猫の食欲不振の原因とは?食欲不振が長引くと起こる症状や対処法について解説

猫 食欲不振

猫の食欲不振は多くの原因によって引き起こされます。健康問題から環境の変化まで、さまざまな要因が考えられます。長引く食欲不振は体重減少や栄養不足を招き、重大な健康リスクにつながることがあります。本記事では、猫の食欲不振の原因について以下の点を中心にご紹介します!

  • 猫の食欲不振の原因
  • 猫の食欲不振が続くと
  • 病院受診の目安

猫の食欲不振の原因について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

猫の食欲について

猫には、食欲の波があり、一日のうちで食べたり食べなかったりする「ムラ食い」する傾向があります。猫の食欲は、品種、体の大きさ、活動レベルによって大きく異なり、一見食欲不振に見えても、それが通常の食行動の場合もあります。しかし、これまでの食事量から著しく減少している場合や全く食べない状態が続く場合は、健康問題の可能性があり、注意が必要です。なかでも、食べ物に鼻を近づけて匂いを嗅いだ後、食べずに去る行動や、食べ物を前足で覆う「砂かけ」行動は、猫が「今は食べたくない」と感じているサインです。

この行動は、野生の習性から来ており、食べ残しを後で食べるために隠す本能的な動作と考えられています。猫の食欲に関しては、日々の変動を観察し、突然の変化には敏感に対応することが、猫の健康管理において重要です。

猫の食欲不振の原因

猫の食欲不振はさまざまな原因によって引き起こされます。ストレス、環境の変化、病気などが主な要因であり、猫の健康状態に影響を与える重要なサインです。具体的な原因を以下で解説します。

ストレス

猫は環境の変化や日常のストレスに敏感で、これらが食欲不振の原因になることがあります。新しい家族の加入、家の模様替え、飼い主の不在が長い、ほかのペットとの関係など、猫にとってストレスとなる要因は多岐にわたります。

このストレスは猫の食欲に影響し、食べる量が減少したり、全く食べなくなったりすることもあります。なかでも、新しい環境に移動した後や、飼い主の生活パターンが変わった際に、猫が食欲不振を示すことが少なくありません。変化に猫が適応するまでの間、飼い主は根気強くサポートし、安定した環境を提供することが重要です。

お口のトラブル

猫の食欲不振の一因として、歯周病、歯肉炎、口内炎など、口腔内の問題は猫の健康に大きく影響します。これらの病気は、食事の際に痛みや不快感を引き起こし、結果的に食欲不振につながることがあります。なかでも、キャットフードが主食の現代の猫では、歯垢の蓄積や細菌の増殖が問題になりやすいとされています。

食べ方が以前と異なる、食事に時間がかかるようになった、食べ物を口から落とす、食べた後に口をペロペロとなめるなどの行動は、口の中に違和感があるサインです。お口のトラブルが疑われる症状には、口臭の悪化、よだれの増加、食事の避け行動、触れられることへの抵抗感があります。これらの症状が見られたら、早期に獣医師に相談し、口腔内検査を受けることが重要です。放置すると病気が進行し、治療が困難になるだけでなく、全身の健康状態にも悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。

味覚や嗅覚の異常

猫の食欲において、嗅覚と味覚は重要な役割を果たしています。なかでも猫は、食事の「風味」に敏感で、嗅覚に頼って食物を選んでいます。嗅覚や味覚に異常が生じると、食欲不振に直結することがあります。味覚や嗅覚の異常は、さまざまな要因によって引き起こされることがあり、中には薬剤の副作用や病気が背景の場合もあります。

例えば、猫風邪や腫瘍、鼻づまりなどの呼吸器系疾患は嗅覚を阻害し、食べ物への興味を失わせる原因となり得ます。このような症状が見られる場合は、速やかに獣医師の診察を受けることが重要です。

消化器系の疾患

肝臓、胆のう、膵臓などの消化器官の機能が衰えると、食べ物の消化吸収がうまく行われず、食欲不振を引き起こします。なかでも、慢性的な消化不良は食欲減少の原因となり得ます。嘔吐や下痢、毛玉以外での嘔吐が頻繁に見られる場合、黄色い胆汁を含む嘔吐や血液混入の吐物が確認される場合は、何らかの消化器系疾患の可能性が高いため、迅速な獣医師の診断と治療が必要です。

