猫の甲状腺機能亢進症とは?気をつけるべき症状や治療法について解説!

猫 甲状腺機能亢進症

猫の甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモンの過剰分泌により引き起こされる疾患です。主に高齢猫に見られ、体重減少、食欲増進、過活動などの症状が特徴的です。甲状腺機能亢進症の治療法には薬物療法、放射性ヨウ素治療、外科手術などがあります。
本記事では、猫の甲状腺機能亢進症について以下の点を中心にご紹介します!

  • 猫の甲状腺機能亢進症とは
  • 猫が甲状腺機能亢進症になる原因
  • 猫の甲状腺機能亢進症の症状

猫の甲状腺機能亢進症について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

猫の甲状腺機能亢進症とは

猫の甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの過剰分泌によって引き起こされる代謝系統の疾患です。甲状腺ホルモンは体内の代謝活動を促進する役割を持っているため、このホルモンの分泌が亢進すると、猫の体内で代謝が過剰に活発化し、体重減少、過食、過度の活動性、心拍数の増加などの症状を引き起こします。主に中高齢の猫に多く見られ、8歳未満で発症する傾向にあるとされています。

この病気の背景には、甲状腺の腫大があり、1980年代以降、主にアメリカの大都市を中心に増加傾向にあるとされています。甲状腺ホルモンが体のほとんどの組織に作用し、代謝を促進することで、表面的には健康に見える状態を引き起こしますが、実際には体を過度に消耗させ、老化を早めることに繋がります。
なかでも高齢の猫を飼っている場合には、定期的な健康診断を受け、甲状腺機能亢進症の兆候に注意を払うことが重要です。

猫が甲状腺機能亢進症になる原因

猫の甲状腺機能亢進症の主な原因は、甲状腺腺腫や甲状腺の良性腫瘍による甲状腺ホルモンの過剰分泌です。なかでも中高齢猫に多く見られ、発症メカニズムはまだ解明されていませんが、遺伝的要因、食事、環境ホルモンの影響などが関与している可能性が指摘されています。以下で具体的に解説します。

甲状腺の結節性過形成

猫の甲状腺機能亢進症の主な原因の一つに、甲状腺の結節性過形成があります。これは甲状腺細胞の良性の増殖により、甲状腺が腫大する状態を指し、結果として甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで症状が現れます。結節性過形成は、良性とされており、甲状腺腫とも呼ばれますが、稀に両側の甲状腺に影響を及ぼすこともあります。結節性過形成による甲状腺の腫大は、適切な治療により管理できます。

甲状腺腫

甲状腺腫は、甲状腺に発生する良性の腫瘍で、甲状腺ホルモンの過剰分泌を引き起こし、結果として甲状腺機能亢進症の症状が現れます。過形成と甲状腺腫の違いは、過形成が正常組織の増加であり細胞の構造が正常であるのに対し、腫瘍は異常な細胞の増殖によって形成されます。甲状腺腫は、甲状腺ホルモンの生産を過剰に行うことで、猫の代謝率を異常に高め、体重減少、食欲増進、活動性の増加などの症状を引き起こします。この状態は主に中高齢の猫に見られ、早期発見と適切な管理が病態の進行を遅らせる鍵となります。

甲状腺がん

甲状腺がんは、猫の甲状腺機能亢進症の原因となることがありますが、まれなケースとなります。甲状腺がんは、甲状腺が異常な細胞の増殖により、正常ではない量の甲状腺ホルモンを分泌し始めます。甲状腺がんによる甲状腺機能亢進症は、良性の腫瘍や結節性過形成とは異なり、がん細胞が関与しているため、治療法や予後に違いがあります。
甲状腺がんが疑われる場合、迅速な診断と適切な治療が必要です。

猫の甲状腺機能亢進症の症状

猫の甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの過剰分泌により引き起こされる疾患で、主に中高齢の猫に見られます。この病気の典型的な症状には、異常な食欲増進にもかかわらず体重が減少する、活動性の増加、過度の鳴き声、被毛の質の低下、多飲多尿などがあります。また、下痢や嘔吐、ふらつきや元気のなさなど、消化器系や神経系に関連する症状が現れることもあります。なかでも、体重の減少と食欲の増加は、甲状腺機能亢進症の主な兆候であり、老齢にもかかわらず異常なほど活発になる様子は、この病気を疑う大きな理由です。

