犬の生理(ヒート)とは?人間と犬の生理の違いについて解説!

犬 生理

「犬が生理のときどんなことに気をつければいいの?」「時期や期間は?」
このように犬の生理で悩んでいる飼い主さんも多いのではないでしょうか?
本記事では、犬の生理について以下の点を中心にご紹介します!

  • 犬の生理とは?
  • 犬の生理の時期や期間
  • 犬が生理のときの注意点

犬の生理について理解するためにもご参考いただけると幸いです。ぜひ最後までお読みください。

犬の生理(ヒート)とは?

犬の生理、通称「ヒート」は、避妊手術をしていないメス犬に定期的に起こる自然な生理現象です。この期間中、メス犬は妊娠できる状態になります。生理は主に外陰部の腫れや出血を伴い、出血の色や量には個体差がありますが、一般的には赤褐色から始まり、徐々に量が増えて赤色の水っぽい状態に変わり、最終的には淡いピンク色になって量が減少します。

人間と犬の生理の違い

人間と犬の生理には違いがあるのでしょうか?以下で詳しく解説します。

人間の生理

人間の生理は、黄体ホルモン(LH)による排卵から約14日後に始まります。排卵とは卵巣から卵子が放出されることを指し、妊娠の可能性が高い時期です。排卵後、妊娠が起こらなかった場合、子宮内膜が剥がれ落ち、血液とともに体外へ排出されます。この出血は、個人差はありますが、約一週間程度続きます。
生理中に多くの女性が経験する痛み、いわゆる生理痛は、子宮が収縮する際にプロスタグランジンという物質が分泌されるために生じます。

犬の生理

犬の生理はヒートや発情出血とも呼ばれ、メス犬が繁殖のための準備期間に入ることを示します。生理中の犬は人間と同様に出血しますが、これは人間の生理とは大きく異なり、子宮内膜の剥離は伴いません。
また犬の生理中に見られる出血は、子宮内膜が充血することによるものであり、犬が痛みを感じることはないとされています。生理は、繁殖できる状態にある犬にとって重要な時期であり、飼い主さんはこの時期に特別な注意とケアが必要になります。

犬の生理(ヒート)の時期と期間

犬の生理がいつから始まるのか、またどのくらい続くのか気になる飼い主さんも多いのではないでしょうか?以下では犬の生理の時期と期間を詳しく解説します。

犬の生理はいつから始まる?

犬の生理は、生後6〜12カ月頃に始まることが多いですが、犬種や個体差により、その時期は前後することがあります。特に、小型犬では生後5カ月頃から生理が始まることがあり、大型犬の場合は生後10〜16カ月頃とされています。
生理が始まる時期は広範囲にわたるため、飼い主さんは愛犬の行動や身体の変化に注意深く観察しましょう。例えば、愛犬が陰部を頻繁に舐める行動や、陰部が腫れているかどうかを観察することが大切です。

犬の生理の期間

犬の生理の期間は約7〜10日とされていますが、場合によっては2から3週間続くこともあります。ただし、1ヶ月を超えるような長期間出血が続く場合は、子宮に何らかの問題が発生している可能性があるため、早めに動物病院を受診することが推奨されます。また、犬が高齢になるにつれて、発情周期が不規則になり、出血量が減少する傾向にあります。

犬の発情周期

犬の発情周期は発情前期・発情期・発情休止期・無発情期の四つの時期に分かれています。
以下でそれぞれの期間について詳しく見ていきましょう。

発情前期

発情前期は、犬が無発情期(発情していない時期)から発情期に移行する過渡期を指します。この段階は平均して約7〜8日間続きますが、犬によっては3〜27日間という幅広い個体差が見られます。この期間中、犬の体は次の発情期に向けての準備を始めます。特に、外陰部の腫れや充血、さらには発情特有の出血がみられます。発情前期の終わりにかけて、外陰部の腫れはさらに硬くなりますが、発情期の始まりとともに柔らかくなる傾向があります。
この時期の犬は、性フェロモンを放出し、オス犬の関心を引きつける行動が目立ちますが、実際には交尾を受け入れる準備が整っていません。日常生活では、落ち着きを欠き、水を多く飲む、頻繁に排尿するといった変化が見られます。これらの行動は、体内のエストロゲン、すなわち卵胞ホルモンの増加によって引き起こされます。エストロゲンの増加は、外陰部の腫れや充血、子宮内膜の厚みの増加と充血を引き起こし、結果として出血が発生します。
発情前期は、繁殖を控えている犬の飼い主にとっても特に注意が必要な時期です。この期間中に犬の行動や健康状態の変化に敏感であることが求められます。また、この時期を理解することは、犬の繁殖計画を立てる上で不可欠です。発情前期の特徴を把握し、犬の健康管理と適切なケアを心がけることが大切です。

