愛犬のヘルニアを見逃さない!症状から治療法まで解説します!

愛犬のヘルニアを見逃さない!症状から治療法まで解説します!

愛犬のヘルニアに気付いてあげたいけど…どのように見分ければいいの?とお悩みの飼い主さんもいるかと思います。
特にヘルニアは見逃しやすい症状であるため、飼い主が異変に気づけるようにすることが大切です。

本記事では、犬のヘルニアの症状について、以下の点を中心にご紹介します。

  • 犬のヘルニアについて
  • 犬の椎間板ヘルニアの症状
  • 犬の椎間板ヘルニアの診断・治療

犬のヘルニアの症状について理解するためにも、ご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

犬のヘルニアについて

犬の椎間板ヘルニアとはどのような病気ですか?
犬の椎間板ヘルニアは、脊椎の椎骨間にあるクッションである椎間板が突出し、脊髄や神経を圧迫する病気です。
ヘルニアにはハンセンI型とハンセンII型の2つのタイプがあります。

ハンセンI型は、椎間板の外側の線維輪が破れ、髄核が突出するものですが、ハンセンII型は、主に加齢によって線維輪が肥厚、変性し背側に突出することにより脊髄圧迫が生じます。症状が見られる場合は、速やかに獣医師に相談し、適切な対処が必要です。
犬の椎間板ヘルニアの原因は何ですか?
犬の椎間板ヘルニアの原因は大きく二つに分類されます。

加齢:加齢に伴い線維輪が変性し、髄核がその隙間から突出することで線維輪が押し上げられます。この圧迫により脊髄が圧迫され、椎間板ヘルニアが発生します。

遺伝:遺伝子「軟骨異栄養症(なんこついえいようしょう)」を持つ犬は、生まれつき髄核が固くなりやすくなります。この固くなった髄核が線維輪を圧迫することで、亀裂が生じます。その結果、髄核が脱出し脊髄が圧迫され、椎間板ヘルニアが引き起こされます。

椎間板は加齢や遺伝などの原因により、さまざまな神経症状を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
椎間板ヘルニアになりやすい犬種はありますか?
椎間板ヘルニアは、加齢や遺伝的要因によって発症しやすいといわれています。

加齢によるものは、どの犬種でも発生する可能性があります。しかし、遺伝的な要因では、軟骨異栄養犬種がヘルニアにかかりやすい傾向があります。

軟骨異栄養犬種には、ミニチュア・ダックスフンド、ウェルシュ・コーギー・ペンブローク、シー・ズー、ビーグル、ペキニーズ、フレンチ・ブルドッグなどが含まれます。この犬種は先天的な遺伝子異常によって、椎間板の変性が促進され、若い頃から椎間板ヘルニアを発症する傾向があります。

ハンセンI型の椎間板ヘルニアは、特に軟骨異栄養性犬種に多く見られます。これには、ミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードル、ビーグル、シーズー、ペキニーズ、パピヨン、フレンチ・ブルドッグなどが含まれます。
さらに、大型犬種では、大型犬種でもラブラドール・レトリーバー、ジャーマン・シェパード、ロットワイラーなどでヘルニアが生じやすいとされています。

椎間板ヘルニアになりやすい犬種は、定期的な健康チェックと早期の検査によって、椎間板ヘルニアの早期発見につながります。

犬の椎間板ヘルニアの症状

犬の椎間板ヘルニアにはどのような症状がありますか?
椎間板ヘルニアの症状は、重症度や発生部位によって異なります。主な症状は以下の通りです。

軽度の場合
歩きたがらない
背中を触ると痛がる
ソファなどに飛び乗らなくなった
歩行時のふらつき
排せつのコントロールができない

中程度の場合
足元がふらつき、引きずるような歩行
腰背部の痛みや、四肢の麻痺が強くなる
腰を上げられない
歩行するときに前につんのめる
後ろ足の力が弱まる

重度の場合
突然立ち上がれなくなる
犬が自ら排尿・排便のコントロールができない
麻痺が進行し、後ろ足がまっすぐ伸ばせない
背中の痛みが激しくなる

これらの症状がある場合、椎間板ヘルニアの可能性が考えられます。しかし、これらの症状は骨折、脱臼、腫瘍、脊椎炎などの病気や損傷でも見られることがあるため、早めの獣医師の診察と検査が重要です。
犬の椎間板ヘルニアのグレードについて教えてください
椎間板ヘルニアのグレードは、症状の重さや神経の機能障害の程度に応じて分類されます。以下に、グレードごとの症状を詳しく説明します。

グレード1:この段階では軽度の症状が現れます。犬は背中を痛がっているように見える場合があります。一般的な動作が不自由になり、段差の上り下りを嫌がったり、抱き上げたときに痛みを示したりします。

グレード2:麻痺が現れ始めますが、まだ歩行ができる状態です。足先の感覚が鈍くなり、歩行するときにふらついたり、足先を擦ったりすることがあります。症状は、後ろ足に麻痺が見られることが多いようです。

