ペットがいつも痒がっていたり、皮膚が赤くなっていたり、そのような症状に悩まされている飼い主さんも多いのではないでしょうか。これらの症状は、もしかしたらアレルギーが原因かもしれません。
本記事では動物病院で行っているアレルギー検査や受診すべきアレルギー症状について以下の点を中心にご紹介します。
- 動物のアレルギーとは
- 動物のアレルギー症状について
- 動物病院で受けられるアレルギー検査とは
動物病院で行っているアレルギー検査や受診すべきアレルギー症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
動物もアレルギーになるの?
動物も人間と同じように、アレルギーを発症する可能性があります。その仕組みは人間と基本的に共通していますが、現れる症状には違いが見られます。
例えば、人間の場合は花粉症やハウスダストアレルギーでは、くしゃみや鼻水など呼吸器系の症状が多いようです。しかし、動物、なかでも犬は皮膚に症状が現れる傾向があるのが特徴です。
動物のアレルギーによる皮膚症状としては、身体をかきむしる、特定の箇所を舐める・噛む、頻繁に顔をこする、といった行動が挙げられます。ほかにも、春から夏にかけては花粉やカビの影響で症状が悪化することもあります。
また、食物アレルギーも動物に見られる代表的なアレルギーで、嘔吐や下痢よりも皮膚症状が現れることが多い傾向にあります。
動物はかゆみを我慢できず、患部を舐め続けて症状を悪化させてしまうことも少なくありません。飼い主さんが見ただけではアレルギーかどうかを判断するのは難しく、別の病気が潜んでいる可能性もあるため、早めに動物病院で相談することが重要です。
動物にみられるアレルギーの例
それでは、動物には主にどのようなアレルギー症状が現れるのでしょうか。以下で解説します。
食物アレルギー
動物の食物アレルギーは、特定の食物に含まれるアレルゲンに対して免疫系が過剰に反応することで起こります。原因となるアレルゲンの多くはタンパク質で、牛肉、鶏肉、乳製品、卵、小麦、大豆などが代表的です。
この疾患は、消化器系の不調や皮膚のかゆみなどの症状を引き起こし、掻く、舐める、噛むといった行動が見られるようになります。
また、新しい食事だけでなく、長年食べ慣れていた食材が突然アレルギー反応を引き起こすこともあります。年齢に関係なく発症し、アトピー性皮膚炎と併発するケースも珍しくありません。
症状が疑われる場合には、普段与えている食事やおやつの成分を確認することが大切です。
治療には、原因となる食材を特定し、除去することが基本です。アレルゲンが特定できれば、専用の食事管理によって症状の改善が期待できます。食物アレルギーの疑いがある際は、獣医師に相談し、必要に応じて食事内容を見直しましょう。
ノミアレルギー
ノミアレルギーは、ノミに刺された際にノミの唾液に対して強いアレルギー反応を起こす疾患です。1匹のノミによる咬傷であっても激しいかゆみを引き起こし、掻きむしることで皮膚がさらに傷つき、二次感染を招く場合があります。
特に猫では首や腹部、尾部などに脱毛や過剰な身づくろいが見られる傾向があります。
治療の第一歩は、寄生しているノミの駆除です。毛並みのお手入れやシャンプーでノミやその排泄物を取り除くとともに、ノミ駆除薬を使用します。獣医師によってはステロイド剤を処方し、かゆみを緩和することもあります。
ノミは繁殖力が高く、同居するペット間で拡散する可能性があるため、駆除が終わるまではペット同士を隔離するのが推奨されています。
また、環境中に残るノミを根絶するために、寝床やカーペットの清掃も忘れずに行いましょう。ノミアレルギーを防ぐためには、定期的なノミ対策が重要です。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、ハウスダスト(ホコリやダニ)や花粉など、環境中のアレルゲンに対する免疫の過剰反応によって起こる皮膚炎です。主に犬に発症しやすい疾患ですが、猫にもみられることがあります。
遺伝的な要因や皮膚のバリア機能の低下が関与しており、一度発症すると根治は難しいため、一生付き合う疾患になる可能性が高いとされています。