味覚嫌悪

猫の味覚嫌悪は、不快な体験をした食べ物に対する強い拒否反応です。この行動は、猫が過去に経験した不快な記憶と特定の食品を結びつけることによって生じます。たとえば、食事中に地震や雷などの怖い出来事が起きた場合、そのフードに対して食欲不振を示すことがあります。

人間の味覚嫌悪が克服しにくいのと同様に、猫にとってもこの問題を解決するのは難しいことがあります。そこで、味覚嫌悪が疑われる場合には、異なるタイプのフードに切り替えてみることが推奨されます。猫が一度嫌悪を感じた食物に対しては、長期間にわたり拒否する傾向があるため、注意が必要です。

猫が食欲不振のときに考えられる病気

猫の食欲不振などのさまざまな健康問題のサインです。糖尿病、腎臓病、肝臓の問題など、さまざまな病気が原因となることがあります。以下で具体的な病気について解説します。

糖尿病

猫の食欲不振が続くと、糖尿病の可能性があります。糖尿病にかかると、水をたくさん飲み、頻繁におしっこをするようになります。また、食欲が増えても体重が減少するという症状が見られます。なかでも肥満猫や高齢猫に多く見られ、適切な食事管理とインスリン治療によって、症状の改善が改善できます。早期発見と適切な治療が重要であり、異変を感じたら速やかに動物病院を受診することが推奨されます。

ウイルス感染症

猫の食欲不振が見られる場合、ウイルス感染症が一因となることがあります。なかでも、猫白血病ウイルス感染症やカリシウイルス感染症は、猫同士の接触や食器の共有を通じて感染する可能性があります。これらのウイルスに感染した猫は、元気消失、体重減少、発熱や下痢、リンパ節の腫れ、貧血や脱水症状などを示すことがあります。免疫力が弱い猫、主に子猫は感染後に症状を発症しやすく、場合によっては生涯にわたってウイルスを持続する可能性があります。これらの病気はワクチンで予防可能な場合もあるため、定期的なワクチン接種が重要です。

慢性腎不全

猫の食欲不振で水を飲むとき、慢性腎不全が考えられます。これは腎臓機能が徐々に低下する病気で、主にシニア猫に見られます。症状には多尿、食欲不振、嘔吐、便秘や下痢、脱水症状、体重減少、毛艶の悪化、貧血が含まれます。慢性腎不全は急性腎不全と異なり、一度発症すると完治するのは難しいため注意が必要です。

口内炎

猫が食欲不振で水を飲むときに考えられる病気の一つに「口内炎」があります。原因はビタミン不足やほかの疾患から生じる系統性口内炎と、原因不明で発生する潰瘍性口内炎が主です。また、口内の傷から細菌が侵入し発症することもあります。口内炎を持つ猫は、食欲不振を示し、口内に不快感を感じるため、よく口を気にしている様子を見せます。また、よだれの量が増えたり、口臭が強くなったり、口内や唇に腫れが見られたりします。これらの症状が見られたら、早めに獣医師に相談することが重要です。

肝炎

肝炎はウイルス、細菌、寄生虫の感染、薬物や毒物の影響によって引き起こされることが少なくないとされています。また、食欲不振のほかに、下痢、嘔吐、体重減少といった症状が見られることがあります。胆管肝炎の場合は、抗生物質による治療が行われます。肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、症状が表れるときには既に重症化している可能性がありますので、早期発見・治療が重要です。

猫の食欲不振が続くと

猫の食欲不振が長期にわたって続くと、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。さまざまな病気にかかりやすくなるリスクが高まるため、早期に原因を特定し、適切な治療をすることが重要です。以下で見ていきましょう。

脱水

猫が食欲不振に陥ると、それに伴い飲水量も減少しやすく、脱水状態に陥るリスクが高まります。なかでも、下痢や嘔吐が伴う場合、または腎臓病や糖尿病などの慢性疾患を抱えている状況では、脱水のリスクは高まります。脱水は単に水分不足に留まらず、腎臓やほかの臓器への損傷を招き、重篤な場合は生命を脅かす事態に至ることもあります。たとえ「水は飲んでいる」という状況でも、病気の影響で通常よりも多くの水分が必要になるため、水分摂取量では脱水状態を補えないことがあります。猫が十分な水を摂取していない、または食欲がない状態が見受けられたら、速やかに動物病院へ相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

