ペットを飼っていると、予防接種を受けたり、急にペットの具合が悪くなったりすることがあります。
そのようなときは、人間が病院へ行くように、ペットも動物病院に行くのが一般的です。
では、1回の診察や治療でどのくらい診察料がかかるのでしょうか。
今回は動物病院の診察料や費用相場を解説します。
「ペットを飼いたいけど今後どのくらい診察料がかかるのか知りたい」「動物病院にかかる前に診察料の相場を知っておきたい」といった方の参考になれば幸いです。
動物病院の診察料はどのくらい?
犬や猫の診察料は、病気や病状によって大きく異なります。そのため、一概にいくらかかるとはいえません。
もちろん、あらかじめ予想がつく費用もあります。特に、子犬や子猫から迎える場合は最初の予防接種や避妊、去勢手術の費用はあらかじめ見込んでおく必要があるでしょう。
また、ペットの種類によって罹りやすい病気も異なります。ご自身が飼いたい犬種や猫種が罹りやすい病気について、事前に調べてみることをおすすめします。
2024年の全国犬猫飼育実態調査によると、犬と猫ともに動物病院にかかる医療費は年々増加傾向にあります。月額で示すと犬で4,894円(税込)、猫で3,494円(税込)が平均値でした。
つまり年間で40,000〜60,000円(税込)程度を医療費として見込んでおく必要があります。意外と高く感じた方もいるかもしれません。
動物愛護団体に引き取りを依頼した飼い主のうち、経済的理由でペットを手放した方の割合は犬と猫あわせて約5%にのぼっています。
ペットの購入を検討されている方は、ぜひ金銭面での負担についても今一度考えてみましょう。
動物病院ごとに診察料が違う理由
動物病院では、病院ごとに異なる診察料が設定されています。なぜなら、動物病院は独占禁止法によって統一した料金を定めることを禁じられているからです。
また、動物には公的な医療保険制度がなく、ペット保険に加入していない場合はすべて自費で払う必要があります。
動物病院は自由診療と同じだと考えると理解しやすいかもしれません。
人間の場合、保険診療であれば全国統一された金額が設定されていますが、自由診療の場合は病院側が自由に金額を設定できます。
保険適用外の施術を受ける場合は、すべて自費となるため高額な治療になりがちです。
突然の病気や手術で高額な治療費が発生する可能性があるため、ペット保険への加入など備えが必要です。
動物病院の初診料について
人間と同様に、動物病院でも初回の診察では初診料がかかります。500〜5,000円(税込)未満の動物病院が多く、初診料の中央値は1,500円(税込)です。
なかには、初診料を設定していない動物病院や10,000円(税込)以上の金額を設定している動物病院も見受けられます。
前述したようにペットの診察はすべて自費診療となるうえ、公的な保険制度もありません。動物病院側が任意の金額を設定できるため、金額に大きな差が生まれるのです。
余裕のある状況であれば、事前に自宅周辺の動物病院について調べてみるのがおすすめです。
よくある病気・症状別の診察料の費用相場
ここからは、ペットのよくある病気や症状別の診察料の費用相場を紹介します。動物病院に通院する可能性が高い原因として、以下4つの症状や病気が挙げられます。
- 皮膚炎
- 嘔吐・下痢
- 耳の病気
- 眼の病気
以下で各病気や症状ごとの詳細を解説します。
皮膚炎
犬や猫は人間よりも皮膚が薄いため皮膚炎に罹りやすい傾向にあります。
家庭どうぶつ白書2024によると、診療費における疾患の内訳では、犬の診療費のうち皮膚疾患が特に多く16.5%を占めています。猫は犬ほど多くないものの、5.7%を占める結果となりました。
同調査のなかで、その他の皮膚疾患が犬と猫ともに共通の項目でした。その他の皮膚疾患の年間治療費は以下のとおりです。
- 犬(平均値):27,421円(税込)
- 犬(中央値):9,183円(税込)
- 猫(平均値):12,138円(税込)
- 猫(中央値):5,752円(税込)
猫よりも犬の方が全体的に金額が高い傾向にあります。犬の場合は大型犬も含むため、どの病気でもその傾向にありますが、診療費における疾患の内訳を見ても犬の方が皮膚炎に罹りやすいといえるでしょう。
嘔吐・下痢
ペットが急に嘔吐や下痢をしたら驚いてしまうかもしれません。軽微な症状から重篤な症状までさまざまですが、繰り返し症状がでない限りは慌てる必要はないでしょう。
家庭どうぶつ白書2024によると、請求割合のうち犬と猫どちらも共通して特に多いのが嘔吐や下痢です。犬は13.7%、猫は9.4%を占める結果となり、頻繁に発生しうる症状であることがうかがえます。
同調査のなかで発表された年間治療費は以下のとおりです。
- 犬(平均値):19,104円(税込)
