通常、犬の鼻は常に湿っていますが、犬が鼻水を垂らしている姿を見たことがある人は、案外少ないのではないでしょうか。多少の鼻水であれば犬自身が舐めとってしまうため、飼い主が鼻水に気付くときには、かなりの量の鼻水が出ていることになります。犬が鼻水を垂らすのは何が原因なのでしょうか。犬の鼻水の原因となる病気や、注意すべき鼻水の種類、ご家庭でできる鼻水のケアや予防方法について解説します。
犬が鼻水を垂らす症状と原因
犬が鼻水を垂らすのはどのような場合なのでしょうか。犬の鼻水の症状や原因について解説します。
- 犬の鼻水とはどのようなものですか?
- 犬の鼻はいつも少し湿っている状態が普通です。鼻水が出ることもありますが、基本的には犬が自分で舐めとってしまうため、飼い主が鼻水に気付くことはあまりないでしょう。飼い主が気付くほど鼻水が出ている場合は、かなり多い量の鼻水が出ていることとなります。
生理的要因の鼻水であれば心配がないケースがほとんどですが、ほかに症状がある場合や透明ではない鼻水が出ている場合は別の原因が隠れていることもあります。鼻水の量や犬の様子がいつもと違う場合は、動物病院を受診しましょう。
- 犬が鼻水を垂らす原因にはどのようなものが考えられますか?
- 犬が鼻水を垂らす原因は、生理現象である場合と病気などの原因によって起こる場合の2つに分けられます。
生理現象による鼻水は鼻の中に刺激があると起きるものです。例えばホコリを吸い込んだり、強い匂いを嗅いだり、水を飲んだりしたときに鼻水が出たら、それは生理現象による鼻水と言えるでしょう。人間と同じように寒さによって鼻水が出る場合もあります。犬の鼻水がサラサラしており透明で、呼吸や全身の状態が通常通りであれば生理現象による鼻水の特徴ですので、大きな心配はいりません。
鼻水の症状が続くときや、鼻水のほかにも何らかの症状が見られたときは、病気などが原因で鼻水が出ている可能性があります。また、鼻腔内に異物が入り込んだ場合も鼻水が出ることがあります。くしゃみや頭に違和感がある様子が見られたら、異物が原因かもしれません。病気や異物混入の場合は動物病院で検査をして、原因に対してしっかりと治療をしてもらいましょう。
犬の鼻水から考えられる病気
犬の鼻水が長く続く場合や鼻水以外の症状が見られる場合は、何かしらの病気によって鼻水が出ている可能性があります。犬の鼻水の原因となる代表的な病気をご紹介します。中には命に関わる重大な病気もありますので、気になる点がある場合は早めに動物病院を受診しましょう。
- 犬の鼻水の原因として考えられる病気を教えてください。
- 鼻水の原因としては、ケンネルコフ、鼻腔内腫瘍、歯周病、肺水腫などの病気が考えられます。
ケンネルコフとは伝染性の呼吸器疾患のことであり、伝染性気管支炎とも呼ばれます。ウイルスや細菌による感染症であり、重症化すると気管支炎や肺炎を引き起こすこともある病気です。特に生後6週間~6ヶ月の子犬の場合はケンネルコフに罹患するリスクが高いので注意しましょう。ケンネルコフの場合は、鼻水のほかに乾いた咳、発熱、食欲不振の症状が見られます。
鼻腔内腫瘍は、悪性腫瘍(がん)の場合も多い病気です。進行が早いので、早期発見と早期治療が重要となります。鼻腔内腫瘍の場合は、鼻水に加えてくしゃみや鼻血が出ることがありますので、これらの症状が見られた場合は早めに動物病院を受診しましょう。
歯周病が悪化すると口と鼻を隔てている骨に穴が開いてしまい、鼻水が出ることがあります。初めはサラサラしていた鼻水が、膿が混ざってネバネバした鼻水に変わったときや、鼻血やくしゃみが出たら、歯周病が重症化している可能性があります。
肺水腫とは、肺の中に水が溜まり、肺胞や気管支などが機能不全になってしまう病気です。呼吸困難、目や口の粘膜が白っぽくなる症状のほか、進行すると血混じりで泡状の鼻水が出ます。死亡する危険性がある病気ですので、疑わしい様子が見られた場合は、早急に病院を受診しましょう。
このほかにも、鼻炎、肺炎、嘔吐などが原因で鼻水が出ることがあります。詳しい原因について知り早めに対処するためにも、鼻水以外の症状がある場合は一度獣医に相談することをおすすめします。
- 犬も花粉症などのアレルギーで鼻水が出ますか?