甲状腺機能亢進症は、心臓にも影響を及ぼすことがあり、不整脈や心筋症などの心臓疾患を引き起こすことがあります。これらの心臓疾患は、病状が進行するにつれてより顕著になり、治療を要することがあります。さらに、甲状腺機能亢進症は腎臓にも負担をかけ、慢性腎臓病の進行を早める可能性があるため、早期発見と治療が重要です。

飼い主としては、猫の行動や健康状態の変化に注意を払い、異常が見られた場合は迅速に獣医師の診察を受けることが、猫の健康を守るために重要とされています。

猫の甲状腺機能亢進症の検査方法

猫の甲状腺機能亢進症は高齢猫に多く見られる疾患で、症状がほかの病気の可能性があるため、正確な診断が重要です。この病気の診断には、触診、血液検査、そして必要に応じて追加の検査が用いられます。

  • 触診:気管の両脇にある甲状腺の腫大を確認する方法です。獣医師が直接、猫の首周りを触って、甲状腺の肥大や硬さをチェックします。これだけで甲状腺機能亢進症を確定することは難しいですが、甲状腺機能亢進症を診断する第一歩となります。
  • 血液検査:甲状腺機能亢進症の診断において重要な役割を果たすのが血液検査です。主に、総サイロキシン(T4)レベルの測定が行われます。正常範囲を超えるT4の数値は、甲状腺機能亢進症を示唆します。また、T4の数値だけでなく、遊離T4 (fT4)の測定も行われることがあり、これにより診断の精度が高まります。
  • そのほかの検査:甲状腺機能亢進症の猫はほかの疾患を併発していることがあるため、超音波検査、X線検査、尿検査、眼科検査、血圧測定など、全身の健康状態を把握するための追加検査が必要になることがあります。主に、心臓病や腎臓病、糖尿病などとの併発は甲状腺機能亢進症の治療方針を決定するために重要な情報となります。

総じて、甲状腺機能亢進症の診断には複数の検査が組み合わされ、症状の原因を特定し、適切な治療計画を立てるために重要です。

猫の甲状腺機能亢進症の治療

猫の甲状腺機能亢進症の治療には薬物療法、外科手術、食事療法などがあり、病状や健康状態に応じて選択されます。以下で具体的な治療について解説します。

薬物治療

猫の甲状腺機能亢進症の治療法として、薬物治療があります。この治療法では主に抗甲状腺薬を用い、甲状腺ホルモンの過剰な生産を抑制します。チアマゾールやメチマゾールがよく使用される薬剤で、これらは甲状腺ホルモンの合成を直接抑制し、症状の緩和に寄与します。
しかし、薬物治療は副作用のリスクを伴います。これには食欲不振、嘔吐、血液異常などが含まれ、なかでも白血球減少症や血小板減少症は重大な副作用とされます。
治療開始のときは低用量から始め、定期的な血液検査を通じて副作用の様子を見ながら、必要に応じて用量調整します。

したがって、長期的な目が必要であり、状態に応じて治療法を適宜調整することが求められます。また、薬物治療は甲状腺機能亢進症の症状を調整するものであり、根本的な解決には至らないことも理解しておく必要があります。飼い主は猫の健康状態に注意を払い、獣医師と密接に連携して治療計画を立てることが重要です。

外科的手術

猫の甲状腺機能亢進症に対する外科的手術は、甲状腺腫瘍の除去や症状の根本的な治療を目的とします。この治療法は、主に甲状腺ホルモンの過剰生産がほかの治療法で改善できない場合や、薬物治療が困難な場合に選択されることが少なくないとされています。しかし、両側の甲状腺が摘出された場合、甲状腺ホルモンの外部からの補給が必要となり、生涯にわたって甲状腺ホルモン剤の投与が必須になります。

外科的手術にはメリットとリスクがあり、手術後には甲状腺ホルモンの観察が必要です。また、甲状腺に隣接する上皮小体の損傷が発生すると、血中カルシウム濃度の低下を招くことがあるため、血液検査によるカルシウムの観察も重要です。手術は獣医師によって行われ、健康状態や手術のリスクを十分に確認して実施されます。

食事療法

猫の甲状腺機能亢進症に対する食事療法は、ヨウ素制限食を使用して甲状腺ホルモンの生産を抑制する方法です。この治療法は、ヨウ素含有量を厳密に制御した専用の療法食を食べることで、甲状腺ホルモンの過剰生産を抑えられます。例えば、ヒルズのy/dはこの目的で設計された療法食の一例であり、多くの獣医師に推奨されています。