- 犬(中央値):9,350円(税込)
- 猫(平均値):18,899円(税込)
- 猫(中央値):9,240円(税込)
嘔吐や下痢に関しては、犬と猫で治療費に大きな差はありませんでした。
耳の病気
種類にもよりますが、犬や猫は人間と異なって折れ曲がった耳をしていることが多いです。そのため、高温多湿な環境下では耳の病気に罹りやすい傾向にあります。
家庭どうぶつ白書2024によると、治療費における耳の疾患の内訳は犬で5.9%、猫で2.2%です。病名では、細菌性や原因未定のものも含めると外耳炎が多く見られました。
そのため、犬の方が猫よりもやや耳の病気に罹りやすいといえるでしょう。同調査のなかで発表された外耳炎の年間治療費は以下のとおりです。
- 犬(平均値):20,558円(税込)
- 犬(中央値):10,925円(税込)
- 猫(平均値):14,800円(税込)
- 猫(中央値):7,700円(税込)
耳の病気に関しても、犬の方が猫よりも治療費がかかる傾向にあります。
眼の病気
犬や猫は眼の病気にも気を付ける必要があります。診療費における疾患の内訳では、眼および付属器の疾患が占める割合は犬で5.3%、猫で3.8%です。
眼の病気といってもさまざまあります。家庭どうぶつ白書2024によると犬と猫ともに結膜炎が割合として多くあがっています。また、猫に関しては原因未定の目やにもあげられていました。
同調査のなかで発表された結膜炎の年間治療費は以下のとおりです。
- 犬(平均値):12,071円(税込)
- 犬(中央値):6,469円(税込)
- 猫(平均値):9,075円(税込)
- 猫(中央値):5,500円(税込)
眼の病気に関しても、犬の方が治療費が高い傾向にあります。
予防接種や検査費用相場
これまでは主な病気にかかる治療費を紹介してきました。
しかし、病気の治療費だけでなく、予防接種や検査費用も医療費として発生します。むしろ、病気が発覚する前の検査に時間や費用がかかることも少なくありません。
費用が発生する場面を知っておくことで、気持ち的にも金銭的にも準備の期間が設けられるでしょう。
予防接種
人間と同じく、犬や猫も子犬や子猫のときに予防接種をするのが一般的です。環境省が定める譲渡支援のガイドラインでは、譲渡フロー内に犬と猫ともに混合ワクチンの接種を推奨しています。
後述の狂犬病予防接種のように義務ではありませんが、ワクチンで予防できる病気から犬や猫を守ることが可能です。
混合ワクチンの種類によって費用は異なるものの、犬では6,250〜8,750円(税込)、猫では4,000〜6,250円(税込)が中央値となっています。
また、犬に関しては年1回の狂犬病予防接種が法律で義務付けられているのです。厚生労働省では、生後91日以上の犬に対して予防接種を受けることを推奨しています。
狂犬病予防接種の費用は4,000円(税込)が中央値ですが、自治体によっては集団接種会場など定められた期間や場所であれば同一費用としている場合もあります。
血液検査
病気の種類を特定するためであったり、健康診断のためであったりと犬や猫にも血液検査が必要なケースがあります。
特に、病気が進行するまで症状として現れない場合は早めに血液検査を受けることが重要です。
中央値は750円(税込)となっていますが、これはあくまで採血料に関する金額です。なお、採血料を設定していない動物病院も全体の約30%ほど存在しています。
その後、採取した血液を用いて検査を行う場合には、別途検査費用がかかります。血液検査にかかる費用は、検査項目の内容によって大きく異なりますが、採血料と検査料を含めた総額としては、一般的に10,000円前後が相場と考えられます。
エックス線検査
病気の場合はもちろん、怪我でも動物病院に行く可能性があります。
腫瘍や心臓病など血液検査でも判断がつかない病気や、骨折などの怪我をした際には、エックス線検査を受けることになるでしょう。
エックス線検査にも複数手法があり、撮影方法により値段が変動します。撮影方法ごとの料金目安はは以下のとおりです。
- エックス線検査(単純撮影):3,000円(税込)〜7,500円(税込)
- エックス線検査(消化管造影):3,000円(税込)〜12,500円(税込)
- エックス線検査(尿路造影):3,000円(税込)〜12,500円(税込)
- エックス線検査(脊髄造影):5,000円(税込)〜17,500円(税込)
造影剤を使用する場合は費用が高くなり、撮影する部位によっても費用が変わってくることがわかります。また、撮影方法や枚数、麻酔の有無によっても値段が大きく変動するため注意が必要です。
避妊・去勢手術の費用相場
ペットの手術費用として避けては通れないのが、避妊や去勢手術です。日本では飼い犬や飼い猫の多くが、避妊や去勢手術を受けています。
