犬が脱水状態になったときに行う皮下点滴とは?脱水の原因や症状、応急処置を解説

犬が脱水状態になったときに行う皮下点滴とは?脱水の原因や症状、応急処置を解説

犬の脱水症状に関して、梅雨時期や夏場だけ注意しておけばよいと考えていませんか?もちろん、梅雨時期や夏場は熱中症のリスクがあり、脱水状態になりやすい季節です。

しかし、その他の季節でも脱水になってしまう可能性があります。また、軽度の脱水だからといって様子をみていると、重篤化してしまうかもしれません。

脱水の原因や症状を理解しておくことはもちろん、万が一のときのために、応急処置の方法も把握しておきましょう。

この記事では、犬が脱水状態になったときに行われる皮下点滴に関しても解説していきます。脱水状態にならないように予防するだけでなく、本記事を参考にして、愛犬が脱水状態になったときの備えをしておくことも大切です。

犬の脱水の原因や症状

獣医さんと飼い主

犬が脱水状態になる原因を教えてください。
犬が脱水症状になる原因のひとつとして、熱中症があげられます。高温多湿になる梅雨の時期や夏だけでなく、ほかの時期でも温度管理をしっかりと行うことが大切です。
また、下痢や嘔吐を繰り返すことで脱水状態となる可能性もあります。下痢や嘔吐の症状がみられた日は、胃腸を休めるために半日〜1日の絶食を行いますが、水の量は減らさないようにしましょう。
その他にも、腎機能障害・糖尿病・利尿薬の使用などによって脱水状態となることもあります。脱水症状を引き起こさないために、犬がいつでも水分補給できるようにしておきましょう。また、気になる症状が現れた場合は、些細なことでもすぐに動物病院を受診することがおすすめです。
脱水が起こるとどのような症状が出ますか?
犬が脱水を起こすと、以下のような初期症状がみられます。
  • 元気がない
  • 皮膚に弾力がない
  • 口の中がかわいている
  • パンティング
  • 唾液の粘度の上昇

これらに加えて、下痢や嘔吐を繰り返している場合にも注意が必要です。脱水が重篤化すると、ふるえや意識消失などを引き起こす可能性があります。
また、犬が脱水を引き起こす原因のひとつである熱中症の場合はよだれ・粘膜の充血・頻脈などの症状がみられることがあるため、特に夏場は注意して様子を確認しましょう。熱中症が予想される際、初期症状の段階で体温が測れる状態であれば、体温測定することがおすすめです。体温測定で40度を超えていると、熱中症が疑われます。
重篤化してしまう前に、少しでも異変を感じたらすぐに動物病院を受診しましょう。

動物病院の脱水に対する診療について

診察中のヨークシャテリア

犬が脱水症状を起こしているときの応急処置を教えてください
犬が脱水症状を起こしている場合、まずは水を飲ませましょう。脱水状態になっているということは、体内の水分量が減少していることが原因です。水を飲ませることで、必要な水分量を補うことができます。
自分で水を飲める状態であれば、容器に水を入れて飲ませてあげましょう。それでも飲まない場合は、少し温めたり味をつけて飲ませたりすることもおすすめです。自分で水が飲めない状態の場合は、スポイトなどで少量ずつ口の中にゆっくりと流し込むことで、水分を与えることができます。
また、意識がない・苦しそうな状態が続いている場合などは、すぐに動物病院を受診することがおすすめです。
脱水症状がある場合、様子を見てよいですか?
犬に脱水症状がある場合、様子を見ずに病院を受診しましょう。脱水状態がひどくなると、ショック状態となり死にいたる可能性があります。
さらに、脱水の症状がみられた場合、糖尿病や消化器疾患などの病気が隠れている可能性もあります。早期治療を行うためにも、なるべく早く病院を受診することが重要です。
また、飼い主が犬の脱水状態を確認する方法も把握しておくことで、状態を判断をしやすくなります。その方法のひとつが、皮膚を指でつまんでもとに戻るまでの時間を観察することです。正常であればつまんだ皮膚はすぐにもとに戻りますが、脱水している場合はつまんだ状態のまま皮膚が盛り上がり、もとに戻るまで時間がかかります。しかし、皮膚が硬い犬や太っている犬の場合は判断が難しいこともあるため、普段の状態を確認しておくとよいでしょう。
また、犬がぐったりしていて動けない・身体が痙攣しているなどの場合は、危険な状態にある可能性があります。すぐに病院を受診しましょう。
動物病院ではどのような処置をしてくれますか?
犬に脱水の症状がみられた際に、動物病院で行われる治療法は、輸液療法といわれる皮下輸液や静脈輸液です。どちらも体内に水や電解質を投与するものであり、点滴というとわかりやすいでしょう。
皮下点滴を行う前には、触診や血圧検査などで脱水の状況を判断します。これにより、重度の脱水の症状がみられる場合には、静脈点滴が必要です。それぞれにメリット・デメリットがあるため、獣医師の説明を聞き相談したうえで行いましょう。また、軽度な脱水症状で犬が自分で水を飲める状態であれば、経口補液剤が処方されることもあります。