発情期

発情期は、メス犬がオス犬との交尾を受け入れる生理的な段階で、平均して約10日間続きます。この期間中、メス犬の行動には変化があり、オス犬が近づくと立ち止まり、尻尾を横に振って交尾を受け入れる準備ができていることを示します。
発情期の始まりから約3日後に排卵が行われ、その後約60〜108時間が受精しやすい時期とされています。このタイミングで交尾を行うことが、繁殖を目指す場合に推奨されます。この時期には、メス犬の体内でエストロゲンの分泌がピークに達し、その後徐々に減少していきます。エストロゲンの減少に伴い、外陰部の腫れや出血も収まり始め、出血の色も鮮やかな赤色から淡いピンク色へと変化していきます。
この発情期は、犬の繁殖サイクルにおいてとても重要な時期です。発情期を迎えたメス犬の管理には、特に注意が必要であり、不必要な妊娠を避けるためにも、繁殖を計画していない場合はオス犬との接触を控える等の配慮が求められます。

発情休止期

発情休止期は、オス犬との交尾を受け入れなくなった後の約2ヶ月間を指します。この期間は、黄体ホルモンであるプロゲステロンの分泌が特徴で、黄体機能が支配的になります。黄体ホルモンの影響で、メス犬は妊娠していないにもかかわらず、乳腺の発達や乳汁の分泌が見られることがあります。これを「生理的偽妊娠」と呼び、メス犬にとって自然な現象の一つです。
この時期、メス犬の体は、実際には妊娠していないにもかかわらず、妊娠しているかのような行動や身体的変化を示すことがあります。これには、巣作り行動や保護本能の強まり、時には不安や攻撃性の増加も含まれることがあります。生理的偽妊娠は、メス犬の身体が黄体ホルモンの影響下にある約2ヶ月間続き、その後自然に終わります。
この時期には、飼い主は犬の行動や身体的変化に注意を払う必要があります。特に生理的偽妊娠の症状が見られる場合は、犬が迷惑行為を起こさないよう、適切なケアと配慮が求められます。この時期の犬には、安定した環境を提供し、必要に応じて獣医師の助言を仰ぐことが重要です。
発情休止期は、犬の生殖サイクルにおける重要な休息期であり、次の発情周期へ向けての準備期間でもあります。この時期を通じて、犬の身体は次の発情期に向けて再び活動を始めるための回復と再調整を行います。

無発情期

無発情期は、犬の発情サイクルの中でも長い期間を占める段階であり、次の発情前期まで約4〜8ヶ月間にわたります。この期間は、犬の性周期において落ち着いた時期であり、卵巣は休息状態にあります。この時、卵胞や黄体は機能的に活動していないため、エストロゲンやプロゲステロンといった繁殖に必要なホルモンの分泌も抑えられます。
無発情期は、犬の発情周期の長さを決定する重要な因子とされています。この期間中、犬は外見上も行動上も安定しており、繁殖行動に関連する変化は見られません。ただし、発情前期の約1ヶ月前から徐々に卵胞の発育が始まる兆候として、陰部がわずかに大きくなることがあります。
また、無発情期を過ごしている間に、犬の体は次の発情期に向けて必要なエネルギーを蓄え、健康状態を保ちます。
無発情期の管理には、犬が次の発情周期に入る準備が整うまで、平穏で安定した環境を提供することが重要です。この期間は、犬との絆を深め、健康や行動の微細な変化に気付く良い機会となります。繁殖を考えていない飼い主にとっても、この期間は犬の健康や福祉に焦点を当て、長い健康生活の基盤を築くための貴重な時間です。

犬の生理(ヒート)の症状

犬の生理にはどのような症状があるのでしょうか?
以下では生理の時期のそれぞれの症状について解説します。

生理前

生理前約1ヶ月から、メス犬の外陰部にわずかな腫れが見られるようになり、これは発情周期が間近であることを示しています。この腫大は、発情期の準備として体内で起きるホルモン活動の変化によるものです。
発情前期に入ると、外陰部の腫れはさらに顕著になり、血が混じったようなおりものが出始めます。このおりものは、犬が妊娠に向けて身体を準備しているサインであり、繁殖を考えている飼い主にとっては、特に注意を払うべき症状です。この期間は、メス犬の身体が次の生理周期に向けて変化を遂げる重要な時期であり、飼い主はこれらの変化を理解し、適切なケアを提供することが求められます。

