犬が喉に詰まったような咳をするときの対処法や原因、受診の目安を解説

犬が喉に詰まったような咳をするときの対処法や原因、受診の目安を解説

ガーッ、ガーッと喉に何かが引っかかったような咳は、異物を吐き出そうとしているように見えることがあります。しかし、実際には気管の病気や感染症、逆くしゃみなど、異物とは異なる原因も考えられます。
この記事では、その場でできる対処や受診の目安、考えられる原因、動物病院で行われる検査と治療について解説します。

犬が喉に詰まったような咳をしたときの対処法と受診の目安

犬が喉に詰まったような咳をしたときの対処法と受診の目安

犬が激しく咳き込んでいると、飼い主さんも慌ててしまうでしょう。まずは呼吸ができているかを確認し、状態に応じて落ち着いて対応することが大切です。

咳をしているときに飼い主ができることを教えてください
まず犬をできるだけ興奮させずに静かに休ませるようにします。首輪が喉を圧迫している場合は緩めたり外したりし、煙やスプレーなど気道への刺激になるものが近くにある場合はそこから離しましょう。
呼吸ができていて意識もある場合には、無理に口を開けたり喉へ指を入れたりする必要はありません。可能であれば咳をしている姿を動画で記録し、咳の音だけでなく首の伸ばし方、胸やおなかの動き、咳が起こった状況、いつから始まってどのくらい続いたのかも記録しておくとよいでしょう。
喉に異物が見える場合は自分で取り除いてもよいですか?
呼吸ができている場合は、無理に異物を取り出そうとせず動物病院で処置を受けることが基本です。犬が苦しがっている状態では咬まれる危険があるだけでなく、見えない異物を指で探ると奥へ押し込んでしまうおそれもあります。また、背中を強く叩く、無理に水を飲ませるなどは避けてください。
一方、気道が完全に塞がり、犬が呼吸できない、意識を失うなどの状態は一刻を争う緊急事態です。口を確認して容易につまめる異物が見えていれば、咬傷に注意しながら除去を試みるケースもありますが、見えない異物をむやみに指で探すようなことは避けてください。
咳が落ち着いた場合はそのまま様子を見てもよいですか?
一度だけ短時間咳をして、その後は呼吸、元気、食欲とも普段どおりであれば、経過を観察できる可能性もあります。その際は、どのような場面で起こったかを記録しておくとよいでしょう。
一方、同じ日に何度も繰り返す、数日続く、徐々に増えている場合には受診を検討してください。運動や興奮、飲水、首輪を引いたときなど特定の状況で繰り返す場合や、タバコの煙、芳香剤、粉塵などの環境要因に問題がないかも原因を調べる手がかりになります。
また、咳がいったん止まっても、呼吸が苦しそう、ぐったりする、食欲が低下するといった症状があれば様子を見ずに受診してください。咳の回数だけでなく、全身状態をあわせて判断することが大切です。
すぐに動物病院を受診すべき症状を教えてください
呼吸が苦しそう、舌や歯茎が青紫色または灰色っぽい、意識がもうろうとしている、倒れるといった場合は緊急性が高い状態です。呼吸ができない、あるいは異物による完全な気道閉塞が疑われるケースでは、直ちに救急対応が必要になります。
咳とともにピンク色の泡状の液体が出る、呼吸数が明らかに増えている、横になれないほど苦しそうといった症状も注意が必要です。
発熱や食欲低下、元気消失、膿のような鼻水などを伴う場合は肺炎などを発症している可能性もあるので、咳が続く場合は早めに動物病院へ相談してください。

