犬が血尿を出した!?考えられる原因や動物病院に連れて行くときの注意点を解説

犬が血尿を出した!?考えられる原因や動物病院に連れて行くときの注意点を解説

犬が血尿を出した場合、どうしたら良いのでしょうか。犬の血尿は、重篤な病気やケガの可能性を示していることもあるため、犬が一度でも血尿を出した場合は注意が必要です。

しかし、血液の量によって尿の色が異なるため、出血量が少ない場合、血尿だとすぐに気が付かないケースも少なくありません。この記事では、血尿の見た目や種類、血尿の原因として考えられる病気、病気以外に考えられる血尿の原因とともに、動物病院に連れて行くときの注意点も、詳しく説明します。

犬の血尿はどんな見た目?

犬の血尿はどんな見た目?

血尿というと「赤い尿」を想像してしまうかもしれません。しかし、 尿に血液の混ざる量やその状態によっては、ピンク色の場合や色が薄い場合など、ペットシーツの色では明確に「血尿」とわかりづらいこともあります。

また、全体的ではなく、ところどころ赤く血が混じった状態の場合もあります。見た目ですぐに判断できるほどの血尿がでている場合だけでなく、頻繁にトイレに行く、トイレの様子がいつもと違うなど、普段と違う様子がある場合は、トイレの後のペットシーツにティッシュを押し当てて色を確認してみましょう。血尿が確認された場合は、すぐに動物病院を受診することが大切です。

ところどころに赤く血が混じった尿

出血量が少ない場合は、赤い血がところどころに点々と混ざって出ることがあります。また、膀胱の中で血が固まると、血の塊のようなものが混じった尿が出ることもあります。未避妊のメス犬が子宮蓄膿(ちくのう)症を発症すると、陰部から血の混じったウミの塊が出るケースもあります。このように尿全体が赤く染まっていない場合でも注意が必要です。

全体的にピンク色になった尿

尿全体が血液でピンク色に染まっている場合があります。真っ赤な尿に比べて、ピンク色の尿の場合は出血量がやや少ないことが理由ですが、危険度が高い状態であることには変わりありません。濃いオレンジ色の場合も、ピンク色と同様に血尿の疑いがあります。

全体的に真っ赤になった尿

尿の全体が血液によって真っ赤に染まっている場合には、泌尿器の炎症や出血などが予想されます。何らかの病気の可能性があるため、ただちに動物病院を受診してください。

犬が血尿を出したときの考えられる原因

犬が血尿を出したときの考えられる原因

泌尿器は、体全体の中でもデリケートな部分だとされています。泌尿器から出血が見られる原因としては、細菌による感染や尿石によって起こる炎症、泌尿器に発生した腫瘍などが考えられます。犬の血尿の原因となる病気について説明していきましょう。

膀胱炎、膀胱腫瘍

膀胱炎は、犬の血尿の原因として最も多い病気です。

膀胱炎になると、血尿以外にも以下のような症状・変化が現れます。

  • 濃い黄色の尿が出る
  • トイレの回数が増加する
  • 排尿時痛みがあり、トイレで鳴いたりうずくまったりする
  • 尿の臭いが変化する

犬の膀胱炎の原因としては細菌感染によるものが多くなっています。それ以外では結石や腫瘍、外傷などの理由も考えられます。尿道が短い小型犬やメス犬、ストレスを感じやすい犬がかかりやすい傾向にあるとされているため、注意しましょう。

また、膀胱腫瘍とは、血尿や頻尿などの症状を引き起こす、悪性もしくは良性の腫瘍のことを指します。犬の膀胱腫瘍の大部分は移行上皮癌(いこうじょうひがん)と呼ばれる悪性の腫瘍です。

膀胱腫瘍の初期症状には、血尿や頻尿、排尿困難や残尿感(排尿しようとするのに尿が出ない)などがあり、症状が進行していくと膀胱全体に腫瘍が広がり、尿漏れなどの症状が出ることもあります。なお、腫瘍が肺に転移すると呼吸困難や咳の症状が、骨に転移すると足の痛みの症状が現れます。

老犬やメス犬のほか、シェットランド・シープドッグやビーグルなどの犬種に多い傾向があるので、早めに動物病院を受診するようにしましょう。

尿道炎、尿路結石症

尿道炎は、細菌への感染や結石ができることなどによって、尿の通り道である尿道に炎症が起こる病気です。尿道炎では排尿痛があったり、1度の尿量が減少して頻尿になったりする症状が出ます。尿道が短い小型犬やメス犬は細菌が入りやすく、尿道炎にかかりやすいと考えられていますので注意が必要です。

尿石症(尿路結石症)とは、腎臓から尿管、膀胱、尿道までの尿路に結石ができる病気です。結石にはいくつか種類(ストルバイトやシュウ酸カルシウムなど)があります。

尿石症(尿路結石症)のおもな症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 血尿
  • 頻尿
  • 排尿痛
  • 排尿困難

