動物も私たち人間と同じように、病気やケガによって外科手術が必要になることがあります。しかし、”手術”と聞くと不安や心配を感じる飼い主さんも多いのではないでしょうか。
本記事では動物病院の外科について以下の点を中心にご紹介します。
- 動物病院での外科手術
- 動物病院での外科手術の流れ
- 動物病院での去勢手術、避妊手術
動物病院の外科について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
動物病院での外科手術
- 動物病院の外科ではどのような手術を行っていますか?
- 動物病院の外科では、幅広い手術が行われています。
腫瘍切除では、口腔内や肝臓、胃、腎臓など、さまざまな臓器の腫瘍摘出が対応可能とされています。なかでも、乳腺腫瘍や皮膚腫瘍など、発見されやすいとされているものから、脾臓や副腎などの摘出が必要な症例への対応も期待できます。
また、鼠径ヘルニア整復術や膝蓋骨脱臼整復術、骨折整復術などの整形外科的手術も数多く実施されている傾向にあります。
さらに、避妊・去勢手術や子宮蓄膿症、会陰ヘルニア整復術などの一般外科手術も行われています。
腸閉塞を引き起こす異物の摘出手術は、緊急性の高い処置の一つです。犬や猫が誤って飲み込んだおもちゃや異物を適切に除去し、腸の機能を回復させます。また、膀胱結石の手術も行われており、犬や猫のさまざまなニーズに応えています。
これらの手術は、動物たち一頭一頭の状態に合わせて計画され、高い精度と安全性に考慮をして実施されている傾向にあります。
どのような手術が必要かは、まず獣医師にご相談いただくことが重要です。
- 動物病院の外科ではどのような手段で手術を行いますか?
- 動物病院の外科では、動物の負担を軽減するために、低侵襲治療である腹腔鏡手術が導入されている傾向にあります。
この手術は、お腹に小さな切開を加え、カメラと外科器具を挿入してモニター映像を見ながら行います。切開が小さいため痛みが少なく、術後の回復が早いことが期待できます。
また、癒着が少なく、鮮明な視野で繊細な操作が可能なため、高精度な治療が期待できます。避妊手術や膀胱結石摘出術、さらには副腎摘出術や胆嚢摘出術など幅広い手術に対応可能とされています。
一方で、手術費用が高額になる場合や手術時間が長引く可能性がある点も考慮が必要です。
動物病院での外科手術の流れ
- 動物病院の外科手術の前にどのような検査を行いますか?
- 動物病院では、安心して手術を受けられるよう、さまざまな術前検査が行われます。
まず身体検査(視診、触診、聴診)を行い、全身状態を評価します。その後、血液検査では肝臓や腎臓の機能、栄養状態を確認し、麻酔薬に対する耐性を把握します。
また、胸部レントゲン検査では心臓や肺、気管の状態を確認し、循環器や呼吸器系に問題がないかを評価します。必要に応じて超音波検査を実施し、心臓や腹部臓器の詳細な機能を調べます。
さらに心電図検査で不整脈などの心臓疾患の有無を確認することもあります。
これらの検査結果を総合的に判断し、麻酔や手術が安全に行える場合にのみ手術が実施されます。検査は動物の安全性を第一に考えた重要なステップです。
- 動物病院での外科手術ではどのように麻酔を管理していますか?
- 動物病院の外科手術では、麻酔管理が動物の安全性を確保するために重要な役割を果たしているとされています。
麻酔は、手術の痛みを軽減し、筋弛緩や意識消失を実現するために、多種類の薬剤を組み合わせたマルチモーダル鎮痛が採用されやすい傾向にあります。
これにより、麻酔薬の使用量を減らし、副作用のリスクを可能な限り抑えることが期待できます。
さらに、手術中は血圧や体温の管理が徹底され、温風システムを使用して体温低下を防ぎ、麻酔からの早期覚醒を促します。
また、観血的血圧測定を活用し、重症の動物の血圧管理を正確かつ積極的に行うことで、術中のリスクを軽減することが期待できます。
これらの取り組みを通じて、状態が悪い症例に対しても質の高い手術が提供できるよう努めています。
- 動物病院の外科での術後に痛みがある場合はどうなりますか?