グレード3:この段階では、歩行が困難となります。後ろ足の麻痺が進行し、犬は後ろ足を動かせなくなります。自力での立ち上がりも難しくなりますが、まだ排尿はできる状態です。

グレード4:麻痺がさらに進行し、排尿が自力では難しくなります。犬は足先の感覚を失い、刺激に対する反応が鈍くなります。この段階では、早期の外科的治療が必要とされます。

グレード5:この段階は、重度の状態であり、麻痺が現れます。足先の感覚を失い、排尿や排便を自力で行えなくなるだけでなく、痛みにも反応しなくなります。、グレード5は深刻な症状であることに変わりはありませんが、脊髄軟化症を伴っていなければ、生命に危険が及ぶ可能性は高くないといわれています。
これらのグレード分類は、病状の進行具合や治療方針を決定する際に役立ちます。
犬のヘルニアを放置するとどうなりますか?
放置すると、椎間板ヘルニアは進行し、10%の確率で進行性脊髄軟化症に進展する可能性があります。進行性脊髄軟化症では、脊髄が急速に壊死し、呼吸を含む生命維持機能が失われることで、犬は呼吸不全に至り、死に至ることも少なくありません。
進行性脊髄軟化症を防ぐためには、早期の診断と治療が重要です。

犬の椎間板ヘルニアの診断・治療

犬の椎間板ヘルニアの診断・検査について教えてください
犬の椎間板ヘルニアを診断するには、主に以下の4つの検査が行われます。

神経学的検査:神経学的な評価や疼痛点の検出を行います。
レントゲン検査:神経障害部位のレントゲン写真を撮影し、骨折や腫瘍などのほかの疾患を除外します。
CT検査:脊髄や椎間板の病変部位をより詳細に確認します。
MRI検査:神経の障害を検出します。

これらの検査で、椎間板ヘルニアが疑われた場合には、全身麻酔下での精密検査が行われます。MRI検査は神経の障害を診断できますが、実施できる施設が限られているため、注意が必要です。

また、頸部椎間板ヘルニアと、胸腰部椎間板ヘルニアでは麻痺の出る肢が異なるため、肢の麻痺の出方でヘルニアの部位をある程度推測することが可能とされています。(頸部は四肢の麻痺、胸腰部は後肢の麻痺)
犬の椎間板ヘルニアの治療法について教えてください
犬の椎間板ヘルニアの治療法は以下の通りです。

外科的治療:圧迫物質を取り除く外科手術が行われます。中程度から重度の麻痺がみられる場合や、内科治療に反応しない椎間板ヘルニアに対して適用されます。手術方法は椎間板ヘルニアの部位や重症度によって異なりますが、胸腰部では片側椎弓切除術、頸部ではベントラルスロット術が行われます。

内科的治療(保存療法):激しい運動や衝撃を抑えることで椎間板物質の突出を防ぎ、脊髄機能の修復を目指します。
ケージレストやコルセットを使用して安静を保ちます。リハビリや投薬も行われることがあります。

リハビリテーション:外科治療後や内科治療中に行われるリハビリは、筋肉量の増加や体幹の安定化、足の動きの改善を目指します。マッサージや水中トレーニングなどが行われます。

投薬:痛みの軽減や炎症の抑制のために鎮痛剤やステロイドが使用されることがあります。

幹細胞治療:幹細胞治療は、神経の再生を促進し、二次的な炎症や損傷を抑える効果が期待されます。

治療法は患犬の症状や病態に応じて選択され、手術や内科的治療、リハビリなどを組み合わせて行われることもあります。また、進行性脊髄軟化症を併発した場合には、安楽死が選択肢となることもあります。
犬が椎間板ヘルニアにならないために予防法を教えてください
椎間板ヘルニアを予防するための方法は以下の通りです。

適正な体重維持:バランスの取れた食事と適度な運動で肥満を防ぎ、椎間板への負担を軽減します。

無理な姿勢の制限:無理な姿勢を取らせないようにし、二本足での立ち上がりやあお向けの抱き方を避けます。

環境の改善:滑りにくい床材を使用し、ソファーや階段などの高さのある場所への上り下りを制限します。

これらの方法で椎間板ヘルニアを予防することが大切です。

編集部まとめ

ここまで、犬のヘルニアの症状についてお伝えしてきました。
犬のヘルニアの症状の要点をまとめると、以下の通りです。

  • 犬の椎間板ヘルニアは、椎間板が脊髄や神経を圧迫する病気で、加齢や遺伝が主な原因となる。特に、軟骨異栄養犬種はヘルニアにかかりやすく、ハンセンI型の発症率が高いとされている。
  • 犬の椎間板ヘルニアはグレードによって症状の進行具合が異なり、放置すると進行性脊髄軟化症に至る可能性があるため、早期の診断と治療が重要。
  • 犬の椎間板ヘルニアの診断には神経学的検査や画像検査が用いられ、治療法は外科的手術や内科的治療、リハビリ、投薬、幹細胞治療などがある。

これらの情報が愛犬の健康を守るための一助となれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました。

参考文献