主な症状は、顔や足、腹部などに現れる痒みで、掻きむしりによる脱毛や、皮膚の赤みが見られます。また、季節性のアレルギー(花粉)や通年性のアレルギー(ダニやフケ)に分かれることがあります。
症状が進行すると、皮膚感染症や耳の病気を併発する場合もあります。
治療には、ステロイド剤などの薬で痒みを抑える方法や、皮膚の防御機能を高めるスキンケアが取り入れられます。また、環境中のアレルゲンを減らすため、こまめな掃除や空気清浄機の使用が推奨されます。
飼い主さんには根気強い治療やケアが求められるため、動物病院での定期的な相談が重要です。
疥癬
疥癬は、イヌセンコウヒゼンダニ(ヒゼンダニ)が原因で起こる皮膚の感染症で、とても強い痒みを伴うのが特徴です。
ヒゼンダニは目視では確認が難しい程小さく、皮膚にトンネルを掘って寄生し、そのなかに卵や分泌物を蓄積します。この分泌物がアレルギー反応を引き起こし、皮膚炎の原因となります。
症状は耳、肘、腹部、かかとなど、毛が少ない部位に赤みやフケ、脱毛が見られる傾向があるとされています。犬は強い痒みから皮膚を掻きむしり、傷を悪化させることが多いため注意が必要です。
疥癬は感染力が強く、ほかのペットや人に偶発的に感染する場合もあるため、迅速な対応が重要です。治療にはダニを駆除する薬剤の投与やスキンケアが用いられます。環境中のダニを除去するために、寝具の洗濯や掃除を徹底することも必要です。
動物病院を受診すべきアレルギー症状
ペットの皮膚に異常が見られる場合、そのサインを見逃さないことが早期治療の鍵です。小さな湿疹が数日で治まる一過性の皮膚炎は緊急性が低いものの、繰り返し症状が現れる場合には、日々のケアや環境の見直しが必要です。
また、湿疹やかゆみが続き、赤みや脱毛、異臭が伴う場合、アレルギー性皮膚炎や感染症の可能性が高くなります。
アレルギー性皮膚炎は、湿疹、かゆみ、脱毛などの症状が多岐にわたり、根本的な改善にはアレルゲンの特定が重要です。参考程度ですが血液検査によるアレルギー検査もありますので、気になる方は動物病院で相談してみましょう。
また、自己判断でフードを切り替えることは症状の悪化を招く恐れがあるため注意が必要です。
糸状菌やダニによる感染症では、家族への感染のリスクもあり、緊急の対応が必要です。これらの感染症は進行が早く、皮膚の広範囲にわたり脱毛や炎症を引き起こすことがあります。家族に乳幼児や高齢者がいる場合は特に衛生管理を徹底しましょう。
小さな湿疹が硬化し、肥大化する場合は腫瘍の初期症状である可能性もあります。早期の動物病院受診がペットの健康を守る第一歩となります。皮膚の異常や不調を感じたら、迷わず獣医師に相談しましょう。
動物病院で受けられるアレルギー検査
ここまで動物のアレルギー症状について見てきました。以下では、動物病院で行われているアレルギー検査についてご紹介します。
除去食試験・食物負荷試験
除去食試験と食物負荷試験は、食物アレルギーを特定するための基本的な検査方法です。まず、除去食試験では、アレルギーの原因となる可能性のある食材をすべて排除し、指定された療法食と水のみで少なくとも約2ヶ月間ペットを観察します。この間にアレルギー症状が緩和されれば、食事が原因である可能性が高まります。
次に、元の食事を再び与える食物負荷試験を実施し、症状が再び現れるかを確認します。このプロセスによって、どの食物がアレルゲンであるかの特定を図ります。ただし、試験には長い時間と飼い主の根気が必要であり、期間中は指定された食物以外を与えないことが重要です。
アレルゲン特異的IgE検査
アレルゲン特異的IgE検査は、アレルギー性皮膚炎の診断のなかでもよく行われる検査です。採血を行い、血液中のIgE抗体が特定のアレルゲン(ハウスダスト、植物、食物など)に反応するかを調べます。この検査により、アレルギーの原因となる可能性が高い物質を特定できるとされています。
特に犬の場合、IgEが検出された場合は犬アトピー性皮膚炎(CAD)、検出されなかった場合は犬アトピー様皮膚炎(CALD)と判断されます。ただし、検査機関によって感度が異なり、アレルギーがない場合でも陽性反応が出る可能性があるため、結果の解釈には注意が必要です。診断を確定するためには、ほかの検査や観察結果と併用することが推奨されます。
