動物を飼っている方にとって、急なケガや急病は心配です。特に土日などの休日や、夜間にトラブルに見舞われた場合には、どこを頼ればいいのかわからなくなってしまうケースも少なくありません。
人間の場合には、救急診療センターや救急対応の病院があるだけでなく、いざという場合には救急車を呼ぶことも可能です。
しかしペットをはじめとする動物の診療を行っている動物病院では救急車を利用することができません。
この記事では、動物病院での休日診療や夜間診療について紹介しています。動物病院ならではの特徴だけでなく、受診する際の注意点や病院の探し方も触れています。休日診療の動物病院を探している段階の方だけでなく、何かトラブルが起きたときに備えておきたいと考えている方も、参考にしていただければ幸いです。
動物病院で休日診療しているところはある?
昨今のペット事情、特に動物を飼っている方のライフスタイルの変化への対応の観点から、休日診療や夜間診療を行っている動物病院は増加傾向にあるといえるでしょう。
地域での包括ケアシステムを確立しているケースも増えてきました。
なおここでいう休日診療や夜間診療とは、緊急の症状に対応する、人間の受診する病院でいう時間外診療を表しています。異なる診療形態として、動物病院のなかには平日の日中に働いている飼い主に配慮して、休日や夜間にも診療を行っている施設もあります。
緊急を要する事態へ対応するための休日診療や夜間診療を行う動物病院が各地域にあるため、いざというときに活用できるよう事前に調べておくことが重要です。
動物病院で行う休日診療の特徴
休日診療や夜間診療を行う動物病院は、どのような特徴があるかを紹介します。
間違ってとらえられやすい特徴としては、休日に診療を受け付けているのであれば、通常の予防接種や健診も休日診療を行っている動物病院を利用すればいいと考えてしまうケースが挙げられます。
かかりつけの動物病院と休日診療や夜間診療を行っている動物病院は用途が異なると考えるとよいでしょう。そのため連携や事前の連絡が必要となる点も、事前に押さえておきたいポイントです。
実際に受診するよりも前の、緊急時にどの動物病院を頼るかを検討する段階から、これらの特徴を押さえておくことをおすすめします。
緊急時対応が中心
休日診療や夜間診療はあくまで緊急時の対応が前提となる点が特徴です。そのため仕事が忙しいので通常の診察を夜間にしてほしいといった内容の診療は対応が難しいといえるでしょう。
また通常の健診や予防接種は、かかりつけの動物病院で受けることが一般的です。特に犬や猫の場合、予防接種は生後16週にかけて頻繁に受ける必要があり、その後も定期的な接種が推奨されるものも少なくありません。
このような定期的な受診は、緊急時の対応が中心となる休日診療や夜間診療ではなく、通常の時間帯の診療を活用することが一般的です。
事前の連絡や予約が必要
休日診療や夜間診療を行っている動物病院のなかには、事前の連絡や予約を必要としているケースがあるため、注意が必要です。
これは緊急の治療に対応するためで、事前の連絡を通じて動物病院側が混雑状況を把握するほか受け入れや治療体制を事前に整える目的もあるため、受診前に確認しておくことをおすすめします。
動物の緊急治療を行うなかでは手術などを必要とする場合もあるため、事前連絡が必要となる可能性があることも留意しておくとよいでしょう。
動物病院の休日診療の重要性
獣医療を管轄している農林水産省の方針としても、動物病院における休日診療や夜間診療の拡大は、かかりつけの動物病院との連携とともに課題としてとらえられています。
このように動物病院において休日診療や夜間診療が重要視されるようになった背景には何があるのでしょうか。その要因となる事象を紹介します。
特に近年の核家族化や単身世帯の増加といった社会現象は、ペットを取り巻く環境にも大きな変化を与えているといえるでしょう。日中に家にいる方が減っているため、ペットの体調の異変に気付けないためです。
またペットを取り巻く環境にも変化が起きています。動物愛護の観点や温暖化現象によって室内飼いが一般的となっただけでなく、ペットフードの品質も改善されていることから、ペットの寿命が伸びていることは度々社会的に注目されている現象です。
