してないため、原因の究明が非常に重要な病気です。FIPで起きる症状から、早期の発見で治る可能性もあります。
FIPに感染した場合の主な症状を以下に記載します。
- 発熱
- 貧血
- 沈鬱
- 食欲不振
- 体重減少
ここでは、上記の内容について詳しく解説します。
発熱
FIP(猫伝染性腹膜炎)に感染した猫には、発熱の症状が起きる場合があります。猫コロナウイルスが体に入ると40℃以上の高熱がでます。
特に子猫の場合は、体も小さく体力もないために高熱が続くと命を落とすケースもあるのです。
飼い猫に元気がなく、熱を出している場合は、すぐに動物病院に行きましょう。
貧血
貧血は、鉄やビタミンの不足から起きますがFIP(猫伝染性腹膜炎)に感染すると体力が低下し、食欲もなくなるため十分な栄養を摂取できなくなります。
そのため、貧血の症状があらわれますが、この症状になるとかなり危険な状態です。
貧血が続き衰弱が進むと神経症状にも影響がでますので注意が必要です。
沈鬱
FIP(猫伝染性腹膜炎)の症状といわれる沈鬱は、元気がない状態のことをいいます。遊び疲れて一時的に元気がない場合は問題ありませんが、元気がない状態が続く場合は注意が必要です。
沈鬱のような症状は、気分が落ち込んで起きるのではなく猫コロナウイルスが体を蝕んでいるために表れます。
言葉で伝えられない猫が飼い主に自分の症状を知らせているのではないでしょうか。
食欲不振
FIP(猫伝染性腹膜炎)の原因といわれる猫コロナウイルスが体内に入ると発熱や下痢などによって食欲不振になります。食事を取れないと体に必要な栄養も吸収できなくなります。
病気や細菌に打ち勝つためには、体力がないと戦うことができないため、食事を十分な食事を取ることは非常に重要です。
飼い猫の食事・水などの減り具合や、食事中などの様子も注意してみましょう。
体重減少
猫がFIP(猫伝染性腹膜炎)に感染すると食欲不振になる場合が多く、そのような症状が続くと体重は減少します。
喉や鼻の渇きから水分は摂れても、食事に関しては思うように取れない場合が多くあります。
また、食事を食べても嘔吐を繰り返すなどの症状が出てしまい栄養が取れなくなるのです。
そのままの状態だと症状は悪化しますので、動物病院での点滴などで体重減少を抑えるようにしましょう。
FIP(猫伝染性腹膜炎)になる原因
一度発症すると完治が難しいとされているFIP(猫伝染性腹膜炎)ですが、何が原因で発症するのでしょうか。
FIP(猫伝染性腹膜炎)の原因は、猫コロナウイルスというウイルスが突然変異を起こすことで重篤な症状になります。
突然変異を起こすメカニズムは解明されていないため、ワクチンなどもなく発症を防ぐことが難しい病気です。
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫から猫へ感染する病気ですが主に糞尿を介して移るといわれています。
野良猫や外飼いの猫などは、感染する可能性が多くなりますので、注意が必要です。
FIP(猫伝染性腹膜炎)の治療法
FIP(猫伝染性腹膜炎)の症状が表れた場合には、どのようなことをすればよいのでしょうか。対処方法は次のとおりです。
- 動物病院の受診
- レムデシビルなどの投与
上記のように、まずは何が原因なのか動物病院に受診をして診断をしてもらうことが重要です。
その結果によってレムデシビルなどの投与が始まるからです。ここでは、動物病院での受診内容や薬の投与について、詳しく解説します。
動物病院の受診
飼い猫が、FIP(猫伝染性腹膜炎)を発症し治療を行わないと死に至ってしまいますが、早期に発見し投薬をすれば助かる可能性が高くなります。
実際に、FIP(猫伝染性腹膜炎)の原因といわれている猫コロナウイルスを保有している猫は多いです。
飼っている猫に猫コロナウイルスを感染させないためにも、外飼いや多頭飼いを避けるようにしましょう。
発熱・食欲不振・体重の減少・腹水・黄疸などの症状が見られた場合は、すぐに動物病院に受診して下さい。何らかの病気になっている可能性が高いからです。
また、診断することで治療や予防などの対策ができるため、早期に受診することをおすすめします。
レムデシビルの投与
FIP(猫伝染性腹膜炎)は治療が困難といわれていましたが、近年ではレムデシビルという薬剤が用いられることが多いです。
多頭飼いの環境で猫コロナウイルスに感染する状況が多くみられ、子猫に発症しやすく、今までもさまざまな治療方法が試されてきました。
しかし、なかなかよい結果は得られず、不治の病として知られています。しかし、レムデシビルの投与で治療が上手くいくケースが多く出てきました。
このことによって、治らないと思われていた病気の完治が期待できます。
無治療の場合
猫伝染性腹膜炎の治療を行わない場合は、ほとんどのケースで発症から早くて数ヶ月〜1年程度で死に至ってしまいます。
猫伝染性腹膜炎は、レムデシビル以外には有効な治療方法は今のところありません。
そのため、予防が非常に重要で、猫コロナウイルスに感染させないようにしましょう。
また、猫コロナウイルスは猫だけに感染する病気です。飛沫や糞などから感染し、腸粘膜で増殖してしまい下痢などの症状を起こします。
猫コロナウイルスが重症化すると、猫伝染性腹膜炎を発症します。
症状が軽い状態で、治療を行うことで完治は可能となりますので、定期的に動物病院への受診がおすすめです。
FIP(猫伝染性腹膜炎)を予防するためには?