リンパ球反応試験
リンパ球反応試験は、IgE検査では判明しない食物アレルギーを特定するために行われる検査です。この方法では血液中のリンパ球を分離し、アレルゲンと混ぜて培養することで、リンパ球の反応を測定します。リンパ球の活性化が確認されれば、その食物がアレルゲンである可能性が高いと判断されます。
食物アレルギーの約7割はIgEを介さない反応であり、リンパ球が関与しているとされています。この試験は、IgE検査だけでは特定が難しい場合や、さらなる詳細な検査が必要な場合に用いられます。
アレルギー強度検査
アレルギー強度検査は、ペットの体内で起きているアレルギー反応の程度を評価する検査です。この方法では血液中のリンパ球の値を測定し、アレルギーの強さを調べます。非アレルギー性皮膚炎との区別や、投薬量の決定、治療の経過観察を目的として実施されます。
この検査結果をもとに、リンパ球の活性化が見られる食物を特定し、それらを避けることでアレルギー反応を抑えることが期待できます。
動物病院に行く前の準備のポイント
ペットの健康を守るため、動物病院を訪れる際の事前準備は重要です。以下のポイントを押さえて、スムーズな診察を受けられるようにしましょう。
- 日頃の状態を把握する
日常的にペットと接し、その健康な状態をよく知っておくことが大切です。食事量や排泄、行動の変化などを観察することで、異常に早く気付くことができます。 - 情報を詳しく伝える
初めての病院では、これまでの病歴やワクチン接種状況、事故の有無などを詳しく伝えましょう。過去の検査結果や処方された薬の情報も持参すると診断の助けになります。 - メモを用意する
ペットの症状や行動の変化をメモに記録しておきましょう。食事や水の摂取量、排尿・排便の回数など、客観的なデータがあると診察がスムーズになります。 - 症状の画像や動画を撮影する
病院では緊張して普段の症状を見せないことがあります。症状が出ている時の写真や動画を撮影しておくと、獣医師が正確に状態を把握するために役立ちます。 - 日常使用している製品を確認する
普段の食事やおやつ、シャンプー、おもちゃなどが症状の原因となる場合があります。これらの情報を事前に確認し、必要に応じて伝えましょう。 - 普段お世話している方が同行する
ペットの生活環境や普段の様子をよく知る方が一緒に行くと、詳細な情報を提供でき、的確な診断につながります。 - 診断の助けとなるものを持参する
転院する場合は、過去の検査結果や治療経過、投薬情報などを持参すると、検査の重複を避け、スムーズな治療につながります。
これらの準備を行うことで、ペットが早く健康を取り戻す手助けとなります。飼い主として、しっかりと情報を提供し、ペットの健康管理に努めましょう。
まとめ
ここまで動物病院で行っているアレルギー検査や受診すべきアレルギー症状についてお伝えしてきました。動物病院で行っているアレルギー検査や受診すべきアレルギー症状の要点をまとめると以下のとおりです。
- 動物も人間同様にアレルギーに罹患し、主なアレルギーとして食物アレルギー、ノミアレルギー、アトピー性皮膚炎(環境アレルギー)、疥癬が挙げられる
- 動物のアレルギー症状は、皮膚症状としては身体をかきむしる、特定の箇所を舐める・噛む、頻繁に顔をこする、といった行動が見られるほか、春から夏にかけては花粉やカビの影響で症状が悪化することもある
- 動物病院で受けられるアレルギー検査には、除去食試験・食物負荷試験、アレルゲン特異的IgE検査、リンパ球反応試験、アレルギー強度検査などがある
大切なペットの健康を守るためにも、日々の観察は欠かせません。何か重篤な病気が潜んでいる可能性も考慮し、痒そうにしていたり、何か皮膚症状が見られる場合は、速やかに動物病院に相談しましょう。
また、動物病院に赴く際は、ペットに関する日々の記録を獣医師に伝えられるようにしておくと、より正確な診断につながります。
これらの情報がお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。