犬のうんちが黒いのは病気?原因や疑われる病気、動物病院を受診すべき目安まで解説

犬のうんちが黒いのは病気?原因や疑われる病気、動物病院を受診すべき目安まで解説

「最近、犬のうんちがいつもより黒い……」と気になったことはありませんか? 普段と違ううんちが出ると、つい心配になってしまいますよね。黒っぽい犬のうんちは、心配のいらないものから重大な病気を示すサインであることまでさまざまです。そこで、この記事では黒いうんちの原因や、疑われる病気、動物病院を受診すべき目安などを詳しく解説していきます。愛犬の黒いうんちが気になっている方はぜひ参考にしてみてください。

健康的な犬のうんちの見分け方

健康的な犬のうんちの見分け方

健康的な犬のうんちと、病気などが疑われるうんちは、どこが違うのでしょうか? ここでは犬のうんちの見分け方をご紹介します。

うんちの色は食べ物や環境で変わる

犬のうんちは、食べた物によって、色や形状が大きく変化します。ですから、ドッグフードを変えるとうんちの色が変わることは、ある意味自然なことでもあります。

また、うんちの色は犬の腸内環境によっても変化するといわれています。腸内が酸性寄りだと黄色っぽく、アルカリ性寄りだと黒っぽくなる傾向があるとされています。そのほかにも、着色料を使用している食事を与えると、その色のうんちが出ることもあります。

うんちの色別に健康状態を判断

健康的な犬のうんちは茶色から黒茶色といわれています。うんちの色は食べた物に左右されやすく、いつもと違う色だからといってそれだけで病気だと決めつけることはできません。ただし、極端な色をしている場合は、体調不良のサインの可能性もあります。

黒っぽいうんちは、肉や魚などのたんぱく質が多く含まれているドッグフードを食べると出やすいとされています。これは肉や魚に含まれる鉄分などのミネラルの影響によるものです。ただし、真っ黒なうんちが出た場合は血便の可能性もあり、上部消化管から出血しているなど、なんらかのトラブルの兆候であることも。

赤っぽいうんちは、トマトやパプリカなどを食べた時にも出ますので、一時的なものであれば心配はありませんが、原因がはっきりとしない場合は異食の可能性もあります。また、うんちの表面に血が付いている場合は、痔(ぢ)や大腸・直腸で出血しているケースが考えられます。

このほかにも、緑っぽいうんちは野菜などを大量に食べた時に出ることもありますが、消化器系のトラブルの可能性もあります。また、胆汁がうまく分泌されなかったり膵臓に異常がある場合は、白っぽいうんちが出ることもあるので注意してみてください。

犬のうんちのチェックポイント

良い便かどうかは、便の量、排便回数、色、固さ、形、臭いなどで総合的に判断する必要があります。また、うんちの「出やすさ」も大切です。

一般的に「良いうんち」とされているものは、水分が少なくヒビの入った便、バナナや練り歯磨き状の適度な柔らかさの便、水分が多く一定の柔らかさを保っている便です。また、こうした便そのものの状態に加えて、排泄時に短時間でスルッと出て来るのが「良いうんち」です。

反対に、ウサギの糞のようなコロコロした便や形のない泥のような便、水のような便は「悪いうんち」とされます。また、なかなか出て来なかったり細かく切れて出て来るような便も、良い状態とはいえません。

与える食事が犬に合っていない場合には、便の状態も悪くなりがちです。犬とうんち、両方の状態を注意深く観察して、フードが合っているかどうかを判断するようにしましょう。

犬のうんちが黒くなる原因

犬のうんちが黒くなる原因

これまで見てきたように、犬のうんちは食べ物によって大きく色が変わります。ですから、うんちが黒くても心配のいらないケースは多くあります。しかし、中には病気などが疑われる場合もあるため、注意が必要です。ここでは、犬のうんちが黒くなる原因を見ていきます。

肉類といった食べ物

先述の通り、肉類の多い食事や、レバーなどの鉄分を多く含む食品を多量に与えると、うんちが黒っぽくなる傾向にあります。この場合、食事を変えることですぐに通常の色に戻るのであれば、病気の心配は少なく、問題はないといえるでしょう。ただし、こうした食事が続くと便秘症状が出やすいため、食事のバランスには気をつけてください。