そのため高齢のペットを抱えている家庭も少なくありません。人間同様、高齢のペットと過ごしている家庭では、急な体調の変化に見舞われることもあるでしょう。
これらの特徴を具体的に検討します。
飼い主のライフワークの変化
ペットとして飼われている動物はもちろん、飼い主である人間のライフワークの変化も背景の一つといえるでしょう。
総務省の家計調査によると、近年では核家族に加えて単身世帯の増加が顕著です。単身世帯でペットを飼う場合、仕事をしながら飼うケースも少なくありません。
このような場合では、体調不良といった動物の異変に気付けるタイミングが夜間になるケースもあるでしょう。本来であれば日中から体調を崩していたとしても、気付けるまでにタイムラグが出ることもあり、休日診療や夜間診療を頼らざるをえない可能性が高まります。
体調の急な変化への対応
犬や猫をはじめとするペットの体調は急激に変化するケースも少なくありません。これは動物が言葉で体調の異常を伝えることができないという理由による特徴です。
さらに動物は本能的に病気を隠す傾向にあるため、異変が体調に現れた時には、深刻な事態となっているケースもあります。
これらの急な体調の変化に対して、かかりつけの動物病院で通常の診療時間になるまで待っていては、命に関わる事態になることもあるでしょう。
そのため休日診療や夜間診療を活用して、早急に対応することが求められます。
ペットの高齢化による健康管理
近年では、ペットフードの品質の向上や飼育環境の改善といった要因で、ペットの寿命が伸びている傾向にあります。
ペットと過ごせる時間が長くなった分、ペットとして飼っている動物の高齢化が進んでいる現状も見過ごすことはできません。
ペットの高齢化に伴って、急激かつ深刻な体調変化が起きやすい個体が増加しているといえるでしょう。その対応として、休日診療や夜間診療の必要性が高まっている現状があると考えられます。
動物病院の休日診療を受診する際の注意点
実際に動物病院で休日診療や夜間診療を利用する場合に、気を付けておくべき点があるため紹介します。
普段から利用しているかかりつけの動物病院とは異なる仕組みで運営されていることも少なくありません。また人間、特にあなた自身が受診する場合とは異なることから、診療体制の違いによる負担は大切なペットにかかってしまうため、事前の確認を怠らないことをおすすめします。
例えば診療時間や対応している診療内容の確認は、重要な確認事項です。これらのルールを守れない受診は、急病に苦しむペットの負担となる可能性があるため留意しておきましょう。
診療時間を確認する
休日診療や夜間診療を行っている動物病院ではありますが、24時間365日の診療時間ではないケースも少なくありません。
受診を検討する場合には、必ず診療時間を事前に確認しておくようにしましょう。また事前に連絡が必要となる場合もあるため、受診前に必要な手続きはないかも確認しておくことをおすすめします。
対応病院が限られる
どの病院でも受診できるとは限らない点も、事前に確認しておく必要があります。例えば動物病院ではあるものの犬や猫に限られるケースでは、小動物の受診を断られてしまうこともあるでしょう。
人慣れしていない個体で、診療中に暴れてしまう可能性があるケースも少なくありません。
症状や既往歴、ケガの状態によっては、対応できるかどうか制限のある動物病院もあるため、やはり事前のリサーチが重要です。
特に持病のある動物を飼っているケースでは、悪化した場合の対応など、考えうるリスクごとに対応が必要になることもあるでしょう。
かかりつけ医と連携する
休日診療や夜間診療を行っている動物病院は、あくまで緊急時に対応してもらうための施設です。そのため通常の診療はかかりつけの動物病院を活用することが一般的です。
かかりつけの動物病院とは受診を検討している段階から連携をとっておくとよいでしょう。既往歴やアレルギーなど、それぞれのペットが抱えている固有のトラブルをスムーズに伝えられることが可能となるためです。