これは結石ができる部位にもよります。結石が尿管または尿道に詰まってしまうと、尿路閉塞(尿管閉塞、尿道閉塞)になる危険性も出てきます。

尿路閉塞になると腎臓に負担がかかってしまいます。治療が少しでも遅れてしまうと急性腎不全や尿毒症、膀胱破裂などを発症し、命に関わる危険があるため注意しましょう。

なお、かかりやすい犬種は下記の通りです。

  • ダルメシアン
  • シーズー
  • ヨークシャーテリア
  • パグ
  • ミニチュアシュナウザー

なお、上記のように好発犬種はありますが、どの犬でもかかる可能性はあるので注意しましょう。

レプトスピラ症

レプトスピラ症とは、げっ歯類をはじめ多くの野生動物や家畜(ウシ、ウマ、ブタなど)、 ペット(イヌ、ネコなど)によって感染する人獣共通の細菌性疾患のことであり、これらの保菌動物の尿で汚染された水や土壌、あるいは尿との直接的な接触によって経皮的に感染します。ま た、汚染された水や食物の飲食による経口感染の報告もあります。

・中等度の感染の場合

初期には発熱や食欲の不振、沈うつの症状が出て、血液検査などの身体検査によって貧血やミネラルバランスの崩れ、肝不全や腎不全の兆候が見受けられます。症状が発生してしまうと、急性期(最も症状の重い時期)を抜けた後も、慢性間質性腎炎や慢性進行性肝炎へと症状が進行し、生涯にわたって治療が必要になります。

・重度の感染の場合

呼吸が荒いなどといった症状が出た後、血液が破壊され、タール状の便や鼻からの出血といった溶血性の症状が出て、最終的には多臓器不全となり、死に至ってしまいます。

 このように、レプトスピラ症とは、犬にとって致命的な病気の一つなのです。

急性腎不全

犬の急性腎不全とは、急激な腎臓機能の低下によって老廃物が蓄積し、尿毒症からさまざまな症状を引き起こす症候群のことを言います。その原因はさまざまです。尿から老廃物を排泄することが不可能になり、体液の水分量や塩分量が調整できない状態のことを指します。

急性腎不全は血尿以外にもさまざまな症状が現れます。急性腎不全の初期症状は、

  • 急に食事を食べなくなった
  • 複数回嘔吐する
  • 下痢をする
  • 元気がない

など、ほかの病気でも見られる症状が多く、数日で急激に状態が悪化し、腎臓に痛みが出ることもあります。

急性腎不全が進行すると、尿毒症状態になり、尿毒症になると、老廃物中の毒素が体のさまざまな器官に影響を与えます。その結果、見られるようになる主な症状は以下の通りです。

  • 運動失調
  • 痙攣、昏睡
  • 呼吸困難
  • 浮腫
  • 口内炎、口臭

尿の量としては一過性で多くなることもありますが、その後徐々に減っていき、無尿になります。尿が出ないということは腎臓の働きが悪いということであり、予後が非常に悪くなるため、尿の状態は常にチェックするようにしましょう。

腎臓結石・腎臓がん

腎結石(腎臓結石)は、腎臓の一部である腎盂(じんう)という場所に結石ができる病気です。症状としては、血尿のほかに

  • 食欲不振
  • 腹痛
  • 嘔吐
  • 元気がない

などの症状が出ることもありますが、結石が小さいと無症状です。そのため膀胱炎や尿道炎などの感染症が尿路伝いに腎盂で炎症を起こす腎盂腎炎になって初めて症状に気が付くことが多い傾向にあります。

腎臓がんとは腎臓にできる腫瘍のことであり、症状が起きてから見つかることが多くなっている病気です。血尿のほかに目に見える症状としては、

  • 通常より尿量が増加した
  • お腹が張ってきた

などの症状が挙げられます。

腎臓がんだけでなく、泌尿器の腫瘍は、初期では膀胱炎と見分けがつきにくいところがあります。腫瘍の増殖部位やその進行状況によっては、尿道を閉塞してしまう危険があり、腎臓の尿生成機能が低下してしまう恐れもありますので、血尿が出たからといって膀胱炎と決めつけず、適切に病気を特定・治療することが大切です。

腎毛細血管拡張症

犬の病気には、一部の犬種のみがかかるものもあり、腎毛細血管拡張症もその一つです。腎毛細血管拡張症とは、自然発生する腎内血管拡張症の遺伝的な要因がある病気のことで、おもな症状としては、血尿・排尿困難・腹部疼痛といったものが挙げられます。ウェルシュ・コーギーといった一部の犬種に見受けられる病気です。動物病院を受診し、治療することが必要です。