薬やサプリメントの影響

食事のほかに、薬やサプリメントの影響で便が黒っぽくなることがあります。例えば、犬の下痢の治療に使用されるビスマス製剤や貧血の治療に用いられる鉄剤などを使用すると、黒っぽいうんちが出るとされています。また、鉄分を多く含むサプリメントなども同じような作用があります。

鉄分は欠乏すると下痢や貧血、発育不良の原因となるため、大切な栄養素の一つです。その反面、過剰摂取をすることで下痢や嘔吐を引き起こすことがあります。こうした薬やサプリメントの使用には、十分な注意が必要です。

血便

黒いうんちで一番心配されるのは、血便です。血便と聞くと赤色をイメージするかもしれませんが、上部消化管からの出血は血液が黒色に変色するため、黒い便となります。特に「タール便」と呼ばれる粘り気のある黒い便は、胃や小腸からの出血が疑われ、病気の可能性も高くなります。

また、老犬は若い犬に比べて持病があることも多いため、黒っぽい便が出ることも。血便が疑われる黒いうんちが出た場合は、早めに動物病院を受診することをおすすめします。その際に可能であれば、便を持っていくといいでしょう。

黒いうんちで疑われる病気

黒いうんちで疑われる病気

黒いうんちは、時に重大な病気のサインでもあります。繰り返しになりますが、特に粘り気のあるタール便は食道や胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)といった消化管上部から出血していることによる血便である可能性があります。消化管の上部で出血が起こると、肛門から便として排出されるまでに血液中のヘモグロビンに含まれる鉄分が酸化し、黒っぽく見えます。消化管から出血が起こる原因としては、次のようなものが考えられます。

胃潰瘍

犬も、人間と同じように胃潰瘍になることがあります。主に重度の胃炎によって発症することが多いのですが、ほかにも胃腺癌(いせんがん)やガストリノーマ(癌の一種で、胃液分泌を刺激するホルモンが過剰に分泌される病気)、非ステロイド性抗炎症薬の副作用などに起因することもあります。また、慢性腎臓病のある犬は胃潰瘍になりやすいともいわれています。

胃腸炎

犬の胃腸炎はウイルスや寄生虫の感染によって発症します。急激に胃腸粘膜の炎症が起こり、出血するため、嘔吐や下痢、ラズベリーのような血便が見られることがあります。免疫力の低い幼犬や老犬に多くみられます。また、ワクチン接種をしていない犬やほかの犬と接触する機会の多い犬も、感染の可能性が高いために注意が必要です。

癌・腫瘍

悪性腫瘍が胃にできると、黒い便のほかに、食欲不振や嘔吐、体重減少、吐血などの症状が見られることがあります。外科手術により癌を切除できる場合もありますが、癌そのものが大きかったり、ほかの臓器への転移があったりする場合は、予後が悪くなります。

内臓疾患・急性膵炎

膵臓(すいぞう)に急性の炎症が起こることによって、胃や小腸の出血を引き起こします。この出血が原因で便が黒くなることがあります。脂肪分を多くとっている犬や、肥満の犬に多い傾向があります。

細菌性腸炎

サルモネラやカンピロバクター、クロストリジウム、大腸菌などの細菌に感染することによって、腸に炎症が生じ、血便や下痢、食欲不振、嘔吐、脱水症状などが見られます。

パルボウイルス感染症

イヌパルボウイルスに感染することによって激しい嘔吐などが見られ、重度になると脱水症状が進み、適切な治療を施さない限り、短期間で死に至ることもある重要度の高い感染症です。トマトジュースのような血便が出ることがあるので、こういった症状が見られた場合、すぐに動物病院へ連れて行ってください。

消化管内異物

尖った物や割れたプラスチックなどを誤飲することで消化管内が傷つき、出血することでうんちが黒くなります。幼犬・若犬、肥満の犬、異物を口に入れる癖のある犬などに多く見られます。

動物病院を受診する判断の目安

動物病院を受診する判断の目安

犬のうんちが黒かった場合、動物病院を受診したほうが良いのはどのようなケースでしょうか? ここでは、受診の判断となる目安を解説します。

便の回数や量がおかしい

うんちの回数や量が以前より多い場合は、消化不良や食物アレルギーを伴っている可能性があります。時間経過とともに重症化・慢性化したり、食欲の低下、嘔吐、体重減少へとつながるケースも。反対に、うんちの回数や量が以前より少ない場合も注意が必要です。犬の胃腸の動きが鈍っていたり、異物や腫瘍によってなんらかの障害を起こしている可能性もあります。便の回数や量が普段と違い、犬に気になる症状が見られるようであれば、一度動物病院を受診することをおすすめします。