肝リピドーシス

猫が長期間食事を摂らない場合、体内の脂肪が急速に肝臓へ移動し蓄積される肝リピドーシスが発症するリスクが高まります。なかでも肥満状態の猫では、わずか2日間の絶食でもこの病状を引き起こす可能性があり、一度発症すると、回復には長期間の入院治療が必要となることが少なくないとされています。肝リピドーシスは重篤な状態に陥りやすく、黄疸などの顕著な症状を伴うことがあります。そのため、肥満猫における食欲不振はなかでも注意が必要であり、早期の動物病院での受診をおすすめします。また、猫の健康管理においては、肥満の予防と適切な体重の維持が重要です。

病院受診の目安

健康な成猫であっても、2日以上食べない場合は注意が必要なため、猫の健康状態を見て判断することが大切です。食欲不振が見られたら、以下の目安で動物病院を受診してください。

  • 生後3ヶ月以下の猫が8時間食べない場合
  • 4~6ヶ月の猫が16時間食べない場合
  • 成猫が24時間以上食べない場合

主に、肥満猫が2〜3日食べない場合、肝リピドーシスのリスクがあります。肝リピドーシスは急激に健康状態を悪化させる可能性があるため、早期の受診が重要です。また、食欲不振とほかの症状が併発する場合、24時間以内の受診をおすすめします。食欲が完全になくなっていなくても、食欲不振が72時間以上続く場合は、状態を確認するために獣医師の診察を受けましょう。

猫の食欲不振の対処法

猫の食欲不振は早期対応が猫の健康を守る鍵となります。適切な対処法を知り、愛猫をサポートをすることが大切です。以下で解説します。

ストレスで食べない場合

猫がストレスにより食欲不振になる場合、環境の改善が必要ですが、すぐに変えられない要因もあります。例えば、猫がストレスなく過ごせるよう、静かな環境を保ち、無理にかまわないことが大切です。猫が求めるときだけ接するようにしましょう。また、好きな食べ物を提供してみるのも一つの方法ですが、無理に食べさせようとすると反発を招く可能性があります。環境を変化させても、改善が見られないときは、早めに獣医師の診断を受けることをおすすめします。

体質や嗜好性の問題で食べない場合

猫が体質や嗜好性の問題で食べない場合、フードの種類や与え方(食事場所、食器、量、回数)に工夫が求められます。犬と異なり、猫に強制的に食べさせようとすると、反発してさらに食べなくなるリスクがあるため、猫の好みに合わせ、食事ができる環境を整え、食欲を促す工夫をしましょう。

猫の食欲不振を予防するためには

猫の食欲不振予防には、食事の工夫が欠かせません。ドライフードをお湯でふやかし、匂いを強くして食欲を刺激する方法により効果が期待できます。主に、鼻詰まりや食欲低下を抱える猫におすすめです。フードを変えることも一つの手段で、なかでも好みでない場合には新しいフードへの切り替えが推奨されます。ウェットフードや鶏のササミなど、香り高く栄養価の高い食事は、食欲をそそるのに役立ちますが、長期間の一方的な食事は避け、バランスの良い食事を心掛けることが重要です。食環境の改善も忘れずに、食器の清潔保持や食事場所を提供してあげましょう。これらの対策で猫の食欲不振を未然に防ぎ、健康を維持できます。

まとめ

ここまで猫の食欲不振についてお伝えしてきました。
猫の食欲不振の要点をまとめると以下の通りです。

  • 猫の食欲不振には多様な原因があり、ストレス、お口のトラブル、味覚や嗅覚の異常、消化器系の疾患、味覚嫌悪などが挙げられる。これらの問題を早期に察知し、適切に対処することが猫の健康維持に繋がる。
  • 猫の食欲不振が続くと、「脱水」や「肝リピドーシス」になるリスクがあるため、注意が必要になる。
  • 猫に食欲不振が見られたら「生後3ヶ月以下の猫が8時間食べない場合」「4〜6ヶ月の猫が16時間食べない場合」「成猫が24時間以上食べない場合」には動物病院で診察を受ける。

猫の食欲不振は多くの原因が隠れています。長引く場合、深刻な健康問題のサインかもしれません。早期発見と適切な対処が解決の鍵です。この記事がお役に立てば幸いです。ありがとうございました。

参考文献