犬の方がやや割合が低いものの、犬で59.1%、猫は80.7%が避妊や去勢手術を受けています。
手術を受けた犬や猫の大半が生後1年以内に手術を受けていることを踏まえても、ペットを飼ったら早いうちに避妊や去勢手術の検討が必要です。
もちろん、メリットやデメリットがあるため、必ずしも手術を受けなければいけないわけではありません。
しかし、飼育放棄を防ぐ目的で、環境省は避妊や去勢手術を推奨しています。また、将来的に乳腺腫瘍や生殖器疾患などの病気になるリスクを抑えることもできます。自治体によっては補助金がでるケースもあるため、気になる方は手術前に自治体へ問い合わせましょう。
以下でペットの種類別に、避妊や去勢手術の費用について説明します。
犬の避妊手術
子犬の場合は生後半年以降の初回発情前を目安に避妊手術を行います。手術の方法としては、卵巣のみ摘出する卵巣切除と卵巣と子宮を摘出する卵巣子宮切除の2つがありますが、卵巣子宮切除の方が一般的です。
麻酔料を除いた費用の中央値はどちらも変わらず27,500円(税込)となっています。
卵巣子宮切除では、体重別の料金設定をしている動物病院もあるため、大型犬を飼育している場合はさらに費用がかかるでしょう。
犬の去勢手術
開腹手術が必要なメスの避妊手術と比較して、オスの去勢手術は短時間で行われます。そのため、避妊手術に比べて費用がかからない傾向です。
麻酔料を除いた費用の中央値は17,500円(税込)となっています。
オス犬の去勢手術もメス犬の避妊手術と同様に、体重別の料金設定をしている動物病院もあります。大型犬を飼育している場合は、さらに費用がかかると考えておくべきでしょう。
猫の避妊手術
メス猫の場合は体重が1kgに達したのを目安に避妊手術を行います。手術の方法はメス犬と同様で卵巣切除と卵巣子宮切除の2つがありますが、メス猫も同様に卵巣子宮切除で行われるのが一般的です。
麻酔料を除いた費用の中央値はどちらも変わらず22,500円(税込)となっています。
メス犬の避妊手術と比較すると費用がかからない傾向です。
猫の去勢手術
オス猫の去勢手術においても、オス犬の去勢手術と比較すると費用がかからない傾向にあります。また、メス猫の避妊手術と比較しても費用がかからない傾向です。
麻酔料を除いた費用の中央値は12,500円(税込)となっています。
ペットに手術や入院が必要な場合の費用相場
病気の種類や状態によっては、動物病院での手術や入院が必要となる場合があります。人間と同じように、通常の診察と比べて高額になる可能性があります。
急に手術や入院が必要となった場合に備えて、お金を用意しておきたい方もいるかもしれません。実際に手術や入院した場合、どの程度費用がかかるものなのでしょうか?
手術をする場合と入院をする場合に分けて費用を紹介します。
手術をする場合
手術費用は飼育しているペットの種類や大きさによって変動します。今回は、ペット&ファミリー損保における2023年4月〜2024年3月の保険金請求データより算出された金額を紹介します。
実際のデータは以下のとおりです。
- 小型犬:192,517円(税込)
- 中型犬:207,141円(税込)
- 大型犬:281,285円(税込)
- 猫:191,571円(税込)
猫よりも犬の方が金額が高く、特に費用が高いのは大型犬です。ペットのサイズによって金額が変動していることがわかります。
入院をする場合
通院だけでは対処できない場合は入院が必要です。その際は、治療費とは別に入院費がかかります。
手術費用と同様にペット&ファミリー損保における2023年4月〜2024年3月の保険金請求データより金額を紹介します。
実際のデータは以下のとおりです。
- 小型犬:97,900円(税込)
- 中型犬:104,635円(税込)
- 大型犬:128,527円(税込)
- 猫:101,397円(税込)
入院費も手術費用と同様に、ペットのサイズが大きくなるほど金額も高くなる傾向が見られます。
これらの金額を見て「思ったより治療費がかかるんだ」と驚いた方もいるかもしれません。
犬や猫の平均寿命は年々長くなっています。人間と同様に高齢になればなるほど手術や入院のリスクは高まるため、治療費の心づもりが必要です。
まとめ
この記事では、動物病院でかかる費用を説明しました。人間と異なり公的な保険制度がないため、ペットにかかる医療費は高額になりがちです。
手術や入院が必要な場面は突然発生します。そのようなとき、費用面を理由に必要な治療が受けられないのはペットも飼い主も辛いでしょう。
ペットを飼い始めたら早い段階でペット保険の加入を検討する、日頃からまとまった金額がだせるように貯金をしておくなどの対策がおすすめです。
参考文献