犬がヘルニアになる原因とは?症状や治療方法、飼育環境の注意点も解説

犬がヘルニアになる原因とは?症状や治療方法、飼育環境の注意点も解説

「最近、愛犬の歩き方がいつもと違う。触れると痛がる……」そんな変化に戸惑っていませんか?

実は、人間と同じように、犬も椎間板ヘルニアになります。これは、背骨のクッションの役割をする椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで痛みや麻痺などが起こる病気です。年齢や体型、普段の動きなども影響するため、どのような犬でも発症のリスクがあります。当記事では、原因や症状、治療法、自宅でのケアまで、わかりやすくQ&A形式でご紹介します。

犬がヘルニアになる原因

犬がヘルニアになる原因

犬がヘルニアになる原因には、加齢や無理な運動、もともとの体のつくりなどが深く関係しています。ここでは、主な原因は何か、犬種や年齢との関係も含めてわかりやすく説明します。

犬がヘルニアになるのは何が原因ですか?
ヘルニアの原因として多いのは、ジャンプや落下などのけが、激しい運動、加齢、そして遺伝的な体質です。

例えば、高いところから飛び降りたり、急に走り回ったりすると、背骨に大きな力がかかって椎間板にダメージが出やすくなります。

また、椎間板は年を重ねるとだんだん弱くなるため、高齢の犬では自然とリスクが高まります。生まれつき椎間板が傷みやすい犬種もいて、そうした体質が原因になることもあります。
犬種や体型によってヘルニアの発症リスクは異なりますか?
はい。特に背中が長くて足が短い犬は、ほかの犬よりヘルニアになりやすいと言われています。

代表的なのは、ミニチュア・ダックスフンド、コーギー、ビーグル、パグ、フレンチ・ブルドッグなどです。これらの犬種は「軟骨異栄養犬種(なんこついえいようけんしゅ)」と呼ばれ、椎間板が弱くなりやすい特徴を持っています。

なかでもミニチュア・ダックスフンドは発症率が高く、ほかの犬種の約10倍とも言われます。
加齢や運動不足はヘルニアの原因になるのか教えてください
なります。年をとると椎間板が弱くなり、ヘルニアが起こりやすくなります。運動不足も、体を支える筋肉が弱ることで、背骨に負担がかかる原因になります。

加齢による椎間板ヘルニアは、ゆっくりと症状が出てくることが多いと言われています。また、運動不足で筋力が落ちると、ちょっとした動きでも背中に負担がかかってしまい、ヘルニアのリスクが高まります。ふだんから無理のない範囲で、適度に体を動かすことが大切です。

犬のヘルニアで見られる代表的な症状

椎間板ヘルニアは腰だけでなく、首や背中などさまざまな場所で発症する可能性があります。症状は出た場所や重さによって異なりますが、多くの場合に共通して見られるのが痛みと麻痺です。ここでは、代表的な症状を紹介します。

ヘルニアになるとどのような症状が現れますか?
痛みや足の麻痺、歩き方の異常などが見られます。症状の出方は、ヘルニアが起きた場所や神経の圧迫の程度によって変わります。

例えば、首や腰に痛みが出て、触られるのを嫌がる、背中を丸めて歩く、急にふらつくといった変化が見られることがあります。足先がひっくり返る「ナックリング」や、前足だけで移動しようとする動きが出ることもあります。

動物病院では症状を頚部はグレード1~3、胸腰部はグレード1〜5に分けて診断します。軽度では痛みだけですが、進行すると後ろ足の麻痺、排尿のコントロールができないといった症状が現れます。また、重度では痛みの感覚もなくなり、自力で動けなくなります。
歩き方や姿勢に変化があった場合は注意すべきですか?
はい。足を引きずる、ふらつく、じっと動かないといった変化はヘルニアのサインかもしれません。

頚部椎間板ヘルニアの場合は、呼吸がしにくくなることがあるため早めの受診が望まれます。また手足を触って感覚が乏しい場合には、なるべく早く動物病院を受診してください。悪化すると歩けなくなるリスクがあります。
胸腰部椎間板ヘルニアが悪化した場合、どのような症状が出るのか教えてください
後ろ足の麻痺が進み、排尿できなくなったり、痛みも感じなくなったりします。

症状が重くなると、しっぽや足先にまったく反応がなくなり、自力で立ったり動いたりすることもできなくなります。回復までに時間がかかるため、早期の対応がとても重要です。

動物病院で行うヘルニアの診断と治療方法

動物病院で行うヘルニアの診断と治療方法

犬の椎間板ヘルニアは、症状だけで正確に判断することは難しく、動物病院での検査が必要です。診断の方法や治療の選び方について、順を追って解説します。

ヘルニアはどのように診断しますか?
問診、神経学的検査、画像検査を組み合わせて診断します。

まずはいつから症状が出たか、どのようなきっかけがあったかなどを問診で確認します。次に、歩き方や足の反応などを見て、神経のどこに異常があるかを調べる神経学的検査を行います。

