犬の低血糖症とは?気になる症状や治療法について徹底解説!

犬 低血糖

低血糖症とは、さまざまな要因により、血中の糖分濃度が通常よりも減少することであらわれる一連の特有の症状です。
愛犬が低血糖症と思われる症状を示した場合、どう対処すればよいのでしょうか?
本記事では、犬の低血糖症について、以下の点を中心にご紹介します。

  • 犬の低血糖症の症状
  • 犬の低血糖症の治療法
  • 犬の低血糖症の予防法

犬の低血糖症について理解するためにも、ご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

犬の低血糖症とは?

犬の病気でよくある症状

犬の低血糖症は、血液中の糖分濃度、すなわち血糖値が異常に低下することで発生する病状です。
血糖値は、犬の体内でエネルギー源として利用されるため、特に脳のような重要な器官の機能維持には欠かせない成分です。
血糖値が著しく低下すると、犬はエネルギー不足に陥り、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。

低血糖症は、特に生後3ヶ月頃までの子犬に多く見られますが、成犬でも発症することがあります。
成犬での発症は、ほかの疾患の二次的な症状としてあらわれることが多いとされています。

低血糖症は、適切な治療と管理によって改善することが可能といわれていますが、未治療のまま放置すると、重篤な健康問題を引き起こす可能性があります。
そのため、犬が低血糖症の兆候を示した場合は、迅速に獣医師の診察を受けることが重要です。

犬の低血糖症の症状

白い犬

低血糖症に陥った犬は、エネルギー源の不足により、さまざまな症状を示すことがあります。
これらの症状は、犬の行動や外見に明らかな変化をもたらし、ときには生命を脅かすこともあります。

低血糖症の症状は、軽度から重度まで幅広く、犬の体調や低血糖の程度によって異なります。
初期段階では、犬は元気がなくなり、食欲不振を示すことがあります。
これらの症状は、ほかの疾患と容易に混同されるため、低血糖症の早期発見は困難といわれています。
さらに、歩行が不安定になることや、消化器系の動きに影響が出て下痢や嘔吐を引き起こすこともあります。

低血糖症が進行すると、けいれんや脱力感など、より深刻な神経系の症状を示すようになり、最悪の場合には昏睡状態に陥ることもあります。
これらの症状は、犬の脳が適切な量のグルコースを受け取れていないことを示しており、迅速な治療が必要です。

特に子犬や小型犬では、低血糖症が多く見られ、症状が急速に進行することがあります。
これらの犬種は、体温の維持や活発な成長のために、成犬よりも多くのエネルギーを必要とするため、低血糖症になりやすいといわれています。

犬が低血糖症になる原因

脱水症状予防のために

犬が低血糖症になる原因には、どのようなものがあるのでしょうか。
以下で、子犬と成犬に分けて詳しく解説します。

子犬

子犬が低血糖症になる原因は、生理的、環境的要因に根ざしています。
子犬は、成犬に比べて体が小さく、エネルギー消費率が高いため、糖分を速やかに消費します。
そのため、食事から十分なエネルギーを摂取していないと、低血糖状態に陥りやすいといわれています。

また、生後間もない子犬では、肝臓の機能が発達していないため、血糖を安定させるためのグリコーゲンの貯蔵能力が限られています。
そのため食間隔が長くなると、体内の糖分が不足し、低血糖症を引き起こすリスクが高まります。
さらに、子犬は体温調節機能が未熟で、寒冷環境下では体温を維持するために余分なエネルギーを消費するため、低血糖症になりやすいとされています。

ストレスも、子犬の低血糖症に大きく影響します。
環境の変化や過度な運動、長時間の留守番などのストレスを感じる状況は、子犬の体にエネルギー消費を促し、血糖値を急激に下げる可能性があります。
また、子犬は感染症や寄生虫の影響を受けやすく、これらの健康問題も消化吸収の効率を低下させ、低血糖症を引き起こす要因となりえます。

成犬

成犬の場合、低血糖症はほかの健康問題の指標となることがあります。
これには、内分泌異常、重大な疾患の存在、または特定の薬物の影響が含まれます。

主要な原因の一つは、インスリノーマと呼ばれる膵臓の腫瘍です。
この種の腫瘍は、インスリンの過剰生産を引き起こし、血糖値を危険なほどに低下させることがあります。
インスリンは血糖値を下げるホルモンであり、その過剰な分泌は血糖値を急激に下げる結果となります。

また、糖尿病の成犬でインスリン治療をしている場合、インスリンの投与量が過多であるか、食事の摂取が不十分である場合に低血糖症を引き起こすことがあります。
このような状況では、血糖値が急激に下がり、低血糖症の症状があらわれます。

