犬の胃炎とは?急性と慢性でどう違う?予防法も併せて解説!

犬 胃炎

愛犬の元気がない…食欲がない…。これってもしかして胃炎?そんな心配をしたことはありませんか?犬の胃炎は、急性と慢性で症状や対処法が異なります。

本記事では犬の胃炎について以下の点を中心にご紹介します。

  • 犬の胃炎の原因
  • 犬の胃炎の症状
  • 犬の胃炎の治療方法

犬の胃炎について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

犬の胃炎とは

犬の胃炎には、急性胃炎と慢性胃炎があり、犬の健康に影響を及ぼす胃の炎症状態を指します。

急性胃炎は発症から数日以内に起こり、犬が下痢や嘔吐、食欲不振、元気消失などの症状に苦しむことがあります。なかでも、子犬は急性胃炎が重症化しやすく、早急な治療が必要です。

慢性胃炎は数週間以上続き、犬が慢性的な消化器系の問題を抱えることがあります。胃炎の症状は重症化する可能性があるため、早期発見と治療が重要です。

症状が見られる場合は、すみやかに獣医師の診断を受けましょう。

犬の胃炎の原因

胃炎の原因は一体何なのでしょうか?
犬の胃炎の原因を知ることで、犬の苦痛を軽減し、早期発見・早期治療につながります。

以下では、犬の胃炎の原因について詳しく解説します。

急性胃炎の原因

急性胃炎の原因は多岐にわたります。まず、犬が不適切な食べ物や腐敗物、中毒性の物質を摂取した場合に胃炎が引き起こされることがあります。また、化学的刺激物や特定の薬剤、例えばステロイドや消炎鎮痛薬の摂取も胃炎の原因となります。そして、食べ物に対するアレルギーや不耐性も急性胃炎を引き起こす可能性があります。

さらに、免疫に関連する疾患やストレス、尿毒症、肝不全、副腎皮質機能低下症などの身体的な問題も胃炎を誘発する要因として考えられます。

犬が嘔吐をするという症状はさまざまな疾患によって引き起こされるため、原因を特定することは容易ではありません。食事や摂取物の確認、可能な異物の摂取、薬剤の投与との関連性の確認などが重要です。

慢性胃炎の原因

犬の慢性胃炎の原因は、胃粘膜に繰り返し刺激が加わり炎症が慢性化することが特徴です。原因はさまざまで、まずは基礎疾患が挙げられます。急性胃炎や胃潰瘍、胃の腫瘍など、胃に病変がある場合は慢性胃炎の引き金となることがあります。

そのほか、慢性の尿毒症やアジソン病、肝臓疾患など、胃以外の疾患も原因となることがあります。

寄生虫や薬剤も慢性胃炎を引き起こす可能性があり、寄生虫には回虫やフィサロプテラ(胃虫)、リーシュマニアなどがあります。薬剤では、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)、グルココルチコイド、抗菌薬、抗がん剤なども胃炎の原因となります。

そして、胃の運動異常も慢性胃炎を招く要因です。胃の動きが悪くなる(胃運動低下症)場合や、幽門部が狭くなる(幽門異常)場合には、胃の内容物が長時間とどまり、炎症が起こることがあります。

さらに、アレルギーも胃炎の原因となります。特定の食物に対するアレルギーがある場合が続くと胃炎を引き起こす可能性があります。

加えて、遺伝的な要因や短頭種といった身体的特徴も慢性胃炎の原因として指摘されています。

犬の胃炎の症状

犬が胃炎にかかった場合、具体的にどんな症状が現れるのでしょうか?
以下では、犬の胃炎の症状について詳しく解説します。

急性胃炎の症状

急性胃炎は、突然の嘔吐や食欲不振といった症状が現れます。犬が急に嘔吐を始め食事を摂ろうとしない場合、急性胃炎が疑われます。

胃の粘膜が刺激されることで炎症が引き起こされ、結果として複数回の嘔吐が起こります。嘔吐が多くなるため水分を摂る回数も増え、脱水症状や嘔吐物に血が混じることもあります。

胃炎による痛みや腹部の緊張から強烈な吐き気を催すことがあり、食べたものだけでなく胃液や粘膜を含む全てを吐き出す傾向があります。また、胃が炎症を起こすため、腹部を触ることを嫌がったり、怒りを示したりすることもあります。

腐った物を摂取した場合は、細菌や毒素が関与し、重篤な状態になることもあります。

慢性胃炎の症状

犬の慢性胃炎の症状は、数週間にわたる断続的な嘔吐が挙げられます。食欲不振や体重減少も頻繁にみられ、犬が食事を拒否したり、摂取量が減少したりします。

また、慢性胃炎の犬は水を大量に飲むことがあり、胃炎による腹部の不快感や炎症の影響によるものです。腹痛を感じるために触られると痛がることもあります。

このような症状が繰り返し現れる場合、犬の胃炎が慢性化している可能性があります。

そのほかにも、粘膜のびらんや潰瘍が起こることがあり、嘔吐物や便に血が混じることがあるため排泄物の確認も大切です。

犬の胃炎が進行すると

犬の胃炎が進行すると、胃壁の損傷度が高まり、より深刻な病気へと進展することがあります。胃炎の炎症が悪化すると、胃壁にびらんや潰瘍が形成され、胃の粘膜が破れて胃の内部から出血する可能性があります。