- 犬もアレルギーによって鼻水が出ることがあります。花粉やハウスダストによるアレルギーをはじめ、タバコ、香水、芳香剤によって鼻水が出るケースもあります。鼻水の症状が軽度かつすぐ治まるようであれば、掃除や原因となる物を取り除くことで症状が改善することも多いでしょう。花粉症による鼻水の場合は、空気清浄機を使用するのもおすすめです。
犬の鼻水への対処法
犬の鼻水が見られた場合はどうしたら良いのでしょうか。様子見をして良いケースと注意すべきケースのほか、自宅でできるケアや予防の方法についてご紹介します。
- 犬が垂らす鼻水のうち、様子を見ても良いものについて教えてください。
- 生理現象による鼻水の場合は、様子を見ても良いでしょう。鼻水が一時的な症状であり、透明でサラサラした状態であれば、特に心配はいりません。原因がわかっている場合は、温度管理や部屋の掃除を行うなど、鼻水が出ない環境を整えてあげましょう。
- 犬が垂らす鼻水のうち、注意すべきものについて教えてください。
- 鼻水の色が透明かつサラサラした状態でない場合や大量に出ている場合は注意が必要です。また、鼻水以外の症状がある場合には別の病気が原因となっている可能性があるので、動物病院を受診して検査してもらいましょう。
黄色や白色、緑色の鼻水が出る場合は、ウイルスや細菌に感染している可能性があります。鼻水を放置してしまうと、体調不良が悪化したり蓄膿症のリスクが上がったりするので、色のついた鼻水が見られたら早めに治療を行いましょう。茶色の鼻水が出た場合は、出血して鼻の粘膜が傷ついている可能性があります。通常は茶色の鼻水が長引くことはありませんが、長く続く場合は副鼻腔炎や蓄膿症、腫瘍の疑いがあるので、早めに動物病院を受診しましょう。
鼻血や血混じりの鼻水が見られた場合は、風邪などによる鼻炎のほか、歯周病の悪化やがんなどの腫瘍が原因であることも考えられます。自己判断せず、出血が見られた場合は病院で検査して原因を調べてきちんと治療を行いましょう。
- 犬の鼻水のケア方法を教えてください
- 鼻水が出た場合は、ティッシュやガーゼで拭き取ってあげましょう。強くゴシゴシと擦ると怪我をさせてしまうことがありますので、優しく拭ってあげてください。固まっている場合は、蒸しタオルでふやかしながら拭き取ります。タオルの温度は40度くらいを目安にし、火傷に注意しましょう。特に黄色い鼻水が出ている場合は蓄膿症になる可能性がありますので、こまめに拭き取ってあげましょう。
また、多頭飼いの場合は感染対策のため、使ったタオルをほかの犬に使わないようにしてください。
- 犬の鼻水の予防方法はありますか?
- 生理的な鼻水の場合は、冷気やホコリ、匂いなどの刺激が原因となります。温度管理や掃除、芳香剤の使用をやめることで、鼻水の原因を取り除きましょう。花粉対策としては空気清浄機の使用もおすすめです。
感染症対策としては、ワクチンによる予防接種も重要です。また、感染性の病気に罹っている犬と接触しないようにしましょう。免疫力を高めるために、日頃から適度な運動とバランスの取れた食事、ストレスのない生活を心がけてあげてください。
歯周病はハミガキである程度の予防が可能です。日頃から歯の様子をチェックしておくことをおすすめします。特に老犬の場合は、定期的な歯科検診を行うと良いでしょう。
鼻水の予防方法としては、愛犬の様子を日頃から気を付けて見ておくことがポイントです。鼻水の状態が変化した場合や、愛犬の様子がいつもと違う場合には、早めに動物病院を受診しましょう。早期発見と早期治療によって、潜んでいる病気の進行を防ぐこともできます。
編集部まとめ
犬の鼻水には、生理現象である場合と病気などが原因である場合があります。透明でサラサラした鼻水が一時的に出ている場合は、生理現象として様子を見ても良いでしょう。しかし、色がある鼻水や鼻水以外の症状が見られた場合は、病気などが原因となっている可能性があります。鼻水が症状として現れる病気の中には、命に関わる危険性を持つ病気もあります。早期発見と早期治療を行うためにも、気になる点がある場合は早めに動物病院を受診しましょう。