肝臓の疾患も、成犬における低血糖症の一因となりえます。
肝臓は、体内の糖新生とグリコーゲンの貯蔵に重要な役割を果たしているため、肝臓の機能不全は、血糖値の調節能力に影響を及ぼします。
そのため肝臓疾患が進行すると、体は十分な糖を生成できなくなり、低血糖症に陥る可能性があります。

さらに、特定の薬物の使用やキシリトールのような特定の物質の摂取も、成犬における低血糖症の原因となります。
キシリトールは犬にとって毒性があり、摂取すると急速に血糖値を下げるといわれています。

犬が低血糖症になった場合の応急処置

犬が低血糖状態に陥った際には、迅速かつ適切な応急処置が必要です。
この状態は、血中のグルコースレベルが危険なほど低下していることを意味し、未処置のままでは、犬の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

犬が低血糖状態になった際にはまず、速やかに糖分を補給することが重要です。
糖分は、ガムシロップ、砂糖水、またはブドウ糖が有効とされています。
砂糖水は、砂糖と水を1対4の割合で混ぜ合わせることで簡単に作れます。
犬が自力で飲み込める場合は、舌の上に数滴を垂らすか、歯茎にソフトに塗りつけてください。
特に、けいれん発作を起こしている場合には、歯茎に直接砂糖水を塗りつけることが推奨されます。
この際、砂糖水はやや濃いめに作るとより効果的とされています。

しかし、犬が意識不明である場合や、自力で飲み込むことが難しい場合には、気管への誤嚥を避けるために、無理に飲ませようとしないでください。
代わりに、唇を軽くめくり、歯茎にガムシロップや砂糖水を塗りつけます。
はちみつも糖分源として使用できますが、子犬や免疫力が低下している犬には、ボツリヌス菌のリスクがあるため避けるべきです。

犬が低体温にも苦しんでいる場合は、体を温めることも重要です。
部屋の温度を上げたり、温かい毛布を用意したりして、体温を安定させてください。

応急処置を施した後、犬の状態に改善が見られない場合には、できるだけ速やかに獣医師による診察と治療を受けることが極めて重要です。
誤嚥性肺炎など、誤った処置による合併症を避けるためにも、獣医師の指導のもとで適切な対応をすることが必要です。

犬における低血糖症の検査・診断

犬 低血糖

犬が低血糖状態になった際の検査と診断プロセスは、犬の健康状態を正確に評価し、適切な治療計画を立てるために不可欠です。
以下に、犬が低血糖になった際の検査と診断についての詳細をまとめます。

  • 症状の観察と血糖値の測定:低血糖症は、犬の症状の観察と血糖値の測定によって診断されます。犬の医療履歴の詳細な聴取に加え、血糖値が70mg/dl以下であることが、低血糖症の指標とされています。血糖値が50mg/dlに低下すると、筋肉の硬直などの症状があらわれ始め、40mg/dl以下では犬の生命に直接的な危険が及ぶ可能性があります。
  • 全身の精密検査:低血糖の原因を特定するために、一般血液検査、ホルモン検査を含む全身の精密検査を実施します。これには、エコー検査やレントゲン検査、必要に応じてCT検査やMRI検査も含まれることがあります。これらの検査により、低血糖症の根本的な原因を特定し、適切な治療方針を決定できます。
  • 特殊検査の実施:血中インスリン濃度やACTH刺激試験などの特殊検査も、低血糖症の診断において重要な役割を果たします。これらの検査は、特定の内分泌異常やほかの健康問題が低血糖症の原因であるかどうかを明らかにするのに役立ちます。
  • 追加検査の可能性:状況に応じて、糞便検査や尿検査など、上記以外の追加検査が必要になる場合もあります。これらの検査は、犬の全体的な健康状態を評価し、低血糖症に影響を与える可能性のあるほかの健康問題を特定するのに役立ちます。

犬が低血糖になった際の検査と診断は、犬の健康と安全を守るために極めて重要です。
症状の観察から始まり、血糖値の測定、全身の精密検査、特殊検査の実施に至るまで、これらのステップを通じて、獣医師は低血糖症の原因を特定し、適切な治療計画を立てます。

犬が低血糖症になった場合の治療法

犬が低血糖症になった場合の治療法は、原因と症状の重さに応じて異なります。

軽度の低血糖症では、犬に糖分を含む食品や特別な糖液を与えます。
例えば、蜂蜜やシロップを舌の下や歯茎に塗布し、迅速に血糖値を上昇させます。
犬の意識がはっきりしており、自力で飲み込める場合に適していますが、この処置は一時的なものであり、根本的な原因に対する治療が必要です。