食事療法は、主に毎日の薬物投与が困難な猫や、薬の副作用に苦しむ猫にとっておすすめな選択肢です。しかし、この方法は一部の猫には食いつきの問題が生じる可能性があり、全ての猫に適しているわけではありません。食事の変更は、甲状腺機能亢進症の軽度の場合や、ほかの治療法と組み合わせて使用されることが少なくないとされています。

療法食に切り替える際は、猫の健康状態や、既存の治療計画との相互作用を考慮し、獣医師との密接な連携が必要です。定期的な血液検査をして、甲状腺ホルモンの経過観察が重要です。また、食事療法を選択する場合でも、甲状腺機能亢進症によるほかの健康問題に対する追加の治療が必要になることがあります。

食事療法は、猫の生活の質を向上させるための一つの方法です。正しい療法食の選択と適切な管理により、猫の健康と幸福をサポートできるでしょう。

猫の甲状腺機能亢進症にかかる治療費用

猫の甲状腺機能亢進症の治療にかかる費用は、症状の重さや治療方法、動物病院の地域や規模によって大きく異なります。かかる費用は以下の通りです。

【初診の場合の費用】

  • 診察料:700円
  • 血液検査:7,000円
  • 内服薬:1,400円

これらはあくまで一例で、実際の費用は病院によって異なります。

【治療費用の概算】

  • 甲状腺ホルモン検査:約6,000〜8,000円
  • 薬物治療(一月分):約3,000〜5,000円

これには、抗甲状腺薬の費用が含まれており、症状の重さや体重によって変動します。

【外科手術の場合】
外科手術の費用は、手術の複雑さや、必要な麻酔、入院期間によって大きく変わりますが、数万円から十数万円程度が目安となります。また、手術後のケアや必要な薬剤によって追加費用が発生する可能性があります。

【食事療法】
ヨウ素制限食などの特別な食事療法に切り替える場合、通常のキャットフードよりも価格が高くなる傾向にありますが、病気の管理には適しています。

【長期的な費用】
甲状腺機能亢進症は定期的な血液検査や薬物治療、食事療法の継続が必要です。そのため、長期にわたる治療費用の準備も重要です。

総じて、甲状腺機能亢進症の治療には、初診だけでなく長期にわたって費用がかかるため、ペット保険の加入を検討するのも一つの選択肢です。

犬も甲状腺機能亢進症になるのか

犬における甲状腺機能亢進症は、猫により発症率は低いとされています。犬では甲状腺機能低下症のほうがよく見られ、甲状腺機能亢進症になるケースは少ないとされています。犬で甲状腺機能亢進症が見られる場合、それは主に甲状腺がんや外部からの甲状腺ホルモンの過剰投与によるものであり、診断と治療が必要なまれな症例です。飼い主さんは、甲状腺に関連する症状に注意し、異常が見られた場合は獣医師に相談することが重要です。

猫の甲状腺機能亢進症は予防できる?

現在のところ、甲状腺機能亢進症を予防する方法は確立されていません。しかし、病気の早期発見と早期治療が、猫の健康を長く保つためには重要です。定期的な健康診断を受けることで、甲状腺機能亢進症をはじめとするさまざまな疾患を早期に発見し、適切な治療ができます。猫の行動や体調の変化に注意を払い、異常を感じたら迅速に獣医師の診察を受けることが、対策といえるでしょう。

まとめ

ここまで猫の甲状腺機能亢進症についてお伝えしてきました。
猫の甲状腺機能亢進症の要点をまとめると以下の通りです。

  • 猫の甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの過剰分泌によって引き起こされる代謝系統の疾患のこと。主に中高齢の猫に多く見られ、8歳未満で発症する傾向にあるとされている。
  • 猫が甲状腺機能亢進症になる原因には、「甲状腺の結節性過形成」「甲状腺腫」「甲状腺がん」などが挙げられている。
  • 猫の甲状腺機能亢進症の症状には、体重の減少、活動性の増加、過度の鳴き声、被毛の質の低下、多飲多尿などがある。また、下痢や嘔吐、ふらつきや元気のなさなど、消化器系や神経系に関連する症状が現れることもある。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献