生理中

生理中の犬は、頻繁に尿をする、便秘や軟便といった消化器系の問題、落ち着きのなさやイライラといった行動を示すことがあります。また、夜間の吠え声や無理な体を擦り付ける行為が見られることもあります。
さらに、元気の低下や食欲不振、散歩を嫌がるといった症状が出ることも珍しくありません。この時期の犬には特別な注意とケアが必要です。飼い主は、生理中の犬が抱える可能性のある不快感やストレスを理解し、十分な休息、安定した環境、適切な栄養摂取など適切にサポートすることが大切です。

生理後

生理が終わると、犬は妊娠しているかのような反応を示し、排卵後40日頃から乳腺が発達し始め、約2ヶ月後には、実際には妊娠していなくても乳汁がわずかに分泌されることがあります。また、ぬいぐるみやおもちゃを抱え込むなど、子育て行動を模倣する「偽妊娠」の症状が見られる場合があります。
この時期には、特に「子宮蓄膿症」という病気が発生しやすいため、飼い主はその兆候に注意を払う必要があります。偽妊娠の症状を示す犬には、無理に行動を止めさせようとせず、むしろ優しく見守り、安心できる環境を提供することが重要です。この時期の犬は警戒心が強くなるため、愛情深く接することで、犬のストレスを軽減できます。

犬が生理(ヒート)のときの注意点

犬が生理のときどのように過ごせばいいのですか?
以下で注意する点をご紹介します。

家の中での過ごし方

生理中の犬は、出血により室内の家具やカーペットを汚してしまう可能性があります。これを防ぐために、犬用のショーツやおむつを利用し、いつもいる場所には洗い替えが効くタオルを敷くことがおすすめです。おむつやショーツはおむつかぶれや膀胱炎のリスクを避けるため、定期的に交換しましょう。
また、偽妊娠の症状が見られたり、生理中に食欲不振が見られたりする場合は、専門の獣医師に相談し、場合によっては避妊手術の選択肢を検討することも考えられます。生理後の偽妊娠症状で、ぬいぐるみなどを抱えて巣作り行動を見せる場合は、犬の警戒心が高まっているため、無理に取り上げようとせず、優しく見守ることが望ましいです。
家に他の犬がいる場合は、犬同士のトラブルや望まない妊娠を防ぐために特に注意が必要です。

散歩

生理中の犬はフェロモンを放出し、オス犬を引き寄せることが多くなります。これにより、散歩中にオス犬に追いかけられたり、予期せぬトラブルに巻き込まれるリスクが高まります。また、こうした状況はオス犬の飼い主にとっても迷惑となり得るため、予防策を講じることが重要です。
トラブル回避のため、散歩時には他の犬と遭遇しにくい時間帯やルートを選び、もし他の犬と出会ってしまった場合は、距離を取るよう心がけましょう。リードや首輪のチェックを事前に行い、外れにくいことを確認するのも大切です。さらに、生理中のメス犬は散歩を嫌がることがあるため、その場合は無理に連れ出さず、落ち着ける環境での過ごし方を考えてあげることが望ましいです。

ドッグランやドッグカフェなどの外出

生理中の犬は、オス犬を引き寄せるフェロモンを放出するためドッグランやドッグカフェなどの公共の場ではトラブルの原因となりやすいです。特にドッグランでは、多くの犬がリードなしで自由に動き回っており、未去勢のオス犬との不意の接触が妊娠につながる危険性があります。
多くの施設では、生理中のメス犬の利用を制限しているため、事前に確認することが大切です。この時期には、ペットホテルへの預け入れも避けた方が良いでしょう。オス犬の存在による夜鳴きや興奮が他の宿泊客からの苦情につながる可能性があります。

まとめ

ここまで犬の生理についてお伝えしてきました。犬の生理について要点をまとめると以下の通りです。

  • 犬の生理、通称「ヒート」は、避妊手術をしていないメス犬に定期的に起こる自然な生理現象
  • 犬の生理期間は約7〜10日とされているが個体差がある
  • 偽妊娠の症状を示す犬には、無理に行動を止めず、優しく見守り、安心できる環境を提供することが大切

これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献