オスのみ:前立腺炎、前立腺腫瘍

人の病気でも男性のみがかかるもの、女性のみがかかるものがあるように、犬の病気にも、オスのみ、もしくはメスのみがかかるものがあります。

犬が血尿を出した際、オス犬の場合は以下の病気も原因として考えられます。

・前立腺炎

前立腺炎は、前立腺が尿道に入ってきた細菌に感染し、炎症を引き起こす病気です。急性と慢性の2種類があり、慢性前立腺炎の場合は症状が出にくいこともあります。

去勢手術を受けていない5才以上のオス犬がかかりやすい病気とされており、血尿のほかにも排尿の回数が増えたり減ったりする、排尿痛や残尿感がある、排尿が困難になるなどの症状が出ます。

 ・前立腺腫瘍

犬の前立腺腫瘍は悪性であることが多い傾向にあります。前立腺腫瘍を発症すると血尿のほかに血便、便を出そうとしても出ない、食欲が減る、元気がないなどの症状が出る場合があります。10才以上の老犬がかかりやすいとされていて、かかりやすい犬種としてはシェットランド・シープドッグやドーベルマンなどが挙げられます。

 前立腺の異常は特に去勢手術を行っていない場合に起こることが多く注意が必要です。

メスのみ:子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は、細菌が子宮に入り込み、子宮内にウミがたまってしまう病気です。避妊手術を行っていない老犬に多いとされています。

生理でないにも関わらず陰部からポタポタと出血がある、血の塊が混じったウミが出る場合は、子宮蓄膿症の疑いがあるため速やかに動物病院を受診してください。子宮蓄膿症は命に関わることもあります。治療の際は緊急手術が必要となる場合も少なくありません。

 メス犬の場合、膣炎や子宮蓄膿症、子宮内膜炎といった生殖器の疾患により血尿を起こすことがあるため注意しましょう。

病気による血尿と間違いやすいほかの症状

病気による血尿と間違いやすいほかの症状

見た目は血尿と同じように見えても、別の問題によって「赤いもの」が排泄される場合があります。とはいえ、血尿との見分け方は困難なため、まずは動物病院を受診したほうがいいでしょう。

血色素尿

血色素尿がみられるおもな原因として「溶血」があります。溶血とは、赤血球が破壊されてヘモグロビンが外に出ている状態のことであり、感染症や病気、中毒などによって赤血球が破壊されたことによって起こります。タマネギ中毒や、バベシア症(赤血球内に寄生する原虫に感染したもの)などが代表的です。

生理(発情期)

避妊手術を行っていない犬の場合、周期的に発情(ヒート)出血があります。発情期間中は陰部から出血し、そのとき尿に血液が混ざる場合があります。

血尿で犬を動物病院に連れていくときの注意点

血尿が見られた場合、動物病院を受診したほうが良いことがわかりました。血尿の症状で犬を動物病院へ連れていくときは、血尿の状態を記録しておき、犬の様子をしっかりと獣医師に伝えるようにしましょう。記録する際のポイントをご説明します。

尿、排尿の様子

血尿が出た回数や期間、血尿の状況(頻度や色、排尿時の様子など)を記録しておきましょう。

避妊手術をしていないメス犬については、前回のヒートの時期も記録しておきましょう。

食欲はあるか

与えた分のご飯を食べているかどうか、水分を摂っているかどうかを記録しておきましょう。普段と比べてどうなのかをしっかりと観察しておき、獣医師に伝えられるようにしましょう。

様子はどうか

膀胱腫瘍や前立腺腫瘍、子宮蓄膿症などの症状が悪化したことによって急激に体調が悪くなると、犬がぐったりとすることがあります。

元気がない気がする、発熱している、呼吸が荒いなど普段と違う様子がないか、よく観察して記録しておきましょう。

また、通院時に採尿して病院に持参することもおすすめします。採尿では、お玉で採る、システムトイレで採る、ウロキャッチャーで採るなどの方法が適切です。尿は時間経過とともに変化してしまうため、排尿後6時間以内に動物病院に持参するようにしましょう。

犬の様子に目を配ろう

犬の様子に目を配ろう

普段から、犬にとって健康的な生活を送ることが、血尿の予防につながります。家庭での排泄状況もそうですが、散歩の際にも排尿・排便時の様子や排泄量、排泄回数などを、注意深く確認しておくようにしましょう。また、排泄物の写真を撮影しておくと、動物病院を受診する際の診察の一助になります。

まとめ

まとめ

犬の血尿には、原因によって比較的軽度な場合もありますが、腫瘍といった重篤な場合もあります。しかし血尿が出た場合は動物病院できちんと検査を行い、適切な治療を受けることで、改善が期待できるでしょう。

そのためにも普段から犬の排泄状況をしっかりと確認し、記録しておくことは大切です。血尿が見られたら、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。

参考文献