胃潰瘍は胃の粘膜の一部が損傷し、潰瘍が形成される病気です。潰瘍は胃の内側の表面にできますが、潰瘍が深くなると、血管が損傷して出血の原因となることがあります。

また、胃穿孔(いせんこう)とは、胃の壁が穿たれてしまう状態を指し、内臓内容物が腹腔内に漏れ出してしまう可能性があります。胃穿孔は命に関わる重篤な合併症であり、迅速な治療が必要です。

犬の胃炎の検査・診断

犬の胃炎を診断するためには、以下のような検査方法があります。

  • 問診: 飼い主が症状の程度や期間などを詳しく獣医師に伝えます。薬の服用歴も忘れずに伝える必要があります。
  • 触診: 獣医師が犬の腹部を触診して痛がっているかどうかを調べます。
  • X線検査: 石や金属などの異物の他、うっすらうつる異物の影や腫瘍、その他さまざまな状態を調べます。
  • 超音波検査: 超音波を使って胃の損傷度や動きなどを詳しく調べます。
  • 内視鏡検査: 内視鏡を使って胃の粘膜を観察し、採取した組織を顕微鏡で拡大して調べます。炎症が起こっていると、白血球が患部に集まっていることが観察されます。
  • 血液検査: 全身の状態を確認し、貧血や脱水の有無、ほかの症状の原因となるものがないかを確認します。
  • レントゲン検査: 異物の有無や胃壁の状態を調べます。
  • エコー検査: 胃壁の肥厚や腫瘍ができていないか、異物がないか、腸閉塞の有無などを確認するために実施されます。

犬の胃炎の治療方法

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犬が胃炎に苦しんでいる時、どのような治療方法があるのでしょうか?
以下では犬の胃炎の治療方法について紹介します。

原因療法

まず、有害物質の誤飲や誤食が原因である場合、胃洗浄が行われ有害物質を胃から取り除きます。また、細菌、ウイルス、寄生虫などの感染症が原因であれば、それぞれに対応した薬物が投与されます。抗菌薬、抗ウイルス薬、駆虫薬などがその例です。

薬物が原因である場合には、当該薬の使用を中止します。また、基礎疾患が原因であれば、その疾患に対する治療が行われます。

対症療法

まず、胃酸の分泌を抑える制酸剤を投与し胃の粘膜への負担を軽減し、炎症を和らげます。また、胃の粘膜を守る胃粘膜保護剤の使用や、嘔吐を抑えるための制吐薬が使用されることもあります。

さらに、嘔吐によって失われた体液を補うため、輸液が行われることもあります。脱水症状がある場合には、点滴などで水分やミネラルを補給することが重要です。

加えて、食事の管理も重要で、消化しやすい食事を与えることで胃の負担を軽減し、症状の改善が期待できます。具体的な食事管理については、後ほど詳しく解説します。

犬の胃炎にならないために

犬 鼻 乾燥

犬の健康を守るために、日常生活でできる予防策はあるのでしょうか?
以下では、犬の胃炎を未然に防ぐための予防策を紹介します。

誤飲や誤食を防止する

犬の胃炎を予防するためには、まず誤飲や誤食の防止が不可欠です。犬は好奇心旺盛であり、興味を示すものがあれば口に入れてしまいます。そのため、家の中や散歩中に犬が口にしやすいものを置かないようにすることが重要です。

また、散歩中には拾い食いをしないように十分な注意を払い、異物に近づいたらすぐに引き離しましょう。

家の中でも、犬が届く範囲には誤飲しやすいものを置かないようにしましょう。不用品や小さな玩具、薬品などは特に危険です。食べ慣れない食べ物を大量に与えることも胃炎の原因になりますので、与える食事にも注意が必要です。

このほか、犬の周囲の環境も重要です。清潔な環境を保つことで、犬が汚染された異物を口にする可能性を減らします。定期的な掃除や、犬の生活空間を整理整頓することで、誤飲や誤食のリスクを低減しましょう。

食事の管理

犬が胃炎の心配がある場合や慢性的な胃炎を抱えている場合、消化のよい食事の提供が胃炎を予防する一助となります。

例えば、ドライフードを与える場合は、ふやかしてあげるか、消化性の高いドライフードを選びましょう。

アレルギーが疑われる場合は、その犬に合ったアレルギー用の療法食を選択しましょう。どのようなドライフードが合うか分からない場合は、動物病院で扱う療法食の中から消化に優れたアレルギー対応のフードを相談できます。

消化性の高い食事を提供するためには、ウェットフードや手作り食を検討することも選択肢のひとつとなります。ただし、ウェットフードや手作り食にも注意が必要で、胃の負担になる成分が含まれている場合や栄養バランスの問題があります。心配な場合は、食事管理に詳しい獣医師に相談することが重要です。

