子猫が急によろけるようになったり、歩けなくなったりしたことはないでしょうか。
まだ歩くことに不慣れな場合もありますが、歩けていたのに急に歩けなくなったり立てなくなったりした場合には病気が潜んでいる可能性も大いにあるため、注意が必要です。
子猫が歩けない・立てなくなる病気とは、一体どのようなものがあるのでしょうか。本記事では、子猫が歩けなくなる病気・対処法・予防法について詳しく解説します。
少しでも「子猫が歩けていないかもしれない」と不安を感じている飼い主さんの参考になれば幸いです。
子猫が歩けない病気
- 子猫が歩けないときに考えられる原因を教えてください
- 子猫が歩けないときに考えられる原因はさまざまです。外的な原因と遺伝子的な原因の2つのタイプがあります。いくつか例を挙げると以下になります。
- 骨折や脱臼などの外傷によるもの
- 運動失調によるもの
- 神経系の障害によるもの
- 感染症によるもの(伝染性腹膜炎)
- 栄養不良やビタミン不足によるもの
子猫の歩行に影響を与える栄養不良やビタミン不足は意外かもしれませんが、特にビタミンB1の欠乏が原因でフラフラとした歩行になります。上記の原因以外にも遺伝的な疾患も影響することがあります。
- 子猫が歩けない場合に考えられる脳・神経系の疾患を教えてください
- 子猫が歩けない・立てない場合には、脳・神経系の疾患が影響している可能性があります。子猫によくみられる脳・神経系の疾患は以下のとおりです。
- 脳炎
- 髄膜炎
- 先天性の神経疾患(環軸不安定症・背弯症・脊髄空洞症など)
- 脊髄性疾患(椎間板ヘルニア・進行性脊髄軟化症など)
- 小脳形成不全
- 脳腫瘍
先天性の神経疾患は、神経細胞の発達に異常が出る病気です。先天性の神経疾患としては、上記以外にも遺伝性運動失調症や神経性筋ジストロフィーといった病気が挙げられます。
ほかにも腫瘍性疾患によるものや、感染症が引き金となって歩けなくなることもあるため、子猫の体調や様子をしっかり把握しておくことが大切です。
- 中毒が原因の場合、中毒を起こしたと考えられる食べ物はなんですか?
- 子猫が歩けなくなったときに考えられる原因は、病気だけではありません。食べ物による中毒が引き金となっている場合もあります。
- ネギ類(玉ねぎ・青ネギなど)
- ニンニク
- チョコレート
- アルコールを含む食品
- 人工甘味料(キシリトール)を含む食品
- カフェインを含む食品
人間にはなんてことはない食べ物でも、子猫にとっては有毒です。上記の食べ物を子猫が摂取してしまうと、神経系や筋肉に悪影響を及ぼすため、歩けなくなったり立てなくなったりすることがあります。
ほかにもアボカドやレーズンなども子猫には有害です。もし有毒なものを摂取した疑いがある場合には、速やかに動物病院を受診しましょう。
- 重症筋無力症とはどのような病気ですか?
- 重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)とは、神経と筋肉の接続部に障害が起こることで筋力低下を引き起こす疾患です。子猫が発症した場合、筋肉をうまく働かすことができず、歩行が困難になることがあります。
この重症筋無力症は、免疫細胞が神経受容体を攻撃することで発症します。重症筋無力症の症状として重要なのが、運動不耐性と吐出です。
普通に歩き始めても、運動を継続すると徐々に足元がふらついたり歩けなくなったりするといった症状がはっきり現れます。症状が重くなると、その場で座り込んだり四肢のふらつきが持続的に続いたりするケースも報告されています。
また、食道筋に異常が生じることも特徴の一つです。うまく食道を食物が通過できなくなり、食べた後すぐに吐き戻してしまいます。吐出を繰り返すと誤嚥性肺炎を引き起こし、呼吸に異常が現れることもあります。
発見や治療が遅れると、症状が悪化する可能性が大きくなるため注意しましょう。治療では免疫抑制剤や抗コリンエステラーゼ薬を用いて、症状を緩和します。
先天性と後天性がありますが、重症筋無力症を発症した大半が後天性です。胸腺腫・胆管がん・骨肉腫に続いて発症する傾向にあるため、重症筋無力症と診断された場合には腫瘍の存在確認が重要視されています。
- 歩けなくなる病気になりやすい品種はありますか?