また緊急対応とはいえ、かかりつけの動物病院からの紹介を必要とするケースもあるため事前に確認しましょう。休日診療や夜間診療での受診をその場で決めるのではなく、事前にどのような病院を受診するのか決めておき、かかりつけの動物病院とも連携をとることで、スムーズな受診につながります。
さらに休日診療や夜間診療での受診後にも、かかりつけの動物病院を受診するよう指示されるケースもあるでしょう。犬や猫といったペットの場合には、人間でいうおくすり手帳のような、情報を集約する媒体は一般的ではありません。
そのため引き継ぎ書や経過報告書を用意してくれる病院もありますが、薬の飲み合わせや治療の重複を防ぐといった観点からも、かかりつけの動物病院と緊急対応をしてもらう動物病院の間の橋渡しを、飼い主さんにも行ってもらう必要があります。
休日診療をしている動物病院の探し方
休日診療を行っている動物病院を探すにはどのような方法があるでしょうか。
すでにトラブルを抱えている段階でなければ、ご自身の生活圏にそのような病院がないか、インターネットなどで検索しておくとよいでしょう。
候補となる動物病院を見つけたら、診療時間や診療内容、受診までの流れを確認しておくといざというときに安心です。人見知りをする動物を飼っている場合には、事前に近くを通っておくような工夫も必要かもしれません。
また定期健診や予防接種でかかりつけの動物病院を訪れた際に、連携してもらえるか確認しておくことをおすすめします。
何らかの理由で休日診療を行っている動物病院を早急に探す必要がある場合には、獣医師会のホームページなどを参考にしてみるとよいでしょう。
都道府県にもよりますが、休日診療や夜間診療を行っている動物病院を公表しているケースがあるので、参考にしてみるとスムーズです。
休日診療の費用相場比較
休日診療や夜間診療を受診する場合、費用はどれくらいかかるか不安な方もいるのではないでしょうか。実際に通常のかかりつけの動物病院と比較すると、高額になるケースが少なくありません。
理由としては、休日診療や夜間診療を行う時間帯では、働いている獣医師や動物看護職の人件費が高騰する点が挙げられます。
また休日診療や夜間診療に限らずとも、緊急対応を要する症状を抱えて受診した際には、検査や治療にかかる費用が高額になる可能性も否めません。
動物病院で受診する場合には、人間の受診と異なり公的医療保険といった制度がありません。公的医療保険は対象となる診療で同じ診療報酬が定められていますが、動物病院ではそのような制度がなく、すべて動物病院ごとに診療費を定めています。
酸素吸入や手術、入院が必要となる場合など、多岐にわたる治療費がかかるため費用が高額となる可能性を視野に入れておくとよいでしょう。
なおこれらの費用負担に対しては、ペット保険の活動も方法の一つです。どのような保険がどのような範囲で適用されるかといった事前の確認を行うことも重要です。
まとめ
この記事では、動物病院における休日診療や夜間診療について紹介してきました。
休日診療や夜間診療は、昨今のペットを取り巻く環境の変化によってニーズが増加しています。具体的には飼い主のライフスタイルの変化により夜間や休日にしかペットの体調の変化に気付けないケースが増加している点や、ペットの高齢化により急な体調変化が起きやすくなっている点が考えられます。
休日診療や夜間診療を行う動物病院とは、急病や急なケガといった緊急時の対応が一般的です。普段から定期的に利用するかかりつけの動物病院が休日や夜間にも診察を行うケースとは異なる点を念頭に置いておきましょう。
休日診療を受診する際には、通常受診するかかりつけの動物病院とは異なる点があるため、事前に確認しておくとよいでしょう。具体的には診療時間や診療内容が異なる可能性を視野に入れておくことが重要です。
さらにかかりつけの動物病院と、受診の前後で連携をとる重要性についても紹介しました。費用面が高額となる可能性が高いことからも、緊急時の対応については事前に準備をしておくとよいでしょう。
幅広い観点から緊急の事態に備えておくことで、いざというときに慌ててしまったり、不安を感じることも少なくなるでしょう。本記事が行動を踏み出す第一歩となれば幸いです。
参考文献