重度の低血糖症、特に犬が意識不明である場合やけいれんを起こしている場合は、獣医師による緊急治療が必要です。
このような状況では、静脈内にブドウ糖溶液を投与し、血糖値を正常化させます。
獣医師は、犬の状態をモニタリングしながら、適切な量のブドウ糖を投与し、血糖値を安定させるための処置をします。

低血糖症の根本的な原因を特定した後は、その原因に対する治療を実施します。
例えば、インスリノーマが原因である場合、外科手術による腫瘍の除去や、薬物療法によるインスリンの分泌抑制が考慮されます。
一方、糖尿病が原因である場合は、インスリン療法の調整や食事管理が重要になります。

犬が低血糖症になった場合の治療は、迅速かつ適切な対応が求められるため、異常を感じたらすぐに獣医師の診察を受けることが重要です。
正確な診断と効果的な治療計画により、多くの犬は低血糖症からの回復が期待できます。

犬が低血糖症にならないための予防法

餌を食べる犬

犬が低血糖症にならないためには、適切な栄養管理、健康状態のモニタリング、そしてストレスの管理が重要です。
以下で詳しく解説します。

  • 定期的な食事提供:犬には、定期的かつ均等に分配された食事を提供することが重要です。特に、子犬や小型犬は一度に多くのエネルギーを消費するため、一日に複数回の食事が推奨されます。
  • バランスの取れた食事:犬の食事は、必要な栄養素をすべて含んでいる必要があります。高品質のドッグフードを選び、獣医師の指示に従って、犬の年齢やサイズ、活動レベルに合わせて食事を調整してください。
  • 糖分の過剰摂取を避ける:人間用の食品や糖分を多く含むおやつの過剰な提供は避け、犬用の健康的な食事を選ぶことが重要です。
  • 定期的な健康診断:犬を定期的に病院に連れて行き、健康診断を受けさせることで、低血糖症のリスクを高める可能性のある疾患を早期に発見し、対処できます。
  • 病気の早期発見:犬の行動や食欲に異常が見られた場合は、すぐに獣医師の診察を受けることが重要です。早期発見と治療は、低血糖症を含む多くの病気の予防につながります。
  • 安定した環境の提供:犬にとって安心できる環境を整えることで、ストレスを減らせます。新しい環境や状況への適応は、特に子犬にとってストレスの原因となることがあります。
  • 適切な運動:定期的な運動は、犬の健康を維持し、ストレスを軽減させるのに役立ちます。しかし、過度な運動は避け、犬の年齢や健康状態に合わせた活動を心がけてください。
  • 薬物療法の適切な管理:糖尿病など既存の健康問題を持つ犬に対しては、獣医師の指示に従って、薬物療法を適切に管理することが重要です。不適切な管理は、低血糖症を引き起こす可能性があります。

犬が低血糖症にならないためには、適切なケアと注意深い観察が重要です。
犬の健康と幸福を守るために、これらの予防策を日常的に実践することが推奨されます。

低血糖症にかかりやすい犬種と年齢

散歩する犬

低血糖症は、特に小型犬種においてよく見られます。
例えば、小さな体格であるチワワは、特に低血糖症にかかりやすい犬種の一つです。
活発でエネルギッシュな性格ということもあり、迅速にエネルギーを消費します。
ヨークシャー・テリアもまた、小型でありながら高いエネルギーを持つため、適切な栄養摂取が不可欠です。
さらに、トイ・プードルも小型犬種であり、低血糖症になりやすい傾向があります。

また、生後数週間から数ヶ月の子犬は、特に低血糖症にかかりやすいとされています。
これは、子犬が迅速に成長する過程で多くのエネルギーを必要とし、また、肝臓の機能が発達しておらず、適切にグルコースを貯蔵・調節できないためです。
子犬には定期的に食事を与えることが必要であり、特に小型犬種の子犬は注意が重要とされています。

まとめ

獣医に抱かれたヨークシャーテリア

ここまで、犬の低血糖症についてお伝えしてきました。
犬の低血糖症の要点をまとめると、以下の通りです。

  • 犬が低血糖症になると、食欲不振や下痢・嘔吐、けいれんなどの症状があらわれることがある
  • 犬の低血糖症の治療法は、糖分を含む食品や糖液、静脈内へのブドウ糖溶液投与である
  • 犬の低血糖症を予防するには、適切な栄養管理や健康状態のモニタリング、ストレスの管理が重要である

これらの情報が、少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献