ペットを飼っていて、夜遅くに予期せぬトラブルが起きた経験はありませんか。通常の診療時間外に体調不良などが見られると、どのように対処すればよいのか判断に迷ってしまいます。今回は動物病院の夜間診療をテーマに、早急な受診が必要となる症状や飼い主が注意すべきことについて解説を加えました。気になる夜間の管理体制などにも言及しているため、万が一のときに備えて目をとおしてみてください。
夜間診療が必要な症状

夜間にペットの体調不良が見られても、早急に動物病院を受診すべきか否か、判断を下すのは難しいものです。夜間受診では十分な処置が受けられないのではないかと、心配になる場合もあるでしょう。まずは、どのような症状があれば夜間診療を受けた方がよいのか、対応に困ったときの目安についてまとめます。
- どのような症状があったら、夜間でも早急に受診すべきですか?
- 嘔吐や下痢を繰り返してぐったりしていたり、呼吸に異常がみられたり、ふらついて歩けなくなっていたり、けがをして出血が止まらなかったり、有害物質を誤飲したり、てんかんのような発作を起こしたりしている場合には夜間でも、受診すべきです。今述べた症状以外でも、不安がある場合には電話で症状などを伝え来院した方が良いかの判断を仰ぐことは大事です。
- 夜間診療を受けるべきか判断に迷うときの対応を教えてください
- 明らかに深刻な状況であれば夜間診療を受けるべきですが、症状が軽く、判断に迷う場合もあるでしょう。そのようなときには、いったんかかりつけの動物病院や夜間・救急専門の窓口に電話を入れて、受診が必要かどうか相談してみるのがおすすめです。24時間受付のペット専門オンライン相談サービスなども展開されているため、もしものときに頼れる窓口をあらかじめ探しておきましょう。
- 症状次第では、夜間でも急に入院が決まるケースもありますか?
- 診断の結果によっては、夜間であっても入院や手術が必要となります。予期せぬ状況になると動揺してしまいますが、獣医師の指示に従いましょう。治療方針や費用に関する疑問があれば、事前にしっかり確認してください。ペットの健康を第一に考えて、獣医師と適切なコミュニケーションを取ることが重要です。
- 夜間受診をする場合、受けられる処置は限られていますか?
- 都市部など夜間専門の動物病院がある地域だと、夜間診療のエキスパートがいるので、あらゆる処置、例えば異物の誤飲を内視鏡で取り除いたり子宮蓄膿症や胃捻転などの緊急手術にも対応しています。
また、夜間専門の動物病院が近くにない場合は、昼間やっている動物病院に時間外で診察を頼むことになります。人員の制約はありますが応急処置など必要な処置は受けられるでしょう。
動物病院の入院システム
ペットの症状次第では、動物病院への入院が必要となります。しかし、いざ入院するとなっても、入院システムはどのようなものなのか、よくわからないケースも多いでしょう。このパートでは入院が必要な症状を押さえたうえで、入院施設の種類や夜間の管理について説明していきます。
- どのような症状が出ると、動物病院へ入院することが多いですか?
- 軽度のけがや病気であれば通院で済みますが、肺水腫を起こし酸素室での管理が必要な場合や、てんかん発作が止まらず点滴や注射での管理が必要な場合、緊急手術の前後などでは、入院が必要になります。
- 入院施設の種類や特徴を教えてください
- 入院施設には一般的に3つの種類があります。まずは、特別な事情がない場合に選択される一般入院室です。一般入院室にはステンレス製のケージが並んでおり、犬猫を分けている施設とそうでない施設があります。いずれにしても、ペットたちが落ち着いて過ごせるように配慮されています。一方で、命に関わるような緊急度の高いペットはICUに運ばれます。ICUでは温度や湿度、酸素濃度が一定にコントロールされているだけでなく、ケージ内が見やすい造りとなっており、スタッフの目が行き届くように工夫されています。感染症を患ったペットたちは、ほかの部屋との空気が遮断された隔離入院室に入ります。隔離入院室においては、それぞれのペットが個室で過ごすことになります。
- 夜間の管理はどのように行われますか?
- 夜間の管理体制は動物病院によって異なりますが、獣医師や看護師が24時間体制にて診療や看護、見守りを行っている施設もあります。とはいえ、限られたスタッフで管理している施設も多く、緊急度の高いペットから優先的に処置が施されます。
夜間診療や入院にあたっての注意点

夜間に突然トラブルが起きて急な診療や入院が必要になると、飼い主として冷静に対処することは容易ではありません。終わりに、夜間診療や入院にあたっての注意点をチェックして、万が一のときにもペットをしっかりサポートできるよう備えましょう。
- 夜間診療や入院のときに持参すべきものを教えてください
- 動物病院によっては、飼い主の身分証明書を提示するよう求められるケースがあります。特に初めて利用する施設であれば、運転免許証や健康保険証などを持参しておくとよいでしょう。併せて、ペット保険が利用可能な場合もあるため、ペット保険の保険証も用意してください。その他には、かかりつけ医の診療記録や血液検査などの結果、普段使用している薬を持って行くと、診察の参考になります。誤飲で受診する場合には、飲みこんだものの成分が確認できるパッケージなども持参しましょう。
支払いに関する重要な注意点として、クレジットカードも必ず持参してください。夜間診療は昼間の診察費よりもかなり高額になり、内視鏡使用や手術が必要になると数十万円に及ぶこともあります。
夜間動物病院は一回限りの受診になることがほとんどのため、支払いに関しては、基本的に後払いは不可となっており、現金もしくはクレジットカードでの支払いが原則です。
診察費が昼間の動物病院に比べてとても高額になることも念頭においておくとよいでしょう。
- 診療の際、動物病院のスタッフにどのような情報を伝えるとよいですか?
- 夜間診療の際には獣医師が適切な治療を迅速に行えるよう、飼い主が必要な情報を正確に伝えることがとても重要です。ペットの年齢や体重といった基本情報は薬の投与量や治療法を決めるときに大きな影響を与えるため、しっかり共有できるように準備しておきましょう。加えて、現在の症状を詳しく報告することも欠かせません。症状がいつから出始めてどのように悪化したのか、食事や排せつの様子に問題はないかなど、診断の助けになるような情報はすべて伝えてください。言葉だけで説明するのが難しいようであれば、症状が出ているときの写真や動画を撮影して持参すると、情報の伝達がよりスムーズになります。
- 退院後に飼い主が注意すべきことを教えてください
- 退院直後のペットは飼い主とスキンシップを図れることがうれしく、興奮してはしゃぎすぎてしまうケースも少なくありません。飼い主としても一緒に喜びを共有したくなりますが、帰宅したペットができる限り静かに過ごせるよう、興奮させないことを心がけてください。過度に動き回ったり食べ過ぎたりすると、傷口が開く恐れや、胃腸に負担がかかって下痢につながる可能性もあります。症状にもよりますが、退院して3日程度はいつも以上に様子を気にかけてあげましょう。ペットが嫌がっているからといって、エリザベスカラーなどの保護具を外してしまうのも厳禁です。併せて、今後同じような症状で入院することがないよう日頃の習慣や飼育環境を見直し、ペットの健やかな毎日を支えましょう。
編集部まとめ
ペットたちは言葉を発することができないため、日中は元気そうに見えても、夜間に突然症状が悪化する恐れもあります。ペットの体調が急変すると飼い主も気が動転してしまいますが、必要に応じて夜間診療を受けるなど、冷静な対処を意識してください。病気によっては、早急な動物病院の受診が不可欠となります。自宅で見守ることに不安を感じたら、できるだけ早く獣医師の判断を仰ぐようにしましょう。