- 動物病院の外科手術後に痛みがある場合、動物の負担を可能な限り抑えるために適切な鎮痛管理が行われます。
術後の痛みを軽減するため、先取り鎮痛を用いて手術前に鎮痛薬を投与し、痛みを感じにくくする取り組みが行われます。
また、作用の異なる鎮痛薬を組み合わせたマルチモーダル鎮痛により、副作用を抑えつつ高い鎮痛効果を得られるよう工夫されています。
さらに、持続定量点滴を用いて術中から術後にかけて鎮痛薬を微量ずつ投与し、痛みを持続的に緩和することが期待できます。
重度の痛みが予想される場合にはオピオイドなど強力な鎮痛剤が使用されることもあります。
これらの方法を駆使して、動物が快適に回復できるよう徹底した管理が行われています。
動物病院での去勢手術、避妊手術
- 去勢手術、避妊手術の流れを教えてください
- 去勢手術・避妊手術の主な流れは以下のとおりです。
まず、手術前に身体検査や血液検査を行い、動物の健康状態や麻酔の安全性を確認します。場合によってはレントゲンや超音波検査も追加されることがあります。手術の日程が決まったら、前日は夜10時以降の絶食を指示されます。
当日の朝も絶食を続け、水の摂取も制限される場合があります。動物を指定の時間に病院に連れて行き、最終的な診察と確認の後に麻酔が開始されます。
手術中は心電図や血圧、呼吸数などのモニタリングが行われ、安全性の確保が期待できます。
手術は基本的に短時間で終了する傾向にあり、その後、覚醒状態や出血の有無などを確認します。
手術は日帰りで行われることが多いとされていますが、状態によっては入院が必要となることもあります。術後1〜2週間後に抜糸や経過観察のための再診が行われます。
- 動物病院での去勢手術、避妊手術のメリットを教えてください
- 去勢手術や避妊手術にはさまざまなメリットがあります。
まず、望まない妊娠を防ぐことで、計画的な繁殖を行うことが期待できます。また、生殖器やホルモンに関連する疾患の予防効果が期待できます。
具体的には、オスの場合は精巣腫瘍、前立腺疾患、会陰ヘルニアなどが予防され、メスの場合は子宮蓄膿症や乳腺腫瘍のリスク軽減が期待できます。
さらに、発情期に伴うストレス軽減が期待できることも大きな利点です。
例えば、オスが発情したメスを追いかけたり、性的興奮によるストレスを感じたりすることが低減する傾向にあります。
また、マーキングやマウンティングなどの行動が軽減される場合もあります。
これらのメリットにより、動物の健康維持や行動改善が期待できるとされています。
- 動物病院での去勢手術、避妊手術のデメリットを教えてください
- 去勢手術や避妊手術にはデメリットもあります。
まず、生殖機能を取り除くため、将来の繁殖ができなくなります。そのため、動物の子孫を望む場合には慎重な検討が必要です。また、全身麻酔を使用するため、まれに麻酔の副反応や術中の体調不良が起こる可能性があります。なかでも短頭種では気道閉塞のリスクが高いとされているため、手術後の体調管理が重要です。
さらに、ホルモンバランスの変化により、基礎代謝が低下して太りやすくなることがあります。
これに加えて、縫合糸反応性肉芽腫のリスクや、稀ではありますが皮膚疾患の発生が起こるとされています。
これらのリスクを理解したうえで、動物の健康状態や生活環境を考慮し、獣医師と相談してよりよい判断を行うことが大切です。
編集部まとめ
ここまで動物病院の外科についてお伝えしてきました。要点をまとめると以下のとおりです。
- 動物病院の外科では、腫瘍切除や整形外科手術から低侵襲な腹腔鏡手術まで、さまざまな治療法で動物に高精度な手術を提供している
- 動物病院の外科手術では、術前検査、麻酔管理、術後鎮痛を徹底し、動物の安全性と快適な回復を重視した手術が実施されている
- 動物病院での去勢・避妊手術は、望まない妊娠防止や病気予防のメリットがある一方、麻酔リスクや体質変化への配慮が必要である
外科手術は動物の健康を守る重要な治療法ですが、わからないことや不安なことがあれば、すぐに動物病院に相談するようにしてください。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。