さらに詳しく調べるために、レントゲン・CT・MRIなどの画像検査を行うことがあります。MRIでは神経の圧迫具合まで詳しくわかるため、確定診断にはとても有効です。ただし、CTやMRIは全身麻酔が必要なため、状態に応じて慎重に判断されます。

なお、レントゲンだけではヘルニアの診断は難しいですが、類似症状の別の病気を除外する目的で行うことがあります。設備のない病院では、造影剤を使ったレントゲン検査を行う場合もあります。
ヘルニアになった場合どのように治療を進めるのか教えてください
症状の重さによって、内科治療か外科手術のどちらかを選びます。

軽度の場合は、消炎鎮痛薬を使いながらケージ内で安静にさせる内科療法が行われます。鍼治療などを取り入れることもあります。グレード1~2(痛みや軽いふらつき)であれば、まずはこの方法で様子を見ます。

一方、グレードが上がって歩行困難や麻痺があり、内科治療では効果が見込めないときは、手術によって圧迫を取り除く外科療法を行います。また、重症や再発を繰り返すケースでも手術が検討されます。
治療期間はどのくらいかかりますか?
軽度でも4~6週間の安静が基本です。症状が重い場合や手術を行った場合は、さらに時間がかかります。

内科療法を選んだ場合、治療の中心は「ケージレスト」と呼ばれる徹底した安静です。これは散歩を控える程度ではなく、トイレのとき以外はケージのなかでじっと過ごさせる方法で、椎間板が安定するまでの4~6週間は続ける必要があります。

一方、手術を行った場合や症状が重いケースでは、1~2ヵ月以上の入院やリハビリが必要になることもあります。
外科手術が必要になるのはどのようなケースですか?
後ろ足が動かない、排尿できない、痛みを感じないといった重い症状が出た場合です。

内科治療で回復が見込めない場合や、短期間で症状が悪化した場合には、外科的に椎間板の圧迫を取り除く手術が必要です。

また、内科治療で一度は良くなっても、繰り返し再発しているケースでも手術が選ばれることがあります。

飼育環境とケアの注意点

ヘルニアを予防したり、再発を防いだりするには、日常生活のちょっとした工夫がとても大切です。犬に負担をかけない生活環境を整えてあげましょう。

ヘルニアの犬を自宅でケアする場合、日常生活で注意すべきことは何ですか?
抱っこの仕方や過ごし方、動作に気をつけて、背中に負担をかけないようにしましょう。

犬を抱き上げるときは、前足やお腹だけを持ち上げるのではなく、体全体をしっかり支えて、背中が平らになるようにします。また、狭くて体を丸めないと入れない場所や、2本足で立たせるような動作は避けましょう。

適度な運動も大切です。激しい動きを避けつつ、安全な範囲で体を動かします。散歩や軽い遊びを取り入れながら、筋力とストレスのバランスを保ちましょう。

また、定期的なマッサージはリハビリと予防ケア、どちらにも役立ちます。スキンシップを介して痛みなど、小さな違和感に気付くきっかけになるでしょう。
段差や滑りやすい床への対策方法を教えてください
スロープや滑り止めマットを使って、背骨への負担を減らしましょう。

階段やソファの上り下り、ジャンプなどの動きは、椎間板に強い負担をかけます。特にヘルニアになりやすい犬種では、段差の多い環境は避けたいところです。

ソファやベッドにはスロープやステップを設置し、段差をなるべく減らしましょう。また、フローリングなどの滑りやすい床には、滑り止めマットやカーペットを敷いて転倒を防ぐのが有効です。
体重管理や運動量の調整はヘルニア対策になりますか?
はい。適正体重を保ち、無理のない運動を続けることが大切です。

太りすぎは腰への負担を大きくし、ヘルニアのリスクを高めます。普段から体重をしっかり管理し、肥満にならないよう注意しましょう。

とはいえ、運動のさせすぎも逆効果です。急な動きやジャンプは避けながら、毎日の散歩や軽い遊びで筋力を維持することが、予防にも再発防止にもつながります。

編集部まとめ

椎間板ヘルニアは、早期の発見と適切な対処で回復が期待できる病気です。日常生活で「歩き方が変」「背中を触ると痛がる」といったサインに気付いたら、無理をさせず、早めに動物病院を受診しましょう。

また、段差の解消や滑り止めマットの設置、体重管理など、日々の環境づくりも大切です。犬にとっても、飼い主にとっても安心できる暮らしを整えていきましょう。

【参考文献】