- 残念ながら、歩けなくなる・立てなくなる病気になりやすい品種は何種類かいます。アビシニアンやペルシャなどの品種です。
例えば、ペルシャは神経や筋肉に関連する遺伝的疾患を持ちやすいとされています。
ほかにも、アメリカンショートヘア・スコティッシュフォールドなどの遺伝子疾患を抱えやすい品種の猫も、病気を発症するリスクが高いといえます。遺伝性カウンセリングや定期的な健康診断を受けて、病気の予防に努めましょう。
子猫が歩けないときの対処法
- 子猫が歩けない場合はすぐに医療機関を受診すべきですか?
- 子猫が歩けなくなった場合には、速やかに動物病院を受診しましょう。先述のとおり、歩けなくなる原因は多岐にわたります。発見や治療が遅れると、取り返しのつかない状況に発展する可能性も否定できません。
特に感染症の場合には迅速な対応が求められ、適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。子猫の予後を考えるうえでも、早期発見・早期治療に努めましょう。
- 応急処置の方法を教えてください
- ケガ・骨折・脱臼・捻挫の場合には、応急処置が可能です。ケガで出血している場合には、子猫を落ち着かせて安全な場所に移動させます。外傷がある場合は出血を止めて清潔なガーゼなどで保護し、化膿や感染のリスクを防いで病院へ受診しましょう。
高い場所から落ちて骨折・脱臼・捻挫の可能性がある場合には、木を添えて包帯を巻いて患部を固定します。添え木ができる状態でない場合には、子猫を保護と温めるために毛布で包んで安静にさせた状態で病院へ受診しましょう。
これらの方法はあくまでも応急処置なので、処置を施した後は動物病院に緊急であることを連絡して、検査を受けることが大切です。
- 受診後のケアはどのようにすべきですか?
- 受診後のケアは、獣医師の指示に従うことが大切です。十分な休息と栄養補給で回復へ向かうこともあります。子猫の状態によっては、薬の投与やリハビリが必要となることもあります。飼い主さんは子猫が受診後に安静にできるよう、メンタル面でのケアを心がけましょう。
子猫の休む場所を清潔に保ったり、優しく声をかけながら接したりすることが大切です。
また、もし病気による歩行障害であった場合には、病気の再発を防ぐためにも定期的に獣医師のチェックを受けることも重要です。
子猫が歩けない病気の予防法
- 定期的な健康診断は必要ですか?
- 子猫の健康維持に定期的な健康診断は欠かせません。子猫に限らずですが、猫には人間に病気を隠そうとする傾向があります。特に子猫は急激に心身ともに成長する時期です。
栄養不足・発達障害・遺伝子異常をいち早く改善できるよう、定期的な健康診断は受けるようにしましょう。定期的な健康診断は年に1〜2回の受診が推奨されています。
- 完全室内飼いは予防に役立ちますか?
- 完全室内飼いは、猫の健康を守るにはとても有効な手段です。完全室内飼いのメリットは多数あります。
- 交通事故の予防
- 争いによるケガの予防
- 中毒物の摂取予防
- 感染症予防
上記以外にも完全室内飼いにすることで、寄生虫による病気のリスクも減少します。ただし、歩けなくなる原因が遺伝的なものであった場合は、完全室内飼いでも予防することはできません。
あくまでも完全室内飼いは、後天性の歩行不良につながる子猫の病気や事故のリスクを抑えて、子猫の安全性を保つ予防方法です。定期的な健康診断や子猫の生活を整えて長寿をサポートしていきましょう。
編集部まとめ
今回は、子猫が歩けなくなる病気・対処法・予防法について詳しく解説しました。
子猫が歩けなくなる原因には先天性と後天性がありますが、完全室内飼いをすることで外的な後天性の病気を大いに防ぐ効果が期待できます。
また、子猫によっては遺伝子異常を抱えやすい品種の可能性も否定できません。年に1〜2回の定期的な健康診断を受けることが大切です。
正しい知識と子猫の状態をしっかり把握して、病気の早期発見・早期治療に努めましょう。
また、歩けない・立てないにつながる病気は子猫に限らず成猫時期も該当するため、注意が必要です。
少しでも本記事が子猫の病気予防の参考になれれば幸いです。
参考文献