年齢を重ねるにつれて、犬の身体にもさまざまな変化が現れてきます。7歳を過ぎた頃からは「シニア期」に入り、病気のリスクが高まるため、今まで以上に健康管理が重要になります。
本記事ではシニア犬がかかりやすい病気について以下の点を中心にご紹介します。
- シニア犬とは
- シニア犬の病気
- シニア犬の健康管理
シニア犬がかかりやすい病気について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
シニア犬とは

- シニア犬といわれる年齢は何歳からですか?
- 犬は7歳頃から「シニア犬」と呼ばれる年齢に入るとされています。ただし、小型犬と中型犬は7〜8歳、大型犬ではもう少し早い6歳頃からシニア期に入ることもあります。人間の年齢に換算すると、小型犬の8歳は48歳程度、大型犬の8歳は61歳程度に相当します。
とはいえ、年齢だけで判断するのではなく、食欲、体力、行動の変化などを見ながら、その子に合ったケアを始めることが大切です。
- 犬の老化のサインにはどのようなものがありますか?
- 犬がシニア期に入ると、見た目や行動にさまざまな変化が現れてきます。
まず身体面では、毛のツヤがなくなったり白髪が目立つようになるほか、口臭の悪化や歯の黄ばみ、歯茎の異常など口腔内のトラブルが増えてきます。また、痩せてきたり、逆にお腹まわりにたるみが出ることもあります。
行動面では、動きが鈍くなり、段差を踏み外したり物にぶつかることが増える、寝ている時間が長くなる、反応が鈍くなるなどの変化が見られます。
加えて、飲水量や尿量の増加、食欲の変化、咳や呼吸の異常なども老化のサインとして現れることがあります。
こうした兆候を早めに察知し、必要に応じて動物病院で相談することで、より快適なシニア期を過ごすサポートができるでしょう。
- 犬の平均寿命を教えてください
- 2022年の一般社団法人ペットフード協会による調査では、日本で飼育されている犬の平均寿命は14.76歳とされています。平均寿命は、年々上昇している傾向にあり、2020年の14.48歳、2021年の14.65歳とわずかに延びています。
寿命が延びた背景には獣医学の進歩や室内飼育の増加、栄養バランスに配慮されたフードの普及などが挙げられます。なお、犬の寿命は体格によって異なり、超小型犬が15.31歳、小型犬が14.28歳、中型・大型犬が13.81歳とされています。
- 大型犬が早くシニア期を迎える理由として何が考えられますか?
- 大型犬は小型犬よりも早くシニア期に入るといわれています。主な理由は、成長のスピードの違いや身体への負担の大きさが挙げられます。
まず、大型犬は子犬のうちから急速に身体が成長するため、短期間で大量の細胞分裂が行われます。この激しい成長によって、細胞や組織へのストレスが増え、老化が早まる原因になると考えられています。
また、身体の大きさがもたらす重みは、骨や関節、筋肉に常に負担をかけることになります。関節には継続的に圧力がかかりやすく、年齢とともにすり減りやすくなるため、歩行のトラブルや痛みを引き起こすケースも少なくありません。
加えて、大型犬の内臓もその体格に見合った働きが求められるため、心臓や肝臓、腎臓といった重要な臓器にも負荷がかかりやすい傾向があります。これが加齢に伴う臓器の機能低下を早める要因になることもあります。
少し早めに加齢への備えを始めることで、シニア期を迎えられるでしょう。
シニア犬の病気