犬が喉に詰まったような咳をする主な原因

犬が喉に詰まったような咳をする主な原因

喉に何かが詰まったように聞こえる咳でも、実際の原因は喉だけとは限りません。ここでは、代表的な病気や見分ける際のポイントを解説します。

犬が喉に何かが詰まったような咳をするときの原因を教えてください
代表的な原因の一つが気管虚脱です。気管を構成している軟骨が弱くなり、呼吸時に気管が扁平になることで空気の通り道が狭くなります。乾いた「ガーガー」「ガーッ」といった咳がみられることがあり、肥満や暑さ、運動、興奮などによって症状が悪化するケースもあるので注意が必要です。
感染性の病気では、犬伝染性気管気管支炎、いわゆるケンネルコフが代表的です。乾いた強い咳が特徴で、咳のあとにえずくような動作が続くこともあります。 
そのほか、慢性気管支炎、肺炎、犬糸状虫症、気道内の異物、喉や気管周囲の腫瘍なども考えられる原因です。
咳とえずきはどのように見分ければよいですか?
咳は気道から空気を勢いよく吐き出す反射で、えずきは吐こうとするような動作に見えるため、飼い主さんが見分けるのが難しいといえます。
特にケンネルコフなどでは、激しく咳き込んだ直後にえずいたり、少量の泡状の唾液を出したりする場合があるため、「泡を吐いたから胃の病気」「えずいたから異物」と判断してしまいがちなので注意が必要です。 
咳なのか吐こうとしているのかわからない場合には、無理に見分けようとせず動画を撮っておきましょう。音と身体の動きを一緒に確認できるため、診断の手がかりになります。
逆くしゃみが喉に何か詰まったような咳に見えることはありますか?
はい、あります。逆くしゃみは、鼻の奥にある鼻咽頭への刺激などをきっかけに、鼻から勢いよく空気を吸い込む動作を繰り返す現象です。「ブーブー」「フガフガ」といった大きな音がするため、咳や呼吸困難と間違われることがあります。
逆くしゃみでは、立った状態で首を伸ばし、口を閉じたまま急速な吸気を繰り返すことが特徴です。多くは数秒から数分程度で自然に止まり、その後は普段どおりに戻ります。 ただし、頻繁に繰り返す、以前より長くなった、鼻水や鼻血など別の症状を伴う場合には、鼻腔内の異物や感染症、腫瘍などが関係している可能性もあるので、気になる変化があれば受診するとよいでしょう。
実際に異物が喉に詰まっている場合はどのような症状がみられますか?
口や喉、食道に異物が詰まった場合には、突然激しく咳き込む、えずく、よだれが増える、前足で口をしきりに触るといった症状がみられることがあります。
ただし、喉に詰まる場所によって症状は異なり、飲み込みにくそうにする、何度も嚥下する、食べたものをすぐに吐き戻すといった変化が目立つケースも考えられます。
気道が完全に塞がると空気が通らなくなり、舌や粘膜が青紫色になったり、短時間で意識を失ったりする可能性があり、命に関わるため直ちに緊急対応が必要です。

犬の咳で動物病院を受診した際の検査や治療

犬の咳で動物病院を受診した際の検査や治療

咳の原因は呼吸器だけでなく、心臓や食道などにある場合もあります。動物病院では、症状や経過に合わせて必要な検査を組み合わせます。

動物病院では咳の原因を調べるためにどのような検査を行いますか?
まず問診と身体検査を行い、咳が始まった時期や頻度、どのような状況で起こるのかを確認し、聴診による心音や呼吸音の確認、呼吸状態や粘膜の色の評価を行います。胸部X線検査で肺や気管、心臓などの状態を確認することもあるでしょう。
気管虚脱は呼吸に伴って気管の形が変化する動的な病気のため、通常のX線だけで十分に確認できない場合には透視検査や気管支鏡検査などが検討されることもあります。 
心疾患が疑われる場合には心臓超音波検査を、感染症やフィラリア症が疑われれば血液検査を組み合わせ、異物が疑われるケースではX線や内視鏡検査などが検討されるでしょう。
犬の咳に対してはどのような治療が行われますか?
治療内容は咳の原因によって異なります。
気管虚脱が原因の場合は症状に応じて咳を抑える薬や抗炎症薬、気管支拡張薬などを使用し、重症例では気管内ステントや外科的な治療が検討されることがあります。肥満の場合は減量も重要で、興奮や暑さを避けるなど症状を悪化させる要因への対策も検討されるでしょう。
ケンネルコフは自然に改善するケースも少なくなく、すべてのケースで抗菌薬が必要なわけではありません。肺炎が疑われるなど、細菌感染への治療が必要と判断された場合に抗菌薬を使用します。 
心疾患がある場合も、その病気や心不全の有無に合わせた治療が必要です。咳があるという理由だけで利尿薬などを使用するわけではなく、肺水腫があるかなどを確認したうえで治療方針が検討されます。
もし喉や気道に異物が見つかった場合どのような処置をするのか教えてください
異物がある場所や形、大きさによって処置は異なり、口や咽頭、食道などに異物が見つかった場合には、鎮静や全身麻酔下で専用器具や内視鏡を使って摘出することがあります。
食道異物では、内視鏡と鉗子を使って口から取り出せる場合がありますが、穿孔している、内視鏡では摘出できないといったケースでは外科手術が必要になることもあるでしょう。 
一方、気道が完全に閉塞している場合は空気の通り道を確保することが優先され、異物を緊急に除去し、気管挿管や酸素投与、必要に応じて緊急の気管切開などが行われる場合があります。 
異物を取り除いたら気道や食道に傷がないかを確認し、状態に応じて追加の治療や経過観察が行われるので、獣医師の指示に従いましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

犬の喉に何かが詰まったように聞こえる咳には、気管虚脱やケンネルコフ、慢性気管支炎、逆くしゃみ、異物などさまざまな原因があります。咳が出たときは犬を落ち着かせ、無理に口の奥を探らず、可能であれば動画に残しましょう。呼吸ができない、舌や歯茎が青紫色になる、意識を失うといった症状は緊急対応が必要な事態である可能性があります。

咳が繰り返す場合や全身状態に変化があるときも、動物病院で原因を確認することが大切です。

【参考文献】