犬の胃炎と間違えやすい病気

犬が不調を訴えるとき、胃炎なのか、ほかの病気なのか、どうやって見分ければいいのでしょうか?
以下では、犬の胃炎とよく似た病気と見分け方について解説します。

犬の胃潰瘍

犬の胃潰瘍は、胃粘膜が傷ついてしまう病気であり、胃炎とよく似た症状を示すため、間違えやすい病気の一つです。

胃潰瘍は、胃の粘膜が傷つき引き起こされます。胃粘膜の一部が削られたようになり、犬は食欲が低下し、嘔吐や吐血といった症状が現れます。重度の場合には、黒色のタール便が見られることもあり、胃に穴が開いてしまった場合は急死するリスクもある危険な病気のひとつです。

胃潰瘍の原因はさまざまで、重度の胃炎や胃腺癌、ガストリノーマといった疾患、あるいは非ステロイド性抗炎症薬の副作用が関与することもあります。

犬の炎症性腸疾患(IBD)

犬の胃炎と間違えやすい病気には、犬の炎症性腸疾患(IBD)があります。

IBDは、白血球が腸粘膜に集まり、原因不明の炎症を引き起こす病気で、リンパ球プラズマ細胞性腸炎や好酸球性胃腸炎などのタイプに分類されます。

犬のIBDは慢性的な下痢や嘔吐などの症状を引き起こし、食欲不振や体重減少といった症状が長期間続くことがあります。近年では、免疫抑制薬が有効な治療法といわれ、免疫抑制薬反応性腸症(IRE)とも呼ばれるようになっています。

IBDは炎症の原因が不明なため、診断にはさまざまな検査が必要です。もし犬が食欲不振や下痢、吐き気などの症状を示し、3週間以上症状が持続している場合は、動物病院を受診しましょう。

犬の食事反応性腸症(FRE)

犬の食事反応性腸症(FRE)は、食物アレルギーや消化できない食物を与えることが原因となる消化器疾患です。FREは、下痢や嘔吐といった症状を引き起こしますが、食事内容の変更で改善される可能性があります。

FREは慢性腸症の中でよく見られる消化器疾患であり、割合は70%以上にも上ります。名前からもわかる通り、食事療法に反応する消化器疾患であり、若齢犬で発症することが多いようです。

FREの原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因や免疫の問題、腸内細菌のバランスの変化などが影響していると考えられています。

FREの主な症状は、3週間以上続く消化器疾患で、下痢や嘔吐が挙げられます。下痢は、1日に4回以上続く下痢であり、粘液混じりの軟便や血便が特徴的です。

FREの治療には、まず慢性腸症以外の疾患を排除する必要があります。その後、食事療法が行われます。

犬の胃腺癌

犬の胃腺癌は、胃に悪性腫瘍ができる病気であり、食欲不振や嘔吐、吐血、体重減少などが見られます。病変が大きくなったりほかの臓器に転移した場合、予後は悪くなりますが、手術で切除できる場合もあります。

胃腺癌の症状は、進行しないと症状が現れず、末期の状態で発見されることもあります。症状には、食欲不振、嘔吐、体重減少、元気のなさなどがあります。食欲不振がよく見られる症状であり、嘔吐は慢性的なことが多いようですが、急激な嘔吐も発生することがあります。

また、胃の腫瘍が胃潰瘍を引き起こす場合もあり、出血がある場合は、吐物に血や黒茶がかったカスのようなものが混じることがあります。症状は数週間から数カ月間続くこともあります。

犬の幽門狭窄

犬の幽門狭窄は、胃の出口である幽門が狭くなり、食べ物や消化液の流れが十二指腸にうまく送り出せなくなる病気です。

症状としては嘔吐、脱水、食欲不振、体重減少などが現れます。胃から十二指腸への排出機能に障害が生じる幽門狭窄は、胃の不快感から犬が嘔吐や食欲不振を経験することが特徴です。

犬の幽門狭窄の原因には先天的なものや後天的なものがあり、幽門部の筋肉が分厚くなる先天性タイプや胃の粘膜と筋肉が変化する後天性タイプがあります。後者は胃酸分泌作用や胃壁の細胞増殖作用、神経の機能障害などが関与すると考えられています。

犬の幽門狭窄の特徴は慢性的な吐き気であり、嘔吐はほかの疾患でも起こることがあるため、診断には注意が必要です。

まとめ

ここまで犬の胃炎についてお伝えしてきました。犬の胃炎の要点をまとめると以下の通りです。

  • 犬の胃炎の原因は、有害物質摂取や感染症、薬物副作用、基礎疾患などがある
  • 犬の胃炎の症状は、食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛などが主な特徴として現れる
  • 犬の胃炎の治療方法には、原因療法と対症療法があり、胃洗浄や投薬、絶食・絶水、食事管理などが行われる

ここで紹介した情報が、皆さまの愛犬の健康に少しでも役立つことを願っています。
大切なパートナーの健康を守るために、今後もご自身の知識を広げ、積極的な予防に努めましょう。

参考文献