- シニア犬がかかりやすい病気にはどのようなものがありますか?
- 年齢を重ねると、犬の身体は徐々に機能が衰え、さまざまな病気にかかりやすくなります。以下でシニア期の犬が注意したい病気を解説します。
1. 肥満
加齢により代謝が低下すると、これまでと同じ食事量でも体重が増えてしまうことがあります。肥満は見た目だけの問題ではなく、関節や内臓に余分な負担をかけ、さまざまな病気の引き金になることもあります。
2. 関節炎
年を取るにつれて関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みが生じることがあります。散歩を嫌がる、階段を避ける、歩き方が不自然になるなどのサインが見られたら注意が必要です。
3. 心臓病
心臓に負担がかかる病気はシニア犬に多く、「僧帽弁閉鎖不全症」は小型犬に多く見られる疾患です。初期には目立った症状が出にくいため、定期的な検診(聴診、超音波など)での早期発見が重要です。
4. 腎臓病
腎臓の機能は少しずつ低下し、初期段階では自覚症状がほとんどないといわれています。水をたくさん飲む、尿の量が増えるといった変化は腎機能の低下を示す可能性があります。
5. がん(腫瘍)
加齢とともに、腫瘍のリスクも高まります。皮膚にできるしこりのように目に見えるものから、内臓や血液に関わるものまで種類はさまざまです。
6. 乳腺腫瘍
避妊手術をしていないメス犬に多く見られる乳腺腫瘍は、発情の影響を受けて発症リスクが高まります。初回の発情前後で避妊手術を行うことで、予防できる病気です。
7. 子宮蓄膿症
避妊をしていないメス犬が発症しやすい病気で、子宮内に膿がたまってしまう状態です。症状が急激に進行することもあり、ぐったりする、陰部から異常な分泌物が出るなどのサインが見られたらすぐに受診しましょう。
8. 前立腺肥大症
加齢とともにホルモンの影響で、未去勢のオス犬に前立腺の腫れが見られることがあります。血尿、排尿や排便のしづらさといった症状が出ることもあります。
9. 会陰ヘルニア
未去勢のオス犬に多いとされている病気です。肛門まわりの筋肉が弱くなり、腹部の臓器が飛び出してしまうことで、肛門周囲が腫れたり排便が難しくなるケースがあります。
10.歯周病
歯石がたまることで歯茎に炎症が起き、顎の骨にまで影響を及ぼすことがあります。
- シニア犬の病気を予防するために飼い主ができることを教えてください
- シニア犬の病気を予防するためには、日々の生活のなかでいくつかのポイントを意識することが大切です。
まず、適度な運動で筋力や体力を維持し、肥満や関節のトラブルを予防しましょう。次に、年齢に合った栄養バランスのとれた食事を心がけ、必要に応じてサプリメントも活用すると効果が期待できます。
また、室内の温度管理や段差対策などの快適な生活環境の整備も重要です。さらに、スキンシップや声かけを通して心の安定を保ち、ストレスの軽減にも努めましょう。
シニア犬の健康管理

- シニア犬になったら、どのくらいの頻度で健康診断に行くべきですか?
- シニア犬になったら、半年に一度の健康診断が理想的です。犬は人間よりも速いスピードで年齢を重ねるため、年に一度の検診では見逃してしまう体調の変化もあります。
異常がなくても、定期的なチェックを受けておくことで病気の早期発見や予防につながります。頻度や内容については、かかりつけの獣医師と相談しながら決めるといいでしょう。
- 病気を早期発見するために日頃からチェックすべきポイントを教えてください
- 病気を早期発見するために日頃からチェックすべきポイントは以下のとおりです。
・目の様子を確認する
目が白っぽく濁っていないか、歩いているときに物にぶつかることがないかを観察しましょう。
・お口のなかの健康状態を確認する
口臭が強くなった、歯に歯石がついている、歯茎やお口のなかにできものがある、といったサインは要注意です。
・体重の変化を把握する
シニアになると基礎代謝が落ち、運動量も減ることで太りやすくなります。一方で、筋肉量が減って体重が減少するケースもあります。
・歩き方や運動量の変化を見る
散歩に出たがらない、歩行時につまずく、階段を嫌がるなどの変化は、関節や筋肉に問題があるかもしれません。
・皮膚や体表にしこりがないか探る
身体に触れて、いぼやしこりがないか確認することも大切です。見た目だけでは判断できないため、触ったときに何か違和感があれば早めに獣医師に相談しましょう。
・排尿やおもらしの変化を観察する
いつもと違う場所でおしっこをしてしまう、寝床が濡れているといった様子が見られた場合は、泌尿器系の病気や老化に伴う変化が疑われます。
編集部まとめ

ここまでシニア犬がかかりやすい病気についてお伝えしてきました。シニア犬がかかりやすい病気についての要点をまとめると以下のとおりです。
- 犬種や体格によって異なるが、7〜8歳頃からシニア犬といわれる
- シニア犬がかかりやすい病気には、関節炎や心臓病などが挙げられる
- シニア期に入った犬は、半年に1度の定期健診を受けるのがよいとされている
犬は7〜8歳頃からシニア期に入るとされ、年齢とともに見た目や行動、健康状態に変化が現れます。シニア犬は病気のリスクも高まるため、適度な運動、食事、環境を整え、半年に一度の健康診断で早期発見・予防に努めましょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。