軟便や下痢になっている

軟便や下痢は数日間続くと脱水症状につながり、食欲の低下、嘔吐、体重減少などへと連鎖していく可能性があります。また、排便時にいきみ、しぶりがある場合は、胃や小腸のみならず、大腸にも異常があるかもしれません。このような症状が見られたら、念のために受診をするようにしましょう。

黒いうんちが続いている

黒いうんちが2日以上続いたり、日に日にうんちが黒くなる場合は、犬の胃腸から出血が続いている可能性が考えられます。放置すると貧血や胃腸障害などの全身症状へと移行することもありますので、早めの受診をおすすめします。

食欲不振や嘔吐が見られる

食欲がない場合は、痛みや発熱などの全身的な異常が起こっている可能性があります。また、嘔吐は胃や小腸の炎症なども考えられます。数日間放置すると、脱水症状を起こすなど危険な状態に陥ってしまうこともあるため、注意が必要です。

元気がない

元気がないのは、身体に異常があるサインであることも多く、痛みや発熱などの可能性もあります。極端な症状はなくても、なんとなく元気がない場合は、一度動物病院で診てもらったほうがいいでしょう。

血便の予防方法

血便の予防方法

血便はさまざまな要因から起こります。では、普段の生活で血便を予防するにはどうすればいいのでしょうか? 

普段から気をつけておくべきこと

普段の生活では、食べ慣れない物を与えないことや食事の量を守ることが大切です。ドッグフードを変更する場合は、急に変えずに徐々に慣れさせていきましょう。また、人間が食べているものを与えたり盗み食いをすると、下痢を起こすことがあります。普段の食生活に気をつけ、下痢といった症状が起こらないように注意を払ってください。

消化管内異物を避けるためには

犬は、口に物をくわえて遊んでいるうちに誤って飲み込んでしまう場合があります。また、普段は食べないものを口にしてしまう「異嗜症(いししょう)」という病気もあります。異物を誤飲すると消化管を傷つける原因となり、非常に危険です。口に入りそうな小さなおもちゃや小物、薬などは、犬の届く場所に置かないようにしましょう。犬が異物を飲み込んだ場合は、速やかに獣医師の診察を受けてください。

急性膵炎の予防

急性膵炎も血便を引き起こす要因となります。膵炎は根本的な原因がわかっていないため、発症すると特効薬もなく対症療法に頼るしかありません。そのため、何よりも膵炎にならないようにすることが大切です。膵炎は、高脂肪食と肥満が関連性の深い因子であることがわかっています。食生活はなるべく低脂肪食を基本とするほか、人間の食べ物を盗み食いしないよう、注意が必要です。また、適度な運動をすることで肥満を予防することも大切です。

寄生虫感染の予防

犬の健康にとって重要なことの一つに、寄生虫感染の予防が挙げられます。ノミやマダニなどの寄生虫は、激しいかゆみのほかにもアレルギー反応を起こすことがあり、二次感染のきっかけとなることもあります。また回虫や糞線虫などの線虫類は、感染すると嘔吐や下痢の症状を引き起こします。寄生虫は犬の便を介して感染することが多く、トイレを清潔に保つことが大切です。日頃から便をチェックし、定期的に観察すると同時に、犬の生活環境整備も心がけましょう。

また、中にはフィラリア予防薬やワクチン接種などで防げる寄生虫や感染症もあります。興味のある方は、獣医師に相談してみるといいでしょう。

まとめ

犬のうんちは、食べる物や環境によって見た目や形状が変わります。改めてお伝えしますが、黒っぽいうんちが出ても、食事による一過性のものであれば特に心配はいりません。ただし、タール状の便や、下痢・嘔吐などの症状を伴っている場合は、重大な病気が隠れている可能性もあります。早めに動物病院を受診して原因を特定するようにしてください。「便」は体からの「お便り」ともいいます。愛犬との生活を健やかに過ごすためにも、普段の生活の中でうんちの状態は逐一チェックすることをおすすめします。

参考文献