FIP(猫伝染性腹膜炎)を予防するためには、どのようなことに注意が必要でしょうか。
現在は、発症してしまうと完治が難しい病気ですが予防をすることで、感染リスクを抑えられます。発症の予防ポイントを以下に記載します。
- 清潔な環境:定期的な掃除と消毒で生活環境を清潔に保つ
- 多頭飼いの場合:新しい猫の迎え入れの場合にはPCR検査を実施する
- 通気性の確保:猫が快適な空間を過ごせるように通気性や温度管理を徹底する
- ワクチン接種:FIPに特化したワクチンはないが一般的なワクチンを定期的に摂取する
飼い主が予防対策を取り、FIP(猫伝染性腹膜炎)になるリスクを低減させましょう。
外飼いをしない
外飼いは、野良猫や他の飼い猫など不特定多数の猫と接触しますので、猫コロナウイルスへの感染リスクが高まります。
室内飼いのように決まったルールはなく、道路にある糞尿に直接触れる可能性があるためです。
特に子猫は体も小さいため、猫コロナウイルスに感染してしまい猫伝染性腹膜炎になると治療が厳しくなります。
飼い猫の命を守るためにも、外飼いはしないようにしましょう。
多頭飼いをしない
多頭飼いの場合は、迎え入れた猫が猫コロナウイルスに感染していると先住猫へ感染する場合があります。
基本的には多頭飼いはさけるようにしましょう。しかし、どうしても飼いたい人は、迎え入れる前に必ず動物病院で検査を実施して下さい。
大事な飼い猫を危険にさらさないように、十分に考慮したうえで判断するようにしましょう。
飼育環境を整える
猫に限らず動物を飼育する環境は、清潔に保ちストレスを発散できるよう工夫が必要です。
例えば、飼い主の手指や衣服などの消毒を習慣づけて下さい。外出先で病歴を持っている猫にうっかりさわってしまい自宅に持ち帰る可能性があるからです。
猫コロナウイルスは、一般的にアルコール消毒で無害化できますので、猫へのリスクも考えて行動しましょう。
多頭飼いのような密接した環境の場合は、頭数分のトイレを確保して猫それぞれ専用のものを用意して下さい。
排泄した後は、早めに片付けて清潔な状態を常に作ることが重要です。
以下に室内環境の改善ポイントを記載します。
- キャットタワーなどを設置する
- 家の外が見える場所をつくる
- 爪とぎグッズを用意する
- 水飲み場の数を増やす
- 適切な室温を保つ
- 隠れられる場所をつくる
- 大きな音を出さない
- 芳香剤など匂いの強いものを置かない
猫を飼う場合は、清潔で室内でも楽しめる環境を作りましょう。
PCR検査を実施する
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫コロナウイルスが原因となりますので、ウイルスに感染しているかPCR検査を実施しましょう。
外飼い・多頭飼いの猫に関しては、定期的にPCR検査の実施がおすすめです。
検査方法は、猫に負担をかけるものではなく、直腸便や鼻汁を使う方法で実施します。この検査で猫コロナウイルスとFIPウイルスに感染しているか診断が可能です。
PCR検査を受けることでFIPの発症のリスクを下げ、早期発見と予防にも繋がりますので、動物病院への定期的な通院をして飼い猫を病気から守りましょう。
まとめ
ここまで、FIP(猫伝染性腹膜炎)はどのような病気か、また原因や治療について解説しましたが理解いただけましたでしょうか。
発症したら、99%治らないといわれている病気ですが、元々の原因は人間を苦しめていたコロナウイルスと同じです。
猫コロナウイルスは猫同士で感染し、重症化すると猫伝染性腹膜炎になってしまい治療が厳しくなり死に至ってしまう病気です。
ただし、近年ではレムデシビルのように効果の見込める薬剤も出てきましたので、諦める必要はなくなりました。
重症化しないためにも猫と暮らす環境を整え、できる予防方法を実践し猫と過ごす大切な時間を増やしていきましょう。
参考文献