犬が脱水状態になったときに行う皮下点滴とは?

ワクチン接種でドキドキのミニチュアダックス

皮下点滴とはどのような点滴ですか?
皮下点滴は、皮膚と筋肉の間に輸液剤を投与する方法です。動物は身体の皮膚が伸びるため、皮下点滴が可能となります。脱水症状以外に慢性腎疾患、食事や水分が取れていないなどの症状がある際にも、使用される方法です。ゆっくりと身体に浸透していく皮下点滴は、主に軽度の脱水症状がみられる際に用いられます。
また、皮下輸液を行った後は、背中がコブのように膨らむことが特徴です。これは、輸液した分だけ膨らんでいるため、12〜24時間で身体に吸収されます。背中のコブが気になることがあるかもしれませんが、強く触ったりおさえたりしないようにしましょう。
皮下点滴のメリットを教えてください。
皮下点滴のメリットとして、以下のことがあげられます。
  • 短時間で治療完了
  • 日帰り通院が可能

皮下点滴は10〜15分で完了するため、日帰りで行うことが可能です。また、短時間で処置が終わるということは、犬の負担軽減にもつながります。特に、よく動く・興奮しやすい犬などに適した方法といえるでしょう。ただし、皮下点滴が適していないケースもあるため、犬の状態に適した方法を選択することが大切です。

皮下点滴で起こりうるリスクを教えてください。
皮下点滴を行う際、血圧に注意が必要です。高血圧の状態で皮下点滴を行うと、心血管系の負担が強まり、皮下浮腫・胸水・腹水・肺水腫などが現れる可能性があります。皮下点滴後は、お腹や脚の浮腫みが現れたり、犬の元気がなかったりと飼い主が不安になる状態がみられることもあるでしょう。お腹や脚の浮腫みは、輸液剤が降りてきていることが考えられるため、ゆっくりと身体に吸収されていきます。
また、犬の元気がないことが気になる場合に考えられることは、点滴部位を気にしていたり治療に疲れていたりするケースです。ただし、皮下点滴後も継続して元気がない状態がみられる場合は、症状が悪化している可能性が考えられます。不安な症状がある際は自分で判断せず、些細なことでもすぐに獣医師に相談しましょう。
皮下点滴では対応できないのはどのような状態ですか?
以下のような状態の場合は、皮下点滴では対応できないことがほとんどです。
  • 重度の脱水にある
  • 高血圧である
  • 糖を点滴する必要がある

皮下点滴は、体内に水や電解水を投与する方法のため、軽度の脱水症状や慢性腎疾患の日常的なケアなどで用いられています。上記のような状態がみられる場合は、獣医師と相談し、症状にあった治療法を選択しましょう。

編集部まとめ

ハンディウォーターボトルで犬(ペット)に水をあげる飼い主

犬は熱中症、下痢や嘔吐を繰り返すなど、さまざまな要因から脱水状態になる可能性があります。

軽度の脱水症状だからといって、病院を受診せずに様子をみていると重篤化してしまうかもしれません。

脱水の初期症状として、元気がない・皮膚に弾力がない・口の中が乾いてるなどから判断ができるため、これらの症状がみられた場合はなるべく早く病院を受診しましょう。

病院を受診するまでの応急処置は、まず水を飲ませてあげることです。自分で飲むことが難しい場合は、スポイトで少量ずつ口の中にゆっくりと流し込む方法があります。

また、軽度の脱水状態であれば病院で皮下点滴を行うことも可能です。短時間でできる処置のため、日帰りで行うことができます。

ただし、皮下点滴にはメリット・デメリットがあるため、獣医師と相談して判断することが大切です。

犬の脱水は夏場に限ったことではありません。脱水症状がみられた場合は、重篤化してしまう前に、なるべく早く